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ー第4節 ホワイト企業への転生と、最強の顧問誕生。会社は光に包まれ、田中は「掃除の神」として社員たちに崇められることになる

第4節 ホワイト企業への転生と、最強の顧問誕生。会社は光に包まれ、田中は「掃除の神」として社員たちに崇められることになる


 その日を境に、株式会社クリーン・ダンジョンは劇的な変貌を遂げた。

 社屋全体が俺の「残り香(清掃オーラ)」によってパワースポット化し、出社するだけで社員の健康状態が改善。

 さらに、社長が豹変し、ブラックな業務命令が一切なくなったことで、社員たちのモチベーションは爆上がりした。


「おはようございます、田中顧問! 今日も床が輝いてますね!」

「顧問! 昨日のご指導のおかげで、スライムのヌメリが一発で落ちるようになりました!」


 廊下を歩くだけで、社員たちから敬礼される。

 俺は慣れない役職に戸惑いつつも、彼らに「重曹の使い方」や「雑巾の絞り方」を教えていた。彼らはそれを「秘伝の奥義」として熱心にメモを取っている。


 そして、あの社長室での一件以来、俺の噂はさらに広まっていた。

 ――田中顧問は、ダンジョンのモンスターだけでなく、ブラック企業の邪気すらも祓う最強のエクソシストである、と。


「いや、俺はただの清掃員なんだけどなぁ……」


 新しい役員室(という名の掃除用具倉庫を改造した個室)で、俺は溜息をついた。

 デスクの上には、今日もコンビニの缶ビールとおつまみが置かれている。


『いいじゃないか、勤ちゃん。みんな幸せそうだし、君も給料上がったし』


 おつまみがビールの泡を舐めながら言う。


「まあな。でも、現場に出る時間が減ったのはちょっと寂しいよ」


「失礼します!」


 ノックと共にドアが開き、秘書のようなスーツに身を包んだ女性が入ってきた。

 白石玲奈である。

 彼女はなぜか、うちの会社の「特別顧問補佐」として勝手に入社していた。S級探索者のコネと資金力を使って、無理やりポジションを作ったらしい。


「田中様! 本日のスケジュールですが、午前中は六本木ダンジョンの視察、午後は新入社員への『心の清掃』講義となっております!」


 玲奈は目をキラキラさせて報告してくる。


「また講義かぁ……。掃除の話しかできないぞ」


「それがいいのです! 田中様の掃除論こそが、この世界を救うのですから!」


 玲奈の鼻息は荒い。

 俺は苦笑しつつ、立ち上がった。

 まあいいか。

 少なくとも、昨日のような「死にたい夜」はもう来ないだろう。

 俺の手にはモップがあり、横にはおつまみがいて、周りには変な信者たちがいる。

 これはこれで、悪くない人生(清掃ライフ)かもしれない。


「よし、行くか。今日も世界を綺麗にするぞ」


 俺はモップを担ぎ、光に満ちたオフィスへと歩き出した。

 その背中には、「清掃中」という文字が、以前よりも誇らしげに輝いているように見えた。


(第4章 完)

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