表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/20

ー第2節 おつまみからの指令。「我慢して死んで来世に期待するな」。怒りを燃料に変え、田中の清掃魂(スキル)がブラック企業の根源的汚れ=社長をロックオンする

第2節 おつまみからの指令。「我慢して死んで来世に期待するな」。怒りを燃料に変え、田中の清掃魂スキルがブラック企業の根源的汚れ=社長をロックオンする


『さて、対価交換トレードの時間だ!』


 おつまみは俺の目の前でビシッと(手はないが)指を差した。


『勤ちゃん、君はずっと「我慢すればいい」と思ってただろ? 「来世で幸せになれればいい」って諦めてただろ?』


 図星だった。俺は心のどこかで、現世での幸福を諦めていた。


『ダメだダメだ! そんなのツマミにならない! 今ここを! この瞬間を! 最高の楽園にしなきゃ嘘だろ!?』


 おつまみの言葉が、俺の脳髄を揺さぶる。

 そうだ。なんで俺が割を食わなきゃいけないんだ。

 俺はただ、綺麗にしたいだけなんだ。部屋も、ダンジョンも、そしてこの腐りきった会社も!


『デバッグの時間だ、勤ちゃん! その社長という名の「バグ」を、修正フィックスしてやれ!』


 カッ!!

 おつまみから放たれた真紅の光が、俺の身体を貫いた。

 これまでとは比較にならないほどのエネルギーが全身を駆け巡る。

 それは「怒り」を燃料とした、爆発的な「是正衝動」だった。


「……社長」


 俺は顔を上げた。

 さっきまでの卑屈な態度は消え失せていた。

 俺の目には、社長の黒井が人間ではなく、「部屋の隅にこびりついた、最も醜悪で頑固なカビの集合体」に見えていた。


「あぁ? なんだその目は。文句があるなら……」


「汚いですね」


 俺は静かに言った。


「え?」


「あなたの心も、この部屋も、この会社の経営方針も。すべてがヘドロのように汚れている。……掃除が必要です」


「な、何をわけのわからないことを……! 警備員を呼ぶぞ!」


 黒井が受話器に手を伸ばそうとした時、俺はポケットから商売道具を取り出した。

 使い古した雑巾と、どこにでも売っているマイペット(住居用洗剤)。

 だが、今の俺の手にかかれば、これは聖剣と聖水に等しい。


「スキル発動、『徹底清掃・完全浄化フル・スクラビング』!!」


 俺が叫ぶと同時に、俺の身体から眩いばかりの白い光が放たれた。

 それはただの光ではない。高濃度の洗浄成分を含んだ、物理的な「清掃オーラ」だ。


 バシュゥゥゥゥン!!


 衝撃波のような風圧が社長室を吹き抜けた。

 書類が舞い、ブランデーの瓶が倒れる。

 だが、何も壊れない。

 代わりに、部屋に充満していたタバコのヤニ、床のシミ、そして空気中の淀みが、一瞬にして消滅した。


「な、なんだ!? 何が起きた!?」


 黒井が腰を抜かして床に這いつくばる。

 俺はゆっくりと彼に近づいた。

 その一歩ごとに、床が鏡面仕上げのように輝き出す。


「さあ、社長。あなたも綺麗になりましょう」


 俺は右手の雑巾を構え、ニッコリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ