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ー第2節 ボロボロの探索者パーティが迷い込んだのは、ただの休憩所ではなく、全回復ポーションの源泉掛け流し温泉のような場所だった

第2節 ボロボロの探索者パーティが迷い込んだのは、ただの休憩所ではなく、全回復ポーションの源泉掛け流し温泉のような場所だった


 ガサガサ……。

 茂みを掻き分ける音がして、数人の男女が姿を現した。

 武装の傷み具合からして、中堅クラスの探索者パーティだろう。だが、その状態は悲惨だった。


「はぁ、はぁ……。リーダー、もうダメだ。ポーションが尽きた……」

「くそっ、あのオークの群れ、強すぎるだろ……」


 前衛職らしき大柄な男は肩から血を流し、魔法使いの女性は魔力切れで顔色が真っ青だ。

 彼らは命からがら逃げ延びてきたようで、満身創痍だった。


「あそこに……誰かいるぞ?」


 リーダーの剣士が、切り株に座る俺に気づいた。


「おい、アンタ! ここは危ないぞ! 近くにオークの群れが……」


 彼らが警告しようと、俺のいる「光の領域」に足を踏み入れた瞬間だった。


「……え?」


 最初に声を上げたのは、肩を負傷していた大柄な男だった。

 彼の顔から苦痛の色が消え、代わりに驚愕の表情が浮かぶ。


「痛く……ない?」


 彼は自分の肩を押さえた。

 さっきまでパックリと開いていた傷口が、見る見るうちに塞がっていく。

 それだけではない。疲労で鉛のように重かった手足に、力が満ち溢れてくるのだ。


「なんだこれ!? 魔力が……回復していくわ!」


 魔法使いの女性も叫んだ。

 本来なら宿屋で一晩寝なければ回復しない枯渇状態の魔力が、数秒で満タンになっていく。


 彼らは呆然と立ち尽くし、そして中心にいる俺を見た。

 俺はチータラを齧りながら、のんきに手を振った。


「お疲れ様ですー。あ、ここ休憩スペースなんで、座っていいですよ。ブルーシート敷きます?」


 俺は業務用のブルーシートを広げた。

 彼らは恐る恐る、そのシートの上に座り込んだ。


「あ、あの……これは一体……?」


「ああ、気にしないでください。ただの休憩ですから」


 俺はリュックから、予備の栄養ドリンク(ドラッグストアで十本五百円)を取り出して彼らに渡した。


「これでも飲んで、元気出してください。まだ仕事残ってるんでしょう?」


「あ、ありがとうございます……!」


 リーダーが震える手でドリンクを受け取り、一口飲む。

 カッ!

 彼の目が見開かれた。

 ただの安物ドリンクのはずなのに、口に含んだ瞬間、全身の細胞が歓喜の歌を歌い出したかのような衝撃が走ったのだ。


(こ、これは……エリクサー!? いや、それ以上の神酒か!?)


 彼らの勘違いは加速する。

 田中を中心としたこの空間は、おつまみの能力によって「最高の休息地」として概念書き換えが行われていた。

 空気中のマナ濃度は通常の百倍。

 マイナスイオンに似た浄化波動が常時発生。

 そこにいるだけで、自然治癒力は五千倍に跳ね上がり、精神的ストレスはゼロになる。


「すげぇ……。筋肉痛どころか、古傷のヘルニアまで治ったぞ……」

「見て! 肌が! 昨日の夜ふかしで荒れてた肌が、ゆで卵みたいにツルツルになってる!」


 女性陣は手鏡を取り出して歓声を上げている。

 ダンジョンの過酷な環境でボロボロだった髪は天使の輪を取り戻し、目の下のクマは消滅していた。


「ここは……天国か?」


 誰かが呟いた。

 俺はそれを聞き流し、「最近の若い子はオーバーだなぁ」と思いながら、柿の種をポリポリと齧っていた。

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