5話 二人で埋め合う欠けた物
ヴィダ「なんで手話サークルに
ギターがあるんだ?
まあ ろう者だけが
使う部屋ではないけど」
ギターを奏でるミレイ
ヴィダ「弾けるのか?」
歌い出しは
スローテンポで語り掛けるように
だんだん
リズムをつけて加速していって
その曲調に惹かれていくヴィダ
ここからは
暴力的に叫ぶように
そして
荒らすだけ荒らして
ここからは
綺麗に引き込むように
曲調を落として
ヴォーカルの声を
際立たせるように
最後は
静かに語り掛けるように終わる
ヴィダ「1つの曲になってる
作曲できたのか?」
ミレイ「歌詞が作れないんだけどね
だから これを使おうかな
その歌を聞く
特に耳を惹いたのが
ヴィダ「・・・これって」
ミレイ「貴方も歌ってよ?
歌えるでしょ?
貴方が創った歌詞なんだから」
君と出逢った その時から
胸の鼓動が止まらないんだ
全部 ちがった世界になったみたいに
すべてが変わったんだ
君と二人なら愛を見れるんだよ
想いだしてごらんよ 僕らにあったことを?
全部 全部 ちょうだいよ 君の全部
もっともっと欲しいから
愛しくさせるんだよ 君の全部
ぜったい 見つけるから
どうして
こんなに僕をおかしくさせるの?
この気持ちを教えて?
言葉にできないほど
君がくれた想いが
こんなにも切なくさせる
どうしてだろう心がはじけそうだよ
どうすればいいのかな?
ここにある僕の想いは?
抑える方法を教えて?
僕は もう苦しいの
全部 全部 あげたいよ 僕の全部
もっともっとあげたいから
受け取ってくれるかな 僕の全部
もっと 見つけてほしい
もっともっと
まだまだまだまだ欲しいよ
ぜんぜんぜんぜん足りないよ
こんなに望むのは何故なの?
欲張りになっていく
全部 全部 ちょうだいよ 君の全部
もっともっと欲しいから
全部 全部 あげたいよ 僕の全部
もっともっと あげたいから
どうして
心が動き出して止まらないんだ?
この想いを教えて?
この想い もっと ちょうだい
歌い終わり黙る二人
沸き立つ高揚感に駆られ
言葉を発する
物語が色付いて行く
曲と混ざって1つの物になっていく
メロディーに表情がついた
歌詞と交じって
1つの物語になっていく
これが・・音楽・・・
達成感のあまり
笑い出す二人
僕にできないことが
君にはできる
私にできないことが
貴方にはできる
二人で足りないものを埋め合って
1つの物語になった
ミレイ「なんて曲名にする?」
ヴィダ「全部 ほしいから」
ミレイ「いいね それ」
ヴィダ「これ
手話歌にできないかな?」
ミレイ「胸の鼓動が止まらないって歌詞
どう表現するつもり?」
ヴィダ「緊張って意味の手話で
口話を付けよう」
ミレイ「手話歌ならでわの表現ね」
二人で いま創ったばかりの曲を
手話歌にした
いつの間にか
手話サークルのメンバーが集まって
歌い終わった手話歌を
拍手って意味の手話で喝采した
”誰の歌 それ?”
ミレイ「いま 二人で創った」
”ミレイちゃんが作詞?”
ミレイ「それはヴィダ」
”・・・え”
ミレイ「どうしたの?」
”女の子っぽい歌詞なのに?”
笑い出すミレイ
ミレイ「貴方 素質があるんじゃないの?
ヴィヴィちゃんの時だって」
大声で「ヴィヴィ」って言葉を
消した
ヴィダ「バラすつもりか!?」
笑いが止まらないミレイ
二人だんだん見つめた空に
きらめく想いが1つ
貴方の歌声にメロディーを
重ねて奏でるの
「傍に居るよ?」と伝えて?
「ここに居るよ?」と感じさせて?
貴方と繋がっていたいんだ
後日
失望しました
もう私と関わらないでください
あの時
そう言われたことを思い出す
「・・・」
このままじゃいけないよな
ヴィダの家 朝
ミレイ「聞かせてもらおうか?」
明らかにミレイは怒っている
ミレイ「なぜ最近
私に余所余所しくしてるのかな?」
ヴィダ「・・・また繰り返してしまう」
ミレイ「なにを?」
ヴィダ「オンラインゲームでなら
少しだけ人と関わっていた」
相手も僕と同じ精神障害者で
僕に親身になってくれた
仲は良かったと思う
同じチームに居て
よく遊んでいた
だけど
その相手がチームメンバーと
僕の悪口を言ってるところを
インした瞬間に聞こえてしまって
許せなかった
だから
その痛みと同じくらいの痛みを
その人に与えてしまった
後に過ちに気付いて謝罪したのだけど
失望しました
もう私と関わらないでください
私は
貴方と同じ精神障害者ですが
貴方よりは性格が曲がってません
ヴィダ「・・・僕は大事な人ほど
・・・傷つけるみたいだ」
ミレイ「・・・」
ヴィダ「・・・君を・・傷つけたくない」
ミレイ「・・・フ~ン
貴方と同じ
精神障害者ね~
ミレイ「その相手って
本当に
精神障害者だったのかな~?
ヴィダ「・・・え?」
ミレイ「精神障害名だって違う
精神障害者ってみんな違うでしょ?
重さも悲しみも苦しみも痛みも
精神障害者って言う括りがあるだけ
それを知っている人が
”同じ精神障害者ですよ”
ミレイ「って言う?」
ヴィダ「・・・まさか」
ミレイ「だまされたんじゃない?」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「それに
悪口を言われなかったら
貴方も仕返ししなかったんでしょ?
因果応報なんじゃない?」
ヴィダ「・・・そうなのか」
ミレイ「人は純粋には生きられない
自分を守るために汚れて
疑うことで自分を守れる
でも
そうならないで
自分を守れる方法がある
純粋な人と共に生きる事
ミレイ「純粋な相手と共に生きられれば
純粋なままで居られる」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「純粋なままで生きて居たい?
だったら
私と共に生きればいい
ヴィダ「・・・え」
ミレイ「友達としてね」
ヴィダ「・・・あ」
ミレイ「どういうことだと思った~?」
ヴィダ「・・・なんか」
悩んでいたのが
バカらしくなってきた
ミレイ「納得したのなのなら
せっかく作った朝ご飯
食べてもらおうかな?」
ヴィダ「うん
いただきます」
ミレイ「まあ
とっくに冷めちゃったけどね
・・・ごめんなさい
手話サークル
知り合いのガシェに言った
ヘルパーから介護を受けてる事を
その相手がミレイだと言うことは
伏せたが
それを聞いたガシェは
首をかしげる
ガシェ「ヘルパーって
そこまで面倒見てくれないぞ
毎日 朝から晩まで
世話するなんてあり得ない
本当に それは
ヘルパーなのか?」
ヴィダ「え?」
ガシェ「その相手は
疑ってかかったほうがいい
後日
ガシェに言われたことが気になって
精神障害の症状で倒れるのを覚悟で
役所にヘルパーの事を聞きに行った
ミレイが言っていたように
僕のような精神障害者は
無料でヘルパーを雇うことができたが
役所の人「毎日 朝から晩までは
介護しませんね」
それが役所の人からの返答
じゃあ
ミレイがやってることは
なんだって言うんだ
帰宅するヴィダ
家にはミレイが昼ご飯を
支度してくれていた
ミレイ「一人で出かけて
大丈夫だったの?」
ヴィダ「・・・」
ミレイは なぜ
そこまでしてくれる?
疑ってかかったら
何が狙いで僕の傍で
こんなに面倒を見る?
だがミレイが
これまでしてくれたことは
優しく温かく思いやりがある
行動ばかりで接してくれていた
疑ってもいいのか?
でも
・・・悲しかったね
・・・つらかったね
ダメだよ?
繋がって居る人間が
自分勝手に生きちゃ
私と共に生きてみる?
こんなにも僕を想ってくれる人間を
疑うなんて
ヴィダ「ヘルパーは
そこまで面倒を見てくれない」
思わず声に出てしまった
それを聞き黙ってしまうミレイ
ヴィダ「なんで
そこまでしてくれるんだ?」
ミレイ「・・・」
ヴィダ「何か狙いでもあるのか?」
ミレイ「・・・
な~んだ
バレちゃったか~
ミレイ「狙いならあるわ
私にとっての
とても重要なね」
語り出すミレイ
ミレイ「私がヘルパーと言うのは本当よ?
貴方と契約して
与えられた仕事内容は
週に2回 二時間ほど
ヘルパーとしての仕事を
すること」
ヴィダ「じゃあ
ミレイのやってることは」
ミレイ「ヘルパーの
仕事の域を超えてるわね」
ヴィダ「なぜ?」
ミレイ「・・・」
・・・私にも
・・・わからないの
ヴィダ「え?」
ミレイ「私が普通ではない事は
前に話したよね?
私は愛を知らない
感じた事もない
普通の人が知っている感情を
私は知らない
だから私は普通ではない」
うつむき悲しそうな表情で
言葉を連ねる
そして意を決したように言った
ミレイ「貴方と居ると
私が生きて来て
これまでに
感じた事の無い
感情に縛られるの
ミレイ「私は
この感情の名前を知らない
今まで感じた事の無い想い
ねえ 教えて?
これは なんなの?」
黙ってミレイを見つめるヴィダ
ミレイ「・・・私は
・・・私は
・・・これを
・・・知りたいの
思い出すように語る
ミレイ「最初に貴方に出会った時
貴方は
”普通が わからない”と言った
その言葉 私も共感なんだ
私も普通を知らないから
だから貴方が精神障害者と知った時
ヘルパーである私の立場を利用して
契約を持ち込んだ
最初は ただの興味でしかなかった
でも・・貴方と過ごす内に・・・
貴方は私と同じなのかもしれない
想いを受け入れるの?
拒絶するの?
私たち・・どっちも欠けてるね・・・
ミレイ「なんて表したらいいの?
ここにある この感情は?」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「・・・私は
・・・これを知りたいの」
貴方に
お願いがあるの
泣きながら上目遣いで
すがるような表情で言う
ミレイ「せめて
少なくとも
この感情が
何か
わかるまででいいから
・・・貴方の
・・・傍に居ていいですか?
ヴィダ「・・・」
そんなミレイを
愛しく優しく抱きしめて
ヴィダ「・・・
・・・居てもいいよ?
「せめて
少なくとも
この感情が
何かわかるまででいいから
貴方の傍に居てもいいですか?」
貴方は抱きしめて
「・・・居てもいいよ?」と
応えてくれた
だから
私もまた笑うことができた
欠けているのなら
埋め合えばいい
私が”普通”を教えてあげる
だから貴方は私に”愛”を教えて?
愛を知らない私に
貴方は私と似ているのかも
優しくない この世界
「・・・つらかったね
・・・悲しかったね?」と言って
貴方を抱きしめた
ダメだよ?
繋がっている人間が
自分勝手に生きちゃ?
そう生きていいのは
繋がってない人間だけ
貴方は私と繋がった
もう独りでは生きられない
全部 奪わせて?
貴方が欲しくなる
手を繋ごう?
星空の下 歩こう?
貴方の初めてが欲しくて
そう誘ったのを覚えている
「ねえ?楽しかった??
次は どこに行こうか?」
貴方と並んで歩く
きっと
私は貴方を
からかうことが好きで
きっと
貴方は私に
からかわれることが
好きでしょ?
眠れない夜
貴方と過ごして
どっちも
欠けている二人
「・・・私たち
・・・どっちも欠けているね?」
悲しく そう呟いた
私にできないことを貴方はできる
貴方にできないことを私はできる
欠けているのなら埋め合えばいい
そう気づいちゃった
誰も
私に愛をくれなかった
貴方は私に愛をくれた
初めての人
悲しい過去も
初めての想いも
全部
受け入れてくれた
貴方としたセッション
貴方の歌声に私の曲を乗せるの
二人だんだん感じた想い
キラめく想いが1つ
貴方の歌詞に
私のメロディーを奏でるの
歌詞が色づいて
曲と交じって
メロディに表情が付いて
1つの物語になっていく
私にできないことを貴方はできる
貴方にできないことを私はできる
欠けているのなら埋め合えばいい!!
そう
生きて行こうね?




