2話 リハビリ
朝 食欲をそそる良い匂いで目が覚める
精神障害がひどくて朝ご飯すら用意できない
その悩みを打ち明けたら
作りに来てくれると言うのだ
そのために家の合鍵を渡したのは
不用心だっただろうか?
でも 僕の悲しい過去の話を
聞いてくれて
涙を流して抱きしめてくれて
「・・・悲しかったね」と同情してくれた人を
どうしても悪い人間に想う事ができなかった
「おいしい?」と毎回 聞いてくる
答える必要あるのだろうか?
毎日食べたいくらいに おいしい
今日は その人とリハビリを目的にした
街歩きに出かける
精神障害がひどくて
身だしなみすらできない僕は
その人に何から何まで世話になる
ヘアブラシで丁寧に髪を解かされる
ミレイ「長い髪 腰のあたりまで伸びてるね
お尻で髪の毛 踏んづけない?」
ヴィダ「油断すると布団から起き上がる時
肘で髪の毛を踏んでしまう」
ミレイ「女の子みたいだね?」
ヴィダ「そこまで念入りに
コーミングする必要あるの?」
ミレイ「私の下心の準備のため」
ヴィダ「え?」
ミレイ「その時が来たら話そうか」
・・・何をするつもりだ?
ミレイ「髪 きれいになったね
元々 髪質は良かったみたい」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「町に行くのが怖い?」
ヴィダ「・・・何十年ぶりだろう
行くと倒れると思ってるから」
ミレイ「大丈夫だよ?
私は そういう対応にも慣れてる」
ヘルパーって
そこまでの心得があるものなのか?
出かける準備ができ街の中心部に
日曜日なだけあってか人で溢れている
ミレイ「平日に出かけても良かったね」
精神障害者で働けない
僕は毎日が日曜日
ヴィダ「ミレイさんは平日に都合がつくの?」
ミレイ「目的地に つきそうような
ヘルパーの仕事もあるよ?
そういうことにすれば」
ヴィダ「・・・職権乱用になってない?」
ミレイ「さあ
久しぶりの世界に飛びこもう」
緊張はしたけど不安はなかった
倒れてもなんとかしてくれる
そう思えることが
どんなに心強かったか
二人で歩き周ったあと
カフェで昼食をとることにした
ミレイ「サラダにしたの?」
ヴィダ「身体に良いし」
ミレイ「コーヒーもブラック?」
ヴィダ「甘い物 苦手だし」
砂糖物は摂らないことにしている
ミレイ「ケーキやプリン
アイスも食べないの?」
ヴィダ「そんな血糖値の化け物
食べる必要あるのか?」
ミレイ「砂糖は摂りたくないと?」
ヴィダ「そう」
ミレイ「貴方のサラダにかかってる
ドレッシング
それ絶対
砂糖 入ってるよ?
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・」
あああああああああああ!!
ミレイ「叫びすぎ」
ヴィダ「・・・摂ってしまった」
ミレイ「ちなみに納豆のタレは入れる?
ケチャップやマヨネーズ
ソースとかは?」
ヴィダ「使うけど?」
ミレイ「それらも
だいたい砂糖入ってるよ?」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「けっこう貴方も甘いね?
二重の意味で」
ヴィダ「・・・うまいこと言えって
言ってない」
ウェイトレスがテーブルに
ケーキを2つ置いて行く
ヴィダ「2つも食べるの?」
ミレイ「貴方も食べるの」
ヴィダ「え?」
ミレイ「私だけ食べるのなんか嫌じゃん?」
ヴィダ「いや・・僕は砂糖物は・・・」
フォークの先にケーキの1部を指し
口の前に出す
ヴィダ「・・・あの?」
ミレイ「これが
どういうことかわかるかな?
貴方の家にあった
大量の物語の
エ〇ラヴストーリー必読してる貴方には
これが どういうシチュエーションかを?
ヴィダ「ストーリー物をバカにするな!?」
ミレイ「(あ・・エ〇の部分に突っ込まないんだ)」
ヴィダ「僕は食べたくない!!」
ミレイ「要らないの?」
ヴィダ「引っ込めてくれ!?」
ミレイ「・・・ダメだよ?
繋がって居る人間が
自分勝手に生きちゃダメだよ?
ヴィダ「え?」
ミレイ「自分勝手に生きていい人間は
誰とも繋がっていない人間だけ
ミレイ「でも貴方は私と繋がってしまった
もう貴方は独りでは生きられない」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「さあ 選びなさい?
想いを
受け入れるの?
拒絶するの?
想いを受け入れるの?
拒絶するの?
カフェ
「(想いを受け入れるか?
拒絶するか?)」
ダメだよ
繋がって居る人間が
自分勝手に生きちゃ?
そう生きていいのは
誰とも繋がってない人間だけ
貴方は私と繋がった
もう独りでは生きられない
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「(独りではない・・・)」
思い出す
精神障害者として暮らし
人と関われなかった
孤独な日々を
ヴィダ「(これが・・人と繋がるってこと?
独りではないって・・こと?)」
ヴィダ「(なんだ・・・)」
・・・こんなに
・・・うれしいことなんだ
眼前に差し出されたケーキを
口を開き食べた
ミレイ「うん よくできました」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「どう?
何十年振りのケーキの味は?」
ヴィダ「・・・クッソ甘い
スイーツ好きなやつ味覚確かか?」
ミレイ「わ~ぉ
敵を増やしそうな発言」
ミレイ「貴方ってさ
それらしく言えば
なんでも言う事
聞いてくれそうだよね?
ヴィダ「・・・」
ミレイ「大嫌いなケーキも食べてくれるし」
ミレイ「どうしよう
簡単にだまされてくれる
からかいがいがある~
次は何をしてもらおうかな~」
ヴィダ「だましたのか!?」
ミレイ「さあ 次は
どんな罠にハメられたい?」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「そんなムスっとした顔してないで
遊びに行きましょう?」
ゲームセンターに行き
雑貨屋を見て周り
恋愛映画を見て楽しんだ
帰り道
ミレイ「あ~ 楽しかった~」
ヴィダ「・・・」
ミレイ「どうしたのかな?」
ヴィダ「・・・いや
何十年ぶりだろうって思って
こんな”人らしいこと”したのは」
ミレイ「そっか
精神障害者で家で寝てる生活が
当たり前になってたもんね」
もう二度とできると思っていなかった
人みたいな生活を
誰かと町で遊べると言う事も
ミレイ「ねえ?聞いていい??」
ミレイ「貴方
義務教育も行けなかったんだよね
精神障害者で身体が悪くて」
ミレイ「社会生活もできないでいる」
ミレイ「人と関わって生きられなかった」
ヴィダ「・・・そうだけど」
ミレイ「だから気づけなかったのかな?
ヴィダの前髪を上げ
上目使いに顔を覗き込む
ヴィダ「な・・なに?」
ミレイ「・・・貴方が
あり得ないほど
イケメンだってことに?
ヴィダ「・・・え?」
ミレイ「貴方
学校とかに行ってたら
女の子が放っておかなかったでしょうね
イケメン過ぎて」
ミレイ「聞いていい?
女の子と
手をつないだことある?
・・・ないけど
キスしたことある?
・・・ないけど
じゃあさ
シたことある?
何を聞いてるの!?
ミレイ「だったらさ
全部 奪わせてよ?
ヴィダ「何を仰ってるの!?」
ミレイ「こんな
からかいがいのある
超優良物件
放っておくわけないじゃない
しかも超ウブつき
私が養えばいいんだし
食べさせてよ 全部ちょうだいよ~」
ヴィダ「セクハラで訴えますよ!?」
ミレイ「訴えてもいいけど
困るのは貴方じゃないかな~」
ヴィダ「・・・う」
もうミレイさんの
ヘルパーとしての介護なしじゃ
生きていくのに困難な
身体にされている・・・
ミレイ「じゃあ まず
手のひらを上にして
そっと差し出した
ヴィダ「・・・あの?」
ミレイ「・・・
手を繋ごう?
星空のした歩こう?
ミレイ「まずは
貴方の
女の子と手をつなぐ
初めてをもらおうか?」
ヴィダ「・・・」
手の平に手の平を重ねた
ミレイ「うん よくできました
手をつないで歩く
ミレイ「ね~ 楽しかった?」
ヴィダ「え?」
ミレイ「今日 街に出て楽しかったって
聞いてるの」
ヴィダ「楽しかったけど」
ミレイ「じゃあ つぎ
どこ行こっか?」
ヴィダ「え!?」
ミレイ「ほら
リハビリは続けないと
意味ないし~」
ヴィダ「(・・・リハビリなのか これ?)」
ミレイ「じゃあ 考えておくね
つぎ あそ・・リハビリに行くとこ」
ヴィダ「(・・・いま 本音が)」
家に着き解散した
布団の中で目を閉じ
今日 過ごしたことを思い出す
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・これって
・・・リハビリではないよな??




