1話 求める物は普通
失望しました
もう関わらないでください
ヴィダ「・・・
こっちが先に
ひどい目に合わされたんだが?
ヴィダ「・・・人間ってめんどくせぇ」
ヴィダ「いや 僕が悪いのか
何十年も人と関わらなさすぎて
普通の人の考え方と
普通の人の心の感じ方を
養うことができなかった
ヴィダ「・・・
今さら
”人になれるのだろうか?”
翌朝
手話サークルに通う最中
女の人と ぶつかった
倒れてる相手を ただ見つめる
「・・・」
「普通 手を差し伸べて
起こしてくれてもいいんじゃない?」
ヴィダ「・・・
普通ってなんでしょうか?
「・・・え?」
ヴィダ「すみません
”普通がわからないのです”」
手を差し伸べ
引っ張って起こした
そのまま部屋に入る
「あの人も手話サークルの?」
気を悪くしないであげて
「え?」
その理由を話すから
部屋に入る
その理由を告げる者は手話で語る
ヴィダは
うつ病
双極性障害
統合失調症を
患っていた
「・・・え?」
今では
自閉症スペクトラムらしいが
担当医が代わる度に
障害名も変わるから
何が本当か
わからないらしい
このサークルに参加したのも
社会に復帰・・・いや
”人になりたい”
それが動機らしい
「・・・」
あいつは義務教育すら
受けられなかった
て
学校にすら行けていないし
社会生活もできていない
「(・・・)」
”普通を知らないんだ”
そのため苦悩してるし
人とトラブルになることも多い
あいつなりに
なんとかしようと
足掻いてる
悪く思わないであげて?
「・・・あの?」
使う目的が違うけど
手話って便利だよね
言いにくい事を
手話にしてしまえば
わからない人は
わからないし
「・・・あの?」
ここに居るサークルの人
・・・みんな手話わかりますよ?
ガシェ「・・・あ」
「みなさん?
今の見て(聞いて)ましたか?」
手話で返すまでもない
ただ みんな うなずく
「そうだよね・・・」
ガシェ「・・・すまん ヴィダ」
他の部屋
手話で
『貴方は
なぜ手話を始めたのですか?』と
聞かれる
ヴィダ「・・・
正直に答えると
”人になりたい”なのだが
ヴィダ「手話歌を
してみたかったからです」
ヴィダが質問する番
ヴィダ「(・・・何を聞けばいいんだ)」
あまりにも人と関わらなさ過ぎて
こういうことすら苦難する
困った末
聞かれた事を返してみた
相手は首をかしげ
不思議そうな顔で手話で答える
「耳が聞こえないから」と
ヴィダ「(・・・ろう者(聞こえない人)
なんてこと聞いてしまったんだ)」
ヴィダ「(・・・僕はやっぱり
人としての心が壊れてるんだ)」
ヴィダ「(人としての復帰どころか
”人になれた経験がない”」
ヴィダ「(・・・)」
ヴィダ「・・・
・・・人と関わるべきではなかったんだ
やめよう この教室
自宅のチャイムの音がする
人と会いたくない
障害がひどすぎて
玄関を開けて人と会うことすら
ひどい拒否反応が出る
ごめんなさい
出ることもできません
チャイムの音が何回も押されひどくなる
ヴィダ「・・・さすがに
・・・出るか」
玄関を開けた
ヴィダ「・・・なんで?」
「精神障害者手帳 落としたでしょ?
ガシェさんに貴方の家を聞いて
届けてあげようかなって」
ヴィダ「・・・」
・・・精神障害者だと知られたくなかった
それだけで僕への態度が変わるだろう
「さて
貴方の家に入らせてもらうか?」
ヴィダ「・・・
・・・え?
ヴィダ「ちょっと待って!
いきなり人の家に来て
何を言って!?」
部屋に入られる
一言で言うなら汚部屋
「やっぱりね
貴方の障害を考えると
これが普通だから
片付けてあげよう
ヴィダ「!!!!」
ヴィダ「やめてえ!
っていうか自分の部屋を
人になんて!?」
「大丈夫
私は理解ある人だから♪
「だって物によっては
珠玉の作品 ピュアな恋愛ストーリー
それって大事な思い出になるんでしょ?
そんな大切な物 捨てやしないって」
ヴィダ「(察しられている!)」
「さ~って
どんな物が出てくるかな~♪」
ヴィダ「やめてええ!」
・・・結局 掃除されてしまう
女性なのに何故か理解はあって
”アレら”は捨てられずに済んだが
「意外にストーリー物 多かったね
物語が好きなのかな?」
ヴィダ「・・・全部 見られた」
「大丈夫
・・・女は もっと
エグい物 見てるから
ヴィダ「・・・え」
「例えば
シ〇〇の男同士が
〇で求めあって
入るとこに ぶっさ
ヴィダ「もうやめてええ!」
「女も 男の見てる物に
似たような嫌悪感 持ってるからね?」
ヴィダ「・・・すみません」
「あと貴方 髪の毛パッサパサ
洗えてないでしょ?」
ヴィダ「俺は お湯洗いなんだ!」
「なんで?」
ヴィダ「シャンプーやりすぎると
ハゲるって聞くし!」
「あ~
洗浄力強すぎるの使って
しっかり洗い流さないと
ハゲるって聞いたことあるような」
「ここで それを使ってない
シャンプーがありまして」
ヴィダ「なんで持ってる!?」
お風呂場どこ?
お風呂
「そういうの使ってない
シャンプーを使う
お風呂の温度は41度と言う人も居るけど
そんな温度で髪の毛を洗ったらダメージになるから
38度に設定しよっか
ただ ゴシゴシ洗えば良いわけじゃない
指の側面で優しくなでるように
あと前も隠さないでいいよ?
見慣れてるから
ヴィダ「どういうこと!?」
・・・洗われてしまった
部屋
ヴィダ「ドライヤーやめてえ!」
「はぁ?」
ヴィダ「毛根が乾燥すると
ハゲが進行するって聞くから!」
「貴方の その考えだと
ドライヤー使ってるすべての人間が
ハゲるんだけど?」
「どこで得た知識?」
ヴィダ「・・・
・・・4コマ漫画
「・・・」
「・・・貴方は
おかしな知識を全消去しようか?
すべて おわって
ヴィダ「部屋の全部を見られ
シャンプーされてドライヤーまで
ハゲる・・そして大事なとこも・・・」
「私のサービスどうだった?」
ヴィダ「だいたい お前なにが目的で!?」
「私は こういう者」
ヴィダ「・・・
・・・ヘルパー?
「私を雇わない?」
ヴィダ「でも・・お高いんじゃ・・・」
「自閉症スペクトラムの視覚過敏で
文章 見るの困難だったりする?
この知識 知らないのかな?」
「貴方の障害の事情だと
0円でヘルパー雇えるけど」
ヴィダ「・・・え」
「・・・
私と契約しない?
翌朝
回想
そんな人間
居るわけないじゃん?
ヴィダ「・・・
・・・居ちゃ・・悪いかよ?
回想 終了
自宅
・・・
あの時 やらかしてしまったこと
トラウマになってるな
そうだよ
”普通の考え”なら居るわけないよ
・・・でも
・・・居ちゃ・・悪いかよ
ヴィダ「・・・」
また朝 目覚めると始まるアレ
原因不明の頭の重さと神経過敏
これが和らぐまで何もできない
朝ご飯を用意することすらも
この前は和らぐまで6時間
かかったっけ
腹減ったな・・でも つらくて
何もできない・・・
耐えるしか・・・
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・
良い匂い?
「あ?起きたの??」
あぁ ヘルパーと契約したんだっけ
この悩みを言ったら
朝ご飯つくってくれるって
あれ 本当だったんだ
作ってくれた朝ご飯を食べる
ヴィダ「・・・」
「おいしい?」
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・もう
・・・我慢しなくていいの?
「え?」
ヴィダ「障害がひどくて
自分で朝ご飯すら作れなくて
腹減って我慢して耐えて・・・」
ヴィダ「・・・もう
我慢・・しなくていいの・・・?
「・・・」
「・・・うん
私が毎朝つくりに来てあげる
ヴィダ「・・・」
「ちょ!泣いてるの!?」
ヴィダ「・・・うれしくて」
「・・・そっか」
テレビを見る二人
「この主人公がイケメン過ぎて
そこで そのプレゼントを選ぶの
尊敬するわ」
ヴィダ「でも冬の日の寒い場所で
彼女を待たせるのはあり得ないけど
喫茶店とかに居させればいいのに
「そっか そういう考えもあるのか」
ヴィダ「この主人公 紳士的で
気配りできて逆ナンされるほどの
イケメンなのに
なんでこんな自分を卑下してるのか謎」
「わかるなぁ
過去に何かあったのかな?」
恋愛物のアニメで盛り上がる
ヴィダ「(・・・話も趣味も合う)」
「あ そこの本棚にあるのとって?」
ヴィダ「ヘルパーが精神障害者を
コキ使うなよ?」
「貴方の近くにあったから」
ヴィダ「(・・・
こんな誰かと
会話したの
いつ以来だろ
ヴィダ「(・・・もう
人と関わろうとも思わなかったのに
・・・壊れすぎて
「ねえ?」
ヴィダは
どんな子供だった?
ヴィダ「・・・
(・・・やめろ)
「聞いてみたくて」
ヴィダ「・・・
「居るわけないじゃん」
ヴィダ「(・・・また言われる
・・・やめろ・・絶対に言うな)
「教えて?」
ヴィダ「・・・
・・・もう・・どうにでもなれ
ヴィダ「・・・子供の頃から
・・・精神障害者だったんだ
「・・・」
ヴィダ「義務教育すら通えてない
通えるような身体じゃなかった
そして人と関われなかったためか
人としての普通の考え方も
人としての普通の心の感じ方も
ヴィダ「・・・できなくなってた」
気づいたら取り返しが
つかないくらい壊れて
皆ができる当たり前の事が
できなくて
「・・・」
ヴィダ「・・・子供の時から
寝たきりみたいな生活を送ってる」
ヴィダ「(・・・なぜ言った・・また言われる
・・・そんな人間
居るわけないって
どんな子供だった?
って聞かれても
わからない
学校にすら行けなかったから
評価してくれる人が居なかった
ヴィダ「(やめろ また言われる)」
ヴィダ「子供の頃から この部屋で
寝たきりになってるのが当たり前で」
・・・また・・言われてしまう
ヴィダ「人と関われて生きられた
ことがないんだ」
「・・・」
ヴィダ「(・・・言わなきゃよかった)」
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・え」
ヴィダの顔を抱きしめる
ヴィダ「ミレイさん?」
ミレイ「・・・
・・・つらかったね
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「(・・・ちがう
いつもの あの言葉でも
テンプレの対応でもない)」
涙交じりのミレイの声が
さらに涙交じりの声になり
もっと強く抱きしめる
ミレイ「・・・
・・・悲しかったね
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・どうして
”本気で”泣いてくれてるの?
ミレイ「・・・」
ミレイ「・・・なんでだろうね」
回想
孤児院
大人たちも子供たちも
楽しそうにしている
そこで独りだけ泣いてる
子供以外わ
そこで泣いてるのに
誰も見向きもしない
そこで悲しんでるのに
誰も気にかけない
そこで寂しがってるのに
誰も
存在しないかのように
少女「・・・」
回想 終了
「・・・」
「貴方は私と似ているのかも」
「・・・世界って
・・・優しくないよね
ヴィダ「・・・そうだね」
ミレイ「ごめんね わざとなんだ
どんな子供だったって聞いたの
”何も無いって”わかってた」
ミレイ「でも
それを言葉にして伝えられたら
貴方は
つらいって悲しいって
言う事ができるから
ヴィダ「・・・」
ミレイ「・・・吐き出させて
・・・あげたかった」
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・初めてなんだ
悲しいって伝えて
泣いて感じてくれた人
ミレイ「・・・そっか」
ミレイ「・・・楽になれた?」
ヴィダ「・・・
・・・うん・・すごくね
帰る時間
ミレイ「私が居なくても泣かないように」
ヴィダ「・・・子供じゃないんだから」
ミレイ「貴方は
もっとリフレッシュした方が良いかもね
今度
街に出かけてみよっか?
ヴィダ「・・・え?」
「精神障害がひどくて
倒れそうになっても支えてあげるよ?
そのくらいの対応できるし」
ヴィダ「・・・ヘルパーって
そこまでしてくれるの?」
ミレイ「プライベートで
どこかに行こうって言ってるの」
ヴィダ「僕と居ても つまらないよ?
人と関わって生きられなかったから
人との 付き合い方なんて知らない」
ヴィダ「楽しませてあげることも」
ミレイ「じゃあ 練習ってことで」
ヴィダ「・・・うん」
ミレイ「・・・フフ
また 明日ね
ヴィダ「・・・うん」
また 明日
帰って行く
ヴィダ「・・・」
ヴィダ「・・・なんだろう
この感情
・・・初めて・・感じる




