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いぐのーぶる  作者: 紫雨
孤児院編
4/4

File.3 はりぼて。

――きっと、悪い夢。悪い夢だったんだ。



廊下に掛けられた絵も、走り回る子供たちも、何ら変わりない。


大広間で、長ーいテーブルを子供たちが囲む。いつもの風景。一人一個ずつの丸いパンと、あったかいスープ。食いしん坊達は待ちきれずにシスターの目を盗んで口に詰め込む。



「神に祈りを。」


子供たちは一斉に手を組み、神父様の一言で食事は始まる。


他愛のない日常。



きっと、きっと悪い夢。そうに違いない



――のに。手が、震えてる。



「ラプ?食わねぇなら貰っていいか?」


隣の食いしん坊。もう食べ終わったらしい。


「良いよ。要らない。」


吐き捨てるように言って、そそくさと立ち上がる。




「そういえば、今日、リリーちゃんいないねー。」


「ほんとだ~、どうしちゃったんだろう。」



ふと、そんな会話が聞こえてきた。……リリー?




――そういえば、あの部屋で見た見た女の名前って……?



歩き回っていた神父が、不意に立ち止まった。


「リリーちゃんは、急遽、今朝ここを離れることになってね。失礼、伝えてなかったね。」



「え~!?お別れの言葉も言ってないのに!」



「ホント、急だったんだよ。たまたま遠くの町から来た親族が孤児院を訪れてね、そのまま着いて行っちゃったんだよ。」



「さよならの一言も無いなんて酷いよ~。」



……たまたま、だよな。きっとそうだ。急にココを離れることになるのは珍しいことじゃない。こと女子においては、よくあることだ。



「明日は神誕祭(しんたんさい)なのにね~。」


 神誕祭。春夏秋冬、季節の変わり目に行われるお祭り。そこで、神父様は特大の「キセキ」を起こす。不作の年は、辺り一帯の枯れている作物を蘇らせたり、病が蔓延したときは、村の病床者を一斉に治したり、という具合だ。





――ラプは、異常に記憶力が良かった。



おでこに手を当て、じっくりと思い出す。



……孤児院に入って4回、神誕祭を経験した。



そして、神誕祭の準備期間の度に、女子が1人、必ず孤児院を出ていく。



それも、毎回神父の席に一番近い右端の席。



――アレは……悪い夢?







――()()()()()





「む?どうしたラプ君?また、頭痛かい?シスター達からよく聞くけど……?」


黙れよ、神父。白々しい。厭味(いやみ)ったらしく入口のドアをバンッと閉めた。














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