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Prologue-Oath of the Silver Wings-#001

「軍に家族を、賊に恩人を奪われた俺は復讐者として生きる」

なんてよくよくありそうなタイトルにしようかと一瞬悩みましたが、あまりにもテーマとかけ離れてしまうし、タイトル詐欺過ぎるために辞めました。笑


長編作品となりますので、どうぞ気長にお楽しみください。

 ーこの度、我らオースラ軍は、オースラの大地を汚す忌まわしき獣たちの掃討に成功した。これによって我らオースラの民、そして超獣によって住処を奪われた者たちが安息できる地を確保することができたのである。ー


 西暦2025年某日、オースラの首都キャンベリアにある国会議事堂の広場にて式典が行われており、オースラ国防軍司令官のオルマンは集まった民衆を前に平和と安寧を高らかに宣言をする。


 国会議事堂の広場が、歓声に包まれる中、少し離れた場所で二人の男性はボソボソと会話をする。


「あのオルマンとかいうの、よく言うぜ。何が獣だ…お前らがやった事は、ただの人殺しだろうが!」

「やめろ、トムヅコフ。誰かに聞かれると良くない。」

「分かっている…分かっているさ、リディック。だが…」

 トムヅコフは俯きながら拳を硬く握りしめる。


「俺は彼らに、顔向けできない…この恩義を、どうやって…」


トムヅコフの静かな叫びを遮るかのように、オルマンは再度、群衆に向けて声を放つ。


「我ら人類は、先の超獣大戦に敗れ、多くの同胞たちを失った。しかし、この豊かな大地オースラにて、超獣らに対抗する術を学び育ててきた…今こそ、超獣らを打倒し、我ら人類がこの地球の覇権を握ろうではないか!」


ーうおおおおおぉ!!!!ー

ーオルマン様万斉!オースラ軍万斉!我ら人類に栄光あれ!ー


更なる歓声のなか、トムヅコフは悪態をつく。

「けっ、何を暢気に…」

「トムヅコフよ、お前も超獣に故郷を奪われたのではないか?」

「オルマンもオースラ民も分からねえんだ。超獣がどんなに恐ろしいかをな…核兵器だって超獣には効かねぇ。」

「おいおい、それは本当か?」


リディックはトムヅコフの言葉に動揺する。

核兵器による攻撃をもってしても、超獣を倒すことができないのであれば、即ち「倒すことは不可能」だと言っていることに他ならないからである。


「じゃあ、どうやって超獣の脅威から逃れられるっていうんだ!」

リディックが声を荒げながら問いかけるが、トムヅコフは冷静に答える。

「逃れられない。だから、来ない事を祈る事しか出来ない。というか、これまでこの地に超獣が来なかった事自体が奇跡だ。」

「そうか…」



その日の夜、トムヅコフとリディックの二人は、キャンベリアにある飲み屋にいた。

式典があったからか、店内はその式典に参加した軍人であふれており、多くの者が、ボリジアン討伐の武勇や超獣への対抗の手段についてを語り合っていた。


「…あまりいい気分じゃないな。」

「だな。店を変えよう。」


二人は、街角の人気の少ないバーへと入る。

「あら、リディックちゃんじゃない?彼はお友達?」


恰幅の良い中年男性が、リディックの尻に手を当てながら二人を歓迎する。

「ケディラさん、こいつは俺の親友です。」

「あ、はい。トムヅコフです。」

「あら、可愛い子ね。私、ケディラっていうの。」


まるで当然かのように尻を触られたトムヅコフは、顔を引きつかせる。


(おい、リディック、ここって…)

(トムヅコフ、大丈夫だ。ここだったらなんでも話せる。)


ひきつった顔が戻らないトムヅコフをなんとか説得して、二人はカウンター席に着く。


「あなた達はニュース見た?オルマンさんの演説。」

「ケディラさん、広場のはずれで僕たち聞いていたんです。」

「あら、そうなのね。でも超獣になんて本当に勝てるのかしら?」


首をかしげるケディラに、トムヅコフはウイスキーを勢いよく飲みてから答える。

「超獣には絶対に勝てません。」

「あら、そうなの?」

「はい。僕の故郷はウクレイです。」

「ああ、そうだったのね…」


東ユーロにあるウクレイという国は、超獣によって国土が凍結した。何ら比喩表現ではなく、事実である。当初は存在が疑われていた超獣であったが、凍土と化したウクレイの大地が報道のカメラに移されてから、全世界で超獣の危険性を理解したと言えるだろう。


「アレに…対抗できるモノなんていないでしょう…」

「そりゃそうね…」

「オースラに現れない事を祈ることしかできません。それに…」


トムヅコフはボリジアン掃討作戦を決行したオースラ軍に対する不満を述べる。


「お客様にもいらっしたわ。ボリジアンの方…もういらっしゃらないってことは、そういうことわよね…」

「ボリジアンの方にお世話になったんです。何も知らないこの地で、彼らはいろいろな事を教えてくれました。何故、こんなにも豊かな自然、大地があるのかも…それなのに!」


トムヅコフはテーブルに拳を突き付ける。

店主のケディラとリディックは涙を流しながら怒りの感情をぶつける彼を、見守る事しかできなかった。






その日の深夜、オースラ最大の都市であるシドニアに、突如けたたましい高音が鳴り響いた。

その高音は、ガラスを砕き、建物を揺らした。


建物内にいた者たちが何が起きたのかと外に出るが、そこには耳を塞ぎながら倒れた人達が多くいたのである。



ーおいおい、何だ今の音は?ー

ーくそっ、耳鳴りが止まらない!ー

ーお母さん!お母さん!ー


街中が大騒ぎする中、一人の男性が唖然としながら港の方に指を指す。


「おい、何だよ…あれ…」


そこには街中のライトアップによって輝きを見せる、巨大な鳥がいたのである。




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