表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/262

(十)新商品を売ろう その五・発明、サボン玉!

■この部分からの登場人物

・お梅婆さん:「いろは」のオーナー。裏世界も含め、色々な商売をしているやり手の婆さん。

「さて…… と。じゃあ、アイデアがある人は?」


 凛が仕切ると、ひさ子が口火を切った。


「そうね・・ この商品の長所は、『ぬるぬる』にあると思うのよ。だから、そこをアピールして吉原(よしわら)とかに売り込みに行くのはどう? 具体的な使い方はね……」


「「却下」」


 言い終わる前に、ひさ子案は凛と藤兵衛に即座に却下される。


「なによ~。まだ、何も言ってないじゃない」


 ひさ子がぷんすか怒るが無視し、つづいて藤兵衛が案を出す。


「この液体、かなり滑るから防犯向けにはどうだろうか? 例えば、敵に追われた時に、こいつを()いて転ばせるとか……」


「……敵に追われている人なんて、数えるぐらいしかいないんじゃない?」


 藤兵衛案はあまりにもニッチ過ぎるという事で、却下となった。


「そう言うあなたは、何か案はないの?」


「そうですね…… 私は料理に使えればな、と思って。調味料に使われれば、数もそこそこ出るし」


「「「なるほど」」」


 食い意地がはった凛らしい案であった。それならばと、早速調理をしてみた。


「とりあえず、煮物に使ってみましたけど……(汗)」


「……凄いわね、これ(汗)」


 凛が手に持った鍋を覗き込んで、ひさ子は顔を引きつらせる。芋の煮物のはずなのだが、洗い汁の影響で全体的に泡立ち、かつ芋がぬらぬらとぎらついていた。はっきり言って、美味しそうには見えなかった。


「ま、まあ、見た目はよろしくないけど、食べてみると案外おいしいかも? ……ということで藤兵衛さん、味見お願いね」


「やっぱり……」


 目の前に突き出された鍋を見て、藤兵衛は小さくため息をつく。そうして、おそるおそる口に運ぶと……


「ぶ~~~~!!」


 やはりと言うか、盛大に吐き出した。


「ちょっと! 汚いわね!」


「しょうがないだろ! これ、この世のものとは思えん味だったぞ!」


「やっぱダメか…… うん?」


 ふと玉次を見ると、目を輝かせて藤兵衛を見つめていることに凛は気付いた。


「どうしたんですか、玉次さん?」


「お、おい…… 今、口から泡を吐き出したよな?」


「そりゃあ、泡を食ってる感じでしたからね」


 藤兵衛はまだ口から泡を出している。


「これだ、これだよ! これを工夫して、口から泡を出す遊び道具にすれば、売れるんじゃねえのか? こりゃあ逆転満塁放夢乱だ!!」


「……はあ」


「放夢乱?」


「いいから、だれか水をください」


 三人は玉次の言うことがよくわかっていなかったが、この瞬間、世にいう『シャボン玉』が考案されたのだった。その後玉次は工夫を重ね、中が空洞の茎の先端に洗い汁をつけ、息を吹くことで泡玉を飛ばすことに成功する。商品名も異国風にした方がウケるだろうと、『サボン玉』と命名した。


 これを売り出したところ、瞬く間に子供たちの間で大人気となり、玉次は『サボン玉屋』として大成功を収めたのであった。



 ◇



 玉次がサボン玉を売り出してから、一月が経過したころ。


「ありがとう。凛ちゃん、藤兵衛さん。おじさん、夢が叶ったって大喜びしてたわ。ぎっくり腰も落ち着いたみたいだし」


「いやいや。結局、サボン玉を考え出したのは玉次さんだったし、私たちは何もしてないわ。ね、藤兵衛さん」


「ああ。……今回は勉強になったよ。物を売ることの難しさが、身に沁みてわかったよ」


 『よろづや・いろは』で、せりが凛、藤兵衛と会話を交わしていた。


「ほう。あんたにも商売の大変さがわかったってことかい」


 とそこへ、ここの女主人であるお梅婆さんが話に加わる。


「ええ、お梅さんがいかに凄い人なのかがわかりましたよ。という事で、これをどうぞ」


「? なんだい、これは?」


 藤兵衛が差し出したのは、一見ふつうの煙管(きせる)だった。


「これは俺からの贈り物です。尊敬の念と、日頃の感謝の意味も込めて、です」


「へぇ、あんたが贈り物かい。初めてじゃないかい?」


 満更でもない様子で、お梅婆さんは煙管を受け取る。


「実はこれは新しい商品でして、吸うんではなく息を吹くんですよ。ささ、試してみてください」


「そうなのかい? ま、やってみるさね」


 言われた通りに息を吹くと、サボン玉が凄い勢いで、もこもこと飛び出してきた。


「な、なんだいこりゃ! 変な玉が出て来たよ」


 泡を見て、お梅婆さんは腰を抜かさんばかりに仰天する。


 実はこの煙管は、藤兵衛のイタズラであった。日頃こき使ってくれるこの婆さんに、文字通り一泡吹かせたいと仕組んだのであった。あまりの驚きぶりに藤兵衛はもちろん、横で見ていた凛とせりまでくすくすと笑った。


「どうですか? お梅さん? これ、(ちまた)で評判のサボン玉っていうやつなんですよ。気に入りました? ……はっ!」


 藤兵衛は大笑いしていたが、途中で表情が固まってしまう。というのも、お梅婆さんの顔つきがみるみる険しくなったからだ。


「藤兵衛…… あんまり、年寄りをからかうんじゃない!!」


「あ、いや、ちょっと! 軽い冗談じゃ…… うげえぇ!」


 冗談で済まそうとしたが、時すでに遅し。藤兵衛は、お梅婆さんにボッコボコにされたのであった。


 ~新商品を売ろう・完~ 次話へとつづく

 最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 この話は展開が上手く進んだと、自画自賛している作品になりました。思いがけないところから、ヒット商品が生まれる…… この小説にも起こればなあ、なんて考えています。


 面白かったら、感想やブックマークをして頂けると筆者のモチベアップになるので、よろしくお願いします。 それでは、次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ