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(五)えれキテル! 平賀源内・その一 エレキテルおじさん

江戸の著名人と言えば平賀源内。そんな彼を題材に書いたコメディです。(六部構成の予定です)


■この話の主要人物

(とう)兵衛(べえ):主人公。隻眼の浪人で、かつて「白光鬼」と呼ばれた盗賊。傘張り仕事を生業としている。

(りん):茶髪の豪快&怪力娘。「いろは」の従業員兼傘張り仕事の上役、兼裏稼業の助手。

・お梅婆さん:「いろは」のオーナー。裏世界も含め、色々な商売をしているやり手の婆さん。

平賀(ひらが)源内(げんない):自称・天才発明家のおっさん。

 とある晴れた日のこと。傘張りを主たる生計(たつき)としている隻眼の浪人・(とう)兵衛(べえ)は、出来上がった傘を納めるために『よろづや・いろは』を訪れた。


「あ、藤兵衛さん、お疲れ様。傘、出来上がったのね」


 傘を受け取ったのは(りん)という十六、七ぐらいの江戸らしからぬ茶髪の娘で、彼女は傘張り仕事の管理監督者であり、藤兵衛の裏稼業の助手でもある。


 藤兵衛が作った傘は品質が良いことから顧客の評判が高く、ここ最近は注文数が増えていた。とはいえ、作る数を増やすとどうしても質が下がってしまうので、丁度いい塩梅(あんばい)に保つのが監督者である凛の腕の見せ所であった。凛は今後の数について相談しようと藤兵衛と一緒に腰掛けると、店の奥から気の強そうな婆さんが現れた。


「凛。ちょいとお使いを頼んでもいいかい? おや、藤兵衛も一緒かい」


 この婆さん、名は(うめ)と言って色々な商売に手を出している遣り手である。そして凛の雇い主であり、藤兵衛にとっても傘張りと裏の仕事を回してくれる、いわば生命線を握っている存在であり、つまりは二人にとって頭が上がらない存在であった。


「それなら丁度いい。二人でこれを持って行ってくれないかい?」


 そう言って手渡してきた物は、なんとも大きな風呂敷であった。


「はい、構いませんけど…… どちらへ?」


源内(げんない)のところさ」


「ゔ…… そ、そうですか」


 凛の反応は明らかに嬉しそうではなかった。しかも、同僚のえり・せり・(らん)の三人娘も行き先を聞いたとたん、『ご愁傷様です』というような目線を送ってくる。

 事情がよくわからない藤兵衛は、なんとなしに聞いてみた。


「なにかあるのか? そこは?」


「あるというかないというか…… あの人、苦手なのよね」


 それを聞いた藤兵衛は、


(気難しい人なのかな?)


と思ったぐらいで、さして気にかけることなく凛と一緒にお使いに出掛けるのであった。



 ◇



 向かう道中、凛は訪問先の『源内』という人物について語った。


「え~と、源内さんの姓は平賀(ひらが)で、『平賀源内』で姓と名になるのよね。自分で自分のことを偉大な発明家だと言ってるんだけど、よくわからないものを作っては一騒ぎ起こす人なの。人となりも…… まぁ、ちょっと変わった人で、周りの人は『エレキテルおじさん』って呼んでるわ。きっとその風呂敷の中身は発明品の材料だとか、そんなんじゃないかしら」


「ふ~ん」


 話す凛のテンションは明らかに低い。おそらく、過去に迷惑を被った事があったのかもしれなかった。だが藤兵衛は、


(変わった人らしいが、どんな人物なんだろう?)


と、逆に興味が湧いていた。


 『いろは』から四半刻(しはんとき)(約三十分)ほど歩くと、(くだん)の人物が住む屋敷に到着する。それほど大きくはないが、庭付きの小洒落た感じのする屋敷であった。


 ただ、屋敷内外のあちらこちらに、人形のようなものや金属で出来た箱等、何に使うのかよくわからない物が置いてあった。


「源内さ~ん。いろはからのお使いで来ました、凛で~す」


「…………」


「もしも~し、源内さ~ん」


「…………」


 凛が何度か呼び掛けるが反応が無い。留守かと思い、裏手に回って竹組みの囲いの隙間から中を覗き込むと、三十代半ばぐらいの瓜実顔(うりざねがお)をした男が、箱を前にして何かごそごそとやっているのが見えた。


「なんだ、いるじゃない」


 男はこちらに気付かずに、作業に集中している。


「来たでおじゃるよ。来たでおじゃるよ。これで、こいつをこうすれば……」


 ぶつぶつ言いながら男が箱から出ている棒をいじくり回していると、突然、


 ____ビリビリビリバリィ!!


「んげげ! あびょ~~~~!!」


 何かに痺れたようで悶絶、絶叫する。


「……あの人が源内さん。変わってるでしょ? (汗)」


「う~む。確かに『えれ~キテる』おっさんだな……」


 二人は暫くの間、悶絶し続ける源内を眺めるのであった。


 つづく

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