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(四)昔の女!? ひさ子現る・その七 お庭番衆

■この部分からの追加人物

・お庭番(にわばん)(しゅう):将軍の親衛隊。自称エリート集団。

 小休憩で体力が回復した三名は、城内をどんどんと突き進む。


「お宝は、あの建物の中よ」


 中庭へ出たところでひさ子がある建物を指さす。


「……あそこか」


 見上げると、天守閣がある建物だった。


「え、ここって将軍様がいるところじゃ……」


 凛が驚いていると、


 ____サクッ


ひさ子の足元に()(ない)が突き刺さった。


「……どうやら来たわよ、藤」


「!!」


「え? 何が?」


 ひさ子の言葉に藤兵衛は身構え、凛はうろたえる。


「は~はっはっは」


 次いで、間も置かずに高笑いが聞こえてきた。


「そこまでだ、賊徒ども。死にたくなければ、とっとと逃げ出すんだな」


 声のする方を振り向くと、そこには五体の人影が立っていた。


「……もっとも、我ら『超絶 (すご)(にん)集団・お庭番衆』から逃れることができたら、の話だがな!」


 先頭の人影が決め台詞っぽい言葉を放つと、後ろの四体も決めポーズを取る。男三人、女一人、正体不明一体の集団であったが、見ていて痛々しい人たちであった。


「「「は? 超絶凄忍??」」」


 藤兵衛、ひさ子、凛の三人は理解が追いつかず、ポカンとする。


「む? 逃げ出す気配が無いな、こいつらは」


「ふん、居直り強盗ってやつね」


 彼らはその様子を勘違いしたのか、藤兵衛たちの沈黙を挑戦と受け取ったようだった。


「そちらがやる気ならばしょうがない、相手してやろうじゃないか」


 先頭の頭領と思わしき男が、勝手に話を進めていく。


「では、美流陀! まずはお前がいけ!」


「おう!」


 すると、美流陀と呼ばれた男が前へ進み出てきた。その男は背丈が藤兵衛より若干高いぐらいである。

 美流陀はいきなり机のような台を前に出し、次いで上着を脱ぎだし上半身裸になる。そして、ゆっくりと右肘を台の上に置くと、筋肉を隆起させながら、


「男ならぁ、筋肉で勝負だぁ!」


と、言った。


 この行動に三人は呆気に取られたが、要は腕相撲で勝負を挑んでいるのだろうと理解し、相談の結果、凛が立候補をした。凛は机の前まで進むと腕まくりをし、美流陀と手を合わせる。


「女だけど、受けて立ってやるわ」


「ふん、『ちんちくりん』な奴が出てきたか。言っておくが、女だからと言って、俺は手加減せんぞ?」


 圧をかけるために言ったつもりなのだろうが、この何気ない『ちんちくりん』という一言に、凛はカチンときた。


「なん…… ですって?」


「ちんちくりんを、ちんちくりんと言ったまでだ、女」


 美流陀はまたしても禁句を言う。後ろの方では、


「馬鹿ね。美流陀は里一番の力持ちなのよ」


「あの娘、下手をすると死ぬな」


と、嘲笑が起こっていた。


「大丈夫なの? あの娘?」


「まあ見てなって、お前も驚くぞ」


 一方、凛の怪力を知らないひさ子は心配していたが、藤兵衛は努めて平静だった。


「二人とも、準備はいいわね?」


 調停役となったお華という女性が、二人を交互に見る。


「おう!」


「……いいわよ(怒)」


「では…… 始め!」


「おりゃぁああああ!!」


 ____バアァン!!

 ____ボギィイ!!


 開始直後、かけ声とともに凛の剛力が炸裂する。美流陀の右手は速攻で台に叩きつけられると同時に、骨が砕ける鈍い音がした。


(((((…………え“? (汗))))))


 藤兵衛以外の面々は、信じられない光景を見て一瞬凍りつく。


「……なん、だって? そんなはずはなぁい! 俺の筋肉が敗れるなどぉ!」


 負けた美流陀も信じられなかったようで、今度は左腕で再勝負を申し込んできた。


「で、では、いきます。……始め!」


「うぉおおおおお!!」


 美流陀の渾身の力が効いたのか、左腕では両者の力は拮抗していた、かに見えた。だが、凛が明らかに手を抜いていることが藤兵衛にはわかった。


「あれ~~」


 とか、


「負けちゃう~~」


などとわざとらしいことを言って、左腕を行ったり来たりさせている。そうとは知らずに美流陀は顔を真っ赤にし、こめかみに青筋まで浮かばせながら力を込める。


「いっけぇぇええ!! 俺の上腕二頭筋んんん!!」


 叫びながら更に力を込め、勝利まであと少しのところまで迫った。とここで、


「あらよっと」


凛があっさりと逆転勝利をおさめる。


「……は?」


 そして、呆然としている美流陀に対し、


「あんた、見てくれだけで中身が空っぽなんじゃない?」


と、思いっきり見下しながら言った。


「!! ……いひ、ひ、ひひひひ……」


 余程激しい衝撃を受けたのだろう。美流陀は暫し呆然とした後、虚ろな目で空を見つめ、しまいには笑いだしてしまった。


「「「美、美流陀!!」」」


 慌てて駆け寄る、他の御庭番衆たち。


「……な、なんてひどい奴なの。筋肉ばかりか、心まで壊してしまうなんて!」


 お華が非難の目を凛へと向けた。


「ふふん、どうよ?」


 一方、凛は得意気な顔をして戻ってくる。


「……さすが、ですね」


「…………(汗)」


 予想はついていたが想像以上の結果に藤兵衛は労をねぎらい、ひさ子は言葉が出なかった。


(これはまた…… すごいわね)


 こうしてお庭番衆との勝負は、まずは藤兵衛たちの一歩リードとなったのだった。


 つづく

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