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(十四)ボッチくノ一、頑張ります! その十・水に落ちたら当然……

■この部分からの登場人物

宗助(そうすけ):お庭番衆のリーダー。お華の恋人でもある。

 続いての種目は『水上丸太渡り』であった。会場に移動すると、池の上に丸太が浮かべられ、丸太は鎖で縦方向に繋がれてあった。


「次は水上丸太渡りであぁる! 忍びは平衡感覚が重要であぁる! 一名ずつ丸太の上を走り、先に置いてある旗を取って戻り、次の者が同じように取って戻りと三名繰り返し、その速さを競う試練であぁる! 尚、水に落ちた場合は速やかに丸太に戻るか、そのまま泳いで次の者に交代するでもよしであぁる! この試練は五組ずつ行うのであぁる!」


 見ると、一番奥の丸太の先には、旗が三本刺さっていた。


「やっと、忍びらしい競技になったな」


「そうね。ちょうど体を動かしたいと思っていたところよ」


 前の須田御名団子の影響か、藤兵衛も凛も目をらんらんに輝かせている。


 競技が開始されると、難しいのか水に落ちる者が続出する。そのたびに周囲や観覧席から歓声が上がり、会場は大いに盛り上がった。


 そして、いよいよ藤兵衛たちの番となる。偶然なのか、隣の組はあのお庭番衆の三人であった。


「ふん、ちょうどいいわ。ここで私たちの優秀さを見せつけてやるわ」


 相手、特にお華はこちらを意識した発言をする。


「ふふん、化けの皮が剥がれるの間違いじゃないの? お年寄りには今の季節の水は冷たいから、引き返せば?」


 それに対して凛が応酬し、両者はガンの飛ばし合いをする。


「ま、うちらは適度に頑張るとするか」


「そ、そうですね。この競技は自分との闘いですもんね」


 藤兵衛と結衣は、凛たちとは距離を置いて念入りに準備運動を始める。その後、三人で走る順番を話し合い、結衣、凛、藤兵衛の順とした。それを見て、お庭番衆の方はお華が凛と同じ順番にした。


「それでは第四組目、開始であぁる!」


 合図の銅鑼が鳴らされると同時に、結衣は丸太の上を素早く走る。早々に水に落ちる組が一つ出たが、それ以外はスイスイと進む。その中でも結衣と、お庭番衆の風丸は他より頭一つ抜けており、ほぼ同時に次の走者にタッチする。


 二番目の走者は凛とお華の対決であった。二人ともスイスイとほぼ同じ速度で進むが、お華はわざと水面が波立つように、リズミカルに丸太を踏む。すると、次第に波紋が大きくなって、凛が進む丸太を揺らし始めた。


「うわ、わ、わ……」


 初めのうちはなんとか耐えていたが、旗を取って折り返した所で耐えきれなくなり、


 ____ドパーン!


と、派手に水に落ちてしまった。狙い通りとばかりに、お華はほくそ笑んで凛を追い越す。


「うふふ。ざまあないわね」


 故意だとわかった凛は、カチンときた。やられたら、倍にしてやり返すのが彼女の信条である。すぐさま反撃に出ようとしたところ、


「こら~~! 何やってるのよ~。そういう時はポロリでしょ~?」


ひさ子が変な声援を送るので、ガクッと崩れてしまった。


「なんですか、ポロリっていうのは!! ……まあいいわ。これは、お返しよ!」


 しっかりとツッコみを入れた後、凛は懐から取り出した四文銭をお華に投げつける。


「きゃあっ!」


 四文銭は見事にお華の足元に命中し、ひっくり返るような態勢で水に落ちた。


「や、やってくれたわね~~! この茶髪娘!」


 すぐさまお華は丸太に上がろうとしたが、ここでハプニングが発生した。なんと、落ちた衝撃で上着がはだけ、胸が露わになってしまったのだ。


「き、きゃあ~~!!」


 事態に気付いたお華は慌てて胸を隠し、その場に蹲ってしまう。

 その隙に、凛は丸太に上がって渡り始めるのだが、


「ほら、あれよ~、ポロリっていうのは。水に落ちたら、ポロリは基本でしょ~?」


などと、ひさ子がまたしても変な一言を入れるので、またしても水に落ちそうになった。


 一方、会場はお華のポロリに大歓声が湧く。観覧席の長達は、いつのまにやら望遠鏡を手に取って観察し、


「ええのう、若いのは~」


「こりゃあ、高得点じゃあ!」


などと盛り上がる。そして、お華の恋人であるお庭番衆頭目の(そう)(すけ)は、


「見るな~! あれは俺のだ~!」


と、周囲の観客に目潰し攻撃をしまくるという、カオスな一幕があった。


 この一件で、藤兵衛たち伊賀の弐組と、お庭番衆の柳生の壱組は大きな時間ロスをしてしまう。最終走者の藤兵衛と美流陀が猛追するも、藤兵衛たちが二着でお庭番衆が三着、という結果に終わった。



 ◇



 体力試験が全て消化されたところで、休憩となった。


「は、は~~くしょん! さ、さむ~~~」


「大丈夫? 凛ちゃん。早く拭いて、着替えないと」


 休憩の間に、凛は結衣に手伝ってもらいながら服を着替える。


「あ、ありがと、結衣ちゃん。ひさ子さんには、後で文句を言っとかないと。……そう言えば、藤兵衛さんはどこ行ったの?」


「藤兵衛さんでしたら、途中結果が張り出されたらしいので、見に行ってますよ」


 結衣は凛の体を拭きながら答える。着替えが終わったところで、藤兵衛が戻ってきた。


「あ、戻ってきましたね。どうでした? 藤兵衛さん」


「お、着替えが終わったのか。喜べ、うちら二位だったぞ」


「本当ですか!? それじゃあ私たち、このままいけば本選に進めますね!」


「あ~、結果がいいと、報われたって感じがするわね。激マズ団子は食わされるわ、水には落ちるわだし…… この大会って、いつもこんな感じなの?」


 二位という結果に結衣は純粋に喜び、凛は寒いのか、布にくるまりながらぶつくさ文句を言う。


「ちらっと話を聞いたんですけど、今回の大会はいつもと違うものにするって、あの会長さんが気合を入れているみたいなんですよぉ。そのせいか、今までの三つの試験は全部、今回が初めてだったらしいんです」


「……会長って、あのやたらと声の大きい人よね。何があったか知らないけど、こっちはいい迷惑よね」


 ひとしきり文句を言うと、凛は「はくしょん!」と、大きなくしゃみをする。


「ま、いつもと違って戸惑っているのは、周りも同じ条件だもんね。次の筆記試験も頑張りましょう」


 それでも、最後は前向きな発言で締めくくるのであった。


 つづく

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