第5話 終幕
…結局あれから、俺は何も成長してないな。
そんな事を思い出して逃避していた現実に引き戻される。
『そんなの俺は反対だ!』
『そうは言うがレイカ、うちだって資金繰りが厳しいのは知っているだろう。それにタイカだって成人してもう1年も経っている、いつまでも住んでいる訳にはいかないだろう。お前が嫁を迎入れる為にもな。』
『だからタイカを追い出すって言うのか?体の良い口減らしの為に。』
『ろくに文字も読めないのでは文官にも成れん。家を出てもらうのも仕方あるまい。』
『…それでも父親なのか、碌に見てやってなかった癖に。』
『当主としての選択をしたまでだ。お前も次期当主なんだから、家の為の選択を誤るなよ?』
…父さんと兄さんが、俺の扱いについて言い争っていた。昔はあんなに仲がよかったのにな、俺のせいでこの様だ。
なんでこうなっちまったんだろうな…そう思いながら口を開く。
『良いんだ兄さん、俺が悪いんだから。』
『そんな事言うなよ…お前は頑張ってたじゃないか、お前は悪くない…悪くないんだ。』
『そんな事言ったって出来ないもんは仕方ないよ。それに話すのだって全然駄目だし…』
『タイカだってそう言ってるんだ、レイカも納得しろ。』
『…最低だな。』