第3話 兄さん
6歳になった俺、タイカ=クライスは問題に直面していた。
「未だになんて言ってるのかよく分からねえ…」
言葉がわからない。正確には、簡単な単語はともかく文法がさっぱりだった。
「英語が翻訳もあってろくに出来なかったのに、日本語との照らし合わせもできない言葉とかもう無理じゃね?」
外国語覚えるならその国に住むのが1番とか英語教師は言ってたけど、6年経っても全然無理なんだけど!?
そう嘆いて居ても仕方ないので、絵本に目を向ける。グネグネと筆記体のように繋がった文章が並んでいる。もはやどこまでが1文字なのかさっぱり分からない。
「どう読んでたっけ…いやまあ読みが分かったとしても意味が分からないからどうしようもないなぁ…」
『何してるんだタイカ?』
名前を呼ばれて振り向くと兄のレイカ=クライスが後ろにいた。
「に…『兄さん』」
危うく日本語で呼ぶところだった。幸い気づいて居ないようだ。6歳にもなった弟がよく分からん言葉を喋ってたらまずいだろう、もっと気をつけろよ俺…
『それで、何してんだ?』
…なんて言ってるんだ?えっと…とりあえず物についての単語じゃない…はず。本とかそういう単語ならわかると思うし。てかとりあえずなんか答えないと…えっと…
『本…』
読むってどう言うのか分からねえ…本を広げて持ち上げて アピールしてみる。
『本を読んでたのか。』
こくりと頷いておく…はいとかうんとか言いたいけどそれも分からないんだなこれが。
『読めるのか?』
さっきと同じ単語…多分読む?なのかな…ちゃんと伝わってるとしたら読めるかどうか聞かれてるって感じか?それとも読んでやろうかって意味?分かんねえ…
『まあ、読めないよな。』
困った顔で首を傾げた俺を見て、レイカ兄さんはなんか納得したような感じで何かを言った。俺は何も分かってないのになぁ…
『じゃあ読んでやるよ。』
レイカ兄さんは何事か言うと俺から本に手を伸ばしてきたので渡す。そうすると、俺の隣に座って本を開く。…多分、読んでくれるって事だろう。
レイカ兄さんが読み上げてくれたのと、単語を一致させる為にまじまじと文字を見ながら、聞き漏らさないように必死に聞き取るのだった。