第1話 どうやら死んだようです
目が覚めると、よくわからない所にいた。言ってしまえば何にもない空間だった。壁も無ければ、当然天井も無いし、なんなら床すらない。なのに落ちてる訳でなく足がついてるような感覚がある。
「はい、ぼんやりしてないでこっち見ろー。」
声がした方向を向くと、不思議な角度で立っている少女がそこにいた。60度ちょっと傾いてる感じがする。
「なんかすごい角度で立ってるなぁ。」
「お言葉だけど、君が変な角度でいるだけだからね?そんなあらぬ角度に向く人初めて見たよ。」
「はあ。」
よくわからんけどどうやら俺がズレてるらしい。
「ここにはもう魂しかないからね。君が持ってると思ってる体は、君が記憶から再現したものだね。だから変な角度で立ってるのも君の意図したものだし、元の角度に戻ろうと思え ば戻れるでしょ。」
よくわからないがそういうものらしい。
「いい加減元の角度に戻ってきてくんないかな?」
「そう言われても…」
目を閉じて元の角度に戻れと念じてみるも特に変わらない、向きに合わせて足を伸ばしてみたり、よく角度に向かって倒れるように向かおうとしてもさっぱりうまくいかない。
「何やってんのよ。」
「いや、悪いけどよくわかんない。どうすれば良いんだ?」
「そんな訳ないでしょ…もう面倒だしこっちから合わせちゃおっと。」
そう言ったと思うとその少女は少しジャンプしたと思えば、俺と同じ向きに着地した。気づいてなかったがよく見るとその子には羽根と輪っぽいのが付いている。
「…天使?」
「そーだよー天使ちゃんでーすって…今更だねえ。」
本当に天使らしい…天使!?
「えっじゃあ俺死んだのか!?」
「それは本当に今更だなぁ、何だと思ってたのここ?」
まじか…才賀は助かったのだろうか?最期まで確認できなかったけど、もし助かってなかったら俺は本当に何もできないまま死んだのか…
「それで、俺はどうなるんだ?」
「本来なら死んだ魂は浄化して次の生命として生まれて貰う事になるんだけど、そうもいかなくなっちゃってねー。」
じゃあ俺はどうなる…?要らないから処分とか…想像すると不安になってきたので結論を急かす。
「それでどうなるんだ?」
「浄化せずに他の世界に生まれ変わって貰う事になるねー、君達の世界だと異世界転生だっけ?大体そんな感じー。」
とりあえず消されるって訳じゃないみたいだ。異世界転生かぁ…読んだことあるけど俺じゃあ主人公みたいに出来ないしなぁ、生きていけるんだろうか?
「不安だなぁ…」
「そう言うと思いましてー、転生時にその人の人徳次第で特典が貰える人徳ポイントっていうのを用意しましたー!…まあ用意したのは神サマなんだけどー。」
そしたら俺もポイント次第でなんとかなるのかな…
「まあ少なくともみんな10ポイントは貰ってたから安心してねー、という訳で早速オープン!」
そういうと俺の前に何処からともなくパネルのような物が表示される。そこに写し出されたのをまじまじと見つめた。
「右上に君の人徳ポイントが表示されるよー。」
言われるままに右上に視線を移す―――
『あなたの人徳ポイント 3pt』
「…3ポイント、か。」
「3!?嘘そんな事今まで…」
まあ貰えたんだ、気を取り直して何が交換できるか探そう。
言語理解 5pt、魔法補助 10pt、格闘補助 10pt…
交換できるのを探してる俺に残酷な現実が降りかかった。
「…ごめん、交換するのに最低でも5ポイント必要なんだ。」
申し訳なさそうに告げられるそれを聞いて、俺は呆然と立ち尽くすのだった。