ヲタッキーズ38 謎のオリンピック株
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"が秋葉原の平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第38話"謎のオリンピック株"。さて、今回はオリンピックを控えた秋葉原でコロナ変異株が発生w
感染経路の分析から浮かぶ首相官邸と外国の確執、その狭間で巨利を貪る製薬会社と科学者達の存在が明らかになった時…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 コロナ変異株を追え
「秋葉原は、梅雨の合間のスッキリ快晴!気温は摂氏17度。中央通りは渋滞もなく順調に…」
カーラジオからは御機嫌なDJが流れる。
パーツ通りを逝くルノー5ターボ2EVO。
「ママ。気持ち悪いー」
「車でお絵描きスルから酔ったのょ」
「マジ、お腹が痛いー」
ホーリン幼稚園へ向かう車内は大混乱だ。
お受験幼稚園のメッカへ通う金持ち母娘。
「ママ、吐くよー」
「風邪かしら。幼稚園休む?」
「わかンない。変な感じ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「アリス!僕のワイン色のネクタイは?」
「知らなーい。私のメイド服は何処?」
「俺達、激し過ぎたな。やれやれ。ネクタイなしで出勤か」
駅近の"ホテル24"プレジデンシャルスイートで溜め息をつく男。
高級コスプレデリヘル嬢のアリスはズッとシャワーを浴びている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コロナ宣言解除を受けたアルコール解禁後の神田明神坂下のファミレス。
コロナ前は、深夜シフト明けで始発待ちのメイド達でごった返してたが…
「いきなりシフト復活って聞いてたら、他の御屋敷に移ってたわ」
「そう?」
「あぁコロナ休業で朝寝坊してた頃が懐かしいな。また昼まで寝てたいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び、ルノー5ターボ2EVO。
「大丈夫?あら、嫌だ。スゴい熱」
「寒いょママ」
「大丈夫?もう少しで丘の上の大病院ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして"ホテル24"。
「アリス、シャワー長くね?まだ?」
その時、誰かが倒れる音がして男が慌ててシャワールームに飛び込むと全裸のアリスが…
「アリス!大丈夫か?しっかりしろ!アリス!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後は…ファミレスで激しく咳き込む女。
「風邪?遷さないでょ。私だって、御屋敷は休めないンだから」
「大丈夫。少し寝れば治るから」
「そう。先に帰るわね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
意識朦朧なママ彼女が目を覚ますと"万と万尋"のカオナシに顔を覗き込まれているw
「キャー!」
悲鳴を上げたつもりが彼女の干涸びた唇から漏れる声は"ゼイゼイ"という擦過音のみ。
黒いカオナシではなく真っ赤な密閉型化学防護服の男達にストレッチャーに載せられる。
「わ、私はどうしちゃったの?」
「外神田27からEOC。患者γ覚醒。意識混濁」
「大丈夫よっ!必ずワクチンが…」
ファミレス店内から表の神田明神下の交差点まで透明ビニールで外気と隔離されている。
その中や外に、まるで宇宙人の団体様みたいな赤や青の化学防護服が右往左往してイルw
ソコへまた1台、サイレンを鳴らし黒いバンが到着し慌ただしく降り立った制服の女子は…
「疾病予防管理センターのナナホょ。緊急オペセンの責任者は?」
「私です。最初の死亡者は16歳。外神田2丁目地区で約30名が発症し6名死亡」
「原因は?」
「炭疽菌でも天然痘でもない。何らかの病原体かと。目下、調査中」
「生物テロの可能性もアルわ。場所柄"リアルの裂け目"関連も疑われる。万世橋警察署および"ジャドー"とも連携して発生源を突き止める。直ちに責任者を集めて」
「了解!」
ほどなく赤いカオナシみたいな化学防護服の連中に囲まれアキバを代表スル女子が集合w
「ナナホ統制官。関係者、お揃いです!」
「万世橋警察署のラギィ警部だけど」
「ヲタッキーズのムーンライトセレナーダーです」
ラギィの方はともかく…説明しよう。
ジャドーはアキバに開いた"リアルの裂け目"から来る災厄と戦う秘密組織。
スーパーヒロイングループのヲタッキーズはジャドー傘下の民間軍事会社だ。
因みに、ムーンライトセレナーダーは僕の推し、ミユリさんが変身した姿だ。
彼女は…スーパーヒロインなので黒のセパレートにヘソ出しのコスチュームw
「おお!化学防護服ナシで、しかも(アラサーなのにw)ほぼビキニとは!さすがはスーパーヒロイン、怖いモノ見たさ…じゃなかった、知らズだわ。さて、CDCのEOCでベクトル解析を行います」
「患者の連関性を分析スルのね?」
「Yes。そして、感染経路を推測、特定スル。高度な数学知識が必要なので専門家を呼んだ。間もなく到着スルわ」
「CDCが数学の専門家を?機密情報にアクセス権限を持つ人でないと。申請には時間がかかるハズょ」
「大丈夫。国家最高機密へのアクセス権限を持つ人物だから」
ナナホ統制官とラギィ警部のヤリトリに何となく嫌な予感を覚えるムーンライトセレナーダーだが、その予感は人の形となり現れるw
「コチラは、アキバ科学大学のルイナ教授です。教授、コチラのデーハー姐さんはムーンライトセレナーダー。そして…」
「ミユリさ…じゃなかった、ムーンライトセレナーダー!ソレにラギィ…じゃなかった、ラギィ警部も!貴女達、この件の担当になったの?」
「え。みなさん、お知り合い?」
アキバに来て初めて腰が引けるナナホ統制官w
「ルイナ教授。ココの情報に接するには、アクセス権限が必要なのょ?ってか、貴女が教授というのも寝耳に水ナンですけど(ウチのヘルプだったのにw)」
「ごめんなさい。メイドだけじゃ食べて行けないので。お仕事ゲットしたら、自動的に何チャラ権限とかゆーのが漏れなくついて来ちゃって…」
「そんな!懸賞応募じゃないのよっ涙は…じゃなかった、国家機密へのアクセス権限は」
コレは、ムーンライトセレナーダーからナナホ統制官への詰問…じゃなかった、質問だ。
「え。何か問題でも?」
「いえ、まぁ。そのぉ、聞いてない…みたいな?」
「機密事項だモノ」
想定外の展開に、今まで何度も修羅場を潜って来たナナホ統制官だが、思わズたじろぐ。
「も、もしかして、コレあくまでも、もしかしての話だけど…ルイナ教授がムーンライトセレナーダーのTOを略奪愛ってホントだったの?」
「え。何の話?」
「スーパーヒロイン専門のゴシップ誌"ヒロイン自身"で読んだんだけど」
「え。今時のCDC統制官って、ソンな雑誌を読んでるの?!」
目から殺人光線を発射しそうなムーンライトセレナーダーのキツい眼差しに全員押し黙るw
「と、とにかく!主な症状は、痛み、発熱、味覚障害で…」
「コロナそのものじゃない?!流感やスペイン風邪とも酷似」
「しかし、朝、体調を崩して昼前には死亡。コロナだとすれば、この変異株は手強い。老いも若きも、簡単に呼吸不全で死に至る。EOCの分析結果が出るまでは、空気感染する可能性も前提に行動しないと(とりあえず、そのデーハーな格好ナンとかならないの?アラサーでしょ?女性週刊誌の愛読は個人の権利よっ!)」
「では、秋葉原の一般ヲタクへの警告は?(警告も出さズに女性誌ナンか読んでンじゃナイわょ。ソレにテリィ様の元カノ…じゃなかった、元カノ候補?だったルイナが、何で私より機密保持レベルが高いワケ?焼け木杭に火がついたら国家が責任とって!)」
「大量破壊兵器によるテロの可能性もアル。当面は内密にせざるを得ないわ」
「ソンな悠長なコト逝ってる内に、アキバ発のパンデミックが起きる」
「コレは、国民的パニックを避けるタメでもあるの。ヲタクが秋葉原を脱出すれば、全国に感染が拡大するわ」
ラギィ警部のまとめ。
「変異株の特定はCDCに任せます。ウチとジャドーは、内密に犯人を捜査。で、発生源は何処なのかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その数分後、ジャドー司令部で作戦会議。
「発生源の特定は、多変量解析で行います」
「保険の窓口のマネで悪いけど…わからないわ、ルイナ」
「あ、すみません。レイカ司令官、例えば、部屋にコロナ感染者がいるとします。ソコへ4人が入ってきて2人が感染スル。5人全員が移動して、それぞれが4人と接触スル。そして、その全員が、また別の部屋へ…部屋数が100になる頃には、もう追跡は困難です。だから、最初の1人から統計学的な追跡と分析が必要なのです」
納得するレイカ司令官。あ、彼女は華麗なるコスモルックに紫ウィッグのレトロSF美女。
まぁカモフラージュしてるゲーセンのイカれた姐ちゃんスタッフ、と逝う設定ナンだけど…
「でも、感染しないヲタクもいるわね。なぜ感染しないのか、理由はわからないけど」
「現時点でわかっているコトは、感染者には共通の場所がアルと言うコトです。中山道沿いに5人。でも、未だ結論は出せない。現時点で決め手となる共通項とはなり得ません。決め手を見つけ出すには、大量の感染例が必要です」
「ソレも困った話だけど…つまり、もっとデータが必要と言うコトね?」
「YES。データさえ増えれば、発生源と感染経路の特定は可能です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
病室の外界から隔離された"バルーン"の中で娘を亡くした母親が病の床に伏せている。
「お嬢さんはお気の毒でした。ところで、発病前に何か変わったコトは?」
「…いいえ、特に。でも、前の晩遅くにパパが酔っ払って帰って来て」
「コロナ宣言明け早々に酔っ払い?何処で遊んでたの?」
「余計なお世話ょ。どーせデーハーなコスプレの貴女もソコのキャストでしょ?」
「はい?」
「神田駅北口のコスプレキャバクラ」←
溜め息をつく、ムーンライトセレナーダー。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
大手町勤務のエリートサラリーマン。
突然プライベートのケータイが鳴動。
「昨夜のメイド、何処で買ったの?」
「だ、誰だ?」
「Japan-CDCのナナホ統制官。素直に答えれば奥さんには言わない」
「…実は、神田の駅前風俗からデリバリー」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「きゃ!万世橋の女警部さんなの?!カッコいい…シオリ?ええ。カレーを食べに行ったわ。私も一緒ょ。神田カレー祭りで黄金の椰子を取った"日のバツカレー"。ねぇ昨日からシオリと連絡取れないンだけど。何かあったの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
データは着実に積み上がり、続々と打ち込まれて逝くのを見届け、ルイナは御帰宅スル。
ソコへタマタマ僕も御帰宅してしまって、深夜の"潜り酒場"でバッタリ顔を合わせる。
「あら、テリィたん。もう2週間経ったのね。ミユリ姉様なら、今宵はジャドーのお仕事中ょ?」
「え。御帰宅はメールしたのにな」
「ちょっち、急ぎのお仕事みたいなの」
解説しよう。
僕は、原子力発電所の副所長。単身赴任中で御屋敷への御帰宅は2週間に1回のペース。
僕の推しミユリさんはムーンライトセレナーダーに変身しない時はココのメイド長だ。
「ルイナさん、ソレはヲタッキーズの仕事?」
「ううん。遺伝子の研究ょ。お友達に頼まれたの」
「へぇ。ドンなの?」
僕に見られたくナイのか、慌ててパソコンを閉じるルイナ。何だか不自然な感じがスルw
「あ。出会い系を見てたとか?」
「関係ナイでしょ」
「気になってさ」
「恋人が出来たら報告するわ。"潜り酒場"の冷蔵庫にポストイット、貼っとくから」
「ソレは名案だな」
「…あ。何処に行くの?」
「@ポエム。でも、関係ないだろ?」
「うふ。でも"気になってさ"」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の万世橋警察署。
「ラギィ警部、犯行声明は出ていません」
「うーんテロだったら、そろそろ主義やら主張やらが始まる頃ょね」
「テロリストが生きていれば、ですが」
「え。そっか、自分も感染しちゃったとか?」
「可能性はアリます。必ずしも作為的な拡散とは限りません」
「テロじゃない可能性もあると?」
ラギィ警部は、暫し考え込んでから呟く。
「とにかく、CDCが病原体を特定するまで、捜査は続けましょう」
第2章 中山道を行こう
数時間後のジャドー司令部。夜明け前。
「レイカ司令官。感染者の地理情報を表示して、地域の特定化を試みたトコロ、興味深い結果が出ました。対象エリアは、日本橋から京都三条大橋まで延びます。つまり、中山道というコトですね。なお、感染率の計算法は見ての通りです」
「ありがと、ルイナ。一目瞭然ね(ってか、何なのこの数式や方程式の描き殴り。全く意味不だワw)」
「コレはSIBモデルです。地理情報システムと組み合わせて2つのキーを探ります。そして、発生源の特定。つまり、ゼロ号患者を特定します。さらに、新たな患者の発生も予測します」
ルイナは、司令部の大スクリーンに映した日本地図にデータを落として逝く。
シミュレーションを回すと、東京から京都へと中山道沿いに感染拡散が延伸。
「まるで植物が根を生やすみたいね」
「まさにその通りです、司令官。結晶や樹木が枝分かれしていくように、ウィルスが拡散していく様子が一目瞭然」
「さらに、データの数を増やしましょう。枝分かれのパターンがもっと見えてくるハズょ」
さらにナナホ統制官が追加データを持ち込む。
「ルイナせんせ、順調?」
「まぁね。新たな感染者データは?」
「11人分ょ。大江戸メトロ神田駅に娘を迎えに行った母親。エキュート神田万世橋のランチ客にツケマチのタクシー運転手。コレで突破口が開けるかもしれない」
目の前でビシビシとデータを打ち込むルイナ。
「地理的には、かなり固まって来たわ。同じ根っこから、中山道沿いへと伸びてる」
「根っこは…神田駅ね。12人が駅にいたか、行った人と接触してるわ」
「なるほど。きっとテロリストにとって身近な雑踏なのでは」
「でも、統括官。感染経路の予測に未だ自信が持てない。精度の確認をさせて」
「構わないけど、結果は待てないわ」
ナナホはスマホを抜く。
「CDCのナナホょ。神田駅を閉鎖して。そう、始発からょ!理由?うん。アスベストで押し通して。とにかく、駅は閉鎖、電車は全て神田駅には止めズに通過させて。大至急!」
「駅を狙うとは典型的なテロだな」
「私は…未だ納得してないけど」
「ルイナは、数学として考えてるからね」
「待って。CDCから電話だわ…はい。ナナホです。ええっ?病原体を特定した?新型のコロナ変異株?」
司令部全員の緊張が一気に高まる。
ナナホは、スマホをスピーカーに。
「ホントにCGG-CGGなの?正確に報告して」
「はい、統制官。今回の新型コロナ変異株のスパイクタンパク質には…」
「あ。スパイクタンパク質というのは…つまり、コロナウィルスが持つ突起物のコトね」
ナナホのワンポイント解説が入る。
「YES。コロナウィルスはこの突起物によりヒトの細胞と結合しますが、今回のコロナ変異株の突起物には正電荷のアミノ酸が5つ並ぶという、自然界には絶対に存在しない塩基配列が見られます」
「え。つまり…何?」
「何者かが人為的にコロナウィルスの感染力を高める実験を行った。つまり、この変異株は"機能獲得実験"の産物である可能性があります」
「何てコト?!神田明神も照覧あれwで、ゲノム編集の結果、この新型コロナ変異株は、ヒトの細胞と結合しやすくなってるというコト?」
「YES。まるで、磁石が鉄を引きつけるかのように」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
次の夜。ミユリさんは僕のお気に入りのフレンチメイド服に着替え"潜り酒場"にいる。
"潜り酒場"の流儀に従って、女子は全員メイド服ナンだが、コレがなかなかの壮観だ。
「どーしても、テリィ様にお話ししなきゃ。今宵テリィ様は神田の駅前風俗にお出掛けの予定なのょ」
「え。何ソレw第4次コロナ宣言前の駆け込み風俗?男ってサイテー」
「ミユリ!TOにソンなコトされてアンタ、平気なの?」
居並ぶメイド…つまり、警部や統括官や司令官やらが全員メイド服ナンだがホント壮観←
「うーんソレがテリィ様にも色々ご事情がおアリで…私と出逢った時には、もう神田の"駅前英雄と呼ばれていたのょw」
「何ソレ?バッカみたい」
「TO以前に男としてダメじゃん!」
ミユリさんの言い訳?に一同の怒り爆発w
代表して釘を刺すナナホは和ロリメイド←
「テリィたんって、国民的ヲタクとは言えタダのサラリーマンでしょ?彼に機密を漏らせば違法行為。最悪、ミユリは国家反逆罪に問われる可能性もアルわ」
「じゃテリィ様が新型コロナの巣窟にお出掛けになるのを黙って見送れと逝うの?」
「YES。ソレは悲しい男のサガだもの。浮気男は感染しても仕方ナイわ…しっ。テリィたんが来たわょ」
全員が怪しい笑顔で唱和スルw
「おかえりなさいませ、御主人様!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィ様!風俗よりも、もっと楽しく過ごした方が良いですょ。ホラ、テリィ様のお好きな巨乳メイドカフェとか」
「そうよっ!またとない巨乳日和だわ!」
「え。夜だょ?ソレに、そもそもソンな日和がアルの?ってか巨乳と日和って何か関係アルの?」
「モチロンよっ!気圧の関係で"張り"が全然違うわっ!知らないの?」
巨乳カフェへ行けとメイド達の大合唱だょ?
バカでもわかるけど…コレは絶対何かアル笑
「実は、ロザリのお母さんが亡くなって1年になるンだ」
「え。ロザリって誰ょ?」
「神田駅前の娼館マダム」
「テリィたんは、何でソンな女を知ってるの?」
「あれ?何でかな」
確かに…ナゼ知っているのか思い出せない←
「あのさ。ミユリさん達、絶対何か隠しゴトしてるょね。機密事項か?だったら聞かないけど」
「実は…」
「らめええっ!ミユリ姉様STOP!」
「とにかく、テリィたん。アンタは巨乳メイドカフェへ行きなさい!」
「そーなんです!」
「神田駅前には行かないでダメ絶対。以上」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、ジャドー司令部。
昨夜はメイド服だったメンツが今朝はソレゾレの制服姿でレイカ司令官の話を聞く…遠目にコスプレ大会であるコトに変わりはナイ←
「昨夜、首相官邸から情報が入った。コレが中華な国からコロナウィルスの提供を受け、国内で"機能獲得実験"をしているスタートアップのリストょ」
「え。ソンなリストがどーして官邸から流れて来るの?」
「官邸は、今回の騒ぎの裏にオリンピックを失敗させ、日本の国威を失墜させようとスル外国勢力の存在を警戒してる」
「え。そーか、新型コロナ変異株でオリンピックが途中で中止となれば、官邸は大打撃を受け、首相は退陣カモ」
「そして、恐らく変異株は後世"東京オリンピック株"と称され、人類の歴史に汚名を残すわ」
「スペイン風邪のスペインみたいに?そして、発症の地に因む"中華コロナ"なんて名は、永遠に葬られる…え。ソレが犯人の真の狙いかしら?」
「とにかく!官邸から届いたリストの筆頭は秋葉原の会社ょ。責任者はヴァハ博士。しかも、ソコの研究資金は…何と中華な国の無難ウィルス研究所から出てる」
「え。無難って…今回のコロナ騒ぎの発症の地じゃない!オカルト雑誌"ラー"も特集してたけど、全ては中華な国の陰謀だと言うワケ?」
「ソンな簡単な話じゃない。無難ウィルス研究所の研究資金をたどると、どーやら元は太平洋の向こう岸の国の連邦助成金で、60万ドルが拠出されてるわ」
「ソレ、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事になってた奴ょね。しかし、一体どーなってんの?」
「国際情勢は複雑怪奇。とにかく"オリンピック株"のパンデミックを阻止しなきゃ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバにある医療系スタートアップ"節操なき医師団"は、駅前高層タワーの17Fにある。
「"オリンピック株"?何かなソレ?我々はコロナワクチンの大衆薬化を狙うスタートアップだ」
ヴァハ博士は、ヨレヨレ白衣をまとう初老の男で…マッドサイエンティスト的な風貌だょw
裏で絶対にタイムマシンをつくってる←
「我が国は、コロナワクチンの開発競争に敗れた。ただ、ワクチンを大衆薬化スル分野で挽回のチャンスがある。この分野は、昔から我が国のお家芸だからね」
「コチラで実験に使うコロナウィルスは、中華な国より供与されてるそうですが」
「YES。コロナで死亡した人民解放軍兵士の肺組織から、リボ拡散を採取してウィルスを再現している。我々は、供与されたコロナウィルスから弱毒性のワクチンを作るコトを考えているのだ」
「弱毒性?今、接種が進むワクチンはコロナウィルスの遺伝情報を投与するタイプですょね?」
「YES。我々は、あくまで不活化した新型コロナの投与を考えている。次のコロナ再流行に備えるタメだ」
「再流行ナンてあるの?」
「モチロンある。エボラだって、今でも時折アフリカで流行してる。古くはスペイン風邪だって、今は感染が収束してるだけで決定的な治療法は確立してナイ。弱毒性ワクチンによるコロナ再流行の阻止は、人類喫緊の課題ナンだ」
「で、人類喫緊の課題に取り組む博士の研究を、中華な国は奨励し、資金のみならズ、ウィルスの提供までしてるワケね?ラボでのウィルスの管理は?誰かが持ち出した可能性はナイの?」
「紛失があればCDCに報告するルールだ」
「コロナウィルスに接触できる者で休暇中の者は?」
「いない。なお、私以外にウィルスに接触が出来るのは、助手のダリル。微生物学者のカエイ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後。ジャドー司令部。
画面の中の美女は語り続ける。
カエイは美貌の微生物学者だ。
「…ありえない話だわ」
「なぜ?」
「コロナウィルスを扱えるのは、専門の研究者だけ。管理は厳重で、とても持ち出せるモノじゃナイ」
「では、テロリストが潜入し奪取したと?」
「ソレにしても、手を貸す研究者などいないわ。私達は変異株の怖さを知っている。だから、絶対にアリ得ない」
ココでモニター画面はフリーズする。
レイカ司令官が集まった全員に問う。
「さて…どう思う?」
「スゴいわね。科学者としての自分に完全に酔ってるわ」
「絶対怪しい。犯人ね」
ズバリ断言スルのはラギィ警部。
「何たって、英雄指向が強い。自分で放火して第一発見者を装うタイプだわ」
「どうでしょ?ソレなりにマトモにも見えるけど」
「そういう人ほど、間違った認識から確信的な異常行動へと走るモノょ」
「だとしたら、彼女の動機は?」
「自分の研究テーマを認めてもらいたい、と言う承認欲求ね。まぁ案外、補助金の増額狙いの小物カモ」
「うーん決め手を欠くわ。もう1人の研究者、どんな人だか確かめて来ないと」
そう言い残して足早に歩み去るムーンライトセレナーダーをナナホ統括官が呼び止める。
「あ、ミユリ。彼だけど…」
「何?」
「ヲタクらしいわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マジ?モノホン?ムーンライトセレナーダーが(コスプレのママw)僕の部屋に来るナンて!」
確かにアリ得ない。
足の踏み場もない雑誌の山、洗い物で溢れる流し、壁で微笑む地下アイドルポスター!
コレは、無為な日々を過ごす主人公の下へ、ある日、スーパーヒロインが押しかける…
アニメの王道パターンだw
「き、君は、僕に服従スル運命?前世で固い約束?神との契約になってルンだょね?」
「なワケ無いでしょ?コレは単なる聞き込み、裏付け捜査ょ。新型コロナ変異株の専門家って聞いたけど」
「任せて。変異株なら妄想恋人よりも仲良しだ…あれ?コレってガサ入れも含むの?」
「スーツケースが出てるけど、このコロナ下で旅行の準備かしら?」
「小学校の同窓会ナンだ」
「小学校?卒業して今、何年目?」
「15年」
「何年の卒業?」
「1997年だ。コ、コレは…勤務先が"節操なき医師団"だから犯人扱いをされねるワケだね?」
「あら。貴方が犯人だったの?」
「違うよっ!…あぁビキニのスーパーヒロインが突然やって来る理由ナンて、他に無いモンなwなのに、ソレなのに!あぁバカやろう俺!」
「他に共犯がいるなら、今のうちに聞いとくけど」
「まいったな。何か噂話をしたら即、ヲタ友が全員逮捕かょ」
「ねぇ面白がってるの?」
「まさか。でも、変異株の威力は十分に知っているつもりだ。そりゃ怖いさ」
「でも?」
「新しい変異株の流行が始まり、人が死に始めてるなら、ワクチンの開発は急務だ。"節操なき医師団"所有のコロナウィルスの重要性は増すばかり…おい!勝手に触るな!」
「コッチも仕事なのょ。パソコン、見せてもらうけど…わ!熟女サイトw」
「見るな!イヤだ。パソコンの提供は断る。熟女趣味がバレたからじゃないぞ!犯人扱いされて不愉快だからだ」
「本気なの?フザケてる暇、無いの。令状を取ったらお宝AVコレクションもセーラー戦士のコスプレも一切合切サラッて逝くコトにナルけど?」
「わ、わ、わかった。でも、コッチだって、研究者として今が腕の見せドコロ、命がけで仕事してルンだよっ!」
「…帰るわ。さよなら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直後のジャドー司令部。
「ダリルは…国家威信の毀損とかは無理な人だけど、絶対に何か隠してるわ。アパートも神田駅の直ぐ近くだし」
「ミユリ、ソレがね。結局、神田駅からは、変異株の痕跡は見つからなかったの。変異株拡散の起点は別の場所みたい」
「え。駅を閉鎖してまで調べた結果がシロ?でも、ルイナの分析では…」
「確かにウィルスをばらまくには最高の場所だったけど…もしかしたら、感染者と列車ってリンクしてないのカモ」
「まぁwじゃ…ルイナは落ち込んでる?」
「もぉドップリと」←
第3章 2つある答え
ルイナは「もぉドップリ」落ち込んでいるw
"潜り酒場"なのでロングのメイド服だが←
「テリィたん、時間ある?」
「今はね。でも、48時間休暇だから今夜の正午(午前零時)までには、原子力発電所に戻らなきゃならない」
「悩んでるの。複素変数とマルチベクトルを含む分析で起点を割り出して、その世界の専門家からは納得してもらってルンだけど」
「でも、ルイナは自信が無いワケか」
「筋は通してアルんだけど」
「あのさ。良くワカラナイけど、ルイナは相手が専門家だから正しいと仮定したワケだょね?ソコが問題じゃナイかな」
「でもね、テリィたん。このケースの場合は…」
僕は視点を変えてみる。
「今回の48時間休暇で最も愉快なコトって、何だと思う?分析内容を僕に明かさないように君達全員が必死になっているコトさ。どうも、何か僕に開かせたくない理由がアルらしいね」
「テリィたんには悪いけど国家機密…」
「気にしてないょ。とにかく!ルイナに話しておきたいコトは2つアル。先ず1つは、データに戻るコトだ。そして、もう1つは、答えを疑うコト。ナゼなら、何ゴトにも、答えって常に2つアル」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直後のジャドー司令部。作戦会議中。
鼻息も荒くルイナが飛び込んで来る。
「私、データに戻らなきゃ!感染源のゼロ号患者は移動して…作為的な拡散なら、人が集まる場所で…人の出入りが多い交通の要所は典型的な…」
「ど、どーしたの?ルイナ、落ち着いて!」
「拡散モデルの起点は、駅は駅でもJRの神田駅じゃなかった。地下鉄の神田駅ょ!CDCも私も勝手にJRだと妄想してただけ!答えは常に2つアル!」
「え。でも、地下鉄だったと論理的に説明出来るの?」
「無理。でも…正面のモニターにマップを出して!ココが大江戸メトロの神田駅。ウィルスは、ココを起点に南北に広がった」
「わかってる。で、東西には?なぜ全方向に広がらないの?ソレに、地下鉄で撒かれたのなら、他の乗客にも感染して、終点の浅草に向けて感染経路が延びるハズょね?ソレがナゼ…中山道なの?」
「ワカラナイ。でも、地下鉄の神田駅と仮定してシミュレーションを回すと…JR神田駅のケースより36%も精度がUPスルわ」
「つまり?」
「間違いなく、感染経路の"共通項"は地下鉄の神田駅ね」
ヲタッキーズのエアリとマリレも加わり、司令部の全員で四角いアタマを丸くして考えるw
「地下鉄の神田駅が"共通項"なのは、駅から地下道に行く人が多いからではないかしら」
「なるほど。電車は感染者とリンクしなかったけど、地下道とならリンクするカモしれないわ」
「そー言えば、地下鉄の神田駅からは、須田町交差点に向かって、日本最古の地下鉄商店街の跡地である地下道が伸びています」
「ソレよっ!地下鉄商店街から地上へ出た人の多くは秋葉原に向かう。その人の流れは、ちょうど中山道にピッタリ沿うわ」
「でも、ヘンね。地下鉄商店街の北の方で感染した集団の方が、南の方で感染した集団より、致死率が有意に高いわ」
「確かに、死者の8割は地下鉄商店街の北の方で感染しています」
「同じ変異株のハズなのに、商店街の北と南で、なぜこんなに致死率が違うのょ?」
「しまった。変異株も2種類あるンだわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「同じコロナウィルスだけど、コレは2種類の変異株ね。どーりで構造的にホボ同じハズだわ。でも、致死率の違いは、文字通り致命的に大きい」
「2つの変異株が、同時に自然界に発生スル確率は?」
「限りなくゼロに近い。ほとんどアリ得ない話だわ」
「つまり、何者かが作為的にウィルスを拡散した可能性がアルのね。でも、なぜ変異株を2種類つくったのかしら」
ソコへナナホ統括官に電話。
「あ。ナナホょ。わかった。CDCからょ。スピーカーにスルわ…はい、説明よろしく」
「地下鉄商店街の北と南で採取された変異株ですが、両方ともコロナウィルスながら、遺伝子の1つが決定的に違います」
「え。どーゆーコト?」
「南ウィルスには、明らかに独自の形でウィルスを再構築した形跡があります。その結果、致死率の低い南ウィルスには、リボ拡散が少ないと言う特徴が認められます」
「北ウィルスの製造元はわかる?」
「ソレが…WHOが3月に出した報告書に拠ると、中華な国の無難ウィルス研究所です。ただし、ソレが我が国に持ち込まれたと言う報告はありません」
「でも、ソレが秋葉原に出現したのよっ!」
せっかく大発見を伝えたCDCだが、ナゼかナナホに怒られ意気消沈のトコロに、地下鉄商店街に派遣された別班からの報告が舞い込むw
電話を会話アプリに接続してリモート会議←
「須田町14からナナホ統括官!地下鉄商店街跡地の須田町交差点側の壁と、改札を出た直後の壁に、スプレーで何らかのモノ、恐らく新型コロナの変異株と思われるモノを噴霧した形跡を発見しました。大至急、分析を願います!」
「わかったわ。緊急オペセンから化学中隊が急行中。貴方達は壁から十分な離隔を取って三密を回避」
「了解。念のため検温し、手持ちのブラックパンダーで味覚検査を実施します…ウマい!」
ルイナが自分のPCを立ち上げデータを確認。
「初期に死亡した女子の父親は、神田駅北口でキャバ遊びをした帰り、須田町交差点までタクシーを拾いに地下道を歩き、リアル帰宅。その後、妻と娘だけ発病してるわ。ラギィ、お願い!」
「地下鉄商店街に出入りした人間をくまなく調べ、必要に応じて隔離!万世橋警察署を総動員して取り掛かるわよっ!」
「コレで、今まで見逃してた感染者を見つけて治療が出来るわ。秋葉原発のパンデミックを回避出来るカモ」
「コチラ、ジャドー司令部サイバー作戦班。地下鉄商店街の防犯カメラをハッキングしました。アーカイブにも入れます。過去1週間の画像が見放題です」
「全部、警察の顔認証にかけて。直ちに確認して頂戴…ところで、ルイナ。貴女、何でメイド服なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、万世橋をアキバから神田へと渡ってるトコロだ。
誰かに呼ばれて振り向くと、ミユリさんが駆けて来る。
「テリィ様、どちらへ?」
「ミユリさん、色んな意味で先に謝っとく。今からロザリのトコロだ。ご家族の食事会に呼ばれてる。顔を出してから出発すれば、夜中までには原子力発電所に戻れる」
「…お祖母様の1周忌ですものね。仕方ありません。お祖母様のトシーノ、ホントに絶品でした」
「ミユリさん。僕は…僕の推し達がアキバに役立っていると思うと、誇らしい気持ちでいっぱいさ」
「テリィ様…」
「コレ以上何も聞かないし、ミユリさんも何も答えなくて良い。だけど、今回の48時間休暇は、とても楽しかったな。また2週間したら戻って来るけど、ソレまでアキバの御留守番をよろしくね」
「かしこまりました、御主人様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再びジャドー司令部。
ルイナが何かを閃く。
「わかった!2つのウィルスは、構造が似てるから…きっと毒性の弱い南ウィルスを使って強い北ウィルス用のワクチンを作るつもりだったのょ」
「そんなんで、コロナを治せるの?」
「残念だけど、症状を和らげるだけカモ。とにかく、パソコンで南北ウィルスの照合作業をしてみる」
「ソンな比較、やり出したら何ヶ月もかかるわょ?」
「そぉね。だから…先ず、単純な分析をかけてみて、ソレから類似性だけ拾ってみるわ…あ。」
「何?どーしたの?」
「単純化したらタンパク質の痕跡が見えてきた。コレなら、よく似たウィルスで治療法がアルわ。もしかしたら"オリンピック株"の患者に効果があるカモ!」
司令部の興奮が最高潮に達すると同時に来客w
「みなさん。ヴァハ博士が助言にお見えになりました。さ、博士。どうぞコチラへ」
「コロナウィルスのサンプルをお持ちした。何かの役に立つかもしれないと思って」
「わざわざ恐れ入ります」
「君達に協力したいのだ。懸命に犯人探しをされているようだからな。しかし、我が"節操なき医師団"メンバーのために言わせていただきたい。ウィルスにアクセス出来る2人は、共に有能で信頼出来ると」
「全く同感です。博士、素晴らしい部下をお持ちだ」
「…特に、ダリル君はヲタクではあるが、優秀な科学者で、実に研究熱心だ。ウィルスをバラ撒くナンで、絶対にアリ得ない」
「特に、ダリル氏ですね?わかりました。入り口までお送りします」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部に現場から続々情報が入る。
「ダリルは?」
「逃げられた。マンションはマヌケのカラ」
「モヌケ…じゃないか?」
ラギィ警部率いる万世橋の警官隊がダリルの留守宅に突入。
本人の姿は無かったが、令状のおかげで色々と収穫がアル。
「押収したパソコンには、元恋人からのメールがドッサリ」
「相手は(コスプ)レイヤーで、フラれた直後だった模様」
「そう言えば、恋人よりウィルスの方が大切とかうそぶいてたわ。私のコスチュームにも過敏に反応してたし」
「え。ムーンライトセレナーダー、その格好で容疑者のトコロへ?さすが秋葉原だなw」
「恋人と別れたのは、エッチなコスプレの押し付けが原因だったみたい」
「じゃ犯行動機は、失恋の腹いせかしら」
「ソコまで異常だったのか!ヴァハ博士がわざわざ彼は真面目だと言いに来たのも頷けるわ。彼が犯人だと言いに来たも同然ょ!」
「パソコンの元恋人以外の連絡先にも、全て確認を入れてます」
「了解。必ず捕まえて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、必ず捕まったダリル。
万世橋に連行されて来る。
「しまった!つい魔法使いメイドのコスプレしてたエアリに声をかけてしまった!"生ヲタッキーズ"だったから、つい…」
「そのコスプレ好きが命取りだったわね。須田町の地下鉄商店街の南北に2種類のコロナ変異株がバラ撒かれたわ。貴方の仕業ね?」
「え。変異株が2種類とも?」
「2種類の変異株を知ってるの?」
「1つは、中華な国の"オリジナル"だろ?そして、もう1つは…僕がワクチン開発用につくった弱毒性の変異株だ」
「何?前に会った時にはお話ししてくれなかったじゃない?」
「あ。ムーンライトセレナーダー!また会ったね。あとロケット兵のマリレと会えればコンプリートだ!」
「ねぇ前回は隠してたわょね?」
「だって黒ビキニのコスチュームに目が眩んで…ってそもそも聞かれてないし。とにかく、あの変異株をつくったから、僕はヴァハ博士に引き抜かれて"節操なき医師団"に移って来たンだ」
「そして、2種類の変異株を入手出来る立場になったワケね?やっぱり犯人は貴方しかいないわ」
「ま、ま、待て。馬鹿か?僕だけじゃない。ヴァハ博士も大手製薬会社と契約を争ってルンだ。みんな、転職の土産にウィルスの変異株を持参スルのは業界の礼儀…」
「ソンな礼儀がアルの?!で、ヴァハ博士も転職相談でアチコチ変異株を持ち歩いてるのね?」
「扱いには慣れてるからな。今なら、変異株は2種類とも"節操なき医師団"にある。博士も…カエイだって容疑者だ」
「製薬会社との転職契約の条件は?」
「もぉ何もしゃべらない。弁護士を呼んでくれ」
「あのね。アンタ達は生体有害物質を許可なく運んでンのよっ!さっさと質問に答えて。弁護士はそれから」
「でも、全てワクチン開発のための契約だ」
「何処の製薬会社?」
「アース・ウィンド&ファイザー社」
「大手だな。内容は?」
「何億ドルも絡む大契約だ。言えない」
「じゃアンタは…単なる産業スパイってコト?コスプレ好きの」
「そして…まさか致死率の確認のために変異株をバラ撒いたの?」
「だから、僕じゃない。須田町に日本最古の地下鉄商店街がアルなんて、今の今まで知らなかったし!」
「ホント?」
「中華な国の北ウィルスは、致死率が高い。しかし、ワクチンは弱いウィルスでつくるモノだ。僕は、つまるトコロ、タダのワクチン職人に過ぎないンだよっ!」
ソコへ都合よくジャドー司令部のサイバー作戦班からハッキングの報告が上がって来る。
「見つけました!地下鉄商店街の防犯カメラの映像にヴァハ博士が写っています!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あ。もしもし?CDCのナナホです。ヴァハ博士でらっしゃいますか」
「いかにも」
「先程は情報提供ありがとうございました。関連して、お会いしてお伺いしたいコトがあるのですが」
「今、外出中ナンだょ」
「お話し出来ますか?」
「運転中ナンだ」
「どちらへ?」
「明日、時間を作るよ。申し訳ないが首都高を運転中ナンだ。後にしてくれ」
電話は切れる。レイカ司令官が振り返る。
「逆探知、出来た?」
「はい、司令官。裏アキバにある"聖ナロコ教会"」
「え。またコスプレ系なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ホーリンパークに面した路面店"聖ナロコ教会"は教会風のコンセプトカフェだ。
客は"迷える子羊"として生殖、じゃなかった聖職者役のメイドに癒されに来る。
「あら?!ミユリ姉様!ご無沙汰ですぅ!」
「シエラちゃん、お久しぶり。早速ナンだけど、この"子羊ちゃん"御帰宅してる?」
「はい。でも、ウチは御帰宅ではなく"御礼拝"なのですょ」
教会のメイド長は、例によってミユリさんの後輩で、ヴァハ博士を指差す。
博士は、御屋敷の中のチャチな祭壇の前に跪いて静かに祈りを捧げている。
その脇にはオレンジ色の紙袋が置かれてて…
「博士、そのママ動かないで!ターゲットを確保。連行スルわ」
「やや?私服警官か?こんなメイドカフェまで?大げさだな」
「コロナ変異株の人体実験よりも大げさですか?」
「…全て人命を救うためだ」
「いいえ。大勢の尊い命が奪われました」
「変異株の威力を確かめないと、有効なワクチンを製造するコトなど出来ナイのだょ」
「そのための人殺しなら許されると?」
「どんな手段を取ろうとも、全ては大勢の罪なき人々を救うためなのだ」
「博士、その袋の中身は?まさか、新型コロナの変異株…"オリンピック株"では?」
「…違う。キャンドルだ」
「キャンドル?なぜ?」
「今回の全ての犠牲者を弔うために」
第4章 遺言とトシーノ
「秋葉原はどう?ミユーリ」
フィリピーナ独特の軽いアクセント。
ミユリさんの電話の相手はロザリだ。
「おばあちゃんの遺言のせいでテリィたんをお借りしてゴメンね。年に1度、家族で集まって昔みたいに食事をしろって…ホラ、テリィたんは、おばあちゃんのお気に入りだったから」
「テリィ様は、前の日から楽しみにしてらしたわ。おばあちゃんのトシーノは絶品だ、アレを食べズに帰れるかって」
「そぉなの?昨日のは私がつくったんだけど…おばあちゃんの味にはとてもかなわないわ。ところで、ミユーリ。アンタ、テリィたんに高気圧とか低気圧とか…何かヤヤこしいコトを吹き込んだ?色々と理由つけては、ヤタラとマリアの谷間にチップを突っ込んでたけど」
マリアはスパニッシュのクォーターで巨乳担当。僕の…いいや!みんなのお気に入りだ←
「あぁ!またテリィ様の巨乳病が出たwどんなワクチンも効かないのょw」
「ミユーリ、貴女のTOでしょ?シッカリお相手スルのょ?OK?確かに、アラサーになると巨乳って肩が凝るのょね。あ、ミユーリは大丈夫か。"軽い"から」
ミユリさんに、そんな恐ろしいコトが逝えるのは、アキバ広しと逝えど、ロザリだけだw
あ、彼女がいるのは神田だけど。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん。ブラックホールでは何が見えると思う?」
「全てが見えて…何も見えない」
「反ド・ジッター時空でのお話し?」
「ヤン・ミルズ場での話をしたつもりだけど」
ミユリさんとロザリが丁々発止?のヤリトリをしてる頃、僕はルイナとチャットをしてるw
「テリィたんには御礼を言わなきゃ。全部、貴方のアドバイスのおかげだもの」
「使い方さえ間違えなければ、いつも科学はヲタクの味方だ…しかし、ルイナもスゴいな。政府へのフリーパスを持ってルンだってね」
「首相官邸のお仕事、ずいぶん増えたの。実はジャドー司令部にも自由に出入り出来るし、望めばレイカ司令官に月面基地を案内してもらえるのょ」
「聞いてないな。まさか"潜り酒場"のヘルプメイドが首相官邸のアドバイザーだったとはね」
「…今回も大勢の命を救ったの。詳しくはお話し出来ないけど」
「原爆開発に関わった人がいて、30年経っても秘密を抱えていたそーだょ。まさか、ソレほどの秘密じゃナイだろ?」
「世界中で大勢が死んだの。原爆ナンか比較にならないわ…あ。危ない!」
「え。何のコト?」
「ミユリ姉様が、落ち込んでる女子を慰めながら仲良くなるのが、テリィたんの必勝パターンだから御用心って」
「何だソレ?」
「私も前にやられたわ、って」←
僕を乗せた夜行バスは、原子力発電所を目指し、夜の常磐道をヒタスラ北へと疾駆スル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ミユリさんとロザリの長い電話も、ようやく終わりを迎える。
「で、ミユーリ。あのね」
「なぁに?」
「覚えておいて。巨乳は天下の回りもの」
ミユリさんは、深い、深ーい溜め息をつく。
おしまい
今回は、オリンピック直前のコロナ状況を踏まえ"コロナ変異株"を軸に、中華な国と関係のある科学者、その同僚、感染阻止に奔走する統括官、警部、司令官、過去に半島勢力と戦った神田駅前風俗の諸嬢、官邸アドバイザーなどが登場しました。
さらに、主人公と神田駅前諸嬢との関係、変異株感染者の横顔、ヲタッキーズ顧問の正体などもサイドストーリー的に伏線を張ってみました。
海外ドラマで舞台となるニューヨークの街並みを、オリンピック直前に第4次コロナ宣言に突入する秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。