第四章 二度目のゲームオーバー
失敗した。
振りかぶったナイフは、トラちゃんの腕に刺さった。その直後、トラちゃんは、あの時の人狼の姿になっている。
階段を駆け上がり、駆け下り、ぐるぐると撒けるようなルートを通る。
何と言っても、トラちゃんの人狼は、ヘリオさんの時よりも、直線移動が圧倒的に速い。極力階段を通る。
非常階段を駆け下りると、そこはシャッターで閉まっていた。普段は開いているのに、夜は閉まっているのか。
人狼鬼ごっこはまた僕の負けみたいだ。
流石にもう一度チャンスをくれるならありがたいが、神様とか言うそれはその許可を下さないだろう。
トラちゃん、今度は僕が殺される番みたいだね。
トラちゃんの腕が振り下ろされる。
ガッッッッッ
鈍い音と共にバタ、と倒れる。
倒れたトラちゃんの後ろには、雨谷が立っていた。その手には先が紅く濡れたげんのう。
「雨谷...なんで...?」
僕がトラちゃんに殺されると思い込んでいたもんだから、しばらく頭が回らなかった。
「お前がトラふぁるも殺しそうだったから、尾けていただけだ。ただ、もし本当に人狼なら、話は別だった。」
救われた。僕は、雨谷や翔くんやゆう兄を救うために行動していたはずなのに、救われた。
呆然としていると、突然トラちゃんだった人狼が光り出す。薄い光だ。2人には何が起こっているのかわからなかった。
光が消えたと思うと、突然人狼の身体は霧のように消え、そこには、トラちゃんが居た。
「トラ...ちゃ...」
「あつ...?」