第一章 やり直し
僕はあの日死んだ。それは間違いない。
でも、僕の目の前に広がっている光景は、一昨年まで通っていた、都亜留中学校だ。
ふと玄関に目をやる。改装されたはずの玄関は、元の古くさい姿に戻っている。
「つまり、僕は、中学一年生まで戻ってきたって事か?」
その光景からはそうと捉えられる。普通ならそんなわけないと思うが、人狼というあり得ない物を観た僕は、何を言われても信じそうだった。
「おーい!あつ!早く来いよ!」
聞き覚えのある声だ。なんだか懐かしい。
「夜中の学校に来てビビりでもしたか?そういうのは雨谷にやらせときゃいいんだよ。」
トラふぁるだ。間違いない、今僕は中一の夏、中学校に夜中に潜入したあの日に居る。
「あ、うん。ごめん、ちょっと考え事してただけ。」
ということは、まだあの事件、御米館で皆が死ぬ前に、僕がなんとかすれば止められるかもしれない。
ふと、ポケットに手をやる。ナイフだ。僕の兄から持たされている護身用だが、兄には自分や誰かを護るときに使えと言われている。もちろん親には内緒で。
2人を殺すということは、それ以上の沢山の命を救うことが出来る。
でも、僕は親友2人の命をこの手で奪うことになる。