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採掘作業と皮算用

 リアルの今日は『Battle Galaxy FullーDive』が始まってから初めての土曜日だ。

「燃料、推進材共に充填完了、と」

 私の船『マーユ・ワン』が搭載出来る推進材は、航行時間換算で二五時間分しかない。燃料の方は、七〇〇時間稼働出来るだけ搭載出来るけれど、一回超光速航法(FTL)する度に五〇時間分の燃料がなくなるのでやっぱり足りなくなる。

「推進材二四時間分、燃料五〇〇時間分かあ」

 まあ、これだけあれば余裕だろう。

「さて、行くか」

 気合いも十分に、通信を入れる。

《マーユ・ワンよりステーション・ワン。船団遠方の資源採掘のため出港したい》

《ステーション・ワンからマーユ・ワン。フライトプランを確認。ステーション・ワンから五〇〇キロメートル離れるまではこちらで航行させます》

《五〇〇キロメートルですね? 了解しました》

《くれぐれも、無事に帰ってきてください。では、良い航海を》


 ドッキングを解除したマーユ・ワンは、自動でステーション・ワンから離れていく。

「おおー」

 『JP1船団』の周辺では、遠方への資源採掘のために、プレイヤー達が組んだ採掘船団が隊列を整えては光となって消えている。

「じゃ、私の番だね」

 船団から十分に離れて、安全にFTL出来る距離になったところで、私は準備の最終段階を進める。

「FTL機関燃料充填完了」

「座標入力完了」

「FTLまで一〇秒…………、五、四、三、二、一ジャンプ」


 揺れがおさまると、真っ暗な宇宙にポツンと浮かぶ小惑星の近くに、私はいた。

「FTL完了。座標確認……、完了。FTL予定通りに成功」

 ふう、と息を吐き、すぐさま気分を切り替えて作業に移る。

「偵察ドローン六機放出。偵察開始」

 偵察ドローンとマーユ・ワン本体のスキャナで集めているデータを分析する。

「この宙域近くを偵察した次元潜航偵察艦が、戦闘機型エネミーと接触してかくれんぼしたらしいんだけど。どこにい……、いたわ」

 私から見て、小惑星の裏側に、戦闘機型エネミーの残骸があった。

「この小惑星に突っ込んだのかな?」

 決めつけるには早いけれど、そう判断する。

「技術ツリー伸ばさなきゃだからこのエネミーの残骸を回収するのは決定として。このクレーター少し掘ると氷が手に入るね。埋蔵量は五〇トンかな?

 なら、エネミーの残骸を回収させつつ、固体用採掘機を設置して掘削、のち氷を採掘。

 同時並行で、レゴリス用採掘機を設置して、レゴリス四十トンを採掘。

 これでいこう」


 幸い、偵察ドローンはエネミーを見つけなかった。

「偵察ドローン四機を警戒のために残して、この小惑星にマーキング。

 作業用ドローン四機でエネミーの残骸を回収。

 作業用ドローン二機で固体用採掘機を設置。

 作業用ドローン二機でレゴリス用採掘機を設置」

 作業指示を出して。

「採掘、開始!」


 と、気合いを入れたものの。作業は順調そのものだった。

「エネミーの残骸は回収完了したね。この作業に当たっていたドローンのうち二機は帰投。一機ずつ、各採掘機が採掘した資源を運ぶ作業に移動。

 氷は一二トン採掘完了。レゴリスは二三トン採掘完了。

 非常事態も起こってないし、何もなかったら本当暇だなあ」

 船団から離れたせいでゲーム内掲示板も使えないし、何の用意もしていなかったら退屈だったろう。

「ま、私は目標に向けてやることあるから問題ないけれど」

 つぶやきつつ、『店舗経営資格』のテキストを読む。とはいっても、リアルで簿記三級を持っている私からすると当然で楽勝な内容だ。

「法規も『『資格』取ってない商品は売るな』程度だし、これは取れるね」

 早速明日試験を受けよう。

「『ジャンク修理資格』も『機械部品販売資格』も取ったから、これで『ジャンクヤード』を開く準備が整ったね。まあ、資格取るので貢献度枯渇したからまだ無理だけれど」

 私のやりたい店『ジャンクヤード』を経営するには、表で商品を売る『ショップ』とジャンクを置いておく『倉庫』、そしてジャンクを修理する『ガレージ』が必要だ。

 ガレージは倉庫と共用でいけるので、省略するつもりだけれど。

「戦闘艦のプレイヤー(キャスタニカ)達は自前の船以外に戦闘機持ち始めたらしいから、ジャンクを取り扱うお店は絶対必要になるのよねー」

 『JP1船団』は、地球から脱出して新天地を目指している船団だ。当然補給のアテはないので、ジャンクを修理して使えるようにする商売は必要となる。

「ま、私が勝手に思ってるだけかもだけれど」

 あと、ゲーム内通貨のクレジットも必要だ。

「貯金は現時点で一二〇万クレジット。これはひと山いくらのジャンクをステーション価格で一二〇トン買える値段だけど。色付けて買うから、一〇〇トンも買えたら良い方ね」

 一〇〇トンもジャンクがあれば、二〇〇万クレジットは最低稼げる。

「で、お店の位置はー、」

 目を付けているショップは、左舷三番商店街にある。駆逐艦やコルベットといった小型艦艇が停泊する左舷三番ドック群のプレイヤーの拠点なここを選んだ理由は。

「小型艦艇乗りは維持費あんまりかからないから、戦闘機を買ってるキャスタニカが多いみたいだし。それに小型艦艇を改装してカーゴを増やしてるキャスタニカは多いから、お小遣い稼ぎがてらジャンク拾ってるみたいなのよねー」

 そして、拾ったジャンクを『何かに使えるかも!』とカーゴに積みっぱなしのキャスタニカも多い、みたい。

「この調子なら、来週末には私のお店を持てるね!」

 取らぬ狸の皮算用だけれど、暇を埋めるよう、私は妄想を楽しんだ。

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