開始一日目は情報収集4
「ここが簡易教室街だ!」
犬コーディ男に案内されて、あんまりお店のない商店街を通り過ぎてたどり着いた簡易教室街は、オフィス街が地下に形成されたみたいな感じになっていた。
「あれだな」
「うん」
「仕事しに来たみたいだな」
「わかる」
「オフィス街、無人、朝帰りうっ頭が」
「それ以上いけない」
トラウマを刺激されたらしい右隣の赤髪クローン男をなだめている間に、犬コーディ男は解説する。
「ここ簡易教室街で受けられる『講座』は、習得までに時間がかからない簡単な『資格』しかない。その分必要貢献度も低いが、な。じゃ、解散するか?」
「「はい」」
「んじゃ、解散な」
集団がばらけ始める。
「ほーん。また貢献度貯まったら『講座』受けるか」
「えお前まだクエストクリアしてないの?」
「は? まだクエストやれねえだろ?」
「ステーション・ワンにドッキングする前に納品クエスト申請してたらクリア出来たんだよ」
「は? まじで?」
「マジだぞ。整備関係の申請してなかったらまだ納品クエ出来るはずだから、申請しとけ」
「……整備申請してしまったわ」
「おうふ」
「どんまいだな」
集団の前の方からかなしい話が聞こえてきた。
(かなしいなあ)
気を取り直して、簡易教室街を歩いて欲しい『資格』を探す。
「ジャンク関係の『資格』が欲しいんだよなあ。っとお?」
『ジャンク分別資格教室』なるものを見つけた。
「どんな『資格』なんだろ?」
その教室に入ると、機械感丸出しのロボットがいた。
「いらっしゃいませ。『ジャンク分別資格』に興味がおありですか?」
外見に似合わず流暢に話すロボットにびっくりしつつ、尋ねる。
「その『ジャンク分別資格』って何ですか?」
「『ジャンク分別資格』についての説明ですね?」
「はい」
「まず、船団でいう『ジャンク』とは、『人類が作った機械の残骸』のことを指します。『故障した機械』もこれに含まれます」
故障した機械もジャンクに含まれる、と。
「そのジャンクを『そのまま使えるもの』『修理すれば使えるもの』『使えないゴミ』に分別するのに必要な『資格』が、『ジャンク分別資格』です」
「なるほど」
これは私がしたいプレイングに必要な資格だ。ついでなので、必要な『資格』を聞いてみることにする。
「相談なのですが、『使えるジャンクや修理したジャンクを販売する店』をやるには、どのような『資格』が必要ですか?」
「検索中……。『使えるジャンクや修理したジャンクを販売する店』は『ジャンクショップ』に該当します。
ジャンクショップを経営するには、当『ジャンク分別資格』の他、『ジャンク修理資格』『機械部品販売資格』『店舗経営資格』が必須です。
また、今後エネミーとの戦闘があることを考えた場合、『エネミー品無力化資格』『エネミー品分別資格』『エネミー品修理資格』『エネミー品販売資格』も習得することを推奨します」
簡単にメモはとる。
「ふむふむ。それらのうち、簡易教室街で習得出来る『資格』はどれですか?」
「『ジャンク分別資格』『ジャンク修理資格』『エネミー品分別資格』『エネミー品修理資格』です」
「他の『資格』はどこで習得できますか?」
「『機械部品販売資格』『店舗経営資格』『エネミー品販売資格』は、『商業センター』の『講座』を受けて試験に合格する必要があります。
『エネミー品無力化資格』は、『データ管理センター』の『講座』を受けて試験に合格する必要がありますが、データ管理センターの『講座』を受けられるようになるには、クエストを累計一〇〇件クリアする必要があります」
「なるほど、ありがとうございます」
メモをしまい、本題に入る。
「ところで、ここの『ジャンク分別資格』を受講するには、どれだけの貢献度が必要ですか?」
「『ジャンク分別資格』の受講に必要な貢献度は『一〇』です」
クエストは、『レゴリス一〇トン』を三件、『氷一〇トン』を一件達成したから、私が保有している貢献度は『一六』だ。レゴリス五トンで貢献度一、氷一トンで貢献度一もらえた。
(他の資格を受けるには時間かかりそうだけど、そこは時間をかけて解決していくかあ)
沈黙を『悩んでいる』ととらえられたのか、ロボットはこんなセールストークを始めた。
「『ジャンク分別資格』を保有した場合、申請をしておけば、ログアウト中あなたのボディが自動で『ジャンク分別クエスト』を行えるようになります」
「ここの講座受講します」
ログアウト中も金策が出来るのはとっても素敵なことだ。
(船の修理費とか燃料代たっかいし、新造するとなると馬鹿みたいにクレジットも貢献度もいるから、ログアウト中に出来る金策があるならやるべきなんだよねえ)
船は稼働させているだけで燃料を使うし、動かせば推進剤を使い、壊れれば修理代がかかり、弾薬を撃てば弾薬費がかかる。燃料と推進剤については、ある程度の支給があるとはいえ、お金は少しでも稼いでおくべきだ。
「『ジャンク分別資格』を受講なさるのですね?」
「はい」
「分かりました。では、二階に上がって『二〇一号室』に入り、ヘッドギアを装着してください。フルダイブ空間にて、講座が行われます」
フルダイブゲームの中でフルダイブ講座を受けることになるなんて。マゾゲーと言われるだけのことはあるなあ、と感心する。
「二〇一号室ですね? 分かりました。早速受けてきます」
「頑張ってください」