目標への第一歩4
マサトミと別れた後、トランスポーターに乗って私の倉庫とガレージのある倉庫街へ行く。
トランスポンダーのお陰で巨大なステーション・ワンの右舷から左舷まで一瞬で着くけれど、倉庫街は滅茶苦茶広いので、トランスポーターのロビーから私のガレージまで中々歩く。
「右舷二番倉庫街の第三区画はー、ここだね」
基本的に『~街』と付く場所の建物は壁と一体化しているので、一目見ただけでは分からい。だけれど、自動ドアの上に『オウルズヤード』と書かれた看板があるので、分かることは分かる。
「倉庫街の自分の倉庫の前に塗装するには、貢献度一〇〇いるから、今は無理だね」
右手を自動ドアの横のタッチパネルに付けて、自動ドアのロックを解除すると、スン、とドアが開いた。
「おおー」
そこから見えるガレージには、私が指定した通りに機械が並んで、照明に照らされて灰色の無骨な床に影を落としていた。
「やった!」
まだお店もちゃんと始まっていないのに、既に嬉しさで飛び跳ねたくなっていた。
「じゃ、早速買ったジャンクを処理するかあ」
ガレージに入ってドアをロックし、私は早速とばかりにジャンクの処理を始める。
まずは、雑に固められているジャンクを倉庫から運んできて、ほぐしつつざっくりと塵を飛ばす。
「ジャンクは一〇〇キロ単位で固められているから、結構凄い音がするんだよねえ」
次に、ジャンクを一品ずつ分けて、エアーで本格的に塵を飛ばす。
塵が落ちたジャンクは、機械によって明らかにゴミなものは取り除かれて。
「ここからが、私の出番ね」
残ったモノを、私の手で選別していくことになる。
私が集めるジャンクは、宇宙空間に漂っていたものだ。漂う間にデブリと衝突したり。漂う原因となった破損で壊れてゴミになっていることが多い。
「ジャンク第一弾一〇〇キロのうち、二三キロしか残らなかったのね」
ゴミはリサイクルに回すしかなくて、一トンあたり五〇〇〇クレジットでステーション・ワンの『資源回収課』が買い取ってくれる。それでも、『ほとんどゴミだから大丈夫か?』と言われそうなものだけれど。
「結構残ったね」
私のまだジャンク屋として未熟な感覚からすると、『かなり使える品がある』という感じになる。
あくまで、『自動ジャンク分別クエスト』のログと各種『講座』で覚えたことから判断すると、ジャンクは一割も使えるモノがあればマシな方だ。なのに、ジャンク第一弾には二割強も使えそうなモノがあった。
「幸先いいね」
頬を緩ませつつ、分別する。
「修理すれば『秀品』が一点五キロ。これは戦闘機用の装甲板の一枚だね。余計な部分を取り除いて塗装を剥がせば、今すぐにでも売りに出せる。
『優品』は戦闘機用の燃料パイプ二本。歪みを直さないとね。
残りは『良品』の可能性アリなモノがくっついている基板。使える部品をバラさないとなあ」
そう言っている間にも、機械は次々にジャンクを処理する。
「手を止める暇はないね」
急ぎつつ、でも丁寧に、ジャンクを選別していく。
選別して気付いたのは。
「基盤とかエンジン回りの部品とか滅茶苦茶多いし、そのほとんどが『良品』になりそうな感じなんだよなあ」
この二つが多いのは当然のことだ。というのも、船には姿勢制御用に小さなエンジンが沢山搭載されており。それらは電子制御されているからだ。
「基盤とかは手間がかかりそ……、ん?」
倉庫で、大型のジャンクの選別に当たっていた作業用ドローンがエラーを吐いた。
「どうしたんだろ?」
首を傾げつつ、洗浄・選別ラインに投入するジャンクの供給を一旦やめて、倉庫に移動する。
「あれま」
そこでは、巨大な装甲板を前にした作業用ドローンが動きを止めていた。
「これはー……、規格からして、コルベット用の装甲だね」
作業用ドローンの情報によると、一枚で五〇〇キログラムはあるらしい。ざっと見た感じ、大きな損傷もない、良質な装甲板だ。
「細かなところは見てみないと分からないけれど、接合部とかをどうにかしたら売りに出せそうね」
この装甲板は四〇万クレジットで売れるだろう。そうでなくても、装甲板は特殊合金なので、資源としてゴミ以上の値段が付く。
「じゃ、ガレージに持って行って、とお?」
指示を出すと同時に、今度は別の作業用ドローンがエラーを吐いた。
「防空レールガンかあ」
これまた八〇〇キログラムを超す大物だ。
「機関部が壊れてるけど、砲身は使えそうね。ガレージに持っていって、と」
防空レールガンの砲身だけなら、一〇万クレジットは固い。
「これはジャンクヤード、思ったよりも儲かりそうね」
微笑しつつ選別作業に戻り、洗浄・選別ラインへのジャンクの投入を再開する。
「『優品』、『良品』、『良品』、『良品』、修理すれば『秀品』」
サクサクと選別して。選別したものは、作業用ドローンに次のラインへと運ばせる。
次のラインは『音波による洗浄』で、これが終わればようやく修理に入ることが出来る。
「ま、割れてる基盤に関しては、専用の機械に部品取りさせるけど」
銀鉱脈効果で買うことの出来た『基盤解体装置』。これに割れたり穴が開いたりした、明らかに駄目な基盤を投入させて、部品を取り。次の工程『電子部品選別装置』で、使える部品・損耗しているけれど使える部品・ゴミ、に自動で分ける。
「『基盤解体装置』と『電子部品選別装置』のお陰で壊れた基盤も自動で選別出来るのは、楽だし商品が増えるしいいよねー」
良い買い物をしたなあ、と自分で自分を褒めつつ。私は、選別作業に専念した。




