上級素材、ありがとね
「味方くんありがとう、もう死んでくれてええで」
とあるゲームで、優秀な味方を敵モンスター討伐後に皆殺しにした
世間では汚いだの、ずるい、クズ。
などなど色々な呼び方があるがそんなこと気にして生きるのは俺には無理だ
勝利が全て、どんな手を使っても最後に笑って俺が栄光を掴む
こうして今まで生きてきたせいで、友達0、恋人0の人生を歩んできたが。問題ではないだろう。
どのみち死ぬときは一人なのだから
超強力なモンスターさんも今や死骸と化し、その前で味方による復活を待っている味方を無視して、素材を独り占めする
最初はこんな非道なことはしないと誓っていたが、時が経つにつれ、「いい顔するのは面倒くさい」という理論が俺の中に生まれ
今に至る
全ての素材を回収し、少し休憩に飲み物をと思ったが、ペットボトルのお茶は切れていた
「だるー、お茶がスーパーから家に歩いてきてくれんかなぁ」
そう思って部屋を出ると、妹とその彼氏に遭遇した
黒髪に制服、ぱっと見清楚で美人だが。口の悪さは麻生並みだ
「な!お前出てくんな!!キモいんだよ!」
第一声からそう言われると、いつものように言い返した
「自己紹介か?」
「死ね」
彼氏くんも俺を睨んでいたが、それ以上は何もしてこなかった
そうして玄関を出て歩き出したとき、謎の音が耳に入った
チラッ
空を見上げる
そこにはなんと、無人偵察機がエンジンを故障した様子でこっちに飛んできた
「FU○K」
ドォン!!!!!!!!
凄まじい爆風と共に、俺は消し飛ん…だ?
震える目をゆっくり開けると、見慣れない洞窟に自分はいた
「ついにゲームのやり過ぎで脳まで狂ったか」
あたりには光る鉱石がそこら中にある
夢か現かわからない状況に困惑したが、自分の足元を見る。脳で感じる触感や意識ははっきりしている
「げ…げんじつ?」
身体が震え出した
すぐさま影に身を潜め、呼吸を整える
「落ち着け、俺はさっきまで普通に暮らしてたんだ…」
さっきのひょんなことを思い出す
『死ね!』
昔はあんなことを言う妹ではなかった、もっと可愛かったのになぁ
あーこれ死ぬわw
脳がそう確信したときだった。
ドォン…ドォン…
遠くの方から音が聞こえる
爆発?よくわからないがなぜかそれは近づいてきた
「あー死ぬ死ぬww」
笑っているとその音はすぐ目の前に迫り、壁が破壊された
その衝撃と共に、燃えたドラゴンが逃げるように出てくる
「うおおお壮大」
死が覚悟できたのかゲームをやるような感覚に陥る
そのグラフィックの高さに感心していると、ドラゴンの後から人間がやってきた
「やべ」
咄嗟に物陰に身を隠し、様子を伺う
「後もう少しです!ダン!!!」
「カティ!!魔力強化頼む!!」
「はい、我が身に力を!『ナゼラード』!」
まじファンタジーじゃん!
興奮が俺を包んだ
その状況に見惚れてしまうが、さっきのゲームのことを思い出す
(漁夫の利したいなぁ…)
だが、今の俺にあの人間に勝てる力はないとわかる。
とりあえず戦況を見守ろう
その戦いはアッタカーであろう男が魔法に強化された剣で竜の首を斬り、終わることとなった。
「やりましたね!上級モンスターであるドラグーンはかなり高値で売れますね!」
その言葉を聞いた瞬間に、俺の身体に電流が走る
(あ、漁夫の利するわ)
今の状況は全く理解できないが、利益をタダ同然で得るチャンスであることを確信し、立ち上がった
漁夫の利を開始する!!!