物語にはいろいろなパターンがあるが、なろうで読まれるのは”地獄から天国”
さて、村上龍氏はタクシードライバーの脚本家、ポール・シュレイダーの兄でやはり脚本家のレナードに聞いた話として「映画のストーリーには二種類しかない。穴に落ちたものがその穴の中で死んでしまう話か、その穴から這い出す話か、その二つだ」とエッセイで語っています。
またバーモント大学コンピュテーショナル・ストーリー研究所のアンドリュー・レーガン研究員のチームは1700以上の物語も6つの基本的なパターンに収束すると発表したようです。
以下は、その6つの基本的なタイプですが……
『地下の国のアリス』などの、立身出世物語に見られる不幸から幸福になる型。
『ロミオとジュリエット』などの、悲劇に見られる、幸福から不幸になる型
映画によくあるという穴の中の男が這い上がるという幸福・不幸・幸福になる型
『イカロス』など、不幸・幸福・不幸になる型
『シンデレラ』などボーイミーツアガールな恋愛にみられる、不幸・幸福・不幸・幸福になる型
『オイディプス』など、幸福・不幸・幸福・不幸になる型
これ自体はハリウッド映画のタイムテーブルや時代劇のパターンなのですね。
0分 開始
↓
30分(15分)ポイントⅠ:問題が起こる。(悪人が悪だくみをする)
↓
60分(30分) ミッドポイント:問題が拡大する。(悪人の悪だくみで善人が死ぬ)
↓
90分(45分) ポイントⅡ:問題を解決にする。(この印籠が目に入らぬか)
↓
120分(60分) 終了(と思う吉宗だった)
みたいな感じですね。
これに当てはまらないタイプとしては、最初から最後まで特に不幸な要素が入らない日常系アニメやラブコメ漫画と、最初から最後まで全く救いがないサスペンス・ホラーに、ダンサー・イン・ザ・ダークのようなヒューマンドラマなどがありますから、実際は8パターンかなとも思います。
さらに、登場人物には幸福でも視聴者や読者には不幸に見えるメリーバッドエンドもありますがあんまり細かいことは考えないで行きましょう。
で、なろうで受けるのは基本的には『地下の国のアリス』などの、立身出世物語に見られる不幸から幸福になる型。
つまり地獄から天国タイプですね。
”オーバーロード”や”転生したらスライムだった件”のような異世界転移転生は転移や転生する前は不幸なパターンが多いですし、クラス転移での外れスキルや追放や婚約破棄は、追放や婚約破棄される前は不幸だけど、そうされた結果、幸せになるというパターンです。
現代恋愛の場合は地獄の中に一筋の光明みたいな、主人公は一見陰キャでクラスなどではひどい扱いを受けてるけど、高根の花のヒロインにだけは、なぜか好かれてるというパターンも多いようですが。
「シンデレラ」もしくは「ボーイミーツアガール」タイプの「男の子が女の子に出会い、女の子をさらわれるが、最後に女の子を取り戻す」は天空の城ラピュタがまさにそれだと思うのですが、なろうでは主人公やヒロイン自体が滅茶強いので、女の子が悪役にさらわれたりすることが、読者に対し強いストレスになりがちですので微妙かと思います。
劇や歌舞伎などでは悲劇は割合好まれますが、こういったものはすでに十分成功していて、経済や精神的な余裕があり、退屈な日常を持て余している人が退屈しのぎのために見るものなのではないかなと思います。
おそらく、すでに成功して幸せであるが退屈な人たちは、転落する危険に常に怯えているがそういったことへのスリルも求めているのでしょうね。