プロローグ・太郎、昔の同級生とすれ違う。
「あ、太郎、久しぶり。」
そこにいたのは、大学時代の同級生の隼人だった。
同級生の中でも優秀な方だった。ただ俺の周りは優秀な奴が多い。
和瀬田を出ていると周りはエリートばかりだ。
「あ、隼人、お疲れ、最近どうしてるんだ?確か四菱商事で働いていたよな。」
「あー最近、イギリスから帰ってきたんだよ。海外赴任中は会社の金で贅沢できたよ。赴任前に結婚をしたんだ。」
「そういえば、和瀬田の同級生の静子と結婚したんだっけ。だいぶ前に花子から聞いたよ。」
「花子かあ懐かしいな。サークルの姫だったよな。そういえば、お前と付き合ってたんじゃなかったか?」
「いや、色々あって、今はちょっと微妙なんだ。」
「え、そうなのか。なんか風の噂で聞いたんだけど、脱サラしてから色々あって、騙されたって聞いたぞ。俺でよければ、なんでも相談乗るぞ。
なんならうちの会社の人事を紹介しようか?」
「そうやって言ってもらえるだけで感謝だよ。」
そうこう立ち話をしていると、2人組の黒服が向かってきた。
「ななんだよこいつら、太郎、こっちに向かってくるぞ。」
「ああ、こいつらは俺のボディーガードたちだ。最近狙われることが多くてな。」
隼人は太郎が何を言っているのかよくわからなかった。
風の噂では、彼は騙されて、2ヶ月前に破産に追い込まれて、大変な状況だと同級生の間で話題になっていた。
しかし、目の前現れたのは、明らかにVIP扱いを受ける太郎だった。
「な、な何がどうしたら、こうなるんだ??太郎。」
「ちょっと色々あってな。」
ただ太郎はそれを隼人に吐き捨てた。
太郎は黒服とともに3台停まってある黒塗りのベンツに乗り込んで行ったのだ。
隼人は目の前の状況が飲み込めず、呆然としていた。
ふと前を見ると、隼人の視界には「ジャックポット」と書かれた看板があった。
目の前にあったのはオイスターバーだった。
「牡蠣があたったら困るだろうが!!あ、でもジャックポットだったら、ほとんど当たらないのか。」
隼人は独り言を呟いた。妙に納得した。