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キルの矛盾と整合は、生か死か  作者: きゆたく
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勇者リュウキの最期


「じゃあ、無口キャラと露出獣人はどっちがいらない?」


「何でそんな事を…」


「顎から下が無くて喋れない女と、手足が無くて動けない女。どっちが邪魔者?」


「どっちも…大切に決まってるだろ!」



 キルのふざけた選択に、リュウキは怒る。でも彼には何も出来ない。



「どっちも…その言い方は、物扱いだね。もう彼女達は、君にとって物なんだよ。言葉尻に出てる」


「そっ、そんな事は…」


「リュウキ…嘘でしょ…アタシは…」


「ヒュー…ヒュー…」



 リリルとナーミは、もう諦め始めてる。今の姿で、生きていくのも辛そうだしな。



「いらないみたいだね。という事で殺します」


「やっやめろー!」


「ギャッ!グッ…たっ助け…痛い…助け…て…」


「フガッ!…フッフッ…フガッ…ヒュー…ュー…」



 二人は全身を何かに刺され、息絶える。リュウキの声は届かない。シェリーは涙を流し、膝から崩れ落ちる。



「くっくそっ!何て事を…ナーミとリリルを…よくも…良い奴なのに…何で死ななくちゃ…」


「君にとって、良い奴なんでしょ。僕にとっては悪い奴だよ。僕を殺しに来たんだから」


「絶対に殺してやる!」


「そう?戦うの?」


「やってやるよ!命と引き換えにしてもな!」


「最初からその覚悟で来てれば、もう少し違ったろうに」


「うるさい!」



 そしてリュウキは、全力で斬りかかる。魔王を倒す為に作った最高の聖剣、天桜剣で。



「食らえ!天桜剣!」


「効きませんて」


「どうなってんだよ!シェリー、強化魔法を描けてくれ!」


「はっはい!ブースト!」


「まだわかんないの?」


「これでどうだ!天桜神滅斬!」


「はぁ…」



 そしてキルは動じない。何故なら、全く効かないから。リュウキ達には、どうしようもない。



「なっなんで…俺の全力を…」


「私も精一杯です…」


「だから、効かないって言ってるじゃん」


「一体…どんな魔法を…」


「魔法とかじゃなくて、そうしてるだけなの」


「だから、それが何なんだよ!」


「だから、そうしてるんだって」



 意味の無い、押し問答をする。リュウキも、頭が追い付かない。



「さっきの、剣の名前や技の名前さ…自分で付けたんでしょ?それって恥ずかしくないの?」


「恥ずかしい訳無いだろうが!」


「剣も自分でデザインしてるみたいだし、天桜剣?神滅斬?聞いてられないよ。僕が恥ずかしいよ。こっちの世界で、それが受けてるの?恥ずかしいし、悲しいよ」


「お前には関係無いだろうが!」


「あるよ。そのダサいので、攻撃されるんだから…誰かに見られたくないし…これだからチートを貰うとダメなんだよ…」



 確かに…本人がカッコ良いと思ってる物は、ダサいよね。



「そのタメ口キャラもダサいし、前髪の残し方もダサいし、ああ~やだやだ」


「何だと!」


「君はねぇ、最初から礼儀正しく、僕に指導をお願いし、その上で一対一で試合をしていれば、誰も死ぬ事も怪我する事も無かったんだよ?わかってる?君が二人を殺したの。その変態女の胸が無くなったのもね」


「「えっ…」」


「君が僕を見下し、勝手に殺しに来て、しかも一人に対して四人で戦おうとした。その卑怯な考えや行動が、今の結果だよ。君のせいなの、全てが」


「嘘だろ…何言ってんだよ…」



 キルは本気で言っている。彼は殺したくて、殺す事はない。傷付けたくて、傷付ける事もない。それを聞いてリュウキは、完全に心が折れる。



「きっとそのチートがいけないんだな。勘違いする元だ。そうだな取り合えず、そのチートや魔法はもう使えなくしよう。変態女も魔法とかはもう使えないから。装備品も無価値にするよ。一からやり直しだね」


「嘘だろ?ファイヤー!…ウォーター!」


「ひっヒール!…反応が無い…」



 彼等の魔法は、もう二度と使えない。全てが無に返っていく。



「ただの人間になったし、もう良いや…二人はもう帰って…本の続きもあるし…」


「くっくそ!」


「リュウキ…取り合えず引きましょう。いつか…二人で倒しにまた…」



 そう言って二人は、慌てて出ていく。キルは気にする事もなく、本の続きを読み始める。



※※※



 彼等は表に出て、モンスターと対峙して気付く。もう魔法もチートも何も使えない。ここに来るまでに倒してきたモンスターも、これからはただの人間として戦わなくてはいけない。



「どっどうすれば…」


「わっ私も…」



 リュウキは、元の弱いただの学生に戻った。雑魚モンスターも倒せないだろう。元々、物静かな少年だった。それがこの世界に来て、能力を得て、良い気になってしまった…。本当に馬鹿だ。シェリーも今じゃただのか弱い女性だ。使命感だけでは、どうにもならない。



「くっくそ!剣も重いよ…どうしたら…」


「しっかりして!私だって…あっモンスターが…」



 モンスターがやってくる。ここは人里から離れた山だ。どうにか逃げて戻るしかない。だが彼等にはその力も今は無い。



「うぎゃっ!はっ離せ!ぐはっ…いっ痛いよ…やっ止めで…助け…で…ヒギッ…」


「いやっ!こんな所で…死にたく…死に…グフォッ!ギャッ!…ギギ…じにだぐ…ガガッ…」



 もう死ぬしか道は無い。力の無いただの人間は、必ず淘汰される。そういう世界だし、彼等もここに来るまでは、そうしてきたはずだ。結局は、勝手に自分を主人公と思い込み、勘違いをしてただけの、間抜けという事だ。魔王は倒したかもしれない。世界を救ったのかもしれない。でもそれは大した事でもない。それだけなんだ、ここでは。



※※※



「次はどの本を読もうか…」



 キルは何も気にしていない。さっきのリュウキ達の事もどうでも良い。死のうが生きようが。関係無いのだ。彼にとってはそういう事なんだ。



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