2−3
「おい、風紀!」
俺はあの場に俊を残して、デザニィに戻ってきた。傷一つ無い俺の顔を見て、全ての人が安心…してないな。
「俊は大丈夫なのか?」
亮平にそういわれて、俺は軽く頷いた。
「さぁ、行くぞ明日香」
「うんっ!」
明日香だけは気付かない。なんたって、馬鹿だから。
デザニィを出た俺達を待っていたのは、冷たい視線だった。いや、俺達というよりかは俺だな。
なんたって、こんな可愛い女を連れて歩いているのだから。
さっき俊に言われた「ルックス」については自覚しているつもりだ。
「どうしたのぉ?」
明日香の不思議そうな目が、俺の目の前に現れた。
「うぉい!」
心臓をバクバクさせるな明日香。
「風紀ありがとねぇ」
「何が?」
「迎えに来てくれて」
そのあと、沈黙。
「あ〜…新1年生はどうだった?」
沈黙を紛らわすために、俺はそう聞いた。
「映画研究部って感じだったよ」
…分かりやすい説明だ。
映画研究部って感じ=特徴ある人なのだから。
再び沈黙が始まると、俺はあるものに気付いた。
カツカツカツカツ。
後ろのほうから何か歩く音が。
俺はその場に止まってみた。
案の定その音も止まる。
「風紀〜?」
明日香に名前を呼ばれた。
「ん? あぁ今行く!」
俺はそう言って、駆け足で明日香の下へ走った。
明日香はこの音には気付いていないらしい。
聞いてはいないがそんな感じだ。
その日は何事もなく家に着いた。
「気のせいか」
俺は自分にそう言い聞かせて自分の部屋へと入っていった。
次の日の朝。
事件は起きた。
「ふ、風紀ぃ〜〜〜!」
バン! と勢いよくドアを開ける明日香。
何時かは分からないが、いつもより眠いのは確かだ。
俺の布団に明日香が手を掛けた瞬間、俺の目覚めはふっ飛んだ。
「な、何!?」
「これ!」と言って、出てきたものは封筒が一つ。
「これがどうした?」
「宛先見た?」
「宛先ぃ?」
俺がそう言って宛先を見る。
そこには『明日香様、風紀様へ』と書かれていたのだ。
「亮平じゃないの?」
俺がそういうと、明日香は思いっきり首を横に振って、その封筒の中身を俺の布団へと撒き散らかした。
「こ、これって」
明日香の写真&俺と明日香が家の中に入っていく瞬間の写真。
「風紀ぃ〜どうしよう?」
「どうしよう…って言われても」
そのときだった。
ピンポーン。
そして、玄関のドアが開く音。
そんでもって、俺の部屋に入る音。
「なにしてんだ、お前等」
亮平だ。
「これ見てみろよ」
俺は亮平にそういい、封筒と俺の布団に散らかっている中身の写真を見せた。
「うわぁ〜派手にやったねぇ…この人」
「誰か思い当たらないか?」
「うお! すっげぇ明日香のパジャマ姿じゃん。あと下着姿…は無いか」
「って、お前何言ってんだよ」
俺が思いっきり朝から亮平にローキック。
「痛ぇ! ごめん、ごめん。それにしても誰がこんなこと」
「やっぱり、お前でも分からないか」
ん〜、と悩む俺達。
「俺も少し前にこんなことあったっけ。あ〜、あとスリッパがなくなったりとか? そんなことをしても、金にならないのになぁ」
…それは明らかに熱狂的な亮平ファンだろう。
「まぁ亮平が少し探りを入れれば分かることだろ?」
俺がそういうと、亮平は少し困った顔をした。
「勿論! って、言いたいけど、明日香を好きなのは100人以上だからな。しかも他学校からもアプローチかかってるみたいだし。な? 明日香」
「え…あ、うん…少しだけね」
「あるのかよ! だったら俺に言えって」
「ご、ごめん…。だけど、学校裏に呼び出されて何にも言わずに立ち去る人が多いんだもん。嫌がらせだよ?」
多分そいつ等は、明日香と一対一になって、その場の雰囲気に耐えれなくなったんだろう。
ある意味悪魔だなこいつ。
「まぁ、できるだけのことはやってみるから」
「よろしくな」
亮平にその事を頼むと、俺は二人に部屋から出て行くように合図をした。
俺はパジャマなんだから。
制服に着替えて、リビングに向かうと亮平が悠々とご飯を食べていた。
明日香がこんなピンチの中、そんなゆったりしていていいのか。と思いつつ、俺もテーブルの回りにある椅子に座る。
そして、明日香の手料理にありつくわけだ。
それからは、いつも通り学校へと3人で向かう。
学校への道は、恐怖と不安と怒りでいっぱいだった。
後ろを向くが誰も居ない。
その行動を何度も繰り返している俺だった。
しかし、事件は起きた。
下駄箱の扉を開けたとき、俺はあるものに気付く。
隣に亮平と明日香がいたが、俺は明日香に知られてはいけないものだと何故か察知した。
さりげなく、それを鞄の中に放り込む。
教室に着き、俺は一旦トイレへと立った。
そこで、それをもう一度確認する。
どっからどう見ても、俺宛の手紙らしい。一瞬も“ラブレター”なんてものは思いかば無かった。なんて悲しい高校三年生なのだろうか。
そっと内容を読む。
『香坂風紀、お前と秋本明日香のことをばらされたくなければ、俺の言うことを聞け。まずは今日の放課後、一人で屋上に来い。話はそれからだ』
ワープロのようなもので打たれたものだった。執筆だけでも分かればと思ったのだがな。
「一人でか…」
喧嘩には相当な自信はある。そこらの高校生には負けはしない。
……。
“お前と秋本明日香のことをばらされたくなければ”
こいつは確実に、家に写真を送りつけてきた人物と一緒のはずだ。あの中にも、いくつか俺と明日香が一緒に住んでいるのを確証付けられるものがあった。
「本気でやべぇな」
俺はポリポリ頭をかきながら、教室へと戻っていった。
明日香には言えない。こいつは嘘が下手糞だし、なにせ俺が一人で屋上に行くことを拒むだろう。
それに、心配をかけたくなかった。
意を決して、放課後屋上へと向かう。
ドアを開けると、覆面をかぶった奴が一人立っていた。
「来たぞ」
俺が呟くが、その男は何も喋ろうとはしない。
何者だ? 声を出したくないのは、俺にばれるからか?
…まさか?
「誰だって聞いてんだよ!」
俺は苛立って、その場で大声を出すと、後ろのドアが開いた。
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