7−1
今回から7−○がスタートします。
まだ合宿編です!!
では、どうぞ〜!
亮平に明日香が好きだと告白された次の日、俺達は予定通り撮影をしている。
昨日、風呂から上がった俺は、さっきのことが夢かというぐらいに、亮平と自然に会話をしていた。
その日の夜も、昔の話やこれからの話、映画の話とかをしていて、いつの間にか眠りについてしまった感じだ。
しかし今日の朝、明日香と俺と亮平の3人で会話をしていると、昨日のことが気になって仕方がなかった。
「おっけぇ!」
龍先輩がそういうと、みんなが息をどっと吐くのが聞こえた。
今は五十鈴の課題であろう、立ち話の出来そうな場所で、メインヒロインの明日香と団子を食べている撮影だった。
何で北海道なのに団子? とか思っちゃいけない。一昨年の作品にも団子が出てきたところから考えると、多分だが龍先輩は団子が好きなのだ。
「別に団子は好きじゃねぇよ」
龍先輩はカメラの前でさっき撮った映像を見ながらそう言った。
って、貴方はどんな状況でも俺の心境が読めるんですか!?
「んじゃ、次の撮影行くぞ」
そう言うと、俺達映画研究部の部員は、撮影用の機材を持って移動を始めた。
こうしていると、本格的に映画を撮っているんだなって気がする。去年なんて、ビデオカメラと、光を調整する板だけだったからな。
今回は映画の世界に行った優華さん、そして龍先輩が機材を借りてきてくれたらしい。そんな金がどこから出ているのかは全く知らないが。
「風紀?」
目の前にいる明日香にいきなり話しかけられる。
明日香は機材の中でも一番軽い荷物を持たされていた。逆に俺はと言うと…
「ちょ、これ、重たすぎじゃないですか!?」
重量級のカメラだ。
「仕方ないだろ。男なんだからがんばれ。これぐらいでくじけるな!」
そういう問題じゃないだろ!
心の中でそう言ったものの、龍先輩に刃向かうことが出来るはずもなく、俺は言われるがままにそのカメラを持ち運ぶ。
「大丈夫?」
明日香はちょこちょこと寄ってきて、頑張って運んでいる俺の顔を覗いてきた。
「だ、大丈夫!」
「そっか♪」
明日香は可愛らしい笑顔を見せて、俺と同じスピードで歩いてくれた。
「はぁ、情けないな」
亮平はクククと笑いながら近寄ってくる。
「そう思ってるなら助けろよ!」
「やっだねぇ!」
「てめぇ…」
うわぁ、風紀が怒ったぁ! とか子供っぽい発言をして、亮平は沢先輩の隣へと走っていった。
「な、なぁ明日香」
俺はふと疑問に思ったことを明日香に質問する。
「昨日、亮平になんか言われなかった?」
「昨日?」
「あぁ」
昨日、明日香は亮平と一日行動を共にしていた。もしかしたら、亮平に何か言われたかもしれない。
「ん〜、ただ今は楽しいかぁとか言われたかなぁ? もちろん楽しいって答えたけどね! 亮平君、何かあったの?」
「いや、なんでもないんだけどさ…」
本当にあいつは、俺と明日香を見守っているだけなのだろうか?
そんな疑念が俺の中に生まれた。
もしかしたら、あいつは隙を見て俺から明日香を奪うんじゃないのか? い、いや、そんなことはない。あいつは俺の親友だ。
俺を裏切るなんて。
…しないよな?
いつも以上に楽しそうな亮平を見ながら、俺は心の中で聞いた。
もちろん、答えが返ってくるわけがない。その質問を口に出来ない理由はもちろん…。
「風紀?」
「え?」
次の撮影場所に着いたのだろう。俺はそんなことに全く気付かず、ずっとカメラを持ったままだった。
「風紀野郎、そんなにカメラが恋しいなら、明日香ちゃんと別れて、そいつと結婚すれば?」
沢先輩がからかうようにそう言ってきた。
明日香と、別れる?
「別れたくありません!」
昨日のことがあってか、俺は沢先輩に向かって叫んでしまった。
「お前、誰にそんな口を利いてるんだ?」
ニッコリ笑った沢先輩の顔は、まさに鬼のようだ。
「お前、いっぺん死んでくるか?」
「す、すいません!」
俺は全速力でその場から逃げていこうとした。
「ふぅ」
俺は撮影している横で、椅子に座りながら休憩していた。
今は俺が出る出番ではないのだ。俺のいないシーンが多いわけじゃない。むしろ、この映画研究部の中で一番映像に映し出される顔は俺なのだろう。
今は明日香が俺の友人役の亮平と一緒にスキー場の休憩所へと来ているシーンだ。
二人とも楽しそうに演技をしている。優華さんが前言ったとおり、もしかしたらこの二人は将来役者になっているかもしれないな。
「ねぇねぇ」
いつの間にか俺の隣に座っていた五十鈴が話しかけてきた。
「ん〜?」
「明日香ちゃんってさ、普段もとっても綺麗だけど、撮影されてるときはもっと綺麗だよね…」
五十鈴の言うとおり、撮影されている明日香は輝いているといっても過言ではない。どこか、優華さんと同じオーラをまとっている気がする。
「風紀君、そんなに明日香ちゃんのこと好きなんだ…」
明日香を見ている俺の顔を見てそう言ったのだろうか? もし、そうなら恥ずかしすぎる。そんなにデレデレしていたかな。
「いや、まぁ…な」
なんて答えていいのか分からず、俺は曖昧ながらも明日香が大好きなことに肯定の意味を表した。
「そ、っか」
五十鈴は一瞬俯く。
「わ、私ちょっとジュース買ってくる!」
五十鈴は勢いよく立ち上がってそう言った。
「なら、俺も一緒に行くよ」
そういうと、五十鈴は一瞬だけ止まったが、再び走り出した。何も言わず、ただ俺に背を向けて。