6−4
ガチャリ。
そんな音をさっきから何度も聞いている。
「ほーい、お前等は課題クリアできたかぁ?」
悠太たちのドアを開けると、亮平はそう言い放った。
「え、あ! うん!!」
幸助はビックリして、上半身裸のまま硬直し、悠太は携帯をいじりながら亮平に返事をした。
もちろん、このホテルの全ての部屋にはオートロック機能が備えてある。それなのに、突然あけられたドアにビックリするのは当たり前だ。
「そっか、んじゃいいや。明日、朝早いからさっさと寝ろよぉ」
亮平はそれだけ言ってドアを閉める。
というか、なぜ亮平が全ての部屋の鍵を持っているのだ。部長だからか? って、そんな権限で女子の部屋の鍵さえも持っているのかよ。
数分前、こんな会話が俺達の間にあった。
あれは、明日香たちの部屋の前での出来事。
「お前、何も言わずに開けるつもりかよ…」
「ん? 別にいいじゃん。もしかしたら、もしかするかも知れねぇんだぞ?」
まぁ、明日香たちはトランプゲームしていて何事もなかったから良かったものの…
次に俺達が向かうのは、凛と朝美がいる部屋だ。
その、なんだ…。
なんで俺も一緒に回っているか分からないが、俺も自分の意思じゃないとはいえ同罪になる。
その、あれだ…
女子が着替え中だったらな。
いや、期待しているわけじゃない! 俺は亮平と違って普通の男だからな。
…普通じゃないけど。
まぁ、そのなんだ。俺は強制的につき合わされているってことが言いたいだけ!
「何、一人でぶつぶつ言ってんだ」
亮平に白い目で見られてしまった。どうやら俺は知らない間に口に出してしまっていたらしい。
「んじゃ、木村姉妹の部屋に突入しまぁす!」
亮平、少しにやりとした顔をしたのは気のせいじゃないよな。
ドアを開けるとそこには、凛と朝美が…
喧嘩していた。
「お前等、何やってんだよ…」
「だって、お姉ちゃんが!」
「朝美が悪いんでしょ!?」
「何がだよ…」
亮平が問いかけると二人は黙ってしまった。どうやら亮平には言いにくいことらしい。
「い、いいの! それよりどうしたの?」
「あ〜あれだ、課題の件で聞きに来た」
「課題? あ〜、大丈夫だよ! ちゃんとおばさん確保してきたから」
凛はグッと亮平に親指を立てると、勝ち誇ったかのような顔をした。
「朝美は?」
「私も大丈夫ですよぉ。ちゃんと捕まえてきましたし!」
お前達姉妹は、いったい何をひいたって言うんだ。
「そっか。んじゃ明日早いから、さっさと寝ろよ? ちなみに、パンツ忘れてきたなら、ホテルを出て直ぐのところに衣服屋があったから買ってくるといいぞ」
「「え」」
凛と朝美が驚いた表情をしていた。
「んじゃ、おやすみ〜」
そう言って亮平はドアを閉める。
それにしても…パンツって?
「次いこー!」
俺の気なんて知る由もなく、亮平はただ自らのテンションの赴くままに動いている。
えっと、次は誰の部屋だっけ? あ、五十鈴と静香の部屋か。
亮平は躊躇うことなく鍵を差込み、ドアを開ける。
「こんばんはー」
「きゃっ!」
その反応を待ってました! と言わんばかりの顔を亮平がする。
「な、な、なんだ、亮平君か」
まぁ、五十鈴たちは着替えていたわけじゃないんだけどな。
「俺もいるぞ」
「ふ、風紀君!?」
「なんでそんなに驚くんだよ」
アハハと笑うと、五十鈴も釣られて一緒に笑ってくれた。
「えっと、課題だっけ?」
「そそ、五十鈴はさっき聞いたからいいけど、静香のほうはどうなんだ?」
「ちゃんとやった…」
「おっけー。んじゃ、おやすみー」
亮平はドアを閉める。
って、これ俺が付いてこなくてもよかったんじゃないのか?
「んじゃ、次いっくぞー」
再び、亮平は躊躇することなくドアを開ける。
そこは、神子と苺と海がいる下級生女子部屋。
「りょ、亮平センパイ!」
「お、おおおおお前等、あの課題はどうだ?」
亮平のその反応で、中を覗かなくても分かった。誰か着替え中の奴がいたんだろう。
ちなみに俺はドアの横側で、中から見えないように待機している。もちろん、俺も中の様子は見えていないがな。
「へ? あ、はい! 大丈夫です! って、亮平センパイ、海ちゃんが!」
「私なら平気」
「へ?」
「部長になら…」
……。
沈黙が流れた。まぁ、亮平は女子から人気あるからなぁ、そんなこと言う奴も一人や二人、出てくるとは思ったけど…。
まさかあの海ちゃんが!?
「え、その…なんでもないや、他の奴等は?」
「わ、わ、私も大丈夫です」
苺は毎度の如く慌ててそう言った。海は多分、何も言わずに頷いたのだろう。亮平はゆっくりとドアを閉めた。
「ふぅ…」
恥らう姿を見たかったのだろう。亮平は少し落ち込んだ様子を見せながら歩き出した。
次は変態克己、高良、そして俊の部屋だ。
「おーす、お前等課題は出来たかぁ?」
「もちろんっすよ!」
一番に返事をしたのは、さっきまで風呂に入っていたであろう克己だ。パンツ一丁でうろちょろしている。
高良はクールに出来ていますと答え、俊と来たら手を上げるだけで何も返事をしなかった。
「おい、俊」
俺が名前を呼ぶと、ビクッと反応して、ベッドの上で正座に座りなおした。多分、俺の存在に気付いてなかったのだろう。
「はい、もちろんでございます! 女の子はちゃっかり確保しておきました!」
って、お前の課題はなんだったんだよ!
「みんなごくろうさん。じゃあ今日はもう寝て、明日に備えるように。明日から撮影にかかるからな。寝坊したら風紀がブチ切れるぞ」
ニコッと亮平は笑ってドアを閉めた。
「よし、全員ちゃんと課題やっていたんだな。偉い、偉い!」
亮平はそう言って、俺達の部屋へと足を向けた。
「そういや風紀、まだ風呂入ってないだろ?」
部屋に入るなり、亮平は俺にそう聞いてきた。
もちろんだ、俺は食事が終わってから、お前に色々とつき合わされていたんだからな。
皆はその間に風呂に入ったらしいが…。
「今から行くか」
「どこへ?」
「銭湯だよ」
亮平の話しによると、ここのホテルの一階には銭湯があるらしい。露天風呂までついているとか言っている。
「行くか」
さっさと準備を持って、亮平は部屋から出て行ってしまった。俺はそれに急いでついていく感じで部屋から出る。
俺は、亮平が俺のほうを向かないことに、そのときなんの違和感を持たなかった。
その理由に気付くのは、この後すぐのこと。
読んでくださってありがとうございます。
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そして、感想のほどを…