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5−3






ドアを開けると、そこには知らない人が立っていた。


「準備が整いました」


亮平の前に立っている男の人がそういうと、亮平はニッコリ笑ってありがとうと呟く。


「さて、じゃあ移動するか」


「移動?」


「もう1時だ。皆お腹減っただろう? 場所は確保してもらっている」


最初からおかしいと思ったんだ。


俺達の部屋に部員全員が入るにはきつすぎるのだと。


何も事情を説明しない亮平についていくと、どこかの部屋についた。どうやらここはご飯を食べるための部屋のようだ。


襖をガラッと開けると、そこには明日香と驚くべき人たちがいた。


「え?」


部員それぞれが驚きを隠せない。


「風紀っ!」


そう叫んだのは明日香ではなかった。


「り、凛!?」


「おかしいと思ったんだよねぇ…。あんなに早くお姉ちゃんが家を出るなんて」


はぁ、と頭を押さえながら、朝美は凛の隣に座っていた。


「な、なんで凛がこんなところに?」


「私が推したのよ。今回の撮影に参加させろって。一昨年の文化祭のときから目をつけていたんだよね」


ニシシと笑いながら俺にそう言ってきたのは、沢部長だ。龍先輩がいるから、別にそれほど驚くことではない。何よりも驚くのは、明日香の隣に座っている人物。


その人物は、多分ここに居る者も知らない人はいないだろう。


この人が出演している映画もいくつか見た。いつもは画面の向こうにいる人物がそこにいる。


一度、夏祭りのときに話したけど。


「あ、あ、あれって…」


俺達の後ろのほうで動揺しながら呟くのは神子だ。


「あの有名な、女優の優華さん!?」


そう、金森 優華さんだ。俺や亮平は宝探しゲームのときに一度話している。


「こんにちはー!」


誰もが見ほれる笑顔で優華はそう言った。


「りょ、亮平センパイどういうことですか!」


神子は慌てながら亮平に聞くと、亮平は笑っているだけだった。すると、俺達の一番後方に居た龍先輩が口を開く。


「姉貴にこの話しをしたら、どうしてもお前等と共演したいって言い出して。しょうがないから俺が連れてきたんだ」


「へぇ…」


……ん? あねき?


「龍先輩のお、お姉さん!?」


「あぁ、もしかして亮平の奴、何も言ってなかったのか?」


「そういえば優華さんの苗字って金森…」


「ぶっ」


隣に立っている亮平は俺が今、気付いたことがおかしいのか笑い始めた。そんな亮平を見ていると、どうも腹が立ってきた。


ドスン。


いい音を鳴らしながら、亮平の腹部へ一発拳をぶち込んだ。


さすがの亮平も、俺のパンチをくらって笑っているほど余裕もなかったのだろう。俺に謝りながら、明日香たちが待つ席へと向かった。


「こんにちは、風紀君」


「こ、こんにちは」


俺達部員はこんな有名人を目の前にして、俺達はそう軽々とご飯を食べることは出来なかった。


「あ、あ、あ、あの! 優華さん、あとでサイン貰えますか!」


「ん? 全然いいよぉ〜。名前はなんて言うの?」


「み、神子です! 佐原 神子です!」


「へぇ、神子ちゃんかぁ。可愛い名前だね」


ニコッと笑うと、神子は一瞬にして顔を赤くした。


「明日香、お前知ってたの?」


目の前に座る明日香に質問すると、もちろん首を横に振る。まぁ、明日香はこういう嘘を隠し通せないからな。もし隠していたら、俺が今日の朝の時点で気付くだろ。


「沢部長も、俺達の映画に出演するんですか?」


「あぁ、もちろんだ。強面(こわもて)教師として参加させてもらう」


「強面…ですか?」


「それにしても風紀野郎。私はもう部長じゃないんだ。沢様と呼べ」


なんか余計偉くなった気がするぞ。


「沢様…」


「気持ち悪いから、やっぱり沢先輩でいい」


「あんたが言わせたんでしょうが!」


「そうだっけな?」


ニシシと笑う沢先輩は昔のままだった。


「それにしても優華さん、こんな時期に俺達と遊んでいる時間なんてあるんですか?」


なんたって優華さんは、今日本国を代表するような女優になったのだから。


「結構大変だったけどねぇ、なんとかマネージャーに言って一週間オフを貰ったのよ」


「いいんですか? こんな事に時間を費やしちゃって」


「いいの、いいの! 龍が言う風紀君ともいっぱい話したかったし」


「龍先輩のいう風紀君ってどんなのだったんですか!?」


俺の右隣に座っている五十鈴がいきなり話しに入ってきた。


「えっとねぇ…」


「そんな話はしなくていい。黙って飯を食え、飯を」


優華さんの隣に座っている龍先輩が口を開く。


「龍ってば照れちゃって」


ニシシと笑いながら優華さんは、龍先輩の頬を突っつく。


「姉貴!」


「はーい。ごめんなさーい」


反省してないような声で謝ると、優華さんは箸を持ってご飯を食べ始めた。


「ほら、この後も予定が詰まってるんでしょ? 早く食べて準備しないとね」


そういう優華さんの言葉に拒否できるわけが無く、俺は目の前にあるご飯にありついた。














「では、これから皆にこの箱に入った指令の紙を一人につき二枚とってもらうから。もちろん、スペシャルゲストの皆さんにもやってもらいますよ」


ここにいる19人(先生を含め)は息をのんだ。


「その前に!!」


箱を机の置くと、亮平は再び話し始めた。


「それはそうと、実はもう皆がやる役は決まっている。台本だけを渡したのは、全ての役の気持ちを知って欲しかったからだ」


亮平は俺のほうをチラッと見た。


「とりあえず、出演する人が18人もいるから、あまり出れない役かもしれない。その辺は割り切って欲しい。まぁ、風紀と明日香は安心していいよ」


「へ?」


「主演は香坂風紀、メインヒロインは秋本明日香。これは脚本を書いた龍先輩と、スペシャルゲストである優華さんからの要望で決まった」


「ちょっと待てぇえええええええええ!」


「どうした風紀?」


「どうしたも、こうしたもねぇだろ! 何で俺が主役なんだよ!!」


「だから言っただろ。龍先輩の要望だって」


「嫌だぞ! 普通に考えて、優華さんがメインヒロイン、亮平が主役だろ! なんで俺なんだよ!」


「だから・・・」


「龍先輩の要望ってのはもう聞き飽きたよ」


「まぁまぁ」


明日香は俺にニコッと笑ってそう言った。


って、明日香はヒロインでいいのかよ!


「じゃあ、とりあえずスペシャルゲストの人から、役名を発表したいと思います」






俺の話は無視かい!!




















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