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5−2






「…寒っ!!」


12月初日、俺達は朝から学校に集合して、映画研究部の皆と北海道へと向かった。


地元とは比べ物にならないこの寒さ。


12月が始まったばかりだというのに、今にでも雪が降りそうな寒さとなっている。


「さて、今から俺達が泊まる旅館へと向かうぞ〜」


飛行機を降り、空港のロビーで集合しながら亮平は言った。


「はぁい皆さん♪ これはぶ・か・つなので、あまりハメを外して遊ばないようにしてくださいねぇ♪」


そしてこんな変なテンションを持つ人はあの人しか居ない。


「…なんで先生がいるんだ」


誰もが疑問に思ったことだろう。


亮平が言うには、去年からどうも部活動の決まりが厳しくなったらしい。あの沢部長の権力が無くなったから、というのが一番の理由といわれている。


まぁ、今の亮平はその沢部長並みにすごい能力を持っているのだけど。


「んじゃ、行くぞ〜」


空港の出口へと向かう。


「風紀、寒いよぉ…」


そういう明日香のほうを見ると、しっかり神子を抱きしめながら歩いている。ちょっと器用すぎて面白いぐらいだ。


「ちょ、セ、センパイみんな見てますって!」


神子は顔を真っ赤にしながら、なんだかんだ明日香に抱きしめられながら歩く。


「神子ちゃん暖かいんだもん」


「明日香、それなら心配するな」


前を歩いていた亮平が明日香の言葉に反応して振り向く。


「いったい何が大丈夫なんだよ?」


「それはな…」


そう言って亮平が指を指した方向を見ると、いかにも高級車のような車があった。


「いや、それじゃない。その向こうのバス停に向かう。今からバス移動だから心配する必要は無いぞ」


最初からそう言えって。


俺はそう思いながら、前を歩く亮平に着いていった。
















「すっげぇ…」


バスを乗り継いで、約1時間。俺達が泊まると思われるホテルに着いた。


今での合宿は、ホテルというより、民宿っていったほうが正しいところばかり。今回の合宿はちょっとお金が掛かりすぎていると思う。


亮平、そんなに頑張って破産しないか?


「大丈夫、なぜか今年は部費がたくさんもらえたんだ。まぁ、たくさんといっても部費が『戻った』だけなんだどな」


「戻ったというと?」


「一昨年は沢部長と、龍先輩のおかげで部費を高く貰っていたけど、去年は部長が由美さん、副部長が控えめな光男先輩だったからな。部費があまりもらえなかったんだ。今年はほら、色々したら貰えたんだよ」


色々ってなんだ。


「まぁ、とにかくお金なら安心しろ。ちょっとしたスポンサーみたいなのも付いてるからな」


「スポンサー?」


「あぁ、とりあえず中に入ろう。ここじゃ皆凍え死んでしまう」


「それには賛成だ」


俺達は部員を引き連れて、豪華なホテルの中へと入って行った。


「予約していた清水 亮平ですが」


亮平がささっと受付に近寄っている間、俺は明日香と喋っていた。


「北海道って本当にいつでも寒いんだねぇ・・・」


明日香は感心したようにそう言ったが、この季節どこでも寒いだろう。北海道と間逆の方向にある沖縄はどうか知らないが。


「ほら、行くぞ」


受付が終わったのか、亮平は俺達を呼んでエレベータに乗った。


4階に着くと、亮平はここだと言って降りる。


映画研究部員、総勢14名+αがゾロゾロと歩く。


「じゃあ部屋を割り当ててるから、みんなこの紙に従うように」


亮平はプリントを人数分取り出して、みんなに配り始めた。


プリントを見て、一番に気になったのは女子の部屋割りだ。


ここにいるのは男7人、女8人と半々となっている。


三年生の男子は4人は2対2で分かれ、下級生は3人部屋で同じとなっているのだ。しかし女子と来たら、静香と五十鈴で二人部屋、神子と苺と海が同じ部屋で、朝美は二人部屋で、明日香は三人部屋で一人となっている。


どうして?


「とりあえず、荷物を置きに行こうか。荷物を置いたら、俺達の部屋に入ってきて」


俺の考えも亮平に伝わることなく、亮平はみんなにそう言ってバラバラに解散した。


「なぁ、亮平」


俺は部屋に入ると、まっさきに亮平の名前を呼んだ。


「ん?」


「なんで明日香は一人なんだ?」


「あぁ…今に分かるよ」


「今に?」


そう聞いた途端、俺達の部屋にドアをノックする音が響いた。


「はぁい」


ガチャリと亮平はドアを開けると、そこには幸助と悠太、克己と高良と俊が立っていた。やっぱり男子は準備が早い。


「ほらほら、入って」


すると、この男子連中の後ろにも人影が見えた。


「って…え、龍先輩!」


「よっ」


なんで龍先輩がここに!?


「なんで龍先輩がここに!? とか思った風紀。そりゃあ、俺が脚本書いたからに決まっているだろ。つまり、俺が監督なんだ。分かったか?」


「勝手に人の心を読まないでください!」


相変わらず、龍先輩は断り無く人の心の中を覗いて来るな。


「あ、龍先輩!?」


その声は五十鈴のものだった。


「お、五十鈴ちゃん、やっほ」


「や、やっほです…」


五十鈴のその返答が相当おかしかったのか、龍先輩はクククッと笑い出した。


龍先輩、そして五十鈴と静香、その後ろに居た神子、海、苺を入れるとドンッっとドアが閉められた。


「さて、ここからはスペシャルゲストの発表だな」


亮平はみんなを部屋に入れると、そう呟き始めた。


そうだ、すっかり忘れていたが、この合宿にはスペシャルゲストが来るとか亮平が前に言っていた気がする。


龍先輩だけで十分、スペシャルだと思うんだけどな。


「どっちが先に来るかなぁ」


亮平は楽しそうにニヤッと笑うと、ドアをノックする音が再び部屋に響いた。






















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