4−5
「あ、静香ちゃん達だ」
神社の階段が残り、数十段というところで、祭り中に放送が鳴り響いた。
「1時間30分か…。残り半分、がんばるぞ」
「うんっ!」
さっきのことを忘れようと、必死に五十鈴は明るく振舞っている。
「次はどこ行こう?」
「そうだなぁ、どこにあるか分からないし。とりあえず、ブラブラするしかないだろう」
「そうだね。…いたっ」
全ての階段を降りきったとき、五十鈴は痛そうな声をあげた。どうやら何かに足を引っ掛けたみたいだ。
「大丈夫か?」
近くにある椅子に座らせ、痛がっている右側の下駄を脱がした。
「血が出てるな…痛むか?」
「だ、いじょうぶ!」
明らかに大丈夫そうじゃないだろ。
「ちょっと待ってろ」
確かその辺にサービスセンターみたいなのがあったはずだ。そこにいけば何かあるかもしれない。
俺はすぐさま走った。
「あの、すいません!」
「はい?」
サービスセンターに着くと、浴衣をきたお姉さんが座っていた。
「友達がちょっと足を怪我してしましまして、絆創膏とかありませんか?」
「あ、ちょっと待っててねぇ」
お姉さんはそういうと、後ろのスタッフを呼んで救急箱を持ってきた。
「えっと、これでいいかな?」
お姉さんから渡されたのは、普通の絆創膏よりも少し大きめのものだった。これだったら、あの傷を覆える。
「ありがとうございます!」
俺はお姉さんに頭を下げて、その場を立ち去った。
「五十鈴!」
「あ、風紀君。絆創膏持ってきてくれたの? ありがとう!」
「えっと、その…水場がそこにあるからさ、傷口とりあえず洗えよ」
「うん!」
返事をした五十鈴は痛がる足をかばいながら、数メートル離れた水場へと近寄っていった。こういうとき、男の俺は肩を貸してあげるべきなんだけど…。
「あれ、風紀?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「え?」
「あ、風紀だ!」
「凛?」
「風紀も参加してるんだ?」
俺の首元にかかった、宝探し参加証を指差した。
「あぁ、そういうお前も参加してるんだ? 誰と?」
「えっと…その、まぁ…いいじゃない! とりあえず、どうよ? 何かめぼしい場所はあった?」
「あったら今頃見つけてるよ。とりあえず、はずれだけは引きたくないな」
「それもそうだね。あれ、明日香ちゃんは?」
「あいつは、亮平と一緒に居るよ」
「え? 取られちゃったの!?」
「は!? ちげぇよ! …いや、一概に違うともいえないな」
「じゃあ、風紀は誰と参加してるのよ? 愛人さん?」
「ばっか! 五十鈴だよ」
「五十鈴ちゃん? あ、あんなところにいるじゃない! 風紀手伝ってあげなよ」
「……」
お前のせいで手伝えないんだよ、なんていえるわけも無く、俺は凛に背中を見せた。
「ふ、風紀!」
「何?」
「と、智也と…仲良くしてもいいのかな?」
その名前を聞いた瞬間、俺の体は硬直した。やっぱりまだ慣れはしない。その名前、その響き。
「なんで俺に聞くんだよ。別に…いいんじゃねぇの?」
「…そ、そうだよね」
重い空気になってしまった。まぁ、俺のせいでもあるんだけどね。
「あれ、凛ちゃん?」
五十鈴、グットタイミングだ。
「い、五十鈴ちゃん。宝探し楽しい?」
「うん! けど、なかなか見つからないんだよね。もうすぐ時間も無くなるし…」
「あ、本当だ! じゃあ、私行くね! 風紀、五十鈴ちゃん、また学校で会おうねぇ!」
手をあげて、凛は走り去っていった。
「…風紀君、大丈夫?」
「え?」
「その、顔色悪そうだけど」
「お、おう。それよりも宝探し再開できそうか? まだ足が痛むなら…」
「風紀ぃ!」
また、遠くのほうから聞き覚えるの声が。
「明日香」
「もう、全然見つからないよぉ…」
「そりゃそうだ。簡単に見つかったら、宝も宝じゃなくなってしまうからな」
「そっか! 風紀あったまいいっ!」
「普通だよ、普通」
「あれ、明日香ちゃん亮平君は?」
いち早く、亮平が居ないことに気がついたのは五十鈴だった。
「亮平君、トイレ行っちゃって。今、そこで待ってたの。そしたら風紀たちがいてさ! 来ちゃった」
エヘヘ、と笑いながら明日香はそう言った。
「エヘヘ、じゃないだろ。探したんだぞ?」
そういいながら、亮平は明日香の後ろからひょこっと現れた。
「あ、亮平君、おかえりぃ!」
「おう。風紀たちも居たのか」
「あぁ。なんか居ちゃ悪いみたいな言い方だな」
「いや、別に」
「あれ、五十鈴ちゃん足怪我しちゃったのぉ?」
明日香は五十鈴の足を見ると、ひょこっとしゃがみこんだ。
「うん。ちょっとすりむいちゃったみたい。でも大丈夫だよ。宝探しは全然できるから!」
俺に言うように五十鈴はニコッと笑った。
「そう? もう、風紀がちゃんと見てあげてないからこうなるんだよ? しっかりしてよねぇ!」
明日香はぷくっと頬を膨らませた。
「ごめんな、五十鈴」
「え? 風紀君は何も悪くないよ!」
「いや…」
それだけじゃないんだけど、と俺は心の中で言葉を付け足した。
「どうせだし、風紀も私たちと一緒に探そうよ! そのほうが絶対見つかるから! ね?」
いいでしょ? と上目遣いで言われては、今の俺に断るすべはなかった。
「五十鈴、いいよな?」
「私は全然いいよ」
「じゃあ、4人で頑張って探しますか」
「はーい!」
明日香は元気よく返事をした。
凛は誰と宝探しに参加していたのでしょうか。
気になるところですね。
次回、お祭り編は終了となります。
風紀たちはお宝を探し当てることは出来るのでしょうか?