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「みなさん、こんにちは! 第22回の宝探しゲームのMCを努めさせていただきます、金森 優華と申します! 今回は99組といういつもより少し少なめですが、」
今の時刻、午後7時。俺達は予定通り、宝探しの会場へ来ていた。それにしても、金森 優華なんて、最近若者に人気の芸能人じゃないか。そんな人を誘うほど、今年の宝探しゲームは豪華なのか?
それにしても、22回って中途半端な。一応2で揃っているけど、それなら20回記念ですればよかったのに。
「なんで、22回で…って思う人がいるかもしれません! 特にそこの貴方!」
ビシッと指を突き出した優華というMCあれは、思いっきり俺を指してんな。こいつもエスパーか?
「22はふーふと読みます! よって男女のためにある数字なのです!!」
意味わかんねぇよ。
「では、ルールの説明に参りたいと思います。今回は特別に20個の宝を用意しました。しかし、そのうちの10個ははずれです!」
って、20-10は10だから、いつもと同じ個数じゃねぇか。
「はずれと言っても、それほど悪くない商品です。なんと…この会場で愛の告白をしてもらいます!」
完璧はずれじゃねぇか! むしろ罰ゲームだろ!!
って、何さっきから俺ツッコミばっかいれてるんだろう。疲れる…。
「残り10個の商品は、見つけてからのお楽しみです。そのうちの一個に、私と愛のキスが出来る券が入ってるというのは秘密だけどね♪」
…あえて触れないで置こう。
「制限時間は夜の10時まで。それまでに皆さんはお宝を頑張って探してください。場所のヒントは…無しです! 皆さんも分かっていると思いますが、普通に探していても見つかりません。恥を覚悟で色々なところを探してください。では、スタートになります! 宝探ししている様子は、テレビに中継されるので決してサボらないでくださいね」
ニシシと笑うと、優華は始まりの合図である音を出すであろう銃を取り出した。
「宝物は『宝物です』と書かれていますので、間違って人のものを持ってこないでくださいね。では、スタートです!」
パンッという音と共に、会場からずらずらと人が出ていった。
俺はあんな女子がいっぱいいるところに行きたくない。少し集団とは離れて、みんなが会場から居なくなるのを待った。
「風紀ぃ?」
「お、明日香」
その隣には亮平。なんか気に食わないな。
「お宝見つけ出そうね!」
「いや、お前のパートナーは亮平だろ。俺は五十鈴と頑張るわ」
ちょっと嫌みったらしく言ったのに、明日香は全く気付いていない。うんっ! とか張り切って言っちゃってるし。
「んじゃ、見つけたほうが勝ちね!」
「あぁ」
俺はチラッと亮平を見て「襲うなよ」と警告しておいた。まぁ、亮平はそこまで変態じゃないから大丈夫だろう。
「ねぇ、君達ってさ」
俺達が話していると、思いも寄らない人が話しかけてきた。
「はい?」
「あ、やっぱり! 香坂風紀君?」
「え、あ、はい」
「じゃあ、この子が秋本明日香ちゃんで、こっちが亮平君だね!」
ニコニコと笑いながらそう言っているのは、さっきまで会場中から注目を浴びていた優華だった。
「…もしかして、これも中継されています?」
後ろには一台のカメラ。こんな馬鹿げた会話をテレビで放送されて居ただなんて思うと、結構恥ずかしいな。
「いや、まだテレビは回ってないよ。ちょっと君達を見たくてね。本当に明日香ちゃんは可愛いね!」
「い、いえ! 優華さんのほうがとっても綺麗です!」
「あは、ありがと♪」
と、よく分からない会話をしている。
「ところで、俺達の名前はどこで…?」
宝探しゲームに名前で登録はしているものの、顔は分からないはずだ。この人と会ったのも今日が初めてだから。
「えっと…それは言っちゃ駄目って言われてるしなぁ…。女の子は秘密が多いってことで許してちょうだい!」
ニコッと笑われると、断れる気がしないな。
俺達は曖昧な返事をして、優華さんと別れた。
「何だったんだな」
俺は頭をポリポリかきながら、五十鈴に言うと「さぁ?」と不思議そうな顔をしていた。
「それじゃ! ここで私たちとはお別れで! 風紀、ちゃんとお宝探してよ! 五十鈴ちゃんとベタベタしちゃ駄目なんだから!」
「え、いや!! 私たち、別にそういうことしないよ! 大丈夫、大丈夫!!」
ね、風紀君と五十鈴が言うが、俺はさぁな、と答えておいた。
ちょっと小学生っぽいかな?
「さっ、五十鈴行くか!」
俺がそういうと、五十鈴はうん、と頷いて俺についてきた。
「どういうところにあるんだろうね?」
それが一番の問題だった。毎年そうなのだが、本当に見つからない。ある年では10個中2個しか制限時間に見つからなかったほどだ。
「ん〜とりあえず、祭りを楽しみながら探すか。もしかしたら、どこかの屋台にあるかもしれないしな」
「そうだね!」
なんかさっきから、五十鈴が張り切っている気がする。そんなにこの宝探しゲームがしたかったのか?
「あ、あれいってみない?」
五十鈴が指を向けるほうを見ると、金魚すくいというベッタベタな屋台があった。
「うわぁ、すごっ!」
やってみようと誘う五十鈴を俺は止めに入る。
「ほら、考えてみろよ。今から宝探すんだぜ? 金魚が可哀想じゃん」
「そ、そうだね…」
「まぁ、終わってからならいいんじゃない?」
俺がそういうと、五十鈴は悲しそうな顔からいっきに元気が出たように、いつもの笑顔に戻った。
なんとなくだけど、悲しんだ五十鈴の顔は見たくないからな。
俺はニッコリ笑って、祭りを楽しもうと一言五十鈴に声をかけた。