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2−8





「風紀、よく思いついたよな」


俺の横で、そう呟いたのは亮平だ。


こいつの言う、よく思いついたなというのは、たぶん俺の家に部長を呼ぶこと。


亮平の情報を元に部長の家に行って、全てのことを話した俺は、ボッコボコにされてきた。


その覚悟で、頼みに行ったのだけれども。


部長は、俺に「明日香ちゃんを泣かさないようにするから。風紀野郎は自分のことを、

しっかり片付けておいで」と声をかけてきた。


あの部長がそんな言葉が出てくると思っていなかった。


…だって、嫌な思い出しかない。


今頃、部長はしっかりと先生を騙していてくれているのだろうか。


あの演技力があれば、プロの目だって騙せそうだから、とりあえず安心して…


…していいよな。


…して…いいのか?


まぁ、いっか。


俺は今、学校に来ている。


理由は、部活に顔を出すため。


だけど、いつもと同じ意味の部活ではない。ある目的を達するために、俺はここまでやっ

てきた。


ガラッと、俺たち映画研究部の部室にあたるドアを開けた。


部室内にいるみんなの視線が、俺たちの方向に向けられる。


一番最初に寄ってきたのは、悠太だった。


「あ、風紀と亮平! どうしたの、学校早退したって聞いたから、今日の部活どうしようか悩んでたんだよ? 明日香ちゃんは、あの騒動でいないし…」


本気で、困っていたようだ。


「とりあえず、この映画でも見ておいて」


そういいながら、亮平はどこか外国の映画を渡した。


悠太は、ありがとうと言った後、すぐに不思議そうな顔をする。


「…ということは、この後亮平と風紀はどこか行っちゃうの?」


「ああ、あと一人連れて行く奴がいるけど」


亮平は真剣な顔で、映画研究部の一人を呼んだ。


ざわざわとするのが分かる。


俺は亮平と、そいつより先に部室を出ていった。















階段を上る音が響く。


どうやら、この時間にもなると、ほとんどの生徒が居ないようだ。


俺たち3人以外の音は無に等しかった。


かという、俺たちも無言のまま階段を上っているだけだけど。


その沈黙を破ったのは、俺の隣の隣、つまり亮平の隣を歩いている人物だった。


「なんで呼び出されたのでしょうか?」


しかし、俺も亮平もその返答をしようとはしない。


お前は、分かっていることだろう?


そして、俺たちは目的地の屋上へ着いた。













「なんで、あんな真似をした?」


屋上に着くなり、亮平はそいつの胸倉を掴んだ。


「ぶ、部長…なんの話か分からないんですけど…」


そう言うものの、そいつの目は亮平を捉えてはいなかった。


「…明日香と風紀の同棲のことだ。分からないじゃ済まさないぞ?」


「な、なんのことだかさっぱ…」


「ふざけんな!!」


そう叫んだのは、俺ではない。亮平だ。


俺たちのために、そこまで熱くなってくれるなんて。


「明日香と風紀に送られてきた写真の中に、臨時で部活が休みになった日の写真も写っていたんだ。そんなことを把握できる奴なんて、部活の人間だと考えるのが普通だろ…」


亮平はそいつの胸倉をそっと離した。


「そ、それだけで決められても」


「それだけじゃない。俺と風紀をここで襲ってきた奴らの情報を集めて、関連ある人物を探したよ」


「そ、、、それが自分って訳ですか?」


「そう。そいつ等の所に行って、少し脅せばすんなり話してくれたよ」


…どうやって脅したかは後で聞こう。


「高良、お前が犯人だなんて思わなかった…」


天春 高良。いつも部活内では大人しい奴なのに、どうしてこんなこと。


高良がフッと鼻で笑うと、俺を睨みつけてきた。


「…悪いのはそっちだ」


そう呟いた高良は、怒りに満ちた表情をしている。


「高校生で同棲なんて、不潔すぎるだろ! しかも、あの明日香様と…こんな奴が!」


こんな奴と言われて、俺は高良の顔を睨みつけた。


「風紀、お前は何で明日香様と一緒に住んでいる。付き合っていても、していいことがあるだろ!? 噂に聞けば、二年間付き合っているらしいな。 ということは、あんなことや、こんなことまでっ…!!」


と永遠に続きそうなことを高良はぼそぼそと言っている。


そこに、亮平は一言入れた。


「高良ひとついっていいか? 風紀と明日香はキスも出来ないシャイな奴らなんだ」


…は?


「は?」


高良は、呟くのをやめて、亮平の顔を見た。


俺の心の声と、高良の声がはもった事は内緒にしておこう。


「風紀は、あんな可愛いのが近くに居ても、手が出せないほど紳士な奴なんだ。だからあんな事や、こんな事をしているわけが無い」


高良の目は点になっている。


って、亮平待て! なんだ…俺がその…度胸が無いみたいな言い方…


「そのとおりだ」


「え?」


俺が聞き返すと、亮平は「声に出てた」と言ってクスッと笑った。


「風紀は…インポなのか?」


「うぉい!! さっきまでの話を聞いていなかったのか!? 度胸が無いだけだ! って…自分で認めるのもなんだけど。認めたらなんか虚しくなってきたじゃないか。 それに、下ネタを発言するんじゃない!」


高良と亮平は、何を言っているんだ、こいつ…みたいな目をしていた。


「なんだその…」


俺は高良に、明日香と一緒に住むことになったきっかけを話した。


あの親父に騙されて、仕方なく一緒に住むことになったという、俺たちの馬鹿な話を。




「そ…そうだったんっすか」


「だろ!? ひどいだろ! 俺だって、住みたくて一緒に住み始めたんじゃないんだ。だからと言って、今から住む場所も無いし。まぁ、もう慣れてしまったから別にどうってことないんだけどな」


なんだか納得してくれた様子。


「…それなのに、こんな大事件にしてしまって…申し訳ないっす」


本当に申し訳なさそうに高良は謝ってくれた。


「お前は、映画研究部の大切な一員だ。やめるとか…言わないでくれよ?」


亮平は少し微笑みながら高良の肩をぽんと叩いた。


高良は自分のしたことの重大さに気付き、涙を流していた。


「高良、これからもよろしく頼むぞ」


亮平がそういうと、高良は少し大きめの声で、はいと答えた。


なんだか…いい青春ドラマみたいな絵になっている。


亮平、カッコイイぞ! 










そして、俺は家へと帰った。


それから、どこから引っ張り出してきたのか分からない酒を飲んで酔った部長の説教を1時間聞かされたことを言っておこう。


あと、明日香には、高良が犯人だったことは言わない。これは高良のためではない。明日香のためだ。あいつは、優しいからな。部活内にそういう奴がいると思ってしまったら、何をおこすか分からない。


…そうだな、明日香に言ったことがあるといえば、この事件が問題なく終わったということと…


亮平に影響されてか、こんな言葉だった。





「これからもよろしくな」





















次回からはちょっとした新登場が見られます。

Double Lifeにでもちょこっとしか出てこなかったあの人が…!!

ではでは、また会いましょう。



Toki.


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