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2−7




今回は明日香目線となっております。







「では、行きましょうか」


先生がそういうと、私の隣に立っているお母さんが、はい。と頷いて、私たちは学校から出た。


今から、先生、お母さん、私の三人で私たちの家に行く。


お母さんと、先生が何やら世間話をしているけど、私の耳にはしっかりと入ってこなかった。


一歩、また一歩と私たちの家へと近づいていく。


「明日香ちゃん、そんな顔しないで。何もなかったら、先生たちは何も追及しないからね」


私がずっと心配そうな顔をしているのに気付いたのか、先生が笑いながら私の頭を手のひらでポンポンとしながら言う。


私はすぐ顔をいつもの笑顔に戻し、そうですよね。と呟いた。


ここまで来たら、腹をくくるしかない。


もう、言い逃れは出来ない。


今、言えば風紀は助かる。他の男の人といえばいい。


風紀は悪くない。すべて、私一人…責任を持てば。


「せ…先生」


私がそっと先生の名前を呼んだ。


その瞬間、私の手を強く誰かに握られる感触を感じた。


お母さん…?


その表情は、風紀君を信じなさい。と言っているようだった。


…解釈を間違ってたらごめんね、お母さん。


そうだよね、そうだよ。風紀ったら、あの時間からいなくなってたんだもん。何かしてくれているはずだよ。


「どうしたの、明日香ちゃん?」


「…いえ、あの…あそこが、私の家です」


私が風紀を信じたとき、運命の場所である、私の家は目と鼻の先にあった。



















「ここが、明日香ちゃんの家ね」




先生は、私と風紀の家の前に立っている。


もちろん、私とお母さんも。


先生がこのドアを開ければ、風紀とは一緒に居ることが許されないのかもしれない。


いや、確実に許されない。


じゃあ、私と風紀は謹慎処分なの?


…謹慎処分で済めばいいほうだよね。


こうなることは分かっていたのに。


初めから、隠し通せるとは思っていなかったのに。


馬鹿だよね…私も風紀も。


そして、先生の手はゆっくりと前に出されていった。


ガチャ…ガチャガチャ。


「明日香ちゃん」


「はい」


「鍵、閉まってるわよ」


「…すみません! 今開けます!」


私は慌てて、鍵を鞄の中から出し、鍵穴にさした。


ゆっくりとまわす。


これを回し終えて、ドアを開ければ私たちが過ごしてきた今までの生活は変わってしまう。


しかし、もう立ち止まることは出来ない。


鍵が開く音と共に、今度は私がドアノブへと手をかけた。


時間をかけ、ゆっくりと回す。


ドアを引き、私は心を決めた。


「明日香ちゃ〜ん!」


……え?


そう呼んだのは、お母さんでもなく、先生でもなく、家の中にいる人物だった。


「沢…部長?」


中にいたのは、私が一年生のときに、映画研究部の部長をしていた(さわ) 美保(みほ)部長だった。


というか、何で部長はここに?


どうして、風紀がいないの?


ドアの前で立ち往生している私に、部長は笑顔で私に近づいてきた。


「明日香ちゃん! 今日は家庭訪問の日なの? そういうことは言ってくれないと駄目じゃない。部屋掃除しなきゃいけないんだから…」


近づいてきた部長は、私にそういった後、先生と話し始めた。


未だに頭が混乱している。


「さぁ、先生早くあがってよ!」


部長は先生の後ろに回って、背中を押し始めた。


先生たちが行くと、お母さんは私の肩をポンポンと二回叩く。


そこで、やっと私は理解した。


これは、風紀の仕業なのだと。


そこからの私の演技力はなかなかの物だといっていいだろう。


部長はというと、さすがとしか言いようが無い。


完璧。


何がどこにあるかとか、家具の配置を全て覚えていて…。


…尊敬します。いや、本気で。


しばらく4人で世間話をしているとき、先生は動いた。


部長…つまり沢 美保の部屋を見せて欲しいと。


部長は間をおかずに、即OKの返事をした。


大丈夫なの?


だって、そこは風紀の部屋だよ?


さすがに、短時間ですべてを移動させるとかは無理だろう。


部長は笑顔で先生の隣を歩きながら、部長の部屋…つまり、風紀の部屋へ案内した。


躊躇うことなく、部長はドアをあける。


「え…?」


私は唖然とした。


だって…


「どう先生? すっきりしていて、いい部屋でしょ〜」


だって、何一つ私の知っている風紀の部屋と変わっていなかったから。


「本当ね。沢さんらしくて、いいと思うわよぉ♪」


先生はまたしても、意味不明なテンションで部長と会話している。


それにしても、風紀の服はどうしたのだろうか?


そっと箪笥へと目を移すと、そこには私の服が。


…あ。


そういうことか。


私の部屋に風紀の服を。


部長の部屋に私の服を。


この状況だと、一番に疑われるのは部長だ。


私の部屋を調べてもそこまで詳しくは調べたりしない。なんたって、同棲している証拠なんて出てこないのは誰にだって分かりきっているから。


…風紀、少し頭いいんじゃないの?


そんなことを考えていると、先生と部長はリビングへと戻っていった。


そこから何十分話していると、先生が帰ると発言した。


「これで明日香ちゃんの潔白が証明されたわ! まぁ、私は疑っていなかったけどね! 多分♪」


多分!? 多分ってなんですか!


「とりあえず謝っておくねぇ」


…この短い文章で色々なところをつっこみたいが、私にはもはやそんな元気は無いです。


「じゃあねぇ〜♪」


先生はスキップをしながら、私の家の前から去って行った。


おつかれさまです。


私と部長とお母さんはリビングに戻った。


どっと息を吐きながら腰を下ろす。


「あ〜す〜か〜ちゃ〜ん!」


後ろからぎゅっと部長に抱きしめられた。


「ど、ど、ど、どうしたんですか!?」


こんなことをされると、神子ちゃんの気持ちがよく分かるよ…びっくりするね。


「風紀野郎と同棲してたのか! 犯されてない? 大丈夫!?」


「だ、大丈夫ですよぉ。それよりも部長、ご協力ありがとうございます」


「気にすること無いって! まぁ、とりあえず風紀野郎に一発いれといたから」


ニコニコしながらそんなことを言うと、かなり怖いです。


「風紀…は?」


「風紀野郎なら、亮平君とどこかに行っちゃったわよ」


そっかぁ…。どこいったんだろう。


私がそんなことを考えているとき、風紀は学校にいた。


そんなことも知らず、私は部長と二人でお菓子をぼりぼり食っていたのだった。






















次回で2−○は終了予定となってます。

やっと風紀視点に戻りますので…。

では、評価等お待ちしております!




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