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2−6



今回は明日香目線となっております。












私は、職員室へと一歩一歩近づいていく。


呼ばれる理由は、あれしかないだろう。


『同棲疑惑』


教室を出るときに、風紀が「大丈夫か?」と聞いてくれた。


私は笑顔で「何でよぉ? 余裕余裕!」って強がった。


本当は…怖いよ、風紀。


職員室のドアに手を掛け、左に開く。


すると、小百合先生は奥の部屋からこっちこっちと手で合図してきた。


先生に呼ばれるがままに奥の部屋へと向かう。


そこには、大きなソファー。


私の好きなふかふかだ。…って、そんなこと考えている場合じゃない!


先生が「座って」と笑顔で私に言った。


「はい」


私は、ふかふかのソファーへと座る。


「話なんだけどね、まぁ…分かってるとは思うけど、学校に張り紙のしてあった事件のことなんだよねぇ」


私は小さく頷いた。


「A・Aってのは、明日香ちゃんなの? 3年のアイドルと言ったら、明日香ちゃんしか思い浮かばな〜いじゃん?」


私は首を横に振った。


「だよね? だけど、先生方はみんな明日香ちゃんじゃないかって…疑ってるのよ」


「私じゃないです!」


「私は勿論の事、これっぽちしか、疑ってないよ?」


疑ってるんですか!!


「まぁ、私は信じてるけど念のため、と言うか…他の先生を信じさせるために今日の放課後、家庭訪問をしたいと思うの」


さっき疑ってるって言ったのに、今度は信じてるって、矛盾していますよ、小百合先生。


「家庭訪問ですか?」


「明日香ちゃんって今、一人暮らしだったわよね?」


小さく頷く。


「明日香ちゃんのお母さんには電話したから、今日学校に来てくれることになったの。それから私と、明日香ちゃんと、明日香ちゃんのお母さんとで、今明日香ちゃんが住んでいる家に行くから」


「……」


「いいわよね?」


「はい」


私は小百合先生の方に笑みを浮かべて返事をした。


「じゃあ、話は終わりよん♪ また、話したいことがあったら相談してね!」


あんたなんか信じられないよ。と、思った私だった。


教室へ向かう足が、いつもより早く動いているのが分かる。


授業はとっくに始まっていた。自分達の教室へ向かうとき、違うクラスの先生達の声が聞こえる。私たちのクラスは、一時限目が小百合先生だから、まだ始まっていないのだ。


教室の前に着く。


そのとき、足が止まった。


風紀になんて言おう。


自宅訪問されるって、言っていいのかな? 風紀に心配かけるだけじゃないのかな?


言わないほうが…。


さっきからそればっかり考えている。


私がドアに手をかけ、ドアを開けた。


いっせいに私にみんなの視線が浴びせられる。


「明日香!?」


頭に響くほど、大きい声が聞こえてきた。その声の持ち主は私の大親友の沙希。


私は心を落ち着かせて「ただいまぁ」と笑って言った。


沙希は安心してくれたのか、私に近寄ってきて一緒に他の友達から、この話題に触れないような会話をしてくれた。


そのとき、風紀は私の名前を呼んだ。


周りの皆も少し驚いていたが、一番驚いたのはこの私。


風紀が、私が友達と話しているときに呼ぶなんてありえないことなのだから。


「なにぃ?」


内心、とっても嬉しい私は、ちょっと赤くなった頬を隠すように笑って風紀に近寄っていった。


しかし、風紀の表情は悲しそうだった。


「…今日、早退するか?」


風紀は私を心配してくれていた。


「そんなことしたら、認めてるのと一緒だよ」


「…頑張ろうな」


「うん」


風紀がそう言ってくれたことが、本当に嬉しくて私はついついニヤけてしまった。そのとき、教室のドアが開き、小百合先生が入ってくる。


もう、小百合先生ったらタイミングが悪いんだから。




「明日香」


風紀は一時限目授業が終わるチャイムが鳴ると同時に私の名前を呼んだ。


「なにぃ?」


「何を言われた?」


いきなり核心を突かれた私は、体がびくっとなった。


「な、なんでもないよ!」


「ちゃんと、言いなさい」


「先生に…自宅訪問するって言われた」


「…大事なことだろうが」


…怒られた。


「うぅ、ごめんなさい」


私がうるうるとした目で訴えると、風紀はあっさりと許してくれた。


「俺とお前の住所ってどうなってるんだ?」


「さぁ? どうにかなってるんじゃない?」


考えるの面倒なんだもん。


どっちかが間違っているなら、私の住所があっているはず。さっき、確認したら住所はあっていたし。


だったら、風紀の家の住所はどうなっているんだろう?


…まぁ、深く考えたって仕方ないか。


「明日香っ」


私は沙希に呼ばれ、風紀に一言言ってから席を立った。


次の授業は英語。


チャイムが鳴って私が席に戻ったとき、風紀と亮平君は教室から姿を消していた。


























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