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第14話 旅立ち

悩み過ぎておかしなことに…。いずれは修正するつもり。


 ―『力』『知恵』『信仰』『生命』『敏捷』『運』―の6つの要素がこの世界での個々の人間の能力。

 

 『適性』=それは才能。総じてE~SSS(SSS+)までがある。SSSは俗に言う『英雄』と呼ばれる人間。しかし、このことを知らずに生きる者もまた多いという。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


適性 レベル

 E~25 ………一般人(ほぼレベル1)

 D~50 ………各職業見習い 

 C~100 ………一般職業 トップアスリート並

 B~150 ………中級騎士 メダリストあたり?

 A~300 ………上級騎士 ほぼ人間やめかけ?

 S~500 ………? 一騎当千?

 SS~750 ………?

 SSS~999 ………英雄 


 ……そして、SSS+?~? 最頂点がこの世界の神 英雄


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 適性とパラメータがあってこその人間という生き物だと言われる。


 そのパラメータは基本値が種族で別れ、性別でも別れる。


 …例えば人間という種族は基本値は8。だが、男ならば力の最低値に+1、女ならば生命に+1になる。


 更に、生まれた時に+1というポイントがあって、それを任意の能力に割り振る。

 あとはレベルが上がれば、+1ずつポイントを得るのがこの世界の現実。

 …だが、レベルアップ時、パラメータは常に上下する。その点でも個性が出る。


 ……結果、レベル上限でも最高のパラメータの人間もいれば、逆に最低もいる。滅多にないことだが。

 筋骨隆々な魔法使いや不信心な僧侶、見た目立派な虚弱戦士、等々。


 すべてを考慮した、イオリの場合。

『力9』『知恵8』『信仰8』『生命8』『敏捷9』『運8』が生まれた時の能力最低値になった。そして、持って生まれた適性は『C』最大到達点はレベル100で終わり。


 ◇◆◇◆◇


「こんな感じで良いのか?本当に?」


 伊織が並べ立てたのは、ゲームの設定。ただ、ゲームの場合、よっぽどのことがない限りは良い適性を得るために何度もキャラメイクをやり直したりなんて普通と思う。

 マルチプレイをするにしても、適性だけは開示されないので、自分の思い込みもあったりする。だからこそ、会う人が強い!または思いのほか弱い!なんて楽しみもあった。今では懐かしい話だと伊織は言う。


「こっちでも適性を調べるのは、嫌な話ですけど王侯貴族ではあるらしいです。その結果での血生臭い話とかもありました…。」


 心底嫌そうな顔をしてクオンが語る。


 血筋や何だと揉める人間には近付かない方が良いと呟く。ただ伊織の中のイオリの記憶には、現在の時代であるとは覚えがない。

 …事実がそうかは闇の中だが。


 その話を聞いて、チートもバレなきゃ大丈夫だと思い、伊織は思い付くままに声に出す。


「わかってるとは思いますけど、今回の試験は適性の確認ありますよ?……諸侯のところの騎士試験よりも上、難関って言われてる王国の騎士団ですのやつですから。」


 ……初耳だ。そんなことは今初めて聞いた。

 伊織は急いで記憶に潜る。


「こんな話は先に言っておけよ…。もう『記憶の水晶』で限界突破してるから~!!」


 あの日の暴走が問題になるのが遅すぎた。

 ……もう世界へ降りる日も近くなっている。


 ―まぁ後で…。伊織は考えることを放棄する。


 騎士の為の試験の要項にもなるとは、そんなに適性を気にして得なことでもあるのだろうか?そのあたりを聞いてみる。


「やっぱり、適性が高い方を選ぶとかあるのか?」

「王立騎士団はそんなことなく公明正大に人をみます。例えば、資格ギリギリだった人が上層部にはいますからね。技術だけでなく、その心持ちとかが一番だって聞いた時もありますし。」


「?じゃあ、適性関係無くないか?」

 何か答えが噛み合わないような気がする。


「適性がどんな意味があるのかはハッキリとわからないです。けど、その人間が分相応な覚悟なり気概を持つのか見るんじゃないかなぁ、って思います。身の程知らずに力を振りかざしたり、その適性も足りないのに大望吐かれるような騎士なんて、今のところ聞いた時ないですから。」


 ―そりゃそうだ。時と場合によっては人の盾になったりするのだから…。

 伊織もクオンのその答えを聞いて納得できる。



 ◇◆◇◆◇



 相も変わらず、何かが答えに行き着くと問題が起こる。むしろ問題がありすぎるのか。


 伊織の足が向くのはラァナのいる場所。


 ……自分の適性が振り切ったことでの、新たな問題をどうにか出来ないかの相談の為だった。


「邪魔するぞ、ラァナ?」

 礼儀として、ちゃんとノックをしてから応答を待つ。


「あっ、伊織さんですか?…今は大丈夫なんで、入って下さい!」

 ドアの前で待つと、奥の方から応答が返ってきた。


「それじゃあ、失礼するな?」

 そう言って一歩部屋へと踏み出すと目の前から声が聞こえる。


「失礼しちゃダメですよ?ここは神様のお部屋ですからね?」

 …ラァナが胸の前で腕を組んで仁王立ちしていた。格好はそうだが、表情は笑顔だった。


「そんなつもりは無いですよ、女神様?」

 こちらも笑顔で返答する。友達との遣り取りのような一幕を演じ、促されるままに席につく。


 …神様と言う存在がこんな始末だ。多少呆れて軽口を交わす。


「それで、どんな用で来たんですか?」


 ラァナは何か察したか、すぐに話を聞き質す。


「すまないけれども、また問題が発生してしまった。本当にごめん。」

 即座に頭を下げ、謝罪する。


「で、どんな問題ですか?手助けできるやつですか?」


 …そう聞かれると、果たしてどれほどの問題か悩む。聞かなければわからないことではある。


「実は、俺の適性を誤魔化せないかなぁって話なんだ。例の試験のことは準備できたと思っていたのに、やらかしてた。」


「え…と、どう言う意味です?」

「そのまんまの意味で。騎士の試験に『適性の確認』って言うのがあったの失念していた。」


 …また、同じことをしたのは本当に申し訳無く思っている。だが、差し迫った時間がある以上、伊織は頼れるものを頼りにきた。何とかしてもらわないと、ちょっと困る。いや、かなり困る。

 ……自分の適性がバレて、思いがけないところから注目されたり、ちょっかいをかけられるのだけは絶対に避けたいことなのだから。


 伊織は、一応使命があるし、出来るだけは騎士(なれるか別にして)でいることでもギリギリひっそりと過ごしたい。いずれは離れてすることをしないと、世界に関わるのだ。

 その時までの為に、こうして女神の許へと赴いた訳だった。


「これが上手く、そう、一時でも遣り過ごせるならそれで良い。あとは演技かなんかして辞める日までは大人しくするつもりだからな。」

 ……ラァナの反応はどうだろう?


「わかりましたけど、どうしましょう?出来る…かも知れないような、出来ないかもな…?」

「どっちなんだよ?! …ああっと…すまない。思わずにツッコミ入れてしまった…。」

 ―大丈夫、大丈夫。怖くないからね~?

 ラァナが吃驚して、一瞬その体をビクッと震わせていた。


「出来ないならば、それを無理強いはしないよ。腹括って試験を受けるだけだしな。最悪、逃げ出す。それで別の方向から仕事に入るから。」



 ◇◆◇◆◇



 ……外からドアをノックする音が部屋の中に響いた。


「クオンさん?それともミリアさんですか?開いてますから応答どうぞ~!」

 ラァナが明るい声で扉に向けて言葉を投げる。

 ……部屋に来たは姿はクオンの方だった。

「御用件がおありだと聞かされて来ました。一体、なんでしょう?」


「さっき、伊織さんがまた問題だって話を持って来たので、悩んでます。」


 …そう言われて、やっと気付いたのか、クオンは伊織を見つけて会釈する。 ……ほんのさっき振りだ。 伊織は手を上げて反応を返す。


「それで、問題って言うのは……適性の隠蔽について、で、あってますか?」

「良くわかりましたね?あっ、そうか!先に二人で話してて、ここに来たんですか?」

 …無言で頭を上下させる。

 片や女神は、余計な説明をしなくても済んで、気持ち明るく質問をする。


「じゃあ、早速なんですけど、試験にある『適性の確認』っていうのは、どんな風に、どんな感じでやるのか知ってます?」


 ―あぁ、そう言われて気が付いた。

 ……どんな風にするかは何も言ってなかった。


「えぇとですね…確か、適性を調べられる錬金アイテムを使うって話でした。それで試験官の団長がそれを通して()()らしいですよ?……正直、うろ覚えですみませんが、警護団の団長はそんな話をしてたと思います。」


 ……確かにそんなことをおやっさんは言っているな。イオリの記憶を見るとそうだった。


「錬金アイテム……。見る……。触る?……いえ、そうだったら……。」

 答えを聞くなり、ラァナは何かを考えだし、ぶつぶつと口に出しながら仕切りに首を捻っている。


「こんな話で何とかなりましたかね?」

「何とも言えないけど、俺が説明し忘れて言って無かったからだし、良いんじゃないか?」


 伊織とクオンは女神を無視して会話する。


「今しがた記憶を見たけど、あの人ってちゃんと騎士なんだな?」

「良くも悪くも俗っぽい人だから、なんか時には残念ですけど、警護団も一応は国の騎士直轄での集団ですし、団長も騎士ではないといけないそうです。左遷…とは違って、出向だと本人が言ってますしね。」


 …しかし、そうなると良いのか?これって?

 聞かなくて見れば早いが聞いてみる。


「でもこれって、試験情報の漏洩っぽい気がするぞ?いくら騎士でも良いのかねぇ……。」

 素朴な疑問を口にする。


「そこも含めて、残念なおやっさんだし、それに―『適性』何てどうこう出来ないだろうから、別に良いだろ?―で済ませそうですね。」

「納得だな。」



 ◇◆◇◆◇



 二人である意味、思い出話に集中していたら、さっきまで考え事をしていた女神の姿がないことに気付く。


「あれっ?アイツはどこだ?」

「いつの間に居なくなってたんでしょうね?」

 二人、顔を合わせて疑問を口にする。


「まぁ()()()何かが起こるってことは無いだろう。大人しく待ってたら良いだろ?」

 そんなに過剰な心配することもないのはその通りだ。《始源の箱庭》の中、彼女の領域なのだから。


「そうは言われても、一応俺はあの方の御使いじゃあないですか?気にしないではダメでしょう……。」


 ―一応も何も、しっかりラァナの御使いだろうが。

「お互い、まだ日が浅いし、見当のつけようもない。どこか行くって考えたら、ミリアのところとかじゃないのか?」

「うーん…。やっぱりそうでしょうか?」


 ……日が浅いがクオンは割りと順応し始めているのか、ちゃんと御使いらしい。


「そう言えば、御使いで思い出したけど、予想外に御使いっているものなんだな?」

 伊織が思うところでは、数人が(各神様の下に)いる程度と予想していたので、結構驚いた。

 それは、その個性についてもだ。

 想像では無表情、無反応、無関心で、まるでロボットか何かのように事を淡々と行う…そんな風なイメージだった。

 ……よく求人などにある『アットホームな職場』とでも言うのか、イメージとは真逆に、御使いと言う者達は普通な人達な雰囲気をしていた。

 たまに、その生体観察をしてみれば、それなりに面白く、まるで飽きなかった。この世界の人間の種族の集まりと言えばそうだが、様々な人種が行き交う。


 そんな感じであるからこそ、新入りのクオンも新たな環境に紛れてもすぐに馴染めるのだろう。伊織はそう考えていた。それをクオンにも言ってみた。


「正直な話をすれば、自分もほとんど似たイメージしていたから驚きましたよ。でもちゃんと話は通じますし、それなりに構ってもらえます。お陰様で助かってますね。」

 クオンは素直にそう答える。伊織はそんなクオンが羨ましい。自分はこれからがスタートだから不安を感じてばかりなのだから…。


「あぁ、でも日が浅くて困ることもありますね。まだ見慣れ無かった種族の人とかの()()には戸惑いますね?」


 ……クオンが例え話をいくつかあげ始める。

 曰く、

『―後ろから声を掛けられて振り向いたら、目の前の高さに妖精族の人―

 ―凄く丁寧な口調で仕事の補助をしてくれる、見た目そのままな鬼人族の人―

 ―同性だと言うのに目が合うと戸惑いを禁じ得ない見目麗しいエルフ族の人―』

 等々、だそうだ。


 ……それは仕方ないことだろう。『人間』の国では極々稀にしか来ない種族。出会うことも皆無なら、話に聞くことも滅多にない。

 更に言えば、何もないかなり平和な辺境の町に用持ちの冒険者も来ないものだった。


「俺のいた世界では、エルフとかは創作物の種族だったけど、あんまり人間とは相容れない…みたいな感じなんだが、別にそんな感じじゃないのに見ないってのも不思議だなぁ…?」

 いずれ会う必要もあるし、後で調べようかと考えることにした。



 ◇◆◇◆◇



 あの後、案の定ミリアの所へ行っていたらしい女神が帰ってきた。良い案でも浮かんだのかを問えば、微妙に誤魔化し、

「大丈夫です!」と答えて、「今はまだですけど、後で()()()()から待っておいて下さいね?」


 そんな感じでもう答えもしない。珍しくテンション高めな感じだった。


 ―任せた上で、何か出来るなら別にいいか?―

 渡すという言葉で、物だろうとはすぐにわかるがそれがどんな物かは全くわからない。


「でも、『神様が作った物』って、それはそれで何かいけない気がするんだけどな…。俺のせいではあるけど、釈然としないな…。」

 思わず誰もいない空間に言葉をかける。


  …………………


 暇になると実はやることがない。

 一応、まだ目先の試験を受ける前だから、それに向けてやれる事をすべきだとはわかっている。だが、今の伊織は何もしない。


 とにかくボロを出してしまはないように、イオリの知る限りの戦い方を反復してはすぐにやめ、魔法をいくつか使ってみては、やはりすぐにやめる。意識を集中出来ないことを言い訳に、駄々を捏ねてるだけ。


 試験への恐怖と高揚感。受ける前からの合否への期待と恐怖。…簡単に言えば、怖じ気づいていた。


「明日なんて来なければ良い…!」


 知る人が見れば呆れてしまうだろうことを叫ぶ。実際『明日』は試験の日…ではなく、箱庭からの出発の日。


 …とにかく、行かない訳にはいかない。イオリの為、女神の為、この世界の為に。


 だがそれよりも、自身からすれば外国と同じだけの異国、異世界に不安しかない。記憶にあるままで行動するだけなのに、それすら怖い。息を空気を吸い込む事さえ怖い。


 今更に、『今日まで、今まで、夢を見てただけ』と誰かが起こしてくれないか、と逃げるイメージばかり。

 ラァナの領域にいる御使い達が慌てる。遠目に見て距離をとる者、目も合わすことなく避けて行く者、一様にこちらを見ては目を逸らしてくれる。


 ため息を付きながら歩き始める伊織に、それを見ては見ないフリをする御使い達。


 ……この日、ラァナとクオンが見つけるまで、領域各所でそんな光景と目撃情報が何度も繰り返し報告されていた……

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