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第1話 ゲーム生活

異世界転移の物語。※無駄で長くなっております。


「セーブデータ1※ 伊織 プレイ時間2559:37:52 255周目」


 ―セーブしますか?― 「→はい いいえ」―


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 迷うことなくその選択肢を選んで、次のポップアップが表示されるのをほんの少しだけ待つ。


……

………


 ―セーブが終了しました―



「セーブデータ1※ 伊織 プレイ時間2562:07:32 256周目」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


「あ~疲れた」


 緊張していた体から一気に力が抜ける。

ゲームの世界に没入していた感覚が現実に帰ってきたから。


 だけど、いつもと違って胸に込み上げてくる熱さに疲労感よりも達成感が勝っているのを実感していた。


 『やりたいことをやりきった!』

 自分に言い聞かせるような台詞を声に出してみる。


 …そして、すっかり脱力していた体勢から

 俺――双葉 伊織(ふたばいおり)―― は、両腕に力を入れてガッツポーズを決めていた。


 …色々とあってここまで来たからこそ感情爆発。

 久しぶりにゲームでこんなに満ち足りた気持ちになれた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 



 ―3年もかけて、俺はたった1つのゲームだけを遊んでいた―


 流行のあの「VRなんとか?ゲーム」だっただろうか。

 正直な話、毎度流行に遅れてノッかるのでひどく曖昧な記憶だ。


 社会人として5年を迎えてようやく適度な息抜きを出来るようになった27才の誕生日に、哀しいかな自分へのプレゼントとして買ったのだった。


 初めて触る新しい技術の高さに、初めて体験するゲームの中の世界に圧倒されて、俺はのめり込んでいた。



 ―人の数だけ世界は変わる― そんな謳い文句のこのゲーム、


 『World of kaleidoscope:online』


―直訳で、万華鏡の世界っていうらしい。



 ―このゲームの世界は剣と魔法、多種族、神様、謎?の生き物の世界を冒険する―

 そんなフィールド&ダンジョン攻略型RPG。


こと内容に関しては、単純明解。

 なんやかんやで、問題発生した世界で冒険者になって、世界中を旅してダンジョン(森や洞窟、遺跡や城、海の中から空の上)を攻略してラスボス倒してハイ終わりの世界。…裏のダンジョンもあるけど。


 システム面も

 ・キャラメイキング(ボーナスポイント振りタイプ)

 ・アイテム収集(在庫増やし)

 ・冒険(キーポイントだけでOK)

 ・周回機能(強くてニューゲーム)


…等々、親切なのか不親切なのか、やりたいことはプレイヤー任せ。

 普通にただクリアを目指す、マルチプレイでワイワイしたい、周回して違うルートを進む、最強の敵の神に挑む…とか。


 無類の物語好きには簡単にスルーされるどころか認知度すら低いこのゲーム。


 ・有名な大作RPGのように勇者と魔王の英雄譚なんてありはしない


 ・主人公とヒロイン、主人公とヒーローのロマンスなんて当然なし


 ・主人公と仲間の出会いと別れのドラマチックな展開もどこにも存在しない


…つまり、妄想のしがいはあっても普通の人気ゲームのように達成感があるかは人次第。

 最低クリアを目指せば必要クエスト数は10にも満たないとか、最初は知らなかった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 とにかく、動き始めた俺のこのゲームの3年は山あり谷あり。では、大雑把な思い出話(プレイ日記的なもの)を語ろう。


 まず俺は断然ソロの方が良かった。


 「主人公=俺」がやりたくて、マルチプレイのことを考えないように動こうと決めていた。

…なので初めからパーティに空きを作らないように仲間キャラを常に用意しなければと考えた。


 ついでにこのゲームの内容の薄さを補完するためとか思って、必死に妥協のないキャラメイキングをし始めた。

…そんな訳でこのゲーム内の仲間(パーティに編成出来るキャラ)の人生の設定まで考えて一人一人を丁寧にキャラメイキングの繰り返しの日々。

 これには最高の時間が過ごせた。


 言葉にすると恥ずかしいけど、「新しい彼女が出来ました」とかって、ゲーム内彼女(魔族)の女性キャラを作ってはしゃいでたりした。

 他には例えば、

 ・妹ポジションの魔法剣士

 ・頼れる兄貴分の聖戦士

 ・姐さんタイプの槍術戦士

 ・獣耳キュートなメイドさん

 ・折り目正しい老紳士の騎士

 ・手癖の悪い盗賊

 ・正義感溢れる少年戦士

 ・恥ずかしがりな少女魔法使い

 ・天然な女僧侶さん

 ・若き俊英の賢者

 ・エルフの変り者の錬金術士 …etc.

 とにかく、隠し職業以外の全職業のキャラを作れる限り作ったりするのに余裕で1ヶ月をかけている。(まさに自信作とか今でも思ってる)


 …後でフレンドから聞いた話では、この頃の自分は「ギルドを彷徨(うろつ)く不審者」とか

、「ギルド内ニート」とかって(勝手な)二つ名で有名になってたらしい。


 …冒険よりも頑張ったキャラメイキング。



 ◇◆◇◆◇


 そしてついに冒険するかってなった時は、今でも偶然にしては出来すぎな赤っ恥体験だった。

 …街を出てすぐ、他のプレイヤーさんに拾われていた。なんでこんな風になったか?


 →街を出る


 →初戦闘、魔物の群れ


 →敵の袋叩きにあう


 →親切な人たちが助けてくれる


 →パーティに空きがあるので編成入り(保護された)


 …そんな初冒険。


「大丈夫か?」


 リーダーっぽい人に心配された。


「本当にありがとうございます。わざわざすみません。」


「誰かに置いていかれたんでしょうね。可哀想に」


 仲間の女の人に哀れまれた。


「いや、あの、そう言う訳じゃなくて…」


「だって魔物相手に|何も()()()()()()って…」

「誰かに全部持ち逃げされてちゃって置いてけぼりかと思っちゃったけど、違うの?」


 女の子がリーダーに被せ気味に質問してきた。


「えーと、…すみません、違いまして、本当に違うんで大丈夫です…。装備は持ってますし、そんなんじゃないです…」


「は?…ああ、そう言うことかぁ…」


 厳つい男は納得した。


「アンタ、武器とか装備しないとダメだろ?」


……………

…………

………

……

 なんて言う展開。ベタだが、素人じゃないのにそんな凡ミス。

だけど、当初の予定になかったフレンドが出来て、結果オーライ。

 そして、(仮想)勇者パーティの人たちには今でも感謝してもしきれない。


 …冒険たった5分、実はかけた時間は53日。



 ◇◆◇◆◇


 本当はソロで遊びたかったけど、度々フレンドの勇者さんたちのパーティにはお世話になった。

 戦い方とか、イベントのこと、ダンジョンの攻略の仕方、その適正レベル、あと一応マルチプレイに大事なこと(コミュニケーションとかアイテムの分配とか)を教えて貰えた。


…特に貴重な情報はソロ向けの話。自分の作ったキャラで編成をする時の仲間の役割り(ロール)のことだ。


 言うほどソロで遊ぶ機会が多くなかったけど、たまのソロプレイで何か仲間の行動に違和感を感じていたのに解決法(こたえ)がわからなくて困っていたから本当に助かった。


 それからはたまに配信されるレイドバトルにも一緒に参加させてもらえ、初めての大型ボスでの立ち回りや、それぞれの専用の編成がどう違うかも聞いて、自分のパーティを組み直すこともしっかりやってみた。


 …それと何度もパーティに参加させてもらっていくうちに、「配信イベントのために」と、グループにも参加させてくれた。

 自分たちより知ってる人もいるだろうから、と言い、グループメンバーへの橋渡しまでして貰えて俺は幸運だろう。助け合いの大事さを教えられたのだから。


 …マルチプレイ7:3ソロ、約9ヶ月の勉強。



 ◇◆◇◆◇


 しばらく時間が合う時は勇者さんのグループやパーティにお世話に、それ以外はソロで遊びつつゲームでの行動範囲を進めるだけ進んで順風満帆な冒険生活が送れていた。


 さすがに1年以上も同じゲームをやっていれば、グループ戦のイベントでもグループ内で上位になれたり、ソロでもいくつかのダンジョンを踏破して、クリアへ向けて半分近くまで到達出来ていた。


 現実での人見知りはゲームじゃ関係ないみたいで、グループ以外でのフレンドも多く出来ていく。


 勇者さんたちよりも先行く人たちとも数人だけだが仲良くなれて、適正レベルに満たない自分をその人たちのレベルで遊ばせてもらうこともあった。


 たまにギルドの談話室チャットルームで他愛ない話や現実の話、あれがが欲しいこれが欲しいと情報交換、仲間の募集とか、積極的にマルチプレイすることをするのが当たり前って感じの中上級冒険者になっていた。


 シナリオと言うよりもゲームの薄さが相まって、何か凄く居心地の良さに色々と感覚が鈍ってた時期だけど、改めて夢中になれるものがある幸せを実感していた。


 …そんな日々で、気付けば1年と半。



 ◇◆◇◆◇


 すっかり、マルチプレイにもハマっていたけど、この時期で自分のレベルが見た目だけで、実はそこまでの実力が伴ってないのに気付いてしまう。


 …なぜか敵の行動とかはわかっているのに、攻撃、防御、回避が噛み合わなくて少しずつ迷惑をかけるようになっていた。装備とレベルでゴリ押しになって、なんとか保っている綱渡りな状態は誤魔化せないレベル。

リアルタイムの戦闘だとどんなゲームでも致命的だと思う。


 そこからは一時的にグループの活動以外のマルチプレイを断って、地道なプレイヤースキルの向上に取り組み出した。

 

 踏破済みのダンジョンに籠って、戦闘の繰り返しをしていた。基本の武器振り、攻撃の範囲をしっかりと反復練習。これには苦労した。

 …今更だけど、コマンド入力タイプの形式は得意でも、アクション形式は苦手な分類だった。


 突き詰めれば、苦手も何とかなる。現実の世界と変わりはしない。低難度のダンジョンの一層目から、最弱の敵から始めて何度も何度も同じことを繰り返し、戦う敵も数も種類も変えながら、自分の進行度を遡るの思いの外捗らなかった。


 陰でコツコツ努力を重ねるまるで修行みたいなゲーム生活が、勇者さんのグループの活動に時間を割けないようになって来ていた。

 俺はその日のうちに今までの感謝と謝罪、それといくつかアイテムを贈りグループから離れた。

 …最後ってわけじゃないけど、別れの時まで勇者さんたちはかわらず優しく見送ってくれた。

 「またいつか、助けが必要な時は呼んで良いから。きっと力になるから!」

 ―なんて言うか、勇者って感じがしっくりくる良い人に出逢えて最高だった―


 …初心に帰る、修行の日々で約3ヶ月。



 ◇◆◇◆◇


 時に寂しさからチャットで近況を報告をたまにしながら、我が道を行く日々。

 …やっと技術が身に付いたならば先へと進んで行かないと勿体無い、その一心でまた未知を目指した。当然、見据えているのはゲームのクリア。


 基本的に、ダンジョンに入っては敵との戦闘をまず重視、何度も挑んでついでにアイテム収集とレベル上げ。

 コツコツと努力、それとクエストの回収も忘れずに。


 …この頃にはクリアのその先、最強の敵の神を倒したって人たちが何人か出た、と言う噂もあってこの世界は盛り上がってた。

 当然、まだ遠い話であっても「いつかは俺も」なんて思う。焦ることはないのに、何故だか気が急いた。

 ―時に全滅もありながら俺もやっと一人前になる日に近付いていく。所定のラストダンジョンへのルートを達成するまで、とにかく突っ走った―


 あと少しで2年目になる頃のこと



 ◇◆◇◆◇


 初めてラストダンジョンを目の前で見た時、実感した。

 …昔やってきた勇者の物語や、英雄物語のゲームの主人公はこんな風に終わりへの扉や入り口を見て、最後の敵へと突き進んだのかって。

 (あと禍々しい造形でなくて良かった。神々しい佇まいの神殿みたいな外観には素直に感動した)


 覚悟を決めて踏み入ったラストダンジョンは、やっぱり最後の試練の連続だった。

 戦うのも楽じゃなく、一段と敵が多いし強い。これまでと違ってほんの少しのミスで全滅、逃げようってすればパーティ半壊。

 …さらに探索しようとすれば罠が多くて、更にいきなり初見の「テレポート罠」(ダンジョン内のどこかへのじゃなく、外へと強制退場)などもあった。


 理不尽なだけならば他にも時間制限つきだったり、空の上(雲海)にあるダンジョンもあるけど、それを越えてくるとは思って来なかった。

 道すがら踏破したダンジョンの罠だけで収まるのが一般的だと思うけど、「World of kaleidoscope」は見事な初見殺しを絶妙なタイミングで入れてくる。


 ダンジョン内の移動だけでも大変、最終攻略に必要なギミックを動かすために上へ下へ、左へ右へ、1日を移動へかけるしか出来ないくらいの長丁場。

 ポイントへのテレポートが可能でも、その場所を見つけるまでは毎回3、4回になる全滅も地味に精神を削ってきた。1日1日の限界を刻んでの最終行軍は20日を越えてしまってた。


 自然と戦闘回数も重なり、日毎の進行が楽になってもこれだけかかるってことに腹立たしさも湧いてきた。上手く立ち回れないことにもイラついて危なくゲームを辞めたくもなった。

 …それでも、とやっと挑めたラスボス戦。

 装備もスキルもパーティも、持てる全てで立ち向かう。


 …正直、特筆することがない。結果は楽勝でした。ラスダン内を彷徨く敵の群れの方が、この時点のボスより強いってなんで?


 …疑問で終わる、約2年と1ヶ月。クリア!


 ◇◆◇◆◇



 念願のクリアはどこか不完全燃焼だった。 

 それは仕方ないので、裏ダンジョンが解放されたのだから、と着の身着の侭で挑戦はしたけど、まだ無理ゲー。

 …諦めて、周回を重ねてクリア特典の特殊アイテムの在庫を増やすことにした。


 「World of kaleidoscope」では、売れるものは街や村に在庫の分だけ流通する。売ればその数だけ在庫が増える。店に一個しかないならば世界にも一個だけの稀少品。

 …ちなみに、在庫を255個まですれば無限の在庫に出来るらしい。

 流通数を上げれれば、すごく楽が出来るのだ。ただ、買い直したくなっても売った場所では扱わないアイテムな場合、別の場所まで行かないとダメとか制限があるので思い通りに行かないけれど。


 …さておき、「攻略、即、周回」を目指したけど、余り効率的に出来ずに2周目も出来るだけの近道してやろうとしたが、結果としては絶対に必要なものはそれなりの時間がかかる仕様だ。…とりあえずのお試し周回は10日もかかっていた。


 強くてニューゲームは便利でも、あくまで強いだけでしかない。

 ダンジョンだけは未踏破にリセットされるし、キーポイントのリセットとキーアイテムの持ち越しはなし。ダンジョンの攻略が凄く厄介なのにやっぱり親切じゃない。



 若干、面倒になったので色々と調べることにした。

 …結果としては、かなり有益な部分を知ることが出来た。上手く説明出来ないので割愛。


 …そして3周目へ。


 ◇◆◇◆◇



 思わぬ収穫のおかげで快適冒険ライフ。1日1周の日々への挑戦…の前に、3周目は少しキャラの手直しとレベル上げに時間をかけた。

 

 職業を変えて、必要なことを揃えないままでは高速周回に向かないって知れば、それは修正しないと。

 最初に設定を考えて作ったキャラはここで数人が人生やり直し。少し辛かった。


 気を取り直して、ラスダンでコツコツ、コツコツとレベル上げ。やり直しのキャラをメイン編成に一人ずつ、一定水準まで鍛え上げてはギルドに帰る。あの最初期と同じ生活だった。内容は違うけど。

 …この頃は息抜きとかに久し振りのマルチプレイも少々。今は頼られる側になっていた。ちょっと前は他の誰かについて行くだけの側だったから、この体験は新鮮だった。


 作業が一段落ついた後、仲間のキャラがレベルを三桁になっていた。少し考えて見て、裏ダンジョンへの挑戦を始めた。


 …3周目途中、未知へ挑戦! 2年と約2ヶ月


 ◇◆◇◆◇



 裏ダンジョン…固定敵の8体のボス。それと別に、6体のレア敵がいる魔境。

 …今回はボスに挑まず、まずは敵を選んでレベル上げと技術の向上を目的にして、ここの入り口だけで作業中。有難いことに回復ポイントがあったから。まだ2~3戦で魔法やスキルを使い果たしてしまうくらいの魔境っぷり。


 …休んでは戦い、戦っては休む。


 「やられる前にやる」で、まずは物量で戦いを制しながらレベル上げ。

 …俺は仲間が倒れるのが嫌だから、こういう回復ポイント有りの場合は特別に無茶をしてしまう。持てるアイテムは制限がきつく、回復薬すら在庫が足りない世界では苦労してきた。何も考えずにいつでも回復出来ることは最高の贅沢だった。


 1日1日を細かく決めて行軍することって大変な作業。休むの日ならば半日くらいはいけるけど、現実との兼ね合いから平時はやれても4~5時間。精神にくる。

 …このあたりの日々はたまに全滅してたり、壁の前で立ち止まってることがあったり余裕がなさ過ぎた。



 レベル上げにかけた分だけレア度が高いアイテムも収集出来るけど、入り口くらいじゃ実入りが少し足りない。装備品は少しずつ換装できるだけでも嬉しいけど、いきなり一足飛びに強くなってはない。もっと頑張りたかったけど諦めて、周回作業に戻ることにした。


 …裏ダンジョンからの撤退。2年と3ヶ月目


 ◇◆◇◆◇



 先達の教え(攻略サイト)は偉大。そんなことを思った。

 4周目では周回期間がグッと短縮。戦闘をこなしつつでも周回にかかる時間は5時間を切れた。

 …ここで決めた。現実の休みは裏ダンジョンの日。


 まずはクリア~強くてニューゲームで7周目に突入。次は 第二次裏ダンジョン攻略。目指すは裏ダンジョンの1フロアを探索。


 ここで手に入るアイテムに何個かは当たりがあるからフロア1周のみ。まずは改めて戦闘技術を強化しながらレベル上げとアイテム収集に集中。

 そろそろ適度な省エネで半フロアも回復せずに歩けた。欲しいアイテムには巡り会えないけど、ここら辺で戦えるならば先へと行けるみたいだった。そうサイトに書いてあった。敵もあと数種類がいるだけってわかったので安心。


 4時間ほど行軍してマップが完成。これで1フロア。あと6フロアだから最短で2回か。

 欲しいと望めば落ちないアイテムに落胆しながら、たまに数人が戦闘不能にもなって、少しイライラしたり…。


 …なんでこんなにアイテム運ないんだ。結局、この第二次~は終了。しばらくネガティブな思考になっていた。とりあえず7周目、終わった。


 …2年3ヶ月と1週目、まだ周目、果て遠し


 ◇◆◇◆◇



 6日で6周+裏ダンジョン+1周、6日で6周+裏ダンジョン+1周、6日で6周+裏ダンジョン1周。


 ―初遭遇。28周目にして初のレア敵と出逢った。まだ理不尽が終わらないゲームと改めて感心していた。

 …レベル4桁超えって非道い。怖い。そしてデカイ。気を取り直して、逃げていた。今はその時じゃない…むしろ、どんなに運があっても勝てはしない。後回し。


 第5次裏ダンジョン攻略、一気に2つフロアをマッピング。この時に初めて最高レア度の装備が見つかった。

 この日、2度目の未知との遭遇。レア度が高いと世界が変わる。そんな1日になってくれた。それはある職業で最強装備の1つだったから。強敵溢れる魔境を散歩気分で歩けるようになるらしい。これから先がまた楽しみになっていた。


 ついでに固定敵にもご挨拶した。流石に楽勝…とはいかないものの、最強装備のおかげでなんとかやれた。おまけに欲しいと思っていたアイテムを落としてくれたので嬉しくて仕方がない。あと6体、首を洗って待ってろ!と、思ったり、思わなかったり。



 …これ以降、まず1ヶ月で裏ダンジョンの踏破だけを終わらせた。流石に最強装備はなかなか見つからないし、苦労はしたが、目的がそこではないので気にしないでいた。

 あくまでも周回がメイン、裏ダンジョンはレベル上げのために通っているのだ。ペースを変えずに約半年を終わらせた。…周回は196周目を数えたあたりで、最強装備は半分まで換装済みにはなっていた。


 …とにかく一喜一憂の半年、196周目、あと3ヶ月。


 ◇◆◇◆◇



 「World of kaleidoscope」からのお知らせを見ていた。新しいワールドについてだった。ゲーム開始(サービス開始)から3年近く、当然それは有りうる話で、あり得た未来の一つ。ドハマリしたゲームだから、凄く嬉しいニュース。

 単純にデータの引き継ぎに関しての話。こっちのワールドが潰れる訳じゃないからまだ気が早い。待ち遠しいけどこっちでやりたいことをやりきれてから移りたいと思った。


 …残る周回はまだ60周もある。

 あとレアアイテム収集とレア敵6体、真ラスボス、神の討伐が残っていた。合わせて8体の敵とまだ見ぬお宝。このワールドの完全攻略、そのラスト(?)スパート開始。



 単純計算で残る周回のクリアに3ヶ月弱。

 …とにかく優先度はまずは周回、次にレア敵、真ラスボス、神の順だ。


 ここから、ひたすら逃げて続けていたレア敵も確実に倒そうって覚悟を決めてプレイに挑んでいた。周回の合間の裏ダンジョン行軍。1週間に一度のチャンスだ。

 とりあえず、6日で6周。これで202周目。

 裏ダンジョンをひたすら歩き続けてく。入り口以外の8フロアをただ闇雲に歩くだけ。レア敵は突然、そこに現れるみたい感じでしかないので、これ以外に出逢う方法がないのでアイテム収集並みに運がいる。

 …結局、この日と次の裏ダンジョンの日は逢えないで終わった。レアアイテムはかぶりが数個と運がない行軍で202周回目と210周回目は終わり。


 216周回を経て、ようやくレア敵と遭遇出来た。凄く大変な戦いになった。1時間くらいずっと戦う羽目に…。

 真っ当に戦うのはこれが初めてだったので、とにかく全てが手探り。泥試合と化したのは、敵がやたらと回復をするからだった。こんなのがあと5体もいる。多分、次まではレベルも上がって少しは楽になるはずだと思った。


 …運が良いのか悪いのか、まさかのチャンス到来だった。結果はなんとか勝てただけ。たった1体の敵に1時間、精神的に疲れてしまった。

 216周はこれでおしまい。あと4体。


 ◇◆◇◆◇


 少しだけ裏ダンジョンの攻略は休み、ひたすら周回を終わらせることにした。

 ダンジョン1日分を充てれば約1.5倍の周回スピードが出せる。今更そこに気付いたのだからしょうがない。そして費やした1ヶ月で周回はついに255周回目に到達させた!

 …あと4体とレアアイテム収集が裏ダンジョンでの最後の仕事。ここから毎日ダンジョンの中、歩いて戦ってレベルも上げて。


 やっとレア敵3体目との遭遇そして撃破までは約1ヶ月、レベルが頭打ちになっているキャラが2人いるので楽をしたかった。プレイヤースキルが限界な分を別に頼っても足りないなんて予想外だった。


 ついにこの程、新しいワールドのオープンがあったけれども、まだ終われないので始めれない。

 …勇者さん達もフレンドも、数人残してもうあっちの世界に行ってるらしい。旧サービスのこっちは寂しくなってた。まぁいいか。その時はまだ気を持ち直した。


 残るレア敵を見つけられない数日、自分以外(職業)の装備が最強装備になってた。果たして、最高レア度とレア敵3体だとどっちが大変何だか…。ぼんやりとそう考えていた。



 結局は結果が出たから答えは簡単、最高レア度のアイテムが大変。

 しばらくダンジョンから出ないで延々と歩き続けること約20日。2日連続、通算4体目と5体目のレア敵を撃破した。

 …達成感より疲労感、あと少しの焦燥感。正直、もうゴールしても良いよね?と誰かに答えを聞きたかった。


 ◇◆◇◆◇


 そして、最後のセーブからほんの少し前まで遡ったあたり。

 成果が出ないなら、俺も新ワールドへと移行しようと決心した。あと30日したらあっちの方へ…見飽きた風景<新しい世界の風景。気持ちだけはすっかり向こうへと飛んでいた。


 遠足を待ちきれない子供のような感じで、最後の時間潰し。1日1日を妙にドキドキして過ごしてた。


 移行予定日まであと9日。

 …ついに最後のレア敵と遭遇、撃破。なんとか最後の最後で間に合った。ここまで来た段階で、実は、真ラスボスとか最強の敵の神には触らないで良いな、と思っていた。



 でもちょっとだけ。すぐに真ラスボスだけは戦えるので腕試しをして来た。

 ………何もできない無力感、絶望ってやつを教えて貰って来ました。


 ◇◆◇◆◇


 あれこれと新ワールドのために準備、それと最後の悪足掻き。無欲な時程、運が良い。最高レア度のアイテムも終わった。


 …そして、この話の冒頭へと続く。


 やっと心おきなく新しいワールドへと旅立てる。最後の作業をやりきろう。今日は終わり。

 また明日をこの世界で頑張ろう、そう思ってゲームを終わらせた。



 ――新ワールドへ、あと2日――

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