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90.決着

 レイが地面に降り立ったのと、紅い光が立ち上がったのは同時だった。スッと軽やかに足をつけたレイは、朦々と立ち上がる光を目にする。


「あれを喰らってまだ立つか」


 レイはコントリクションを受けて尚まだ倒れなのかと畏怖に似たものを感じた。実際はディクルド自身がその技を受けたわけではないのだが、レイは未だ勘違いを続けていた。

 そんな勘違いから生まれた畏怖より、もっと強い感情が芽生える。


「そうでなくちゃな」


 それは興奮。最大威力を誇る技を持ってして仕留めきれない相手。

 そんな相手が今までいなかったわけではない。生まれた時からレイの周りには父親を始め、未だ敵わない相手が数多くいた。


 だが、言い訳が出来た。

 大人と子供だから。魔王だから。S級だから。理由は沢山あった。

 だけど、ディクルド相手にその言い訳は成り立たない。子供同士。純粋な人間同士。魔物でもない。

 ましてや自分は転生者である。むしろ、言い訳が出来るのはディクルドの方だ。


 だが、ディクルドはそんな言い訳をしない。ならば、レイも言い訳出来ない。負けを認めるしかない。


 レイはよくウサギと言う。

 それは彼が認めた相手にしか使わない単語だ。シャルステナ然り、アンナ、ゴルド。

 だが、彼が心の底からウサギだと認めているのは、ディクルドただ一人。


 それは何故か。


 理由は一つしかない。ディクルドが他とは違うからだ。

 ライバルだから?幼馴染みだから?

 違う。


 転生者である自分に一歩も引かず付いてこれたのが彼一人だけだったからだ。


 だから、レイがこの世界で一番その才能を認めているのはディクルドだった。

 類稀なる才能。天才と呼ぶには、余りにも肥大し過ぎた天賜の才。自分も含め、この世界にディクルド以上に戦う事に関しての才能を授かった者はいないとレイは確信している。


 そんな相手との一対一の真剣勝負。戦闘狂予備軍の彼が興奮を抑え切れるわけがない。

 そして、その実力を目の前にして、興奮が爆発仕掛けないわけがない。


 レイは笑う。

 この久しく感じなかった興奮を感じられた事に対して。

 そして、そんな相手と出会えた事に感謝して。

 何より今この瞬間を楽しむために。


「クライマックスといこうぜ、ディク」


 そんな風に笑うレイに向かって、突風が駆け抜けた。

 それは紅と蒼を同時に纏ったディクルドの移動によって生まれた風圧。砕けた地面を吹き飛ばし、荒れた大地を剥き出しにして現れたディクルドにレイは目を見開いた。


 限界を超えて、只でさえ飛び抜けて高かったディクルドの身体能力に磨きがかかっていた。今の彼の身体能力を数値に表すとしたら、5万に迫ろうというもの。今のレイの能力値はおよそ竜化による上昇値を入れても7、8千。


 つまりところ、今のレイとディクルドには、隔絶とした差があった。


 レイはその差をしっかりと感じ取っていた。ただ目の前に移動してきただけ。それだけなのに、魔法でも使ったかのような風がレイを煽った。

 強敵過ぎるだろと、レイは思わず身震いした。


 ただの純粋に身体能力を強化していくだけのディクルド。だが、単純だからこそ強い。今のレイでは反応すらままならない。


「……残り2分」


 手のつけられない化け物と化したディクルドは静かに呟いた。


「残り2分で僕は身動き一つ取れなくなる。耐えきれば、レイの勝ち。レイを倒せば僕の勝ちだよ」

「……そうか」


 限界突破を使ったのだろうとレイは推測した。元々高かった身体能力が何倍にもなれば、こうなるかと1人納得し、レイは鍵を開けた。本日二度目解錠。出来れば使わずにいたかったが、そうも言ってられない。


 経験値がある限り無制限に魔力を引き出す経験還元。だがそれは、本当に無制限というわけではなかった。もう一つ、隠れた制限が存在する。それは、補充ペース。


 経験還元とは魔力を作り出すものだ。ゼロからでも100、いやそれ以上に魔力を引き出す事が出来る。だが、その負担までスキルが背負ってくれるわけではない。レイの体が、具体的には魔臓が背負う事になる。


 その負担は決して大き過ぎるというわけではない。少しの補充程度なら、負担はないに等しい。だが、ゼロから100へというのは、クールダウンせずに激しい運動をやめる様なものだ。増してや100以上を還元するレイの魔臓は少しずつ蝕まれている。


 だから、同じ様なスキルを持つシャルステナは自らに1週間に一度という制限を設けたのだ。しかも、レイは魔臓にダメージを負って久しい。

 だから、本当は経験還元を使う事は避けるべきだった。


 だが、彼は知っていた。もうすぐ自分の体が生まれ変わる事が出来ると。

 そして、今が無茶を通すべき時だと。

 何よりこの一瞬に残りの全てを賭けても、今という時を生きたかった。


 スズメの涙程しか残っていなかった魔力が爆発的に膨れ上がる。それは、暴走寸前の魔力の嵐。吹き荒れる制御を失った魔力が小さな暴走を起こし、地面に穴を開け、膨れ上がった魔力はレイに纏わりつく。


「魔装第二形態」


 水色の鱗と赤い魔力が混ざり合い、奇しくもディクルドと同じ紫の光となって、レイを照らす。


 肉体に纏う魔装、そして、鱗と爪に高密度の魔力を溜めて、極限まで高めた硬度。

 防御特化の完全体。


「魔王‼︎」


 その姿は既に人ではなかった。紫の不気味とも取れる光が、竜化の非人間性を加速させた。


 感謝する、ディク。

 この技を使うまで俺を追い込んでくれて。

 俺の最硬と、お前の最攻、どちらが強いか今決めよう。


「来い‼︎この防御を破れるものなら破ってみろ‼︎」

「逆だよ、僕の攻撃に耐えれるか、耐えれないかだよ‼︎」


 どちらも同じ意味。だが、くだらない事でも勝負にしてしまう二人にとっては致命的に意味が違った。

 自らの最高の方が強いと、二人は言い争ったのだ。


 そして、火蓋は切られる。

 伝説となる武闘大会決勝の最後の衝突。しかし、その決着を見る事が出来たのは僅か14人と一匹のみ。

 だからこそ、この戦いは伝説となったのだ。


 ドガァァァ‼︎


 それが始まりを告げる音だった。

 思わず後ろに倒れてしまう程の衝撃が駆け抜け、次の瞬間にはボロボロの闘技場の一部が吹き飛ぶ。それに悲鳴をあげる隙もなく、今度は地面が、道が、家が、木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 二人の戦いは既に闘技場の中で行われていなかった。街全てが舞台。目で追う事も困難なスピードで、次々に激突音と破壊音が鳴り響く。もはやどこで何が行われているのかわからない。ただ、戦闘の痕跡だけが街に残り、音と衝撃だけが伝わる。


「あの馬鹿弟子がぁぁぁあ‼︎」


 街にまで及んだ被害にキャランベルは絶叫した。そして、絶叫の最中思わず飛び出そうとした彼の横から手がスッと前に出され、止められる。


「離してください‼︎このままやらせると後処理が大変なんですよ‼︎」


 堪らず止めに入ろうとした彼を止めたのは、本来真っ先に止めなければならない騎士団長だった。


「まぁ、落ち着け。街の住人は既に避難済みだ。それに、こんな面白い戦いの決着を見ずして終われるか!」

「もうあんた騎士団長やめろよ‼︎」


 キャランベルはこの時、騎士団長の座を奪い取ろうと強く決意した。


 ドガァァァン‼︎


 闘技場の崩壊寸前だった建物がまた大きく吹き飛んだ。そこから入ってきたのは、レイとディクルドの二人。

 レイは地面を削り吹き飛びながら。

 ディクルドはその後を追うように。


「このッ!ポンポン吹き飛ばしやがって!」


 ピンボールのようにディクルドの剣に弾き飛ばされていたレイは、バッと立ち上がり勢いを殺しながら、叫んだ。


「そっちこそ、何でそんな硬いのさ‼︎」

「そういう技だから仕方ないだろ‼︎」

「それだったら僕だってそうだよ‼︎」


 伝説となった二人の戦いがこんな子供じみたものだと誰が思うだろうか?


「もうこんなボールみたいな扱い嫌だ‼︎限界突破‼︎」

「あぁーー‼︎まだそんな技隠してたんだ‼︎」


 そんな言い争いをしながらも二人は実に楽しそうだ。まるで幼き頃に戻ったかのように。


「フッ、魅力的な男は隠し事が多いものなのさ」

「絶対嘘だ‼︎前にアリスが騎士団長がこっそり溜めてた女の子の裸が載ってる本見つけて、『隠し事する男性って最低』って言ってたもん!」


 突然の暴露に騎士団長は『何故それを⁉︎』と慌てふためく。そして、アリスはゴミを見るような目を騎士団長に向けた後、プイッと目を逸らす。

 そして、シャルステナ達もゴミを見るような視線を向ける。


 この日一番の重症を負ったのは騎士団長かもしれない。そんな団長にレイは同情する。


「ば、馬鹿野郎‼︎こんな所で男の秘密を暴露してんじゃねぇ!お宅んとこの騎士団長様はな、女っ気のない仕事に女を持ち込みたかったんだ!奥さんにバレないよう、バレないよう気を使ってコツコツ集めてたんだよ!その本に載ってる女性の裸で仕事の疲れを吹き飛ばしてたんだ‼︎」

「も、もう、やめてくれ…」


 だが、それは騎士団長の名を落とせど、援護にはならなかった。

 余計に強くなった汚物を見るような視線に深刻なダメージを負った騎士団長は、膝をついた。ちなみに、奥さんはいない。


「そ、そうなんだ。団長って変態だったんだ‼︎」


 変態だったんだ

 変態だった

 変態

 変態……


 トドメの一撃で、騎士団長は血を吐いた。


「おらッ!」

「遅いよ!」

「そっちは軽い!」


 限界突破による身体能力向上により、まだついていける差まで縮まった能力差。それに加え、ディクルドの攻撃をまるで通さない防御力。戦いの行方はレイに傾き始めていた。


「はっ、蚊が止まったかと思ったぞ」

「なんだとぉ!」

「そんな攻撃俺には効かねぇよ」


 レイはディクルドを挑発していた。実際は地味に痛いのだが、それでも自分優勢のこの状況が彼は不満だった。


 お前は俺と並んで立つライバルだろ?

 もっとだ。足りない。もっと強くなれ。


 今この場で、限界を超えろ。


 ウサギ(・・・)のお前なら出来るはずだ。


 そんな思いがレイの言葉には込められていた。


「はぁぁぁあ‼︎」


 挑発に乗ったディクルドが全力で振り下ろした一撃と、レイの腕が交差する。


「だから、効かないんだよ‼︎」

「がっ…!」


 レイの回転の勢いが乗った尻尾がディクルドの腹を強打した。何度もバウンドして、ディクルドは崩壊した瓦礫の上に叩きつけられる。


「ぐぅ……くそっ……」


 ディクルドは奥歯を噛み締め、苛立ちを込めて瓦礫を殴りつけた。粉塵が瓦礫と共に舞い上がる。


 悔しい。

 何が?負ける事が?


 …………違う。


 ここまで差がある事が。


 レイに負けたくない。

 だけど、それ以上にーー


 置いていかれるのはもっと嫌なんだッ‼︎


「うわぁぁぁぁあ‼︎」


 それは負けず嫌いの子供の叫び。だけど、ただの負けず嫌いの叫びではない。

 絶対に負けたくない相手が、置いて行かれなくない相手がいる男の叫び。


 その強い思いが、彼に壁を越えさせた。


「ーーぁぁぁぁあ‼︎」


 叫びと共に膨れ上がる限界突破の光。その真紅の発光はオーラに打ち勝ち、ディクルドを赤く染め上げる。

 そして、彼をさらなる高みへ。


「それでこそ、俺のライバルだ‼︎」


 レイは嬉々としてそう叫ぶ。そして、魔王形態になってから初めて深く構えた。何時でも踏み込めるように腰を落とし両手は前に。さらに纏う魔力をより猛々しく燃やし、万全を整える。


 ーー決着をつけよう。


 ディクルドはその思いに応えるように、片足を引き剣を肩の高さに構えた。その両目はレイを真っ直ぐに捉える。


 二人の間には大きな間があった。しかし、二人にとっては、僅か数瞬の間になくなる距離。

 今の二人にとってこの距離がお互いにとっての間合いだった。


 14人しかいない観客が決着を感じ取り息を呑み、見守る。誰もが、集中を高めタイミングを計る二人の雰囲気にのまれ、緊張を高めていく。


 二人の間に崩壊した闘技場の隙間から流れ込んだ風が吹く。それは二人の戦いで傷ついた地面を撫で、砂煙を運ぶ。


 静かだった。

 罵声も歓声もない。会話も、人が歩く音さえ聞こえない。

 そこにあるのは、まるで決着をつけさせまいと二人の間に入り込む風の音だけ。


 僅か10数秒。

 静かな風の音だけが耳に流れ込む。


 この場にいる者にとっては何時間にも感じられる膠着状態。


 その終わりを告げたのはーーディクルドだった。


 息を細く吐き、ディクルドは地面を踏み砕き前傾姿勢でレイに肉薄する。

 そして、肩に沿う様に掲げた剣を突きおろした。


 ドガァッ!!


 もはや色がごちゃ混ぜになった剣が勢いよくレイの腹に突き立てられた。


 二人の最硬と最攻が鬩ぎ合う。


 剣先が魔装を剥がし、内に隠れた竜燐へと到達する。そして、今度は竜燐に込められた魔力を打ち砕く。


 バキッ


 それは最後の砦が割れる音だった。剣先が鱗に突き刺さりーーーー止まった。


「俺の勝…」

「まだだぁ‼︎瞬動‼︎」


 勝利を宣言しようとしたレイの言葉を遮るディクルドの咆哮。それに込められた思いが、腕に、足に、そして剣に乗る。

 更にゼロ距離からの瞬動が、2人の足を深く地面に沈み込ませ、その超加速の勢いを余すことなく力に変える。


 バキンッ!


 最後の悪あがきが鱗を突き破った。


「グフッ!」


 深く腹に突き立てられた剣。それはレイの腹を貫き、裏の竜燐にて止まる。


「前も言ったよ。勝ったと油断するのは、レイの悪い癖だ」


 レイがディクルドの癖を知っているように、彼もまたレイの悪癖を知っていた。


 喉から這い出るように出てくる血水。それはレイの口端からぽとぽとと垂れ落ちる。


「レイーーッ⁉︎離してアンナ‼︎レイが、レイが‼︎」


 その光景を見てシャルステナが絶叫をあげて、飛び寄ろうとする。それをアンナは羽交い締めにして止める。


「まだダメよ、シャル!あいつが勝たないと、シャルは…」

「けどッ、レイが、レイが!」


 悲痛なシャルステナの叫び。その声はさすがに二人にも届いた。


「レイ、負けを認めてよ。これ以上は…」

「勝負、じゃない。だけど……今回ばかりは負けられない」


 降参を促したディクルドにレイは被せるように、降参はしないと、ディクルドの腕を掴んだ。そして、血が滲む口を開く。それは言葉を発するという意味ではない。

 ぱかっと、まるで何かを吐くような動作。


 キュゥゥゥゥ


 息をするように、その口の中に吸い込む。


 ーー魔力を


 肉体に纏った魔力を。

 鱗や爪に貯めた魔力を。


「ッ‼︎」


 光を取り込むように、一つに纏まろうとする魔力を見て、ディクルドは肝を冷やす。戦いで流した汗が一気に引き、背筋を冷たく撫でられた気がした。

 そして、逃げなければという焦燥にかられ、レイの手を振り解こうとする。


 しかし、爪を突き立て離さんとするレイの握力と格闘する間にそれは完成してしまう。


 それに伴い薄くなった防御。そこに活路を見出したディクルドは拳を振り下ろそうとするも……レイの攻撃の方がわずかに速かった。


 光線のように解き放たれた魔力。赤き閃光がディクルドを飲み込んだ。その瞬間、何をしても離れなかった手がパッと開かれる。


 そして、ディクルドは再び元いた瓦礫の上に吹き飛ばされた。


 それは竜のブレスを模したレイの技だった。魔工で集めた魔力を圧縮して解き放っただけで、魔爆程威力があるわけではない。

 所詮は水竜のブレスと同じく吹き飛ばす程度のものでしかないが、お互い限界に近い状態では、十分な決め手になり得た。


 だが、それでも意識を飛ばさなかったのは、ディクルドの意地からか。


 フラフラと立ち上がったディクルド。

 お互い満身創痍。それでも一歩踏み出そうとした彼はーー倒れた。その場で、急に力が抜けたように膝を折り曲げ、纏っていた光を霧散させ倒れた。


「じ、時間制限ッ……」


 限界を超えた力が失われ、気怠さが手足の先から這い上がってくる。


「まだだッ……」


 だが、動く。限界を超えた代償に、身動きが取れないはずなのに、手が、足が、口が動く。

 彼は起き上がろうともがいた。


 限界昇華。

 限界突破のさらに上。その効果は限界突破の代償の緩和とその効果の上昇。

 彼はあの時、文字通り限界を超えたのだ。それにより獲得したスキルが、代償を緩和した。


 だが、それでもその身に受けたダメージがなくなるわけではない。

 既にその身は限界。代償とは別の理由で、彼は立ち上がる事は出来なかった。


 やがて、ディクルドは足掻くのをやめた。


 もういい。

 もう十分だ。

 全部やりきった。用意した手も、この場で掴んだ力も全て出し切った。それで負けたんだ。

 悔いはない。


 それにー


 ーーレイの防御を打ち砕けた。


 それがディクルドを満足させた。


 僕はまだレイの横に立ってる。


 ディクルドは震える手で体を起こし、尻餅をつく態勢になる。そして、


「負けた。降参だよ」


 負けを認めた。


 これはまだ勝負の途中。

 次、また勝てばいい。

 僕とレイは永遠にライバルなんだから。


「よし、これで俺の一歩リードだな」


 いつの間にか剣を腹から抜いたレイは、笑みを浮かべながらディクルドに近寄った。

 そして、座り込んだディクに手を貸そうとして、


「あいた!」


 盛大にこけた。


「何やってんのさ。勝った癖に格好つかないよ」

「あいてて」


 傷口を抑えながら顔を上げると、鱗が光を発して消えていく。

 レイもまた限界だった。竜化が勝手に解除されてしまう程に。そして、残り香の様な限界突破も段々と薄くなっていく。


「じゃあこれで、俺の7826勝」

「僕の7825勝」

「「3引き分け」」


 二人の間の決まり。

 いつしか決まったそれは未だに二人の間に根付いていた。

 それがおかしくて、二人は笑い合う。


 二人は変わらない。何年も前からずっと同じ。


 ただの超がつく程負けず嫌いな子供のままだった。


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