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87.その努力は無駄であったのか?

強いポケモン出てこない……

「どっからでも来い!」


 そんな挑戦的な招待に答えるかのよう、二人のシルビアが姿を消した。その直後、頭に鳴り響く警戒音。俺はそれを無視してシルビアを迎え撃つ。


 金属同士がぶつかる甲高い音が背中でなった。魔装にシルビアの小刀が弾かれた音だ。


「そこか!」


 俺は右手を駒のように振り回し、背後のシルビアへと攻撃した。しかし、シルビアの体を完璧に捉えたはずの攻撃は、


「なっ⁉︎」


 シルビアの体を素通りし、空を切る。

 手刀は煙を切ったかの様にシルビアの姿を真っ二つに。そして、瞬時にその姿を取り戻すシルビア。顔には絶対の自信からくる笑みがこびりついていた。


 ガキン!


 また背後で甲高い音がなった。それはつまり、目の前にいるシルビアとは別のシルビアが俺を攻撃したという事。


「おらっ!」


 俺はまた右回りに腕を振るった。そしてまた腕は空を切り、シルビアの体を素通りする。


「どうなってんだっ⁉︎」


 俺は何度も繰り返されるその現象に思わず叫んでいた。何度繰り返そうが、シルビアを捉えられない。いや、捉えてはいる。だが、当たらない。当てられないのだ。


 とても心臓に悪い戦いだった。俺の攻撃はシルビアを何度も真っ二つに切り裂き、その度に俺は殺してないよな?とドキドキした。


 目で見るシルビアは何度も死んでいた。だが、腕に伝わる肉を断つ感触の欠如がそれを否定する。


 ガキンという音が鳴るたびに右手を回転させ、クルクル回る。そして、シルビアの体を引き裂く。この繰り返しだ。まるで氷の上でクルクル回っている気分になる。


 俺の攻撃は透過し、シルビアの攻撃も魔装に阻まれ通らない。その繰り返し。

 何十回も繰り返されるそれはやがて、いや、とうとう俺に牙を剥いた。


「う、うぇ〜……酔った……」


 俺は地面にひれ伏しえずいた。目が回ったのだ。

 そんな情けない格好の俺にシルビアは容赦なく攻撃を繰り返す。

 俺を囲むように小刀を振るう4人(・・)のシルビアは皆一様に顔に焦燥を浮かべていた。


 俺の攻撃は当たらない。だが、シルビアの攻撃も通らない。シルビアはそれに焦燥を感じているようだ。

 その目に、伝う汗に焦りが見え隠れし、動きも雑になっていた。


 そんな決着を急ぐシルビアに対し、俺は慌てるどころか、吐き気に苦しみ勝負どころではなかった。

 ぬかった。

 まさかこんな落とし穴にはまるとは……

 舜天幻想、恐ろしい技だ。相手を行動不能に陥らせるとは……


 そんな冗談を考えるぐらいには余裕があった。というのもシルビアの攻撃は軽く、魔装を殆ど削るに至らない威力なため、魔力が殆ど削られていなかったからだ。

 これなら補充せずとも一時間は耐える事が出来る。


 一方、そんな早く吐き気治らないからなぁとか考えている俺とは違い、真剣そのもののシルビアは目に見えて焦りを見せてきている。

 これはつまり、魔力切れが近いという事なのではないだろうか?


 魔力消費が激しい技なのかな?

 このまま吐き気に苦しんでいる間に魔力切れを起こし、ぶっ倒れるなんて決着になるのだろうかと、俺は吐き気を誤魔化す為に想像した。


 そして、浮かんできたのは、嘔吐する俺の横で魔力切れを起こし大の字に転がるシルビアの姿。そして、それを見て司会者が俺の勝利を宣言する。


 な、情けねぇー……

 なにその勝ち方?ダサすぎんだろ。

 準決勝でその勝ち方はないだろ……


 俺はそんな情けない勝ち方を回避するため、舜天幻想について考えを巡らせる。


 今ある情報はなんだ?

 魔力消費が大きい(かもしれない)。

 分身する。

 攻撃が透過する。

 突然現れる。

 酔う。


 …………さっぱりわからん。


 突然現れるのは瞬動か、シンゲンのやってた技だとして、分身したり攻撃がすり抜けるのがわからん。

 そして、酔うってなんだ?

 必要ないもんまで候補に入れんじゃねぇ!


 そんな一人突っ込みを心の中で寂しく入れながら、俺は情報を集めるため、空間を広げた。


「えっ…?」


 俺は思わず間抜けな声を漏らした。

 なんだこれ?

 おかしい。いや、気持ち悪い。

 なんだこれは……


 空間で感じ取った周囲の様子は、目で見える物と全く異なっていた。

 一言で言えば、空間がねじ曲がっていたのだ。


 そのねじ曲がった空間の中で、突然現れ消える物体。

 そして、また空間がねじ曲がる。


 これは……空間魔法!

 シルビアは空間魔法を使っているのか!


 そう、これは空間魔法を使った時に見られる現象に似ていた。一つ違うのは、ねじ曲げる目的で発動する魔法に見られる指向性のある曲がり方ではなく、グチャグチャしていた事だ。おそらく副次的に空間が捻じ曲がったせいで、乱雑に空間が曲がっているのだ。


 そうか、この技は空間魔法を使ってたんだ。ということは、突然現れるのは……瞬間移動か!それならこのグチャグチャの空間にも説明がつく。


 じゃあ、分身したり攻撃が当たらないのは……何でだ?

 ……いや、待て。

 そもそもおかしい。

 空間が曲がってるのに何で見える景色がクリアなままなんだ?

 普通グニャグニャになって見えるはずだろ?


 他にも何かタネが……


「ハァハァ」


「ハァハァ」


 限界が近いシルビアの息遣いが荒くなっていた。その息をする音が、右、左、上、下とバラバラの方向で、独立して聞こえた。


 そうか……わかったぞ。

 舜天幻想破れたり‼︎


 俺はガバッと起き上がると、目の前にいるシルビアに手を伸ばす。

 シルビアは動きを見せた俺に何をする気かと訝しげに目を細めながらも攻撃の手は緩めない。むしろ何もさせまいとより一層攻撃の激しさを増した。しかし、その程度では俺の魔装を破る事は出来ない。


 そして、ゆっくりと伸ばされた手はシルビアの胸に到達しーーモミモミ。

 しかし、その指は柔らかいものに触れる事なく、そのまま透過する。

 ハズレか……


 …………。


 一瞬の沈黙。これはきっと気のせいだ。

 思わず攻撃の手を休め胸を抱いたシルビアとか、声援を送っていた観客達が静まり返ったのも、背筋が冷たくなる殺気を向けられているのも、全部気のせいだ。


「舜天幻想破れたり‼︎」


 気のせいだが、気のせいなのだが、静まり返った場を元に戻すかのように大声で俺は叫んだ。


「…………」


 シルビアはまた無言を貫く。セクハラ紛いのことをされため、変態を見る様な目で俺を見て、近づくなオーラを出すためか。

 それともーー話せない(・・・・)からか。


「いやぁ、見事としか言いようがないな。瞬間移動で出来る空間の歪みを、幻惑系の何かで隠し、さらには瞬間移動した後も自分の姿をその場に残す。ただ、惜しむべきはシルビア本体に攻撃力がない事か」


 俺は答え合わせをするように、シルビアの技の正体をペラペラ喋った。シルビアからすればいい迷惑だろう。

 そんな俺にシルビアは長い沈黙の後、何故かは本当にわからないが胸を庇うようにクロスしていた手を胸から離し答える。


「……………正解よ」


 とても小さな声音で、俺以外には誰も聞こえていないだろう答えを聞き、ホッとする。


「貴方は馬鹿だと思っていたけれど…」

「おい」

「案外頭も使えるのね。だけど、それだけで勝った気にならないで」


 最後の言葉をキツイ眼光を携えて言った彼女の姿が消え……なかった。


「な、何故⁉︎」

「瞬間移動先の空間を固定したからさ」


 瞬間移動はとても繊細なのだ。

 瞬間移動とは移動先と今いる空間を繋げ、落ちるようにして移動する魔法。移動先に何か物があったり、そもそも空間が繋がらなければ瞬間移動は出来ない。

 今回はその空間を繋げるのを邪魔したのだ。


 空間を繋げるには、空間を酷く歪めなければならない。その歪みが道となり、瞬間移動を可能とするのだ。

 だから、その空間を固定したことで歪みを引き起こさせないようにした。それだけで瞬間移動を妨害する事が出来るのだ。


「一体どうやってッ……そもそも何故移動先を…」

「特定出来たか、か?そんなもの簡単だ。空間に歪みが生じた場所を固定すればいいだけの事だ」


 もうこの技は俺に通用しない。例え固定しなくとも、瞬時に反応できる。


「降参しろ、シルビア。もう魔力切れも近いんだろ?」


 そう俺は降参を促した。女の子相手に剣も拳も振るいたくはないからだ。男ならここで、ドカン、ボカンやるが女の子相手だと気が引けるのが本音だ。


 そんな俺の気遣いにシルビアは絞り出すように言葉を発した。


「………嫌……絶対降参なんかしないッ!どうして⁉︎私はこの一年あの男に勝つ為に頑張ってきた‼︎なのに、なのにっ、どうして届かないのよッ⁉︎何故あの男でもないあなたが邪魔をするの⁉︎」


 シルビアは胸の内曝け出し泣き叫ぶ。この一年の努力を、ディクに勝ちたいという想いを、涙と共に叫ぶ。


 観客達の中でその涙に同調し、ホロリと涙をこぼしながらシルビアに声援を送る者がいる中、


「…………」


 俺は何と言えばいいかわからず口を閉ざした。


 彼女の努力は本物だったのだろう。あの技が正にその証明。生半可な技ではなかった。

 俺が今まで見た中で一番、技と呼ぶに相応しい代物だった。


 考えつくされた動き。それに合わせて、幻影を作り相手を惑わす。そして、さらには分身という副次効果に透過。

 どれを取っても技として成立しそうなそれを組み合わせ、一つの技として昇華させた彼女の努力は、俺に潰されたわけだ。


「私の努力は貴方に傷一つ負わせられないそんなものだったの⁉︎ねぇ、答えて⁉︎私の努力は無駄でしかなかったの⁉︎あの男、ディクルドに私はまた傷一つ負わせられない、その程度の努力しか出来なかったの⁉︎」


 彼女の悲痛な叫びは俺の心を抉る。

 傷一つ負っていないか……

 確かにそうだ。俺は結果的にまた傷一つ負わなかった。苦戦する相手として考えていた2人相手に俺は無傷。

 シンゲンはその事を嬉しそうに受け入れていた。また目標が出来たでござると。


 だが、彼女の場合は違う。彼女にとって俺は前座も前座。ディクの前に立ち塞がる邪魔者でしかない。

 そんな俺に傷一つつけられなかった彼女はこの一年の努力は何だったんだと悲観している。


 これは俺の罪だ。彼女程優秀な子供が傷一つ付けられない化け物を生んだのは、その化け物の片割れである俺の罪だ。

 転生チートで強くなったのは、俺だけじゃないんだ。俺の周り全てが、そう変わったんだ。


 その結果、彼女を泣かせた。その努力を踏み躙った。

 そんな俺は彼女に何を言えるのだろうか?

 努力は無駄にならないとか、いつか報われる日が来るとか、そんなありきたりの言葉を告げていいのだろうか?


 そんな掛ける言葉を探す俺の口から出たのは、


「短い」


 の一言だった。

 しかし、ハッキリとした口調で力強く告げたその言葉は泣き叫ぶ彼女を止めた。


「えっ……」


 一瞬、シルビアも含め闘技場が固まる中、再度俺は口を開く。


「短いって言ったんだ」


 強い口調で告げたその言葉にシルビアも観客も押し黙る。


「傷一つ付けられない努力しか出来なかった?違う。無駄な努力を重ねた?違う。一年の間、ディクに勝つため必死に努力した?足りない」

「何がッ、何が足りないのよッ⁉︎毎日、朝から晩まで私は頑張ってきた‼︎それなのにッ…‼︎」

「10年……」


 俺はシルビアの悲痛な叫びに重ねる様に言った。


「10年、いやそれ以上の年月、俺は努力して来た」

「そんなの私もっ…」

「ディクに勝つ為にな」


 再びシルビアの言葉に重ねた。そして、尚も続ける。


「俺とディクは幼なじみだ。物心ついた頃からの友達だ。俺たちにとっての遊びはいつも勝負だった。いつしか俺たちはライバルになった」


 戦績を付け始めたのはいつの事だっただろうか?

 そんな始まりをもう思い出せない程、勝負を重ねてきた。


「7825勝7825敗3引き分け」


 自分の勝ち数と、引き分けを二人で言うようになったのはいつだったろう?

 いつしか暗黙のルールのように決まっていた。


「毎日馬鹿みたいにそれしかしなかった。ディクに負けないために、ディクは俺に負けないために自分を高めた。それは今でも変わらない」


 俺たちは互いに目標だった。最も近くにあった目標が、遠くに離れた。だけど、それでも俺とディクは誓いを果たす為に、目標へと近ずこうとして来たんだ。


「俺とディクそうやって10年以上努力して来た。足りないんだよ。短過ぎたんだ。たった一年で追いつけると思うな」


 自分でも酷い事を言っているという自覚はある。だが、言わねばならない。こんな小さな少女を追い詰めてしまったのは元を辿れば、俺だ。

 これは俺の罪。ここでさらに罪を重ねる事になってしまったも、俺は言わねばならない。


「お前のこの一年の努力が無駄であったかは分からない。だが、傷一つつけられなかったのは事実。だけど、それは決して無駄だっからじゃない。足りないだけなんだよ。もしも俺たちの関係にシルビア、お前も加わりたいのなら、10年とは言わない。それに見合う努力を重ねるんだな。俺たちは逃げも隠れもしない」


 彼女はこの一年本当に頑張ったのだろう。だから、その努力が無駄になったと思わせる事だけは避けたかった。無駄ではなく足りなかったのだと、そしていつでも加わっていいと言外に言う事で、武闘大会で勝つという目標から、俺とディクに勝つという目標に変えさせたかった。


 それぐらいしか俺の口から言える懺悔の言葉はなかった。


 そんな容赦ない懺悔の言葉をシルビアがどう思ったかはわからない。だけど、重荷が取れて軽くなったかのように目が柔らかくなる。


「10年も……貴方達2人は馬鹿ね」

「かもしれない」

「私は………そんな馬鹿の仲間入りは御免だわ」


 そう言って、彼女は俺に初めて笑顔を見せた。とても華やかで明るい笑顔だった。そして、


「私の負けよ」


 シルビアは負けを認めた。さらに、シルビアの降参の一瞬後、


『シルビアが降参したーー‼︎キッチック決勝進出決定ーー‼︎』


 俺の決勝進出が決定した。


 〜〜


『キッチック決勝進出決定ーー‼︎』


 僕は観客席でその光景を見ていた。


「やっとだよ。やっとこの日が来たんだ」

「き、騎士長?」


 長かった。

 あの日、レイと別れてからずっとこの日が来るのを待ち望んでいたんだ。


「あ、あの落ち着いて。な、何する気ですか?」


 アリスの言葉は僕の耳には入らなかった。僕は誓いの証を掴むと、舞台に飛び降りた。


「レイーー‼︎」


 あの時とは逆。今度は僕から証を投げた。

 それをレイは片手でパシッと掴み取り、手の中身を見てから首飾りを外した。

 そして、投げ渡されたそれを今度は僕が受け取る。


 僕はウズウズして仕方がなかった。今この場で勝負を始めてしまいたい程に。

 そんな僕の気持ちを察したのか、レイは


「早ぇよ」


 一言、そう言った。


「ははは、ごめん。我慢出来なくてさ」

「子供か。いや子供だったな。だけど、明日まで待てよ?折角用意された舞台が勿体無い」


 そう言ってレイはブラブラと手を振って舞台を出て行った。そして、舞台の上にはシルビアと乱入者の僕だけが残される。


「ええっと……」


 自分で仕出かした事とはいえ、この怖い子と2人取り残され、僕はすぐには言葉が出ない。

 さっきの戦いで、かなり僕の事を目の敵にしてたのがわかった事もあって、余計に言葉が出ない。


「あ、あのさ、シルビアさんは強いよ。自信持って!」

「……………ぷっ」

「ええっ⁉︎な、何で笑うのさ?」


 レイに負けて落ち込んでるだろうと励まそうとしたのだが、何故か吹き出したシルビア。


「ごめんなさい。でも、目の敵にしてた貴方を改めて見ると、子供っぽいから」

「えっ?僕まだ13だから子供だよ?」


 可笑しな事を言う人だなぁ?

 僕って普段大人っぽく見えるのかな?

 それはそれで嬉しいけど……

 そうか、僕は大人びてるんだね。


「そうね……」


 そう言ってシルビアは僕に暖かい目を向けた。なんだろう?母さんとそっくりな目だ。


 この人、よくわからない人だなぁ。


『騎士長ーー‼︎戻ってきなさーい‼︎』

「いっ⁉︎」


 ギルク王子から奪い取ったマイクを片手に叫ぶアリスの声に僕は怯えた。

 こ、これはアリスが怒ってる時の声だ。ど、どうしよう……?


 〜〜〜〜〜〜


「全くまだまだ子供だな、あいつも」


 実力は大人顔負けでも、中身がな……

 気のせいか年より子供じみてる気がする。


 そんな事を考えながら、俺はディクに投げ渡された木片を見た。

 6年ぶりか相棒。


 懐かしの木剣の欠片をかつてを思い起こす様に見つめ、ギュッと握る。


「加工も何もせずそのまんまか。あいつらしいと言えばあいつらしいが」


 この機会にこれも加工しておこう。何がいいかな?

 同じ剣ていうのも、あれだしな。ペアルックみたいだから、嫌だな。

 あいつの木剣は剣の形にしたから、盾にでもするか?

 うん、そうしよう。騎士っぽいし。


 盾のデザインはどうしようかなどと考えながら、俺は控え室の扉を開けた。


「よし、帰ったら早速…」


 そして、固まる。


「帰ったら早速、何?」


 満面の笑みを浮かべるシャルステナがそこにはいた。


 あかん。これはあかん奴だ。怒ってらっしゃる……


「い、いや、ちょっとこれを加工しようかと……」

「ヘェ〜、そうなんだ。それはそうと、聞きたいなぁ私。あの時幻影だってわかってたんだよね?」

「も、もちろん。お、俺があの場でみ、見抜いてなかったわけないだろ?」


 そう、もちろんわかってたさ。それはもうサンタは赤い服を着ているが如く、当然わかってたさ。


「その割には手をクイクイ曲げてたよね?」

「あ、あれはシルビアの虚をつく為でございまして……はい」


 ははは、乾いた笑いしか出てこないな。何故だろう?


「そうなんだぁ。虚をつく為だっだんね。ところで、こんな虚のつき方はどうかな?」

「ギャァァァァアーー‼︎」


 どうやら、タバスコを目に入れるブームが異世界で巻き起こっているらしい。

 水中眼鏡購入を考える俺だった。


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