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7.未来の選択〜前編〜

 

 人は、一生の間に幾度か、人生の分岐路に立たされる。それは誰もが経験する将来の自分を夢想し、選択をするいわば人生路。右に行くも、左に行くのも自由。好きに選べばいい。


 ただし、その交差点の信号には、色々な標識がぶら下がっている。標識は勉学、特技、技能などなど、実に様々だ。それを満たさないと、どの方向にも進行は出来ず、道の先がどんな風に蛇行していたり、分岐があるのかもわからない。

 だが、それでも信号が青になれば人は必ずどこかへ行かなければならない。時には歩道に乗り上げたり、逆走してしまう事もあるだろう。


 そんな人生の交差点──ターニングポイントは、時に思いも寄らぬところで、交通事故のように発生する。


 例えば、ふと通りかかった店の店員に一目惚れをしたりだとか、偶然話し掛けた人が生涯の友となるだとか。

 そんな今はまだどうなるかわからない分岐路が突然訪れる。


 そして、俺の場合それは、5歳の時に訪れた。


「さぁ、あなたはどの神を選びますか?」


 その選択は、5歳の子供に与えるには余りにも大きく、数は多過ぎた。


「俺は──」


 何になりたいのか。

 そう考えた時、俺が思い出したのは……



 〜〜〜〜



 お祭りから、およそ一年。

 オラもとうとう魅惑の5歳児。


 っといっても、普段の暮らしが特段変わるわけでもなく、親父は月一度仕事に行くか行かないかのグータラ奔放生活を送っているし、母さんはそんな親父のケツを叩き、家から追い出して、家事に勤しんでいる。ハクは寝る事に忙しい。

 そして、俺はと言えば、相変わらず村の中を走り回るというような日々に明け暮れていた。


 ただ、最近は一人でいる事が多く、隣にディクの姿はないという意味では、少し変化はあったのかもしれない。

 別にケンカをしたわけでもなんでもないのだが、この世界では5歳になるとそろそろ将来に向けて勉強やら、仕事の手伝いを始める時期らしいのだ。


 ディクは、両親の影響もあってか騎士になりたいそうだ。しかし、騎士になるためには騎士学校という専門の学校に通うのが一般的らしく、ディクは数ヶ月ほど前からそれに向けて受験勉強に励んでいる。勉強して、特訓の繰り返しだそうだ。


 この世界の常識として、学校へは7歳で入学する。それ以上でも、以下でも一切受け入れてくれないらしい。そのため、ディクは必死だ。本気で騎士を目指しているらしい。流されやすく、俺と一緒に悪さをして怒られたりはするものの、基本真面目なディクの事だ。受験についてはあまり心配はしていない。普通に受かるだろう。


 では、俺はと言うと、これといって何かしているわけではない。騎士になるために学校に行く必要もなく、冒険者になるために必要な資格も特にないからだ。


 だから、ディクとは7歳で一度お別れとなる。

 きっと寂しいと思うが、ディクの夢を邪魔するわけにはいかないので『私と学校どっちが大事なの⁉︎』とは言わない。

 最近役者スキルから進化した俳優スキルを使ってやってしまえば、いろいろと後悔することになるからだ。きっと、ディクは俺にメロメロになり受験をやめ、俺たちはアブノーマルな関係に発展してしまうことだろう。

 誰もそんなことは望んでいない。俺も嫌だ。


 そういう訳で、ディク以外に仲の良い友達を持たない暇人の俺は、現在ボッチを満喫中だ。最近のブームは日向ごっこと、雲の観察。

『いやー、今日も実にいいくびれの雲だ。明日は雨かなぁ〜』などと、一人で屋根の上で寝転がっている。


 誤解なきよう。

 俺は別に孤高の狼を気取りたいわけでく、普通にボッチなだけだ。はみられてるだけだ。もう一種のイジメだね。


 と言うのも、気軽に同年代の子供に話しかけたら泣きながら逃げられ、チャンバラしている年上の少年達に混ざろうとしたら、お前は混ざるなと震えながら怒られた。ならばと、一つ、二つ下はというと……ほぼほぼ赤子だよね。


 つまり、何が言いたいかと言うと、子供達に物凄く怖がられてしまっている。原因はおそらく、日々の行いと祭りでの出来事。それで、俺は子供達に怖いと思われてしまったらしい。

 気付いた時には、既に手遅れ。子供達が俺に向ける目は、ヒーローショウの悪役に向けるものと同じだ。


 基本おかしいのはうちの親達だけなのだ。村人の殆どは、畑を耕したり、少ないが商売に勤しむという感じで、騎士やら冒険者やらは殆どいない。

 そんな村人の子供が、朝から飽きもせず剣を振り回すものなら、鍬を振れと怒られるのが普通。どんどんやれと言ううちの親達とは教育方針が大きく違う。


 そんな彼らが、毎日毎日本気で競い合う俺らを見たら、どう思うか。

 喧嘩ばかりしているとか、危ない奴だとか、そういう印象を与えていてもおかしくはない。それも、危険な魔法まで使用出来るというおまけ付きだ。それは一緒に遊びたくはないよな、と俺は納得はしている。


 だが、果たしてそれでいいのか。


 あと二年も経てば、ディクは別の街へ行ってしまい、週に数度の勝負もなくなり、本当のボッチになってしまう。


 5歳は、自分の将来を考える年齢だという。俺も、その時期が来たのだろうか。

 そう、呆然と空を見上げながら、先日誕生日を迎えたばかりの俺は考えていた。


 そんな日々が、数日間続いたある日。

 朝の日課を終えた俺が家に戻ると、親父が珍しく仕事に行く時の格好をしていた。


「仕事に行くの?」

「先週行ったばかりじゃねぇか」


 仕事は普通週5日は行くものですよ、お父さん?

 ちなみに前に仕事に行ったのは2週間前だ。よくそれで我が家の財政が成り立っているものだと、逆に感心すら覚える。

 しかし、仕事でないのなら、どこに行くのだろうか?


「レイ、出掛けるぞ。準備しろ」

「えっ、今から?」

「馬鹿野郎、朝出掛けねぇと日が暮れちまうだろうが」


 それなら、昨日のうちに言って欲しい。


「どこに行くの?」

「良い場所だ」


 良い場所か。それはおもろしそうだ。

 仕事に行く格好をしているという事は、村の外に連れて行って貰えるのだろう。俄然興味が湧く。


「わかった。じゃあ、準備してくるね」


 俺は、5歳の誕生日に買ってもらった真新しい冒険者装備一式に着替える。といっても、ボロボロの服の上から付けるタイプの軽装備だが、これを着て外に出るのは初めてなので、顔がニマニマしてしまう。

 胸当てと、膝と肘のカバー。それから革のグローブを付けて、最後に背中に鞘に入った真剣を背負ったら準備万端だ。


「あらあら、剣が地面に付きそうね。やっぱりまだ早かったかしら」


 俺が準備を終えると、母さんが俺の姿を見にやって来た。息子の晴れ姿──ではないだろうが、普段とは違う装いをした俺を見る目は優しい。ただ、背中に背負った大人用の剣だけは、少し微妙そうだった。


「いつもの木の剣を持っていったら? 重たいでしょう?」


 確かに金属の剣は重たい。それも、親父がわざわざ特注してプレゼントしてくれた一品だ。大きくなっても使えるようにとの配慮かもしれないが、子供のこの身には少し大きい。身長と同じぐらいある。

 だが、重いかと言われれば実はそうでもない。


「ううん、ちゃんと振れるから大丈夫。それに、この重さになれないと」

「そうね、早い内から慣れないと使えないものね。けど、疲れたらお父さんに持って貰うのよ」


 それは大丈夫だ。毎日鍛錬を欠かさずやり続けたお陰で、背負ってるだけならそれほど苦にはならない。体が小さいから初めは重さに振り回されたりしたけれども、最近そういう事も少なくなってきた。まぁ、まだ軽い木剣のようにはいかないけれど、親父に持って貰うほど重いとは思わない。


 ちなみに、ディクも5歳の誕生日に装備一式をプレゼントしてもらっていた。俺より誕生日が早かったので聞いた時は少し嫉妬したりもしたが、実際に来ているところを見たら、思わず笑ってしまった。

 何というか、騎士のフィギュアのようだった。ミニチュアサイズの。

 つまりは、今の俺と同じ。背丈に合わない格好だった。


「ところで、母さんは一緒に行かないの?」


 ふと、母さんを見ると、外に出掛けるような格好ではなく、その手にはお弁当があった。


「ええ、今日はディク君のお母さんとご飯に行く約束をしていてたのよ。ほら、あの人その場の思い付きで生きてるでしょう? だから、今日は付いて行けないわ。その代わり、お弁当を作って置いたから」

「ありがとう、母さん」


 この短時間でお弁当まで作ってしまうとは、母さんはスペシャリストだ。突拍子もない行動を取る親父の扱いに手慣れている感じが半端じゃない。

 さすが、この計画性というもの奈落の底にでも置いて来てしまったらしい親父と夫婦をやっているだけはある。


 そんな風に感心していると、ハクがフラフラしながら飛んで来た。


「ハクはどうする? 一緒に行く?」

「ピィ!」


 ハクは俺が手を伸ばすとその上にチョコンと着陸し、一つ鳴いて返事を返してきた。どうやら人の言葉を理解しているらしい。さすがは最強種。そのうち話し出すかもしれない。

 けど、最近何となくだが、ハクの気持ちがわかることがある。鳴き声の微妙な高さと抑揚。それから、鳴き方によって、何となく言いたい事がわかる気がする。ひょっとしたら、そのうち俺も竜の言葉を話し始めるかもしれない。逆にね。


 俺は、ハクを手から肩に乗せ変えると、外で待っている親父の所へ駆け足で向かった。


「よし、着替えてきたな! んじゃま、行くとするか!」

「うん」

「ピィ」


 いってらしゃいと玄関から手を振って見送ってくれる母さんに手を振り返して、俺は村の外へと向かう親父の背を追い掛けた。



 〜〜〜〜



 村を出てしばらく道なりに行き、突然道から外れ鬱蒼と生い茂る親父の後ろを追いかける事、数時間。

 徐々に地面が平地から、登りへと変わってきた。村からでも見える、大きな山にでも入ったのだろうか。周りの草や木が高すぎて、どこにいるのか全然わからない。

 しかし、それでも前を行く親父が草を踏み分け、道なき道を歩けるようにしてくれるので、付いて行く分には特に困らなかった。


 ……そういえば、以前家出した時も、こんな木が沢山生えた場所だったな。


 そんな風に既視感に駆られていると、グギャギャッと可愛い可愛いゴブちゃんが現れた。


「おっ、丁度いいのが現れやがったな。レイ、俺が見ててやるから、新しい剣で倒してみろ」

「うん!」


 俺は頷き、背中から剣を抜こうとした。

 だが……


「あ、あれ……?」


 持ち上げたのに、剣が鞘から抜けない。そうなって、初めて気がつく驚愕の事実。


 手が短くて、これ以上持ち上げられない!


 なんて事だ。重さではなく、長さで躓くとか、さすがに予想外過ぎる。


 それでも何とか何とか背中の剣を抜こうと四苦八苦する俺を、親父は微笑まし気な顔で見ていた。

 いや、助けろよ。


 そう思ったのは俺だけだが、ゴブちゃんは完全に背中を向けられ、無視されている事が気に入らなかったらしい。けたたましく吠えて、牙を剥き出しにした。


「グギャギャッ!」

「ああっ⁉︎ うるせぇぞ、テメェこの野郎ッ! 俺の息子に、何か文句でもあるってのか、コラァ!」


 あなたは輩ですか?


「俺の息子の準備が整うまで、大人しくしてやがれっ! そんな事もわからねぇのか! 空気を読め、空気を!」


 無茶苦茶言ってるのよ、この親父……

 魔物に空気読めとか、もう存在するなに等しい暴言だ。彼らは空気を読まず、突然飛び出してくるのがお仕事なんだよ。


「グギャ……」

「おいコラ、人様に話す時は大きな声で、わかるように言いやがれ! テメェの親はどんな教育をしてやがるッ!」


 もうやめてあげて。ゴブちゃんが萎縮してるから。

 それと、5歳の息子に、生き物を殺せと言う親父の教育も大概だからな?


「クキャ……」


 ほら、もう可愛くなっちゃったから。俺が戦い難くなるから、もうやめてあげてくれ。


 俺は、もう見ていられなくて親父におねだりした。


「父さん、剣抜いて? 頑張ってみたけど……抜けないんだ」

「ああ、任せとけ!」


 一瞬にしてダルンダルンとなった親父は、ゴブリンの事など忘れ、手厚く俺の補助をしてくれた。


「やっぱりレイにはこの剣が似合うな! 俺の目に狂いなんざなかった。何が、まだレイには合わねぇだ」


 どうやら、この剣を買う時に何かあったらしい。どうせ母さんにでも、背丈に合わないとか、そんな至極真っ当な忠告でもされたのだろうが、真っ当ではない感性の親父は、剣を持った俺を見て満足そうに頷いた。


 …………ちなみに言っていいか?


 実は、剣を構えた姿を見せるのはこれで2度目だ。前もまったく同じ事を言われた。

 本当にこの人は大丈夫なのだろうか? 頭が。

 そのうち俺の事まで忘れたりしないよな? 割と真剣に怖い。


「……よし、待たせたな、ゴブ」


 やっとこさ準備が整った俺は、萎縮しシュンとなっているゴブリンの前に出た。すると、ゴブリンもようやく出演許可が下りたのだと庭駆け回らんばかりに歓喜して、吠えた。


「グギャギャッ!」


 気合いは十分。親父にやられた精神の落ち込みからも完全回復したようだ。

 なので──


「グビャ⁉︎」


 一刀の元に退場してもらった。


「ふぅ」


 何とか、ゴブリンの役目を全うさせてやる事が出来た。

 いやほんと、魔物が叱り付けられて、シュンとするなんて世知辛い世の中だよ。彼は仕事をしに来たというのに。

 すまんな、うちの親父が。


 と、俺が天に召されたゴブリンに心の中で謝罪していると。


「さすがは俺の息子だ!」


 それが何故か褒め言葉に聞こえなかったのは、気のせいと願いたい。



 〜〜〜〜



 そうこうして、戦闘と謝罪を繰り返すこと小一時間。

 ようやく俺たちは目的地へと辿り着いた。


「着いたぜ、レイ」


 そう言われて、踏み締める草木から顔を上げた俺の目に映ったのは、親父の大きな体だった。その他は鬱蒼とした木々の色に埋め尽くされ、先ほどと何ら変わった様子はない。

 ここが、秘密にしていたいい場所?

 いや、そんなまさか、と疑り深い目をして親父の体から横に顔を出した。


「おおっ!」


 そこには思わず唸ってしまうような美しい光景が広がっていた。


 生まれて初めて見る、自然の中で生きる動物達。鳥や犬など、よくよく見れば見たこともある動物もいるが、知識としても知らない初めての動物達がそこには溢れていた。

 その動物達がそこへ集っているのは、水飲み場だからだろうか。

 恐ろしく透明で、柔らかな光を跳ね返す水面。波一つない穏やかな水面を揺らすのは、動物達が口を落とすその瞬間だけ。

 そこにあったのは、自然の厳しさではなく、優しさを知れる光景だった。


「こんな綺麗な湖……初めて見たよ」


 湖の中から伸びる色華やかな水草と、湖を囲うように広がった若葉色の藻。それが湖と一体になって作り出すのは、山の中にあって異質な動植物達の楽園。獲物は沢山いるはずなのに、魔物が一匹として見当たらない。まるでここだけが、山から切り取られたかのような生命の活気に満ちている。


「いい場所だろう? こんなの他じゃあ、お目にかかれねぇ。俺の知る限りじゃ、世界にここだけだ」


 それじゃあ沢山ありそうだ、と普段なら心の中で思ったであろう言葉も、この湖に魅せられている今ばかりは素直に頷ける気がした。

 それほどに、この湖は幻想的で、美しい場所だった。


「俺ぁここが好きでよ。ガキの頃からちょくちょくここにやって来てた。レイにもいつかは見せてやりたいと思ってたんだ」


 ふと、顔を上げてみると親父の瞳は、子供のように湖に釘付けになっていた。それはまるで過去を思い出しているかのように、憧れと、興奮と、感動と様々な感情をその瞳に映していた。


「ここは、俺にとっての原点だ。この湖を見たから、冒険者になろうと、そう思った。こういう場所を見つけたかったから、世界を旅した。けど、やっぱり俺ぁここが一番好きなのよ。俺にとって、ここはそういう場所なんだ」


 気が付けば俺は親父の話に耳を傾けていた。湖よりも優先して、いつもは半分にしか聞かない親父の話に聞き入っていた。


「オメェは好きに生きろ、レイ。何だってやりゃぁいい。その気になりゃ、人間何だって出来る」

「僕は……父さんと同じ冒険者になりたいよ」

「がっはははっ、それでこそ俺の息子だ」


 親父は大きな手で俺の頭をグシャグシャ掻き撫でた。


「なりたいのなら、なりゃいい。冒険者ってのは、自由だ。何をしようと、どこへ行こうと、気の向くまま世界を自由に駆け抜ける」

「自由に?」

「ああ、世界で一番自由な仕事だ」


 親父はそう言って笑うと、俺を抱いて湖に近寄っていった。


「よくその目で見ておけ、レイ。こういう場所が世界にはあるって事を。挫けそうになった時は、ここを思い出せばいい」

「どうして?」


 腰を下ろし俺を足の上に乗っけて、俺の疑問がそんなに可笑しかったのか、親父は大声で笑う。


「がっははは、決まってるだろ。夢が人を歩かせるからだ。そうじゃなきゃ、冒険者なんてやってられねぇ。楽しいだけが、世界じゃねぇんだ」


 それは、親父の経験から来る話だろうか。一瞬その目に浮かんだ陰りを、俺は見逃さなかった。


「だから、冒険者になるにはまず夢を見ろ。それがなきゃ、冒険は始まらねぇ。いつの日か、お前が立ち止まりそうになった時、その夢がお前の道を照らしてくれる」


 親父はそうだったのか? そう、言葉にしようとした口を噤み、俺は湖に目を落とした。


 親父の夢は、こんな綺麗な場所を世界で探すこと。


 とても楽しそうな夢だと思う。あの夢の世界で、俺が持った未知への興奮と羨望。それに通じるものがある。


 でも、それは親父の夢だ。なら、俺の夢は?


 同じように世界の美しさを追い求めるか?


 いや……少し違う。


 俺が求めるのは、俺が行きたいと思うのは、未知の領域だ。そこにある興奮だ。

 似ているが、親父が求めるものとは違う。俺の中には、飽くなき好奇心がある。


 だから、たぶんそれが今俺の中にある夢なのだろう。

 形がふわっとした具体性のない夢だ。


 だから、探そう。俺の好奇心を満たす未知を。


 それが、俺の夢の第一歩だ。


 そう、親父が見せてくれた綺麗な湖の前で、俺は初めて夢の地図を描いたのだ。


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