50.休息
旅行中なのに休息日……
エサが戻ってきた後、城に戻ったみんなと共に俺は、朝食の時に、今日は自由にしていいと告げた。
どうせ筋肉痛だろ?と軽く笑みをこぼしながら、休息を伝えた。
その後、俺は釣竿作りを部屋で開始する。何もする事がないのも、暇だしな。
俺は釣竿の材料を種類別に分けて並べ、一つずつ作り始める。
竿の部分を少ししなる様な木の枝で作り、先の部分に糸と針を取り付けただけの簡単な作りだ。リールなんて物はない。
糸は服などに使われる物を使った。何本か重ねてそれを一本の糸でグルグル巻きにして、少し丈夫な物にした。長さは竿と同じくらいだ。
リールがないため、長すぎると引き上げる事が出来ないからだ。
そして、最後に針を取り付け、完成だ。
針は石を使っている。金属の加工は、簡単には出来ないからだ。鍛治師ならば出来るかもしれないが、俺には知識も技術もないため出来ない。なので、石を使った。手先が器用なため、かなり鋭い針が出来た。返しも、確かこんな感じだったとうろ覚えながらも作った。
これを魔力充填で固めれば強度は十分だろう。
こんな感じに、一本一本丁寧に作っていく。
5本ぐらい作り終え、そろそろ一息吐こうかと思った時、部屋の扉が叩かれた。
そして、返事を待たずに扉が開かれる。
「ノックの意味は…?」
思わず入ってきたギルクに突っ込んでしまった。
「礼儀だ」
「なら、返事待てよ」
悪びれもなく礼儀を口にするギルクに、礼儀を学び直してこいと言いたくなる。
「必要ないだろ。…ところで、お前は何をしてるんだ?」
「見て分かるだろ。釣竿作ってんだよ」
これが他の何に見えると言うんだ。
武器にでも見えるのか?
「釣竿?それは漁師が魚を捕る時に使う奴か?」
「まぁな。見た事ないのかよ?」
「王都ではそれを使う機会がなかったからな」
「それもそうか」
軽く頷き、ギルクの言葉を肯定する。
見た事がなかったのなら、ギルクの質問も納得出来る。ギルクの言う通り、山に囲まれ、水場が魔物の生息地である王都では使う機会もないだろう。
「で、何の用?」
「特にないが、暇でな。喋りに来た」
「ふーん」
俺はギルクと話しながらも、手を休めず釣竿を作り続ける。
「暇なら空でも飛んできたらどうだ?」
「余り空にいい思い出がなくてな。遠慮して置く」
「竜の背から見る景色は中々良いもんなんだがな…」
「俺は口にいたんでな」
お前のせいでなとギルクは続け、少し非難混じりの視線を向けてきた。
そんな目で見られている俺はどこ吹く風だ。
定員オーバーだったんだから、仕方ないさ。例え余裕を持って作っていたとしても、定員は決まってたんだ。
「それはいきなり参加しようとしたお前らのせいだろ?俺のせいじゃないさ」
「なら、次は背に乗せてくれ」
「それは担当の関係から無理だな」
「やっぱりお前のせいだろうがッ」
ギルクの鋭いツッコミにも動じず、俺は着々と竿を完成させていく。
「まあまぁ、弟子が出来たからいいだろ?」
「いらん。面白弟子など必要ない」
「まぁ、そう言うなって、初代(笑)」
「やめろッ。不名誉だ」
俺が半笑いでからかうような感じで言うと、名誉棄損だと怒るギルク。
いいじゃないか、初代なんだから。初代って呼び名は凄い人そうじゃないか。例え面白だとしても…
「ところで、この部屋普通すぎないか?」
「普通の何が悪い。普通が一番だ」
「なら、何故俺の部屋のベッドは棺桶なんだ…?」
「それは吸血鬼の間だからだ」
この城には様々な部屋がある。ギルクの部屋だけ、俺が違う作りにしたのではない。みんなそうだ。
俺の独断と偏見により、部屋は決まっている。つまり、どんな部屋で寝させるかは俺の気分次第なのだ。
偶々、ギルクの部屋を割り振る時、こいつが気絶してたから、棺桶にしたまでの話なのだよ、これは。
「変えてくれ。毎晩、棺桶に入って寝るのは嫌だ」
「似合ってるさ。よく戦闘不能状態になってるじゃないか。そのうち引きずられるようになるぜ」
教会までな。そして、お金取られて復活する様になる。ある意味不死身だ。よかったな。
「尚更変更してくれ」
「仕方ないなぁ。後は地獄の間と面白部屋だけだけど、どっちがいい?」
「変更は取り消そう。棺桶で寝るのが、急に楽しみになってきた」
ギルクは即座に変更を取り消した。吸血鬼化が進んだらしい。
しかし、いずれはそこに泊めてやろう。
この3つはギルク専用部屋だからな。お前が使わないと誰も使わないんだよ。よろしく初代。
「きっちく〜、遊びに来たわよ〜」
「酷く不快だ。帰れ。この部屋はお前が足を踏み入れていい場所じゃない」
ノックもなく突入してきた変態に、汚れるから帰れと告げる。
「何よ、この部屋。普通じゃない」
「お前の変態部屋とは違うからな」
「どんな部屋だそれは…?」
「アブノーマルで埋め尽くされた部屋だ」
ギルクの疑問に簡潔に答える。
変態にはお似合いの部屋にしてある。碌な物がない。作りながら、それを作れてしまう自分にドン引きしたものだ。
二度とあの部屋の敷居を跨ぐ事はないだろう。
「それよ!なんで、あんな変な物ばっかり置いてあるのよ!」
「お前が喜ぶかなと」
「お兄ちゃんいないんじゃ、意味ないじゃない!」
「じゃ持って帰れ」
別に俺は使わないから。ご自由にお持ち帰ってくれて結構だ。好きにしてくれ。
あの部屋もお前専用だから、他に誰も使わないし…
「まぁ、修学旅行中はゴルドにでも使ってやれ」
「ゴルドは関係ないでしょ!」
「呼んだ〜?」
気の抜けた声で、フラッと現れたゴルド。
アンナの顔が少し赤くなったのは、普通化計画が順調に進んでいる証拠だろうか。
「アンナがお前に色々してくれるそうだ」
「しししないわよ‼︎変な事言うな!」
「だそうだ。残念だったな、ゴルド」
顔を赤く染め、慌てて否定するアンナ。
何故こんな普通の反応を見せる奴が、パンツなんか嗅ぐんだろか?
まぁ、とにかくこれで一安心だな。
ゴルドがそっちの道に引き込まれる心配が減った。今の内に、とっとと引き込め。
取られる心配は皆無だが、暴走するかもしれんぞ。
例えば、夜這いとか。こいつならやりかねん。
「ゴルド、お前の部屋はどんな感じなんだ?」
「うーん、よくわからない緑の床だね。葉っぱみたい」
「なるほど。ゴルドの部屋は草原部屋か…」
一人で勝手に納得するギルク。しかし、そんな部屋作ってない。
「違うわ。こいつの部屋は和室だよ」
「なんだそれは?初めて聞いたぞ。和室部屋ってなんだ?」
「ある島国の昔ながらの部屋だよ」
ゴルドののほほんとした感じが、ぴったりだと思い作った。
中心に囲炉裏を置き、後は畳を敷いた。無駄な物は一切置いていない。しかも、内装は木を薄く張り、木造住宅のような作りになっている。
正直、あの部屋だけ異質だ。他の部屋は訳のわからないのも含めて、どちらかと言うと西洋の様な作りだが、彼処だけは日本だ。
日本が懐かしくなって、本気を出し過ぎてしまったのだ。畳なんか一から作るのに本当に苦労した。苦労した甲斐もあってなんとか出来たが、あの部屋だけ他の何倍も時間がかかった。
この部屋は、ゴルド専用ではなく、俺も使うつもりだ。日本が恋しくなった時に使おう。
「どこの島だ?」
「さあ?物凄く遠い以外はわかんないな」
俺は適当に答える。ちゃんと答える事は出来ないからだ。
ここが遠い宇宙なら、行く事はほぼ不可能だろうし、次元を跨いだとかなら、次元を超える力がないといけないだろう。
そんな場所の事を何故知ってるのかと聞かれても困るのだ。だから、俺も知らないみたいに返した。
「あ、みんなここに居たんだ。プールにも海にもいないから、どこいったのかと思ったよ」
「……なんで俺の部屋が溜まり場みたいになってきてんだよ」
続々と集まって来たギルク達に、ため息とともに愚痴る。
作業が進まん。まだ7本しか出来てない。
「みんなお前にたかりに来てるんだ」
「お前地獄な」
「すまん!用事を思い出した‼︎じゃ‼︎」
俺が地獄行きを伝えると、脱兎の如く逃げ出すギルク。
そんなギルクを俺は隔離空間で捕まえる。
このまま置いて置こうか。
「何してるの、ギルク?」
「ほっとけゴルド。パントマイムしてんだ、そいつは」
何もない空中を叩くギルクに、ゴルドが何も分かっていない様子で問いかけた。しかし、ギルクは残念ながら、今は会話出来ない状況なので、代わりに俺が答えた。
「ここで何してたの?」
「俺はこれ作ってたけど、他は知らないよ。暇つぶしにでも来たんじゃないか?」
「私は部屋見学に来たのよ。どこも全然違うから」
「僕はアンナを探しに来たんだ。一緒に空中散歩に行かないかなって」
ゴルドの言う空中散歩は、その身一つで空に打ち上がる事ではない。
今日は休息日にしたが、それではやる事がないかもしれないと、ウェアリーゼに頼んで、竜便を運行してもらっているのだ。適当に辺りを飛んでもらってる。
それを空中散歩と、ゴルドは言っているのだろう。
ちなみに、俺がさっきギルクに、空でも飛んできたらと言ったのは、これがあるからだ。別に俺が飛ばそうとしてた訳ではない。
「だってよ?デートのお誘いだぞ、アンナ」
「なっ⁉︎あ、あたしは部屋回りで忙しいのよ‼︎」
「あ、待ってよ、アンナ〜」
俺がからかい混じりの眼でアンナを見ると、慌てたアンナは、ギルクと同じく逃げ出した。それを追ってゴルドも部屋を出て行った。
「あはは…、すごい積極的だね…」
「凄く今更だな」
シャルステナが酷く今更な事を言い出した。
ゴルドは初めから物凄く積極的だ。去年の初告白からすでに1年。ずっとあんな感じだ。
「…私も見習わなきゃ」
「ん?なんて?」
「う、ううん!何でもない!」
顔を少し赤くして、左右に振るシャルステナ。
可愛いので良しとしよう。
「レ、レイは何を作ってるの?」
少し言葉を詰まらせ、そう聞いてきたシャルステナ。
まだ顔が火照っている。
「これか?これはな釣竿だよ。魚を捕る時に使うやつ」
作りかけの竿をシャルステナの前に掲げ、手短に説明した。
「へぇ、それが釣竿なんだ。こんな物まで作れるんだ。レイって器用だよね」
「まぁ、俺は芸術家なんでな」
そろそろカンスト間近だ。次は何が増えるかな?ちょっと楽しみだ。作れる物が増えるといいな。
「いつの間に芸術家になったのレイ?」
「スキルだよ、スキル」
「またスキルなの?スキル系列多くない?」
ちょっと呆れた様な視線で、問いかけてきたシャルステナ。
多いのは仕方ないだろ。ノーマルがカモすぎるんだ。色々な事をやればやる程、増えてくるんだから仕方ない。取ろうとした物なんてほとんどない。8割方普通に暮らしてて手に入ったんだから。
「ま、いろんな事をしてれば、多くなるのは仕方ないさ」
「そうだけど…普通そんな沢山の系列育てないよ?」
「そこは育てたもん勝ちさ。関係無さそうな系列が、他に関わってくる事もあるんだから、育てた方が得さ」
せっかく持ってるのに、育てないなんて勿体無い。それに、系列が融合したりする事もあるんだから、出来るだけ多くのスキルに手を出した方がお得だ。
「そんな事出来るのレイだけだよ…」
「やれば出来るさ」
根気だよ、根気。ゲームと同じさ。使い続ければ、スキル熟練度100必要でも、いつかは埋まるものさ。例え1ずつしか貯まらなくてもな。
要は反復だ。その系統のゲームをやり込んだ事のある俺からしたら、楽なもんだ。
ゲームはもっと大変だった。スキル熟練度10000を貯めたりしたからな。辛い日々だったな、あれは…
それにゲームと違って、現実に返ってくるんだ。やる気も出るってもんだ。
「その変な所だけやる気出すのはなんなの?」
「別に変じゃないだろ」
「変よ。3年まではやる気0だったのに、4年から急にやる気出すだもん。ビックリしたよ。レイは授業何も受けないと思ってたんだから」
「そこまで、不真面目だったつもりもないんだがな……」
俺は苦笑いしながら、当時の事を思い出していた。
ちゃんとアンナをボコる時だけは、やる気出してたはずなんだけどな…
嬉々としてボコった記憶しかない。
「ところで、ギルクがそこで拗ねてるんだけど…」
「拗ねてる?」
そこで放置して忘れていたギルクに視線を向けると、蹲り、指で地面に何か書いているギルクがいた。
思いっきり拗ねてるね。
たぶん、閉じ込められた後、必死に何かしてたんだろうけど、俺たちが全く気が付かず、話してたからだろう。……っという設定だな、これは。
俺は隔離空間を解除してやる。
「…何してんだよ」
「俺は気にする価値のないゴミ虫だ…」
「虫が可哀想だ」
「レイ、追い打ちかけちゃダメだよ」
優しいシャルステナは、ゴミ虫を庇う。
庇う価値はないぞ。こんな下手くそな演者。
「おいゴミ虫王子、地獄部屋に行くぞ」
「…‼︎何故だ⁉︎こんなに元気のない俺を何故⁉︎」
「下手くそ。演技のスキル熟練度上げてこい」
そんな下手くそな演技で、俳優である俺を騙せると思うなよ。
一から出直してきな。
そんな事で地獄行きを逃れられる訳がないだろ。
「そんなスキルはない‼︎嫌だぁ!響きがすでに嫌だぁ!」
「いい響きだろ?ちなみに、演技のスキルはあるからな」
「そんなスキルまで持ってるんだ……レイの目指してる所がわからないよ…」
俺は嫌がるギルクを掴み、身体能力に物を言わせ引きずって行く。
そして、地獄部屋の前へとやって来た。
「ここが地獄の間だ」
「……やっぱりここなのね。ここだけ明らかにおかしいもの…」
確かにこの部屋だけは入り口からおかしな事になっている。他の部屋は内装だけ変えたのだが、ここは扉も変えたのだ。
「ま、中身はゴルドの部屋程おかしくない。ただちょっと、地獄風にテイストされているだけだ」
「……入り口はどこなんだ?」
すでに諦めの境地に至り、大人しくなったギルクが、入り口を見つめ聞いてきた。
ギルクの見つめる先には、地獄への門、悪魔の口がある。この悪魔、俺の芸術家スキルによって、かなりリアルに作られている。パッと見ただけでは、それが石の彫刻だとはわからないだろう。
「この口の中に入れば中に入れるぞ」
「…口の中に穴でも空いてるのか?」
ギルクはそんな事を口にしながら、口の中へと入った。口の中で辺りを見渡しながら、恐る恐る入る。
「どこから入れるんだ?特に入り『ガコッ』なんだ今のは…?」
「じゃあな、ギルク」
その言葉を最後にギルクは悪魔に飲み込まれた。そうして、ギルクは悲鳴をあげながら、地獄へと落ちていった。
「帰ろうかシャル」
「えっ?ほっとくの?」
「そこは一方通行で、一回しか使えないんだ」
悪魔の口は完全に閉じていて、俺たちが入る事は出来ない。作り直せば入れるが、そこまでして地獄へ行きたい奴はいないだろう。
「ええと、出れるの?」
「天国に繋がる蜘蛛の糸を登ればな」
それ以外に出口はない。明日までに出てこれたらいいな。色んな仕掛けがあいつを、楽しませてくれるだろう。
「ほら、ここ。ここが出口だよ」
少し歩いた所で、俺は一つの扉を指して出口を示す。
「この扉が?普通に見えるんだけど…」
「開けてみろよ。下を見たらギルクがいると思うぞ」
「うん」
シャルステナは恐る恐るドアノブに手をかけ、意を決して扉を開けた。そしてすぐに閉める。
「あ、あつ…」
「その中ボイラー室だからな。熱気が凄いんだ」
「ボイラー室?」
「風呂のお湯沸かしてるんだ、そこで」
「…レイ発明のスキルも持ってるの?」
「持ってないよ。魔石屋で熱を出す魔石を大量に注文して、水の中にぶっこんだだけさ。後はそれを冷たい水と混ぜて流すだけさ」
これはシエラ村の公衆浴場にも組み込んである。というより、先にこっちで作った。
前まで母さんかディクの母親が魔法で沸かしていたのだが、今では巨大なタンクに時折水を入れるだけでよくなった。魔石は定期的に魔石屋に注文して貰うよう村長にお願いしたので、母さん達もかなり楽になったはずだ。親孝行な息子だな俺は。
「へぇ、凄いね。そんな事思い付くなんて、さすがレイだね」
「ちなみに沸騰した水が蒸発する勢いで、電気、…雷を作ってる。それを使って作ったのが地獄部屋だ」
「凄い技術をおふざけに使うとこも、さすがレイだね……」
呆れたといった顔で褒め言葉なのかわからないさすがを頂いた。
地獄部屋のギミックは殆どが魔石だ。電気を使ってやっているのは、その魔石のスイッチを入れる事だけだ。
たかが高校生の知識で難しい回路を組み上げる事なんて出来る訳がない。電磁石作るので精一杯だ。後は磁石を置いて動かすだけだ。それでコツンとスイッチを押してオンとオフを切り替えていくだけの仕組みだ。
足りない分は魔石がやってくれる。火を吹き出したり、痺れる床だったりと色々やってくれる。後はそれを蜘蛛の糸と書かれた、試練の道に並べるだけだ。
ギルクはきっと強くなって帰ってくるだろう。
後で弟子達も放り込むか…
「…この部屋って、部屋なの?」
「ああ、一応な。冬でも寒くない、常に熱帯を味わえる室温に、沸騰してる風呂付き、アイアンメイディアンベット、自分も流れかねないトイレ付きの部屋だ。他の部屋より色々付いてる」
「どれも命がけだよね?」
別名試練の間だからな。それは仕方ない。試練に危険は付き物なのさ。初めから危険だらけだ。
落ちていったあいつは、まず初めに熱湯の洗礼を受ける。その後は蜘蛛の道を進むか、そこに留まるしかないが、どちらも危険だ。そこら中に罠や仕掛けがある。しかも、暑い。下の方であるほど暑い。
俺なら逃げるために登る。ギルクもそうするだろう。
そうして、登り始めても危険は尽きない。
まず道があるようでない。急になくなったり、熱湯の川があったりと、中々普通に進むのも苦労する仕様だ。もちろん、罠あり仕掛けありだ。金が余ってるので、一杯作れた。
1000万ぐらいかけて作ったのだ。フルコース10回分だ。ギルクには楽しんで貰いたい。
「ギルク、帰ってこれるかな…?」
「まぁ、晩飯までに戻らなかったら、迎えに行ってやるさ」
「それまで放置?」
「ああ」
金かかってるからな。すぐに助けに行くのは勿体無い。
「俺はこれから釣り竿作るつもりだから、シャルは竜便にでも、乗ってきたらどうだ?俺といても暇だぞ」
「ううん、レイといるよ。アンナ達の邪魔しちゃ悪いし、それに…地獄にも行きたくないから」
シャルステナは扉の方向を見て言った。その視線にはギルクへの同情が多分に含まれていた。
「そっか。なら、釣り竿一緒に作るか?教えてやるから」
「うん!」
そうして、ゆっくりと釣り竿を作りながら、修学旅行のお休みは過ぎていった。
ギルクは結局、夕食まで帰ってこなかった。仕方ないので、俺がパパッと回収しに向かった。まだ半分も蜘蛛の糸を進んでいなかった。クリアするまで、放り込んでやろう。弟子と共に…
最近週三回更新でもいける気がしてきました。
だけど、忙しい週もあるので毎週は無理かもしれないです。可能な範囲で更新ペースを早めていきたいと思います。




