48.人間か怪しいレイさんの夕食
「さあ、好きなだけ食え!まだいっぱいあるからな!」
おおっ‼︎というクラメイト達の掛け声の中、夕食が始まる。
ゴルドのクレイジーさに全員ドン引きした後、安置していた者たちが息を吹き返したので、夕食をとる事にした。
メニューはもちろん、最高級の一品ばかりだ。
しかし、いつも店で食べるような1人1人別の皿に盛られたものではなく、バイキングのような形にした。その方が自由に動けていいかと思ったのだ。席もあるが、そちらも自由だ。立って食べてもいいし、落ち着いて食べてもいい。
その方が楽しそうだからとバイキング形式にしたのだ。
皆俺の思惑通り、自由に動いて食べている。
友達と会話しながら食べる者、黙々とガッつく者、みな様々だが、満足はしてくれていそうだ。
幹事として鼻が高い。
さてと、そろそろ俺も食うか。
腹が減ったしな。
俺は皆の様子を一通り見てから、食事を取りに向かう。
「ピィイ」(親、ハクも)
「ん?ああ、お前取れないもんな。どれが良いんだ?」
俺がご飯を取ろうと動き出すと、ハクが肩に乗ってきた。どうやら、一人でご飯が取れなかったようだ。
なので自分の分とハクの分をよそっては、魔法で机に運ぶを繰り返す。
30皿ぐらいとったところで、一旦これで良いかと運んだテーブルへと腰掛ける。
「いっぱい食えよ?焦らなくてもいっぱいあるからな?」
「ピィイ」(ゆっくり食べる)
食事を始めたハクを見ながら、俺も手に皿を取って食べ始める。
ううん〜うまい。
雇って良かった〜。
最高の味を楽しみながら、俺は食事を進める。
「どれだけ食べる気よ…」
呆れた目をして、食事にガッつく俺たち二人の元へシャルステナがやって来た。
水着から着替え、白とピンクの入り混じったドレスを着てやって来たシャルステナに、俺は動きを止めた。
綺麗で透き通るような露出した肩。胸元にフリルのような物をつけたドレス。首から下がる銀のネックレスの下には、全てを隠せてはいない胸元が露出し、彼女の成長を裏付ける。
俺は咄嗟に言葉が出なかった。いつもと違うシャルステナに見惚れていた。
いつもの可愛い感じより、美しいと言った言葉の方が今の彼女にはお似合いだ。
まだ12歳とは思えないような色気を感じる。
「似合ってないかな…?」
可愛く首を傾げたシャルステナに、少し可愛いさ取り戻したような感覚を受けた。しかし、それはより一層彼女の魅力を引き立てるものだった。
俺はしばし彼女に釘付けになってしまう。
「……似合ってる…とっても…」
「そう?ありがとう、レイ」
俺の独り言のような返事に、シャルステナは嬉しそうに笑うと、隣の席へと腰掛けた。
「これ、貰ってもいい?」
「あ、ああ…」
「ありがと」
シャルステナは目の前に置かれていた皿を一枚とって食べ始める。
俺はまだ放心状態から完全には抜け出せていなかった。美味しいそうに食べるシャルステナを、無意識に目で追ってしまう。
「どうかした?」
「え、あ、な、何でもない」
俺の視線に気が付いたシャルステナに、俺は慌てながらも何でもないと答える。
何故か慌てる俺に、シャルステナが少し不思議そうな顔をしたが、すぐに気を取り直し再び食事を取り始める。
「ふぅ…」
俺は落ち着くために息を吐いた。
平常心、平常心。
そんな俺にシャルステナは首を傾げる。
「?どうしたの?」
「いや、ちょっと…」
「疲れたの?」
「…かもしれないな」
シャルステナが勘違いしたようなので、俺はそれに流される事にする。ここで君に見惚れていたんだよ、と言う度胸が俺にはなかった。普段なら言えるが、今はちょっと無理だ。
「また?レイ、また無茶したの?」
「いや、無茶と言うよりは、移動やら魔物退治やらに疲れたって感じかな」
「そんな事でレイが疲れるの?」
信じられないと言った顔で、そう言ってきたシャルステナに、俺は苦笑いしながら答える。
確かに其れ程疲れてはいないが、全く疲れがないわけではないのだ。昨日の夜からずっと忙しくしてたんだ。少しぐらい疲れが出るってもんだ。
「俺だってそれで疲れる事ぐらいあるさ」
「ふふ、珍しい事もあるんだね。もっと大変な時は気が付いてないのにね」
「ホントだな〜」
いつも通りの会話を演じる俺。しかし、内心バックバクだ。演技系スキルが、久しぶりに活躍の出番と張り切っている。
もし、これがなければ俺はまともに会話が出来ないだろう。其れ程、今のシャルステナは魅力的だった。
「じゃあ、バーに行くのはまた今度にしよっか?」
「えっ?大丈夫だよ、これぐらい」
「ダ〜メ。レイはすぐ無茶するから、その必要がない時ぐらいゆっくりしないと。まだまだ修学旅行は始まったばかりでしょ?何時でも行けるよ」
「そうか?なら、また今度にしよっか」
今のシャルステナにそう言われたら、拒めない。何でもうんと頷いてしまいそうだ。
残念だが、また今度だな。正直、このままだと俺もどうなるかわからんから、助かったと言えば助かったが…
俺はそこで視線をシャルステナから外し、周りに向けてみた。今のシャルステナを見続けるのは危険だ。意識が飛びそうになる。
パッと辺りを見回すと、俺は仲間を見つけた。
「……ギルクがまた昇天してるぞ」
「えっ?また?今日何回めよ…」
そう原因は呆れた声を漏らす。俺はこれは仕方ないとギルクに同情の視線を向けた。
今回は恐怖での気絶じゃないから、ギルクにとっては幸せだろう。今頃、いい夢見てる事だろう。
「まぁ、そういう担当だから仕方ないな」
「そうだね」
シャルステナも担当と言われるとどこか納得した感じで頷いた。
自分の担当は覚えているのだろうか?まぁ、今日はバッチリ役目を果たしてくれてるな。はてさて、他の担当は何してんだ?
俺が残りの担当を探すため、視線をギルクから外しテーブル席へと向ける。俺はそこで衝撃の光景を見た。
ゴルドが、あの変態にあーんされていたのだ。
「…………シャルステナ、俺はやっぱり疲れてるみたいだ。幻覚が見える」
「幻覚?」
「ああ。俺にはゴルドがアンナにあーんされてるように見える」
「えっ?嘘ッ⁉︎どこ?」
「あそこ」
食いついてきたシャルステナに俺は指差して、場所を教える。
その先にはまさに今、アンナの差し出したスプーンを咥えるゴルドの姿があった。
「あ、ホントだ…」
「見た感じ、ゴルドが頼み込んでしてもらってる感じだが、それにアンナが応えたのか…」
いやはや、いつの間にここまで進展していたんだ。アンナ通常化も後少しだな。頑張れゴルド。
にしても、こうして見るとアンナが普通の女の子に見えるのだから不思議だ。あれがアニキのパンツ嗅いで、奇声をあげてた奴だとは思えない。
「わ、私もしてあげようか…?」
「何ですと⁉︎」
アンナの変態性について考えていたら、シャルステナにとんでもない提案をされ、気が付けば俺は思わず乗り出して、シャルステナに聞き返していた。
「い、嫌だよね…?わ、わす…」
「嫌だなんてとんでもない!是非、是非お願いします!」
シャルステナにそんな事を言われて、嫌がる男がいるなら連れてこい。
地球7周半させてから海に突き落としてやる。それで頭が治るはずだ。
「そ、そう…?じゃ、じゃあ…あ、あ〜ん…」
「あーん」
シャルステナが口を開けた俺に、あーんしてくれる。
俺は至福の味を、思考加速まで使って楽しむ。
最高だ…
もう死んでもいい…
俺は天にも昇る勢いで、その一時を過ごした。
「ななななに、してるんですか⁉︎二人とも⁉︎」
「ちょ、リスリット、邪魔しちゃダメだよ」
俺の至福を邪魔してきたのはリスリットだ。それを抑えるようにして、ライクッドがリスリットを止めていた。
だが、手遅れだ。もう、あーんの雰囲気は消えた。
「殺すぞ?」
「ひっ」
「えっ⁉︎僕も⁉︎」
俺の殺気を受けて慌てる二人。
純粋にビビるリスリットと、僕は関係ないですと言いたげなライクッド。
しかし、俺は二人に向かって変わらず殺気を向ける。
飼い主の責任だからな。お前がちゃんと手綱を引かないからこうなるんだ。
「覚悟はいいか?」
「よ、宜しくないです!」
「僕は無実です!」
「よし、遺言はちゃんと聞いた。安心して逝け」
遺言を聞いたのでもういいだろう。
俺は二人の体に優しく触れ、魔力を込めた。そして、魔力操作でその身体を強制的に動かす。
「な、何で⁉︎何で⁉︎」
「ぼ、僕は無実だァア‼︎」
そうして、二人は城の窓から飛び降りた。悲鳴の後、地面に激突する二つの音が聞こえた。
「まったく、人の食事を邪魔しやがって…」
そう言いながら、シャルステナに視線を向けると、顔を赤く染め、俯いていた。見られていたのが、恥ずかしかったようだ。
しかし、今の格好でそれをされると、俺は胸を押さえなくてはならなくなる。美少女パワーの威力が絶大なのだ。もはやそれは美女パワーに進化しつつある。
「うっ」
俺は胸を押さえるしかなかった。バッキュンされたのだ。ハートを打ち抜かれたのだ。
「え、だ、大丈夫レイ?」
突然胸を押さえ、呻き声を上げた俺をシャルステナは心配し、見上げてきた。
しかし、それは逆効果だ。
俺は拳銃にでも撃たれたかのように仰け反り、後ろへ後退した。戦略的撤退だ。これ以上は意識が持ってかれる。
ドン
後退した俺は誰かにぶつかった。
「お、なんだ?」
「なんだバジルか。悪い、見てなかった」
「おう?」
返しが疑問系なのは、俺の空間のスキルの腕前を知ってるからだろう。
確かに、こんな緊急事態でなければ、俺は空間でバジルの事がわかっだろう。だが、今はその緊急事態なのだ。まともにスキルが使えないのだ。
「あ、そうだレイ。酒くれよ。もう無くなりかけなんだ」
「あ?俺、樽でやったよな?」
「だから、それが無くなりかけって言ってんだ」
早すぎだろ!渡してから4時間ぐらいしか経ってないぞ⁉︎
あんたら二人どんだけ飲むんだよ⁉︎
「……ほら」
「お、サンキュー」
俺はまた樽で渡した。二つ。これで今日ぐらいは持つだろう。
バジルは樽二つを肩から背負うと、嬉しそうに去っていった。
もうあれって才能なんじゃないかな?
普通あんな飲めねぇよ。
「レイ」
「うん?」
「大丈夫なの?さっきの…」
「あ、ああ。発作みたいなもんだから、気にしなくていいよ」
心配そうに問い掛けてきたシャルステナに言葉を濁しながら、答える。
美女パワーにやられたなんて言えないしな。
「レイ病気なの…?」
物凄く心配そうな目で問い掛けてきたシャルステナ。
勘違いさせてしまったようだ。俺が病気を煩わっていると思わせてしまったみたいだな。ちゃんと訂正しておかないと。
「違うよ。命に関わるもんでもないし、本当に気にしなくていいよ。あそこで気を失ってるギルクと似たようなもんだから」
「?うん、ならいいけど…」
意味はわからなかったようだが、日常的に気を失ってるギルクと同じと言ったら、一先ず納得はしてくれたようだ。
良いところで気を失ってたギルクには感謝だな。
『邪魔するようでごめんなさい?』
「いや、邪魔してないさ。それでどうしたの?」
ウランティーは別に邪魔などしていない。さっきの二人と違って…
ちょうど、ひと段落ついたところできたのだ。タイミングを見計らっていたのかもしれない。さっきの二人と違って空気が読める。
『補給を頼めるかしら?この島には世界樹の恩恵は無いみたいなの』
「ああ、なるほど。オッケー。どれくらい欲しい?」
『余ってる分でいいから、くれないかしら?今日は色々して、其れ程残っていないでしょ?』
「いや全然余裕だよ。シャルがいるから」
俺はシャルステナの肩を抱き寄せた。露出した肩に触れたかっただけだ。もう我慢できなかったんだ。
シャルステナはビクッと一瞬体を硬直させたが、すぐに力を抜いた。顔は赤くなってるが、緊張や恥ずかしさは感じてはいない様子だった。
『あら、アツアツね。じゃあ、そうね。3万ぐらいくれるかしら?それでこの2週間はもつと思うの』
「オッケー。念のために4万送るよ」
俺は経験還元と残っている魔力で4万ほど魔素に変換し、ウランティーにあげた。
先程シャルステナを抱き寄せたのは、この意味もあったのだ。シャルステナが近くにいれば、経験還元を使えるという意味が。
『ありがと。助かるわ』
「いや、こっちこそ。ウランティーがいてくれたら、事前に何かあってもわかるからね」
『ふふふ、じゃあ、私はこれで。二人の邪魔をするのも悪いしね』
そう言って、彼女は颯爽と去って行った。自殺した2人にも見習わせてやりたいものだ。
あれが空気を読むという事だと。
「兄ちゃん‼︎ジュース!」
「あ、うん。はい」
「ありがと〜!」
ウランティーが去ったすぐ後、ジュースを貰いに走ってきたスクルト。俺はジュースを一本出して手渡すと、頭を撫でる。可愛いなぁ。
スクルトなら空気読めなくても、許す。可愛いから。
スクルトはしばらく俺に撫でられた後、ジュースを抱えて走って戻ろうとする。
「転ぶぞ、スクルト」
「大丈夫〜!」
「ったく。誰に似たんだ」
お前だよ、お前。
そう心の中で、スクルトと一緒に来ていた親父に突っ込んだ。
「あなたよ、あなた。私に似たらもっと大人しいわ」
母さんは親父に突っ込んだ。
よく言ってくれた。言わなかったら俺が言ってた。
最近、親父に関して母さんとは同意見になる事が多いな。
「レイ、俺もお前の特製なんとかくれよ。飲んでみてぇ」
「どっち?ジュースか酒か」
「二つあんのか。どっちもくれ」
「はいよ。あては?」
俺は二つ瓶を取り出し渡す。
沢山飲むだろうと、去年ぐらいからストックし続けて良かった。このペースならなんとか足りそうだな。
「お、そんなもんもあんのか?くれ」
「あいよ」
適当にあてを取り出し、親父に渡す。
「ありがとよ。みんなから美味いって聞いたから、気になってんだ。変な感じがするんだってな」
「俺のオリジナルだからね。たぶん世界初だから、変な感じがするんだろうね。慣れたらそれが美味しいんだけど」
「へぇ〜、そうなのか。世界初とは、さすが俺の息子だ」
ニカっと笑って言う親父に、俺は頬を掻きながら若干照れる。さすが俺の息子と言われると嬉しいのだが、少し恥ずかしくもあるのだ。
「母さんは何かいる?」
「そうね〜、ワインなんかあるわけないわよね?」
「あるよ」
「あら、あるの?もらえる?」
「はい、ワイン」
一応のつもりで聞いてきた母さんに、俺はワインを取り出し手渡した。
シャラ姐が買ったやつだけど、別にいいだろ。飲んでいいって言ってたしな。
「ありがと。本当に便利ね、そのスキル。私も教えてもらおうかしら?さっき、シャラさん達が教えてもらったって、言ってたし…」
「いいよ。親父は?」
「俺は空間持ってるからな。お前の見つけた使い方だけ教えてくれりゃあいい」
「そっか、わかった」
二人はそれぞれ、飲み物とあてを持って去っていった。スクルトが走ってどこかに行ったので、それを追いかけて行ったのだろう。
母さんに何か教える日が来るなんて、思わなかったなぁ。
まぁ、教えてくれと母さんに言われれば、俺が断るわけがない。しっかりと教えて差し上げよう。
ついでにと親父にも聞いたが、持っているらしいな。まぁ別に不思議でも何でもないな。この人なら、何持っててもおかしくない。
そんな事を去る二人を見ながら俺は考えていた。
「レイ、そんな簡単にみんなに教えていいの?生徒全員にも教えたんでしょ?」
「別にいいよ。これはそう簡単には育たないしね」
シャルは安売り過ぎるよといった感じで言ってきたが、俺はそんな事はどうでもいいと思っている。
敵に教えるわけじゃないんだから、別に構わないさ。
敵になりそうな奴には教えないけど…
むしろ、友達や仲のいい知り合いなどには、教えてあげたいと思ったいる。この世界には危険がどこでも転がってるからな。
あの時教えていたらと後悔したくはない。
それに空間を教えたところで、果たして何人が収納空間までたどり着けるか…
下手したら全員無理だって可能性すらある。
だって未だ空間探索に辿りつけたのってアンナだけだろ?そのアンナも固定空間で止まってるし…
一体、俺には空間の才能がどれだけあったんだって話だよ。ゴルドみたいに極振りされてんじゃないのか?
まぁ俺の事は置いといて、空間は別に進化しなくても、それだけでかなり使える。俺の編み出した使い方をすれば、かなり有効な武器となり得るだろう。
それだけでも教える価値はあると思う。危険を未然に知る事が出来るのは、大きなアドバンテージだ。
これでばったりS級と出会ったりはしなくなるだろう。
「そう?…ならいいけどって、教えてもらった私が言う事じゃないね」
「シャルなら何言ってもいいさ」
全て許そう。何を言われても。
まず、許す許さないの前に腹が立たないのだから、それ以前の問題だけどな。
「私たちにもその許可ください……」
「また本探してきますから…」
飛び降り自殺した2人が生きて帰って来た。
「それは無理だ。シャルは超絶美少女、お前ら…………………」
「何か言ってください‼︎反論できないじゃないですか⁉︎」
「僕、女に生まれてきてない時点で終わってますね…」
言葉が出なかった俺にリスリットはせめて何かと怒り、ライクッドは諦めた。
「ま、諦めろ。お前らはギルクの弟子になりかけてるから」
「なんか、嫌な響きですね…」
少しずつ危険な気配を感じ取る事が出来るようだ。流石は初代面白の弟子だな。
お前達は期待の星だ。面白を立派に継承してくれ。
「そうですよ、ギルクさんを見てるとって、…ギルクさん、また気絶してるじゃないですか…何やったんです?」
「俺じゃないぞ、あれは。それに言っとくが、あれはあいつにとって幸せな事なんだ。触れてやるな」
疑いの視線を向けてきたライクッドに俺は無実を訴えた。
あれは知らん。気が付いたら召されてた。いつ逝ったのかさえ知らん。人知れず召されてたんだ。
そして原因は俺の横にいる。まったく気が付いていないが…
「そうですね。レイさんの言う通りにしときます。なんとなくわかったんで…」
俺の言葉足らずの言葉で、全てを理解したようだ。さすがはライクッド。こいつは頭がいい。一度面白から逃げ切った事はある。
「レイ先輩、どうやって私たちの体動かしたんですか?」
「魔装というスキルがある。これは仙魂スキルだ。魔力充填に似たスキルだが、これは自身に魔力を纏う事が出来るんだ。それを応用して、お前らの体に魔力を溜め、魔力操作で操った」
「全力でその凄いスキルをおふざけに使うんですね…」
「まぁな」
俺は悪びれもなく答える。
出来ることをやって何が悪い。俺は何事にも全力なんだ。
「ていうか、レイさん一体幾つ、仙魂スキル持ってるんです?それって簡単には手に入らないみたいな事言ってませんでした?」
「そうだぞ。中々手に入らないな。俺はいろんなスキル系列に手を出してるから、人よりは多いかもしれないけどな」
「レイ、ほんと幾つ持ってるの?物凄く気になるんだけど…」
「えっとな、幾つだっけ?あれとあれだろ。後あれだな。それから、あれもか。後は…」
俺は記憶を辿りながら、指を下り数えていく。
ライクッドに聞かれただけなら答えなかったが、シャルステナに聞かれたのならば仕方ない。
頑張って思い出そう。
「いやいや、すでにおかしいんだけど…?まだあるの?」
「ちょい待ち。えっと…改めて思い出すと出て来ないな。プレート見るか」
俺は収納空間からプレートを取り出し、みんなからは見えないよう、確認した。
名前:レイ
種族:人間|(青年)
年齢:12歳
レベル:75
生命力:7056
筋力:3624+200
体力:4236+200
敏捷:3896+400
耐久:3281+190
器用:2634+400
知力:2025+50
魔力:27360+1110
通常スキル
「観察」レベル9:対象の状態を認識し易くなる
「夜眼」レベル9:暗い場所でも目が少し見える
「暗視」レベル9:暗い場所でも目が見える
「魔力感知」レベル9:周囲にある魔力を感知できる
「気配感知」レベル9:周囲の気配を察知しやすくなる
「身体制御」レベル9:バランスを崩しにくくなる
「身体強化」レベル9:一時的に肉体を強化する
「空中制御」レベル9:空中での体のバランスを保ちやすくなる
「計算」レベル9:知力上昇(中)
「空間」レベル9:自身を中心とした空間内の動きを把握できる
「集中」レベル9:集中力が上がる
耐性スキル
「苦痛耐性」レベル9:苦痛、痛みに耐性がつく。耐久値上昇(中)
「恐怖耐性」レベル3:恐怖を和らげる。耐久値上昇(小)
「氷結耐性」レベル2:氷属性の攻撃に対して耐久がつく。耐性値上昇(小)
希少スキル
「空間探索」レベル9:スキル「空間」で知覚可能な生物の動きと空間内に存在するものの形を知ることができる
「固定空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間を固定する
「反転空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたもののベクトルを反転させる
「反発空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたものを弾く
「立体軌道」レベル9:自由自在、縦横無尽な動きができる。無理な体制からでも可能。筋力、体力、敏捷が上昇(極大)
「魔力充填」レベル9:物質(生物を除く)に魔力を蓄積させることができる
「魔力重複」レベル9:魔力の重ね掛けができる
「魔素変換」レベル9:魔力を魔素に、魔素を魔力に変換できる
「魔素充填」レベル4:魔素を物体に注入できる
「芸術家」レベル7:器用が上昇(絶大)。人の心を動かす作品を作れる
「複数思考Ⅲ」レベル4:思考速度大幅上昇。同時に5つのことを考えることができる
「俳優」レベル7:演技力が大幅に上昇
「肉体強化」レベル9:身体能力を一時的に大きく上昇させる
「五感強化」レベル9:五感を一時的に強化する
「透視」レベル9:物を透視できる
「千里眼」レベル9:地平線まで見通すことができる
「隠密」レベル9:気配を殺し、自らが発する音を小さくする
「瞬動」レベル5:一定距離を敏捷値の10倍の速度で移動する
「二段飛び」レベル9:一回のジャンプに付き一度だけ、空気を踏み台にできる。また、ジャンプ力が大幅に補正される
「瞬速」レベル3:敏捷上昇(大)
「危険察知」レベル7:身に致死性の危険が迫った時、どこから危険が迫るか察知できる
「予見眼」レベル7:数瞬先の未来を見ることができる。また動体視力が大幅に向上する
「精霊眼」レベル6:精霊を認識できるようになる
「瞑想」レベル6:己の精神世界へと旅立つ
仙魂スキル
「限界突破」レベル4:肉体の限界を超えて、身体能力を向上させる。一定時間経過すると、しばらく行動不能になる
「収納空間」レベル9:物を収納する空間を精製。空間内では時間が停止する。また、生物は収納不可。
「隔離空間」レベル3:1辺3メートル程の立方体の空間を生成。空間内と外は断絶され、影響を受けない。
「魔工」レベル4:魔力を操作し、加工する
「魔装」レベル5:魔力で肉体の強度、および能力を強化する
「魔人形」レベル1:他人の肉体を魔力で操作する。操作を行う際には、相手に触れ、魔力を込める必要がある。また、精神を操る事は出来ない
魔法スキル
「火魔法Ⅴ」レベル6:魔力上昇(極大)。火魔法の操作性と威力が上昇
「水魔法Ⅴ」レベル5:魔力上昇(極大)。水魔法の操作性と威力が上昇
「風魔法Ⅴ」レベル4:魔力上昇(極大)。風魔法の操作性と威力が上昇
「土魔法Ⅴ」レベル3:魔力上昇(極大)。土魔法の操作性と威力が上昇
「空間魔法Ⅳ」レベル6:魔力上昇(大)。空間魔法の操作性と威力が上昇
「治癒魔法」レベル7:魔力上昇(極小)。治癒魔法の効果上昇
「光魔法Ⅳ」レベル4:魔力上昇(大)。光魔法の操作性が上昇と威力
「氷魔法Ⅲ」レベル4:魔力上昇(中)。氷魔法の操作性と威力が上昇
「雷魔法Ⅲ」レベル5:魔力上昇(中)。雷魔法の操作性と威力が上昇
加護スキル
「竜化」レベル2:竜神の加護を高め、肉体へと還元する。耐久値上昇(大)
武器スキル
「剣術」:自己流剣術[火剣<灼熱魔翔斬>、炎風剣<炎風斬、無限炎斬>、氷風剣<氷風斬、無限氷斬>]
「格闘術」:自己流格闘術[瞬打]
固有スキル
「経験蓄積」レベル9:過剰な経験を蓄積する。蓄積量が大幅に増加。自動で発動。蓄積量945,321
「経験還元」レベル3:蓄積した経験を魔力に還元できる
○¥°%#
称号:「@&☆$」「シエラ村のライバル」「怒れる魔女の忠犬」「ボッチ」「創世神の加護」「怠け者」「登山家」「竜神の加護」「逃走者」「創世神の加護Ⅱ」「魔物の天敵」「少年教師」「竜神の加護Ⅱ」
「増えてんじゃん」
思わず突っ込んでしまった。しかも、そのスキル内容から、ついさっき手に入ったのは間違いない。
これで数は6つになったな。
「増えてる?何が?まさか仙魂スキルが…?」
「ああ。数はこれで6だな」
「私の倍ある……」
シャルはどこか呆れたかのよう肩を落とした。
けど、このスキル強力だけど、育てるのも使い所も難しいな。
正直飛び降りにしか使えないんじゃないか?
面白専門仙魂スキルか…
悪くはないな。
「喜べお前ら。さっきお前達にやった事が、手軽に出来るようになった。これでいつでも飛び降りれるぞ」
「嬉しくないです…」
「右に同じ…」
俺が満面の笑みで二人に告げると、シャルと同じく肩を落とした。今度は今後の自分達の扱いを思って。
まぁ、これからこのスキルには面白で活躍してもらう事にしようか。
ていうか、他にも結構触れないといけない所があるな。
久しぶりにノーマルが増えたな。知らんうちにカンストしてるけど…
たぶん、この瞑想ってのが、その進化先なんだろうな。
なんか、覚えがあるな。
滝で瞑想していた時、初めは単に集中って感じだったけど、途中から自分の中に潜るって感じになったからな。たぶん、そこで覚えたんだな。
で、その結果覚えたのがこの竜化スキルか。しかも新しい系統増えてるし…
加護スキルか…
他にも加護を使った技があるのかもしれないな。例えば創世神化とか…
どうなるんだろ?竜神とかなら竜みたいになるってわかるけど、創世神ってどんななんだろ。
イメージ的には人間に近そうだよな。てことは、人間にしかならないじゃないか?
確か竜神もそんな事を言ってたはず…
竜は元から竜化してるって…
という事はつまり、人間である俺が創世神化しても無意味って事だよな?
あんまりやる価値はなさそうだな。
「よし、ステの確認終了っと」
「僕たちの疑問は開始を告げたばかりですよ」
ちょっと皮肉っぽく言ったライクッド。
何が始まったんだ?
「なんの?」
「レイさんって、一体なんなんだろうって疑問ですよ」
「人間だが…?」
今さっきプレートで確認したからな。ちゃんと人間だったぞ?
「さっき一人でブツブツ言ってたじゃないですか。竜化とか、創世神化とか、あと竜神がどうとか…」
独り言言ってたのか。気が付かなかった。
「いや、なんか変な系統が増えててな。加護スキルってやつが」
「また知らない系統なんですけど…?今日二つ目ですよ」
「それ、私も知らないんだけど…?」
まぁ知るわけないよな。俺も竜神に聞かなかったら、知る事もなかっただろう。
「加護を自分の肉体に還元するスキルとかが当てはまるみたいだな」
「先輩、意味わかりません」
「って言われても、俺もわからん。こないだ覚えたばっかだし。…そうだなぁ、お前らも取ってみたらいいんじゃないか?」
取った方が手取り早いと暗に言う。
あの感覚はやった者にしかわからないだろう。説明しろと言われても困る。
「そんな意味のわからないスキル無理ですよ。僕ら人間なんで」
「飛び降りるか?」
「いえ、今のはリスリットの言葉を代理しただけなんで、そっちにお願いします」
シレッとした顔で、リスリットを売ったライクッド。
「ライクッド⁉︎レイ先輩違いますからね?私そんな事思ってないですよ?ただ、この人同じ人間?って思っただけですから」
「同じだろうが。……まぁ、別にいいさ。俺が異常なのは理解してる」
言い訳になっていないリスリットに、突っ込みを入れ、別に怒ってないと伝える。
俺も含め、シャルステナ、ディクの三人は異常なんだとわかっているからだ。事実を言われて怒る俺じゃないさ。
「それで?人間か怪しいレイはどうやってそれを手に入れたの?」
「酷いなシャルまで………人間か怪しいレイさんは滝に打たれて、精神から絡まった加護を抜き取り、スキルを手に入れましたとさ。おしまい」
人間か怪しいレイさんは、昔話のように説明した。
「ごめん。全然意味わかんない」
「いや、こればっかりは、俺にも説明出来ん。ただ、そうやって手に入れたって、話しか出来ない」
俺も竜化が簡単に出来るようになってからは、精神世界には行ってないので、説明しろと言われても困るのだ。
よくわからん世界としか言えない。
「レイさんにもわからない事があるんですね」
「俺なんて知らない事の方が多いぞ?なんだと思ってたんだよ?」
「…………」
ライクッドは黙り込んだ。
「何か言えよ」
「すいません。答えがありませんでした」
「それは謝ってんのか?」
見つからないじゃなくて、ありませんってどういう事だよ?
謝ってないだろ絶対。
「まぁいいか…それより、飯食っていいか?なんか色々あって食えてないんだよ」
「私も」
「私もです。落ちたので」
「右に同じです。落ちたので」
「何故繰り返した?」
俺の疑問にライクッドは答えず、椅子へ座る。他のメンバーもそれに続き、俺は最後に座った。もういいかと思ったのだ。それより、腹が減った。
もう空腹も限界と訴える腹。ハクがバクバク食っているのを見て、それが余計に際立っていたのだ。
そうして、俺たち4人は全員で食事する事になった。
その後、何をしたのか紅葉をつけたゴルドと、若干赤くなったアンナが混ざり、復活したギルクが無言で俺に手を差し出し、再び友情を深める俺とギルク。そして、そのギルクも交え楽しく語らいながら、全員で食事を取る俺たちだった。
中々話が進まない……
修学旅行はっちゃけ過ぎたかもしれない。こんな調子で楽しい修学旅行は終わっていきません。急にシリアスになったりします。だけど、もう暫くはギャグ多めの展開が続きそうです。
いよいよ今週システム変更ですね。実はシステムが変更された後に、つい先日ポッと思い付いたお話を投稿しようかと思ってます。短編ではなく、連載小説で。
だけど、ご安心を。更新ペースを落としたりはしません。先に異夢世界を書き上げ、新しく投稿するお話は月一程度を目指し更新したいと考えています。
という宣伝でした。よければ新しく投稿する小説も読んで頂けると嬉しいです。
次はシステム変更後に投稿。(すぐじゃありませんよ?)




