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46.旅路

「本日は当竜便にご搭乗頂きありがとうございます。私はこの竜便の機長を務めさせて頂く、レイと申します。パイロットは上方に見えます、ウェアリーゼが務めます。さてさて、まずは快適で安全な空の旅を楽しんで頂くための、この船に搭載された機能をご紹介しましょう。あちらに見えますのは、ラブドルバードという魔物の群れですね。B級の魔物です。しかし、ご安心を。この船には、あの程度の魔物なら迎撃出来る素晴らしい機能が備わっています」


 俺はウェアリーゼに視線で、合図を送る。


「主砲発射‼︎」

「待てぇえいぃ‼︎俺たちが死ぬ‼︎」


 俺がカッコよく魔物の群れに手を振り下ろした。

 するとウェアリーゼの口の中から、叫び声が聞こえてきた。


「あれ?何してんだお前ら?」

「先輩が入れたんじゃないですか‼︎」

「そうだっけか?まぁけど、主砲は撃たないと、あいつら突っ込んで来るから、どうにかしろよ?」

「出来るかぁ‼︎」


 ふざけんなといった感じで憤慨する二人。しかし、俺はどこ吹く風だ。

 主砲撃たないと、みんなが危ないからな。

 二人と全員の安全。比べるまでもない。二人には安全を捧げてもらおう。


「発射10秒前…10、9」

「あわわわわ!」

「くそっ!あのアホめ!」


 俺がカウントダウンを始めると、二人はウェアリーゼの口の中で慌てふためく。


「8、7」

「いややあああ!死にたくない!」

「リスリット、下に飛び乗るぞ‼︎」


 ギルクがウェアリーゼの歯をよじ登り、下りて来ようとしている。

 リスリットもそれを見習い、よじ登り始めた。


「6、5」

「滑って登れないですぅ‼︎」

「くそっ、ツルツルだ‼︎」


 唾液に塗れた二人は、氷の様なウェアリーゼの歯を、必要によじ登ろうと足掻いていた。


「4、3」

「登れました‼︎」

「よし!落ちるぞ!」


 二人はなんとか歯の上によじ登った。


「2、1」

「うおおお!」

「やぁあ!」


 気合いの入った声で口から離脱した二人。しかし、それは突然現れた見えない壁によって阻まれた。

 上下左右、全ての方向に見えない壁が生まれ、落下しようとしていた彼女達を包み込んだ。

 そこはウェアリーゼの口の真ん前だ。


 顔からその壁に突っ込んだ二人は、顔を押さえながら、何もないはずの空を叩き始めた。

 その顔は必死の形相で、口を大きく開けて、何か叫んでいる。

 しかし、俺たちには全く何も聞こえない。


「発射‼︎」


 俺は再び、手を振り下ろした。

 それを見た隔離空間内にいた二人は、発射の合図が下された事を知り、ガチガチと体を震わせながら、後ろを振り向き、空間一杯まで後ろに下がった。

 ウェアリーゼの口の中に、青い光が生まれた。

 それを見た二人は互いに抱き合い、涙を流しながら震わせた。


「やめろおおおお‼︎」

「やめてぇええええ‼︎」


 そんな二人の叫びは外にいた俺たちには、全く聞こえなかった。

 それはウェアリーゼも同じ。無情にも二人はウェアリーゼの放った竜のブレスに飲み込まれた。


「いや〜、二人の安全も確保してやる俺ってやっさし〜」


 俺はウェアリーゼの放ったブレスが、魔物の群れを凍り漬けにする様を見ながら、二人を守ってやった自分の優しさに感嘆していた。

 なんて優しいんだろうか、俺は。


「また本探さないと…」

「お、ありがと」


 ライクッドは二人の惨状を見て、またマリスさんの本を探してくれる気になったようだ。お礼を言っておいた。俺が何年も探し続けて見つからなかった本を、出会って4ヶ月で探し出して来たのだ。期待できる。


「ピィイ」(ナイス笑)

「年々酷くなってる気が…」

「気のせいさ、ハクだって喜んでるじゃないか」


 いつも通りさ。うん。

 ギルクが悲鳴をあげて、ハクが爆笑。何にも変わらない。

 俺が毎年酷くなってる訳じゃない。出来る事が増えてるだけだ。


「相変わらずの鬼畜っぷり、お見それいたしましたわ」

「出たな、エセ淑女」

「うるさい、エセ鬼畜」

「ありがとう。褒め言葉として受け取っとく」


 反撃になっていないアンナの物言いにお礼を告げる。

 エセと鬼畜のマイナスがかけられて、プラスの意味になっていると思ったのだ。意味はわからないが……


「レイ、あれどうするの?」

「ん?何が?」

「二人気絶してるよ?」

「えっ?」


 ゴルドに言われ、空間内に閉じ込められた二人を見上げた。

 抱き合いながら二人は白目を向いていた。

 俺と同じくそれを見上げたハクが爆笑し始める。バンバンと俺の肩を叩き、腹を抱え笑っている。

 ハクは小さくなっても、力自体は変わらないので、非常に痛い。

 まさか、こんな反撃の仕方をされるとは…


「ハクやめろ、痛い」

「ピィイ!」(無理笑)


 俺は笑い転げるハクを摘むと、アンナの頭の上に乗せた。

 肩叩きにしては少し強すぎるからだ。


 ドボッ!


「ギャフン‼︎」

「えっ?」


 想像と全く違った反応を見せたアンナ。

 ハクに頭を叩かれ、痛がって怒ってくると思っていたのだが、叩かれた瞬間、船に減り込んだ。


「あ、アンナ⁉︎大丈夫⁉︎」

「ふへへへえ」


 アンナは頭をふらふらさせ、可笑しな笑い方をしていた。どうやら今の一撃で脳みそがイカれてしまったらしい。

 元々イカれかけていたので、仕方のない事かもしれないな。


「おいおい、お前やり過ぎだ」

「ピッ?」(そう?)

「レイが言う?」


 俺は自分の事を棚に上げて、ハクを注意した。

 にしても、叩き笑いでアンナを減り込ませるなんて…こいつどんだけパワーアップしてんだよ。

 いったい隠れて何やってんだか…


「まぁ、この変態は着くまで、放置しとくか。浮かれ過ぎてストリップしかねんし…」

「ちょっとレイ、可哀想だよ。せめて引き抜いてあげようよ」

「シャルがそう言うなら…。ゴルド、後はよろしく。引き抜いた後はお前の好きにしていいから」


 ゴルドは無言で親指を立てて、了承してくれた。


「ダメよ‼︎アンナの、その、なんていうか、あれが危険よ!」

「大丈夫だって。それより、なんだか疲れて来ちゃった。ちょっと休憩〜」


 ゴルドの反応を見て、シャルステナが言葉を濁しながら反対してきた。

 あれの部分について、詳しく聞いてみたい気もするが、ゴルドなら大丈夫だろ。やっても抱きつくぐらいだろ。まだ12歳なんだから。性欲もそこまで…………そろそろ危険な時期だな。俺も気を付けよ。


 俺はそんな事を考えながら、近くにあった椅子へと腰掛ける。

 ここまで、結構忙しくして来たので、少し疲れたのだ。少し休もう。

 ここならゴルド達の様子も目に入るし、シャルステナも文句はないだろう。


 俺は腰掛けてから、隔離空間を解除すると、二人を風魔法でウェアリーゼの口の中へと戻した。

 いつまでも隔離してたら、ここから動けないからな。

 そうして、再び二人が口の中へと戻ると、ウェアリーゼは海に向けて動き始める。


「レイ、飲み物はないかしら?スクルトが喉が渇いたらしいの」

「水ほしい〜」

「あるよ。ほら。オレンジ、アップル、俺特製秘密味ジュースどれがいい?」


 喉が渇いたというスクルトを連れてやって来た母さん。俺は収納空間から、三本の瓶を取り出し置いた。

 それをスクルトに選ばせる。


「とくせい〜?」

「ああ。兄ちゃんが作ったんだ。うまいぞ?あ、けどスクルトにはまだ早いかもしれないな」

「どんな味なのかしら。もらうわね、レイ」

「どうぞどうぞ。あ、コップいるね。はい」


 俺は収納空間から、コップを取り出し手渡す。母さんはそれを受け取ると、自分は俺特製ジュースを入れ、スクルトにはオレンジを入れてあげていた。


 そして、その横で俺たちの会話から、俺の母親と弟だと知ったライクッドが「こ、この人が…」と呟いて固まっていた。本物の英雄を前にして、緊張しているようだ。しばらくはこのままかもしれない。


 ライクッドは英雄に憧れているのか、そういった話が大好きだ。時々俺の事を憧れの視線で見てくるのは、ライクッドが俺の事を英雄のように思っているからかもしれない。


 断崖山の話を聞いてから、特にそういう眼を向けてくるようになったから、多分間違いないと思う。

 ちょっと過剰な言い方かもしれないが、ライクッドは俺に憧れているのだ。だから、俺に教えを請うているのだと思っている。


 一方リスリットだが、彼女は俺に憧れている部分もあるが、それよりも冒険者に憧れているようだ。ゴルドに続き、俺と似たような夢を持っているのかもしれない。


「あら、美味しいわね。不思議な感じ」

「でしょ?」

「ええ。でも、これは何なのかしら?何て言うの、口の中で弾ける感じ」

「炭酸って言うんだ」


 そう、これは炭酸ジュースだ。

 この世界には炭酸と名の付く飲み物がなかったのだ。

 ある日、無性に炭酸が飲みたくなった俺は、試行錯誤の末これを作り上げた。ないなら作ればいいと。

 かなり時間がかかったが、何とか形にはなった。それをジュースで割って、瓶に詰めたのだ。


「レイ、酒くれや」

「アホか。お前は今から働くんだぞ」

「ちょっとぐらいいいじゃねぇか」

「酔って仕事しなかったら、氷漬けにするけど、それでいいならやるよ」

「……お前特製にしとくわ」


 バジルは真上を無言で見つめてから、俺の特製ジュースを所望した。

 自分が氷漬けにされる様を幻視したみたいだ。

 先程例を見たばかりだからな。


 俺は特性ジュースを入れてバジルと、ついでにとシャラ姐の分も渡す。


「‼︎お前…天才か…?」


 一口口に含むとバジルは驚愕した表情で、俺のスキルを当ててきた。


「そのスキルは前に消えちゃたよ」

「そんなスキルあんのかよ…」

「あるわよ?」


 バジルの問いに答えたのは母さんだ。

 やっぱり母さんともなると持ってるよな。魔法使う時に便利だもんな。


「ホントだったんだ…」


 前に俺の言った事を、信じていなかった様子のシャルステナが、少し呆れたような顔で言ってきた。


「俺は嘘はつかない主義なんでな」

「……嘘ね」

「嘘じゃないさ。そういう主義なだけって話さ」


 嘘を言わないとは言ってない。そういう信条を掲げているだけだ。


「シャルステナちゃんは持っていないのかしら?」

「あ、はい!持っていません」

「そう。確かシャルステナちゃんは魔法が得意なのよね?」

「そうですね。魔法の方が上手く出来る自信があります。けど、どっちみちレイには勝てないんですけど…」


 少し俯いて悔しそうに言うシャルステナ。

 俺はそこまでシャルステナと魔法で差がある訳じゃないと思っているが、シャルステナにして見れば、大きな差に見えるのかもしれない。


「この子には生まれて1年も経たない頃から、教えているから、出来て当然よ」

「「「「1年⁉︎」」」」


 俯くシャルステナに母さんは、俺の衝撃の事実を公開した。

 この場にいた俺とスクルト以外のメンバーが、驚きの声をあげる。


「ええ」

「姉貴、それはやり過ぎでしょう。だから、こんな異常なガキが育つですよ」


 失礼な事を抜かしたのはバジルだ。

 異常で悪かったな。言っとくが、ここには俺的に異常な奴が他にいるんだからな?

 俺からしたらこっちが異常だ。俺にはちゃんと異常になった理由があるからな。


「この子は生れつきレベルが高かったのよ。それで、魔力暴走の危険があったから、魔力操作を教えたら、すぐできちゃってね。嬉しくてつい教えちゃったのよ」


 昔を思い出すような仕草をしながら、懐かしそうに語る母さん。

 だが、その内容は俺にとっては衝撃だった。知らぬ間に命の危機にあったのだと告げられたからだ。


「ちょっと待って、母さん。俺…そんな危険な状況だったの?」

「そうよ?それじゃなきゃ、生まれて半年も経たない子供に、魔力操作を教えようとは思わなかったわ」


 まぁ、確かに。それは幾ら何でも教育ママ過ぎるよな。


「そうだったんだ。ありがとう」

「ふふ、でもここまで強くなってくれたのなら、そうして良かったと今なら思うわ」


 それから、母さんはスクルトの頭に手を置いて、この子もだいぶ上手になったのよ?と言ってきた。


「スクルト魔法が使えるようになったの?」

「出来るよ〜!ピッてやって、ボンてやるの!」


 ふむ。

 説明の仕方が母さんと一緒だ。この子は天才肌だな。


「ミュラさんがそんな早くから教えてたから、3歳でゴブリン瞬殺するような子になったんですね〜。もう、あの時は本当に驚きましたよ」

「はあ……」

「何故そこでため息が出るんだ、シャル」


 そこは普通驚いたり、凄いと褒めたりとする所だろ。

 ため息なんて出ないはずだ。


「そんな昔から無茶してたんだって思ったのよ」

「無茶じゃないさ。言ってたろ?瞬殺したって。余裕だったよ」

「前に言ってた事ってマジだったんですね…」

「何が?」


 ライクッドが少し自信を無くしたかのように言ってきた。俺は何の事かわからなかったため、聞き返す。


「出会った頃に言ってたじゃないですか。僕とリスリットはレイさんの3歳の頃より弱いって。そんな馬鹿なと思ってたんですけど……自信無くしますよ」

「けど、前に2人でA級倒せただろ?出会った頃より遥かに強くなってるさ。俺が保証してやる。俺の7歳の頃ぐらい強い」


 自信を無くす必要なんかない。

 ちゃんと形になってる。そうそうこいつらの年でA級倒した事がある奴なんていないさ。


「まだ7歳ですね…」

「そりゃまだまだだからな。4カ月やそこらで簡単に俺を抜かせると思うなよ。俺はずっとそうやって一人で修行してきたんだから」


 それは仕方ない。

 それでも俺より相当早く成長してるんだ。十分だろ。


「この子はレイの弟子か何か?」

「生徒だよ。あの口の中に入ってる女の子もね」

「あ、そうよ。レイ、あのおかしな魔法は何?ブレスを完全に防ぐなんて、驚いたわ」

「魔法じゃなくて、スキルなんだけどね。今の所あの防御が破られたことがないかな」


 この先も破られる事がなければいいが…

 それに魔力消費が半端じゃないな。レベルが上がるとどんどん消費が上がってる。多分強化されてるんだろうけど、このままだとカンストした時が怖いな。下手したら2万ぐらい持っていかれそうだ。


「うわぁ、またレイが遠くなってる…」

「シャルも仙魂スキル覚えだしたら、すぐに追いつくさ」

「もう覚えてるんだけど…」


 もう覚えてたのか。いったいどんなスキルなんだろ?

 シャルの様子からして、隔離空間ほど強力ではなさそうだけど…


「何ですかそれ?仙魂…スキル?初めて聞きましたよそれ?」

「レアの上にあるスキル系統だ。消費もやばいが、効果がはっきり言ってチートに近い」

「そんなスキルが…」


 ライクッドは眼を輝かせた。

 そのスキルを手に入れたいと、考えているのだろう。


「ちなみにこれもな」


 俺はコップを出し、シャルとライクッドに渡す。

 まだ渡していなかったからだ。


「あ、ありがとうございます。それもなんですね。そっちは強力と言うより、便利そうですね」

「ああ。とってもべ、あ、思い出した!ちょちょ、みんな近寄って!」


 俺は今の会話で、みんなに言わなければならない事を思い出した。

 俺は全員が近寄ったところで、ヒソヒソと声を潜めて話をし始める。


「前に俺が進行の原因をスキルで隔離したって言っただろ?これ絶対他には言わないで欲しいんだ」

「どうして?」


 シャルステナが不思議そうな顔をして、首を傾げだ。他も似たような感じだ。


「いや、実はなさっきのスキルで隔離したんだが、今も持ってるんだ。それが広がるとちょっとやばいんだよ」

「確かに…そんな危険な物捨てろって騒ぎになりそうですよね」

「ん?ああ、まぁそれもなんだが、俺が魔人に狙われる可能性があるんだよ。しかも、魔王って言う特に厄介な奴らに」


 ライクッドが少し勘違いして受け取ってしまったようなので、俺は理由を説明した。


「おいおい、ヤベェじゃねぇか。捨てちまえよそれ」

「そう出来たらいいんだけど…どうもこれ邪神の一部らしくてさ。そうおいそれと捨てれないんだよ。それにこのスキルの中なら、絶対安全だからって俺が持っとかないといけないみたいなんだ」

「誰?そんな事を言ったの?うちの子に何させてるのよ。私が文句言いに行ってくるわ」


 母さんが竜神を磔にする様な勢いで言ってきた。


「竜神だよ。俺も嫌なんだけど、封印するよりこっちの方が安全だからって頼まれたんだ。それにバレなければ問題ないし。それに親父ぐらい強くなれば、魔王が来ても問題ないからさ。そこまでバレなきゃいいんだ」

「何が問題ないのよ。魔王よ?魔人とは違うのよ?」

「いや、どうも親父が倒したのって魔王みたいなんだよ。つまり、親父は勇者になっちゃったって事だな」

「あの人が?……似合わないわね」


 母さんも俺と同意見のようだ。

 想像してみて欲しい。馬鹿みたいに、というか馬鹿が何も考えずに行動する勇者を。

 恐らく世界は滅亡する事になるだろう。


「まぁ、という訳だから、この事は秘密にしといて。俺が短い人生を終えたりしない為に」


 わかったと頷き、みんな元の位置に離れていった。

 ふぅ、これで後は誰に言わないといけないんだっけ?

 多すぎてわからん。

 俺の二度目の人生は短いかもしれないな。


「それはそうと、生徒というのはなんなの?」

「あ、俺こないだまで教師やってたんだ。臨時の」

「教師?まさか学院でかしら?」

「そう。詳しい事は口の中で寝てる奴に聞いてくれ。あいつに頼まれて、前期だけこいつらのクラスを教える事になったんだ」

「あなたは学院で何をしてるの?ちゃんと勉強してるの?」

「去年であらゆる教科を取り終わっちゃって、する事がなかったんだ」

「そうなんですよ、お義母様。レイ、他の人の倍ぐらい授業受けて、全部取っちゃたんですよ。しかも、その合間に断崖山の調査までして、どう思います?」


 シャルステナがプンプンと言いたそうな様子で母さんにチクる。

 やめてくれ。磔にされたらどうするんだ。

 魔王どうこうの前に死ぬぞ、俺。


「…あなたにも苦労をかけるわね」


 母さんは凄く温かい目をしていた。やはりこの二人には俺にはわからない何かがあるようだ。

 どこか通じ合ってるようにも見える。


『海が見えてきたわよ』

「あ、本当に?着いたか?」

「あら、ウランティーさん、お久しぶりです」

『こちらこそ。貴方も来てくれて嬉しいわ。レイしか私を認識出来ないというのも寂しいから』


 到着を知らせに来たウランティーと話す俺と母さん。

 バジル達以外は、わかっているようだが、ライクッドだけは不思議そうな顔をしている。


「レイさん、誰と話してるんです?」

「精霊よ。そこに精霊がいるのよ」


 ライクッドの問いに答えたのは、俺でも母さんでもない。シャルステナだ。

 シャルステナはウランティーのいる方向を真っ直ぐ視線で指差し、ライクッドに教えていた。

 それを見て俺と母さん、そしてウランティーはひょっとしてと首を傾げた。


「シャル、お前見えてるのか?」

「見えてるわよ。進行の時もいたわよね?」

「そんな前から見えてるのかよ」


 て事はシャルステナは目系殆ど俺と変わらないぐらい育ってるのか。

 やっぱシャルステナはウサギだな。


「さすがシャルだな。精霊眼持ってるのか」

「持ってないわよ?そんなスキル」

「ええっ⁉︎でも、見えるじゃ…」

「私のは精霊魔法っていうの。仙魂スキルよ」

「なんだそれ…?ちょっとイメージ出来ないんだが…」


 精霊魔法?

 魔法なんだよな?

 て事は、イメージがいるんじゃないのか?

 どんなイメージなんだ?


 この世界じゃ精霊は一人の人間だ。

 ただ見えないだけ。つまり別の人間を使って何かする魔法というわけだ。

 ちょっとイメージがわかない。


「簡単に言えば精霊に力を貸してもらう魔法よ。私もやった事がないから、わからないんだけど…」

『確か、術者の魔力をもらう代わりに、イメージを精霊が受け取って、それを発現させる魔法よ。精霊は普通の人間よりも魔法の扱いに長けているから、強力な魔法が発現出来るのよ。それにスキルの補正が加わってさらに強力になるのよ。まぁ、精霊側が拒否すれば魔力だけ取られて終わりなんだけどね。でも、逆に精霊側の魔力も上乗せ出来るから、信頼関係が築けていれば、少ない魔力で何倍もの魔法を撃てるようになるわ」

「…つまり、めっちゃ凄い魔法を使えると?」


 今の説明だと、元から強かったシャルステナの魔法が、さらに何倍もの威力を持つようになると言っているように聞こえる。

 これ使われたら俺、シャルステナに勝てんのかな?

 魔法じゃ絶対負けるだろ。


「そんな凄いスキルだなんて、知らなかった…」

『私も精霊神に聞いただけだから、実際の所はどうなのか知らないんだけどね』

「ウランティーさんでしたか?」

『ええ。初めまして。あなたはシャルステナでいいのよね?』

「はい。あの、力を貸していただけませんか?修学旅行の間だけでいいので。ちょっと試してみたいんです」

『ええ、もちろんよ。私も一度やってみたいわ』


 俺はそれを呆然と見つめていた。

 やばいかもしれない…

 修学旅行の間にシャルステナに挑まれたら、負けるかも…


 俺は突如やってきた危機に少し冷や汗を流すのだった。


もうすぐ『なろう』で大きな変更があるそうですね。

なんでもジャンルが変更されるとか。

転移物と転生物が新たなにジャンル分けされるそうな。

まだよくわかってないんですけどねwww


5月24日に変更が行われるそうなので、そろそろ説明を読んでおかないとまずいですよね。

ローとかハイとか、その他諸々を。

多すぎて読む気が……


次はそんな面倒な説明を読んでからの更新になります。具体的に言えば土曜日以降かな?


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