38.文化祭
新章突入〜
季節は秋。
10月半ばのある日、珍しくAクラスで集合がかけられた。
集合をかけたのは、シャルステナ。
彼女はクラス代表兼、学年代表兼、学院No. 1アイドル兼、生徒会長といった具合に盛り沢山なので、こういった集まりの企画、というか発案は彼女がすることが多い。
4年になってからは、クラス毎ではなくて個人で授業を受けるため、こうした風に集合をかけられないと全員が集まる事はない。
まぁ、それでも俺達4人組は毎日のように集合してる。それにハクとギルクも加わる感じで、夕方、広場に集合するのは俺たちの日課だ。
それから夕食を食べてから、俺はギルドに向かい、他は帰ったり、授業の予習復習に精を出す。
まるで断崖山の進行が目前に迫る前に戻ったかのような平和で、楽しい毎日だ。
ちなみにだが、偶に他のメンバーが加わる事もある。
そいつらは男ならシャルステナ狙いだと俺は思っている。
だって、シャルステナが笑ったりすると、ダラけた顔するんだもん。
まぁ、可愛い女の子と関わりになりたいと思うのは、全男子共通だと、俺は何か言ったりはしない。その点俺は寛容であるのではないかと思っていたりする。
それに言わなくても、途中でノリについて来れなくて、しばらく来ないから。
たぶん、怖がってるのもいるのだと思う。
何故なら、悪ノリがやばいのだ俺たちは。
普通に上空5千メートルまで空中散歩したりする。ギルクがな。
他にも雷で黒焦げになったりもする。アンナがな。
偶にお星様になる事もある。バカップルがな。
そして、急に意識を失う者が現れる。俺とギルクがな。
俺たちは普通にノリでこれをやる。
しかし、他からしたら怖いかもしれない。何故なら、俺たちはすでに、他のクラスメイトとは、一線を画するレベルまで全員が到達しまっているからだ。
実はこれが俺たちの実力の一因ではないかと最近思っていたりする。
俺たちがふざけで済むレベルで、大怪我しかねないのだ。
俺もそれはわかってるので、そんな事をしたり、するつもりもないのだが、彼らにしてみれば、いつ自分の番が来るのだろうと、ビクビクしてしまうのも仕方ない。
そうして、逃げた彼らは何を思ったか、今ならいけるとまた参加する。しかし、俺たちのノリは悪化の一途を辿るばかりでまた打ちのめされる。それの繰り返しだ。
まぁだけど、男の場合は結構、平和な方だ。
問題は女だった時だ。
女の子がこの集まりに参加すると、ふざけはない。
怖がられたくないからだ。俺とギルクが。
しかし、違う問題が発生する。俺とギルクの戦いが勃発するのだ。
これは、この集まりに参加する女の子の目的が、関わってくる。男がシャルステナ狙いなら、女の子の狙いはイケメン狙いだ。(勝手に決めている)
つまり、俺とギルクだ。
ゴルドも悪くはないだが、アンナにしか反応しない。へー、そうなんだ、すごいね〜とかで会話終了。
これでは女の子も脈なしと判断してしまう。
そのため、メインを張るのは俺とギルクとなる。
するとだ、あら不思議、俺とギルクの戦いが始まるのだ。
どこか気品のある雰囲気を醸し出すギルクに、俺は爽やかイケメンフェイスで挑む。
この勝負は、どっちに参加した女の子を惚れさせるかで、勝敗が決まる。
だけど、一つだけ特別ルールが存在する。
それはシャルステナの鉄拳制裁ルールだ。
シャルステナに殴られたら、負けというものだ。
そして、殴られるのはいつも俺。
俺が口説きにかかると、ぶん殴られるのだ。ギルクの時は何にも反応しないのに俺だけ。
そのせいで、俺の勝率は高くない。ギルクに持ってかれる。勝てるのは、シャルステナが参加出来ない時ぐらいだ。
俺はこの戦いの時いつも思う。
殴られるべきなのは、ギルクじゃないかと。
あいつ、普通に俺たちに混ざって遊んでるけど、教師だからな?
教師が生徒口説いてるんだからな?
絶対殴るべきはあいつの方だよ。
だけど、俺はそれをシャルステナには言えない。
何故なら、物凄く怖いんだ。母さんの姿が重ねって見えるんだ。
だから、何も言えない。素直に殴られる。ボコボコに。
そしてこの時、みんな固まる。
シャルステナが怖くて。
なので、女の子が来ると、この集まりは平和には終わらない事が多いのだ。
だけど、この戦いがなくなる事はない。
男の意地的な戦いなんだこれは。
そして、その戦いの中心にいる女の子は、拳を振り下ろすシャルステナの姿を恐れて来なくなる。
そのため、俺たちの集まりはメンバーがいつもと同じになるのだ。
けれど、男女共に避けられたりはしない。
普通に会えば会話くらいするし、偶に遊んだりもする。
他のメンバーがどうかは知らないが、俺はそうだ。
基本、俺は怖がられる事はしないからな。ヤンキーとかじゃないし。むしろ、イケメンだから、女の子には結構人気だと思うし。たぶん…
そういうわけで、クラスの集まりに行った俺は、久しぶりに会うクラスメイトを中心に話をして、始まるのを待っていた。
今日のお題については何も聞いていないので、そう言った話題が、多くなる。
そんな事を話していると、シャルステナとリナリー先生がやってきた。
今年は剣術の授業を取っていないため、リナリー先生は久しぶりに見る。
進行の時は、会えなかったからな。
向こうは見てたかもしれないけど…
あの時は結構派手な事をしたからな。
見られていてもおかしくない。
けど、最後に親父と母さんに全部持ってかれたからな。
この街では、俺の活躍なんてなかったかのようになっている。えっ?君何かしたの?的な扱いだ。
親父達は二度この街を救った英雄なんだから、仕方ないのかもしれないが悔しいと感じてしまうのは仕方ない。
俺の水竜の一撃も、見ていない街の住人達は母さんの魔法だと思っている。
魔人も初めから父さんがやったかのようになっている。
だけど、その話には何故か魔人にバジル達がやられる場面は登場するのだ。
母さんはやられていないらしい。
そして、綺麗に俺という存在だけが消えている。
恐ろしいほどに、事実がねじ曲がって、伝わっているのだ。
誰だよ、情報操作した奴は。
幾ら何でも、おかしいだろ。誰かの意図を感じるぞ。
俺がそんな事を考えていると、シャルステナが教壇へと登った。
「今日みんなに集まってもらったのは、文化祭の出し物について話し合うためです」
シャルステナは前に立つと、普段と変わらない様子で本日の議題をあげた。
文化祭か…
もうそんな時期か。
初めの年以外、俺はほとんど参加してないんだよな。
断崖山の調査で忙しかったし、みんなでやった方がいいと思ったからな。
けど、今年はゆっくり出来るから、ちゃんと参加する方向でいこうかな。
「みんな知ってると思うけど、今年の文化祭は全体の順位だけじゃなくて、学年の順位も決まるから。その順位によって修学旅行先が変わるから、いつもより頑張らないといけないの」
「なんだって⁉︎」
サラッとシャルステナが、とんでもなく重要な事を述べ、今初めて知った俺は驚愕し、腹の底から叫んだ。
叫んだのは俺だけで、他は叫んだ俺に、え?という顔を向けている。まさか知らなかったの?とどの眼も語っていた。
そして、それをシャルステナは言葉にした。
「まさか…知らなかったの…?」
「おうともさ。そんな事誰も言ってくれなかったらな。ていうか、そんな大事な事もっと早く言ってくれよ。俺、半年前から準備して、確実に優勝したのに…」
俺は軽く責任転嫁の術を発動。俺に教えなかったみんなが悪い事にした。
「……はぁ」
そんな俺にシャルステナは深くため息をついた。呆れ顔を浮かべ、すぐに表情を整えると話を続けた。
「……とにかく、まずは今年の出し物を決めましょう。最後の年だから、みんなで出来るものにしましょう」
シャルは初めの年みたいに、俺だけがやる事にならないよう釘を刺してきた。
リナリー先生は少し残念そうだった。
後で何か作ってあげようか。
正直、俺一人で芸術作品を作った方が、優勝は確実に出来る。
だけど、シャルステナの言う通り、それでは文化祭という、何物にも変えられない思い出がなくなってしまう。
俺はみんなで出来て、確実に優勝出来る出し物を考える。
みんなもかなり真剣だ。
超高級料理と高級旅行狙いなのだ。
貧乏旅行は嫌だ。
「……お化け屋敷なんてどうだ?」
「お化け屋敷?何それ?」
そんなもの聞いたことないと言った顔をするクラスメイト達。
俺は唖然としてしまう。
文化祭と言ったら、お化け屋敷かメイド喫茶だろ…
その片割れを知らないだと…⁉︎
「……貴様ら、学校で何をしてきた。お化け屋敷と言ったら、文化祭の定番だろ!みんな仮装して、入ってきた客を驚かしたり、不気味な通路を歩かせたり、火の玉に偽装した光る玉をぶら下げたりするお化け屋敷だぞ⁉︎まじで言ってんのか⁉︎」
余りに予想外の反応に思わず、声を荒らげた。
その後も俺は声を大にして、お化け屋敷とは何たるかを事細かに、詳細に説明していった。
そして、珍しく声を大にして力説する俺に、クラスメイト達はだんだんと興味を深めていった。
「出し物はお化け屋敷にします」
そうして、俺たちの今年の出し物は満場一致でお化け屋敷に決定した。
その瞬間、俺は勝ちを確信した。
もう、俺の中では完璧にお化け屋敷の構造が組み立てられていたのだ。
日本で出来るお化け屋敷よりも遥かにリアルなものが出来るぞ。
だって、ここには魔法があるんだから…
〜〜
文化祭当日。
いつもよりも活気に溢れる学院に、多くの客がやってくる。
王立学院の文化祭は景品が凄いので、生徒達のやる気が他とは違う。
そのため、毎年街中から多くの人が集まる。
一種のお祭り状態だな。
俺たちのクラスの出し物は、知っての通り、定番のお化け屋敷だ。
しかし、クオリティが違う。
ガチなやつだ。
今から、そのお化け屋敷の中を順を追って説明していこう。
まず、お化け屋敷の中に入って、目にするのは透けた少女だ。
これは光魔法と水魔法の応用で、少女の形をした煙に光魔法でその姿を投影しているのだ。
非常に細かい魔力操作と複数同時発動が出来ないと、この魔法をきちんと発動する事は出来ない。
ちなみに少女はシャルステナだ。
こんなことできるのは、俺を除けばシャルステナしかいない。
この魔法のイメージを組み立て、魔法を作ったのは俺だが、この役は俺よりもシャルステナの方が似合っているため、彼女にお願いした。
投影するシャルステナの姿は俺のペイントにより、少し、冷たそうな印象を与えるようになっている。
生きた人間の体温を感じられないように、工夫したのだ。
見た目は完全に、死して彷徨う少女の霊だ。
そうして、少女の霊、シャルステナにお化け屋敷の奥へと案内された客はふと気がつく。
少女がいつの間にか消えていることに。
ただ、見ていない隙に、魔法を解除しただけだが、客はビビる。
そして、ビビる客の前に、今度は首のない男がやってくる。
これはゴルドだ。
土魔法に適性のある彼に、俺がロボットの魔法を教えたのだ。さらに、このロボットは俺の芸術スキルによって手が施され、暗い場所でなら本物の人間と変わらないように見える。首がない以外は。
首から血を流し、フラフラと歩くそれに手を伸ばされた客たちは男と逆の方向に逃げる。
この動きは俺の俳優スキルを使って猛特訓した。たぶん、あいつのスキルに演技のスキルが加わったはずだ。
俺ほどではないが、なかなかリアルな動きをしている。
そうして、首なし男から逃げた先には不気味な輝きを放つ青白い火の玉が漂っているのだ。
これはファイアボールではない。
また光魔法だ。ライトキューブという魔法で、小さい光の玉を作り出すことができる。
こちらは約10人程のクラスメイトたちがが魔法を使っている。
この火の玉、何が怖いかというと体の中をすり抜けていくことだ。
俺がわざと客の体を通過させろと指導した。
不気味な光が身体に迫り、通り抜けられたらそれは恐怖だろう。
すでに恐怖に支配されつつある客は、それで慌てふためくことになる。
そして、逃げた先にも恐怖が待っている。
そこは寝室だ。
不気味な光だけか薄暗く寝室を照らす。薄暗い部屋の中に一つだけ置いてある血濡れたベット。その上には死体……ではなく変態がいる。
その変態は何か布のようなものを顔に当てると、奇声を発する。
これはアニキのパンツと、アンナには言ってある。
しかし、本当はゴルドのパンツだ。
二人ともこの事は知らない。
俺が密かにやった。知ったらどんな顔するんだろうか?
そして、アンナの奇声を聞いた者は、その布が何か気づいたものはドン引きし、気づかなかったものはその奇声を聞き、後ずさる。
ガコン
後ずさった瞬間、何か留め具が外れるような音が聞こえ、突如地面に穴が空く。
そして、穴の真下には剣山が赤い光を放って待ち受けている。
これは変態の奇声を合図に一人の生徒がガコンと音を鳴らし、その後床の蓋をあけるという仕組みだ。
別にカラクリなんてない。
ただ、元から開いてある穴の上に土魔法で地面を作っているだけだ。
この仕掛けは、音がしてからのタイミングが大事なので、そこは念入りにチェックした。ギルクで。
何度も剣山に向かって落下したギルクは、練習が終わるとグロッキー状態だった。
仕方ないので、他も体験させてやろうと、初めから体験させたら、初めのシャルステナの所で気絶した。
その後、ギルクはこう語った。
シャルステナのやつはガチすぎると。
本当にシャルが死んだかと思ったらしい。
シャルステナはそれを聞いて苦笑いだった。俺はウンウンと頷くだけだった。
正直、このお化け屋敷で一番力を入れたのは、シャルステナに教えた魔法だ。
ガチでそう見えるように思考を凝らした。若干淡い光を纏うようにと、細工もした。
やはり、最初が肝心だと思うんだ。
最初でビビらせれば、その後も少しの事でビビってくれると考えた。
だから、最初に一番本気を出したのだ。
すると、こんなお化け関係ない部分でもビビってくれるのだ。
そうして、落ちた先には血が塗られた剣山がある。
これは俺の血だ。
ばさっとやってやった。
その後、怪我を治してくれとシャルステナに頼むと死ぬ程怒られた。怪我が増えたのは言うまでもない。
そして、客はそのままズドドドっと串刺にされ、恐怖と痛みの最中、その一生を終える……とはならない。
そんなもの文化祭でやるわけがない。
絶対止められる。
お化け屋敷じゃない。殺人屋敷だ。
剣山はフェイクなのだ。
実は横にもっと恐ろしい奴がいるのだ。
横穴に隠れるようにして、佇むのは竜だ。
突如、剣山に落下する所に竜の咆哮が鳴り響き、客はその煽りを受け大きく吹き飛ばされる。
これは光魔法により体を大きく見せたハクだ。
ハクはだいぶ大きくはなったのだが、まだウェアリーゼみたいな成竜に比べると小さい。
まだ、人間の大人サイズだ。
だから、光魔法で大きく見せている。ハクは黒いので、その姿を見ればかなり恐怖するだろう。
咆哮はハクの隣にいる生徒が出したものだ。
クガァァァとそれらしい言葉を叫び、別の生徒が風魔法により、吹き飛ばす。
ハクは鳴き声がまだ全然怖くない。
むしろ可愛い。そんな声を採用するはずがない。
そのため、クラスメイトの一人に俺が猛特訓して、竜の声を学ばせた。
たぶん、そのうち彼は竜語をマスターする事だろう。
ちなみに俺は竜語はマスターしてる。知らないうちに。
そして、風魔法で吹き飛ばされた客は何かに受け止められる。
それは首のない騎士だ。
ゴルドではない。
俺だ。
発明者たる俺がロボットの魔法により客をキャッチする。
その肌は柔らかく、冷たい。
動物の肉を岩肌に貼り付け、氷魔法で冷やしたのだ。
直に冷たさと気持ち悪い感触を味わう事になる観客は慌てふためく事間違いなし。
しかし、逃げることは出来ない。
体が離れないのだ。
空間固定で客の一部と人形の一部を繋げているのだ。
そのため、どう頑張っても逃げることは出来ない。
これは俺でも苦労する。
移動する瞬間に、固定を変えるという技術が必要なのだ。
さらに、同時に人形の操作。
複数思考と予見眼を使ってギリギリだ。
油断すればすぐ失敗するシビアな役回りだ。
そして、首なしに客は出口へと運ばれる。
そこに待ってるのは、快適でない空の旅。客は首なしに空へと放り投げられる。ほぼ真上に。
それを風魔法でアシストし、空高く上がった所で、客は地面に向かって落下し始める。
そして、地面スレスレで逆方向にバウンドして、地面に着地する。
以前、シャルステナにやった様な事だな。
最後の最後にまた死の恐怖を味わってもらうのだ。
これでお化け屋敷は終わりだ。
途中からお化け関係ない要素盛りだくさんだが、恐怖は与えてえているからいいだろう。
ちなみに魔法を使われたりすると面倒なので、魔力を吸収するブレスレッドみたいな物を、入場した時につけてもらっている。
これで、客は魔法もスキルも使えなくなり、みな等しく恐怖を味わってもらえる。
そうして、客を恐怖のどん底へと誘う俺たちのお化け屋敷の順位は5位だった…
怖すぎたらしい。やり過ぎてしまったらしい。
順位を決める校長が一度体験に来たのだが、ぎっくり腰なってしまった。
たぶん、それで5位だ。
全体でも微妙な順位だったが、今回の目的たる学年順位が低かったのが痛い。
これでは、貧乏旅行だ。
どうにかしなくては…
俺は一人、修学旅行について考えを巡らすのだった。
とりあえず、俺の奢りで全員高級料亭には連れて行ってやった。
少し責任を感じてしまったのだ。
それに、フルコースでなければ俺の財布は痛くも痒くも無いのだ。
というか、フルコースでも払えてしまう程、金が余っている。
断崖山の騒動の時に、俺がぶっ放した一撃で葬った魔物の魔石が、凄い金になったのだ。
進行の後、俺は別に回収などしていない。というか、すっかり忘れてた。
しかし、ある日ギルドに行くと、はいこれと渡されたのだ。アホみたいな量の魔石と素材を…
どうやら、俺たちが残党狩りをした後で、ギルマスが冒険者を引き連れ、調査に行ったらしい。
そこで俺が作った道を辿って行ったらしいのだが、その行き止まり地点の崩れた斜面周辺に、大量の魔石と素材が転がっていたらしい。
どう考えても、その犯人は俺だ。
始めの一発で吹き飛ばした魔物の魔石と素材が吹き飛んだ先で散乱していたのだ。
軽く1000はいたため、魔物の落し物はかなりの量があった。
それを一緒に行っていたシャラ姐とバジルが、俺の教えた魔法で運んできてくれたらしい。
非常に有難い事なのだが、量が半端ではなかった。
ギルドの二階の一室をまるまる占領しても足りず、ギルドの中の訓練室にも山積みにされていた。
大掃除なんか目じゃないくらいの量だった。
もちろん、そんな物俺が持っていても仕方ないので、全部換金してもらった。
その換金作業はギルドの職員総出での仕事となり、申し訳なくなった俺は、後でみんなに酒を奢った。
そうして、換金で得た合計金額は役1億2千万ルトとなり、同時に依頼を大量に達成してしまい、その金額が5700万ルトとなり、貯金と合わせて2億ルトを突破してしまった。同時に依頼達成数を満たし、C級飛ばしてB級になった。
この資産は下級貴族の総資産より多いレベルである。
しかも、俺の場合家や物などに変えていないため、現金でそれだけある。
11歳にしてこの資産……
どうしよう……
あって困るわけではないが、使い道がなさすぎる…
と言うことで、みんなにお詫びの意味も込めて奢ってやった。
負けて暗くなっていたみんなも、少し元気が出たようなので、俺も嬉しい。
いい金の使い方だと思う。
あとは修学旅行だよなぁ。
どうしようかな…?




