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36.後始末

ランキングタグというものを設定してみました。

ページ下部にあります。

 次の日、日が昇る頃眼が覚めた。

 少し早く起き過ぎてしまった。

 まだ、以前の過密スケジュールが抜けきっていないみたいだ。


 する事もないので、昨日は魔物を沢山倒したからと、ステータスが変わってないかチェックすることにした。


 名前:レイ

 種族:人間|(青年)

 年齢:11歳

 レベル:58

 生命力:6053

 筋力:2786+200

 体力:3681+200

 敏捷:3521+270

 耐久:2396+20

 器用:2136+400

 知力:1821+50

 魔力:12540+1050

 通常スキル

「観察」レベル9:対象の状態を認識し易くなる

「夜眼」レベル9:暗い場所でも目が少し見える

「暗視」レベル9:暗い場所でも目が見える

「魔力感知」レベル9:周囲にある魔力を感知できる

「気配感知」レベル9:周囲の気配を察知しやすくなる

「身体制御」レベル9:バランスを崩しにくくなる

「身体強化」レベル9:一時的に肉体を強化する

「空中制御」レベル9:空中での体のバランスを保ちやすくなる

「計算」レベル9:知力上昇(中)

「俊足」レベル9:敏捷上昇(小)

「敏速」レベル9:敏捷上昇(中)

「空間」レベル9:自身を中心とした空間内の動きを把握できる


 耐性スキル

「苦痛耐性」レベル3:苦痛、痛みに耐性がつく。耐久値上昇(小)


 希少スキル

「空間探索」レベル9:スキル「空間」で知覚可能な生物の動きと空間内に存在するものの形を知ることができる

「固定空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間を固定する

「反転空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたもののベクトルを反転させる

「反発空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたものを弾く

「立体軌道」レベル9:自由自在、縦横無尽な動きができる。無理な体制からでも可能。筋力、体力、敏捷が上昇(極大)

「魔力充填」レベル9:物質(生物を除く)に魔力を蓄積させることができる

「魔力重複」レベル9:魔力の重ね掛けができる

「魔素変換」レベル9:魔力を魔素に、魔素を魔力に変換できる

「魔素充填」レベル2:魔素を物体に注入できる

「芸術家」レベル6:器用が上昇(絶大)。人の心を動かす作品を作れる

「複数思考Ⅱ」レベル8:思考速度大幅上昇。同時に4つのことを考えることができる

「俳優」レベル5:演技力が大幅に上昇

「肉体強化」レベル9:身体能力を一時的に大きく上昇させる

「五感強化」レベル9:五感を一時的に強化する

「透視」レベル9:物を透視できる

「千里眼」レベル9:地平線まで見通すことができる

「隠密」レベル7:気配を殺し、自らが発する音を小さくする

「二段飛び」レベル8:一回のジャンプに付き一度だけ、空気を踏み台にできる。また、ジャンプ力が大幅に補正される

「危険察知」レベル7::身に致死性の危険が迫った時、どこから危険が迫るか察知できる

「予見眼」レベル5:数瞬先の未来を見ることができる。また動体視力が大幅に向上する

「精霊眼」レベル4:精霊を認識できるようになる


 仙魂スキル

「限界突破」レベル3:肉体の限界を超えて、身体能力を向上させる。一定時間経過すると、しばらく行動不能になる

「収納空間」レベル5:物を収納する空間を精製。空間内では時間が停止する。また、生物は収納不可。

「魔工」レベル1:魔力を操作し、加工する

「魔装」レベル1:魔力で肉体の強度、および能力を強化する



 魔法スキル

「火魔法Ⅴ」レベル3:魔力上昇(極大)。火魔法の操作性と威力が上昇

「水魔法Ⅴ」レベル2:魔力上昇(極大)。水魔法の操作性と威力が上昇

「風魔法Ⅴ」レベル3:魔力上昇(極大)。風魔法の操作性と威力が上昇

「土魔法Ⅴ」レベル1:魔力上昇(極大)。土魔法の操作性と威力が上昇

「空間魔法Ⅳ」レベル4:魔力上昇(大)。空間魔法の操作性が上昇

「治癒魔法」レベル7:魔力上昇(極小)。治癒魔法の効果上昇

「光魔法Ⅳ」レベル2魔力上昇(大)。光魔法の操作性が上昇と威力

「氷魔法Ⅱ」レベル8:魔力上昇(小)。氷魔法の操作性が上昇

「雷魔法Ⅱ」レベル8:魔力上昇(小)。雷魔法の操作性が上昇


 武器スキル

「剣術」:自己流剣術[火剣<灼熱魔翔斬>、炎風剣<炎風斬>]


 固有スキル

「経験蓄積」レベル9:過剰な経験を蓄積する。蓄積量が大幅に増加。自動で発動。蓄積量984,253

「経験還元」レベル2:蓄積した経験を魔力に還元できる


 ○¥°%#

 称号:「@&☆$」「シエラ村のライバル」「怒れる魔女の忠犬」「ボッチ」「創世神の加護」「怠け者」「登山家」「竜神の加護」「逃走者」「創世神の加護Ⅱ」「魔物の天敵」


 おお⁉︎


 能力値が大きく変化しているのでは、と思って見たのだが、ここに来て、新しいスキル系列が増えている事に驚いた。

 以前から、できれば欲しいとは思っていた系列だ。

 耐性系。

 ないのかな?と思っていたので、手に入り素直に嬉しい。


 前に一度毒を飲んで、毒耐性習得を目指そうと思い、やってみたのだが、手に入る事がなかった。

 あの時はやばかった。

 結構強めの毒を飲んだからな。

 ちゃんと解毒剤も用意しといて良かった。


 あと仙魂スキルが2つ増えてるな。


 どうもここに来て、魔力操作が進化したみたいだ。

 魔人との戦闘中に、魔力の密度を高めたりしたから、手に入ったっぽいな。

 魔工…

 …魔力を加工できるのか。

 これは密度を高める以外にも使い道があるかもしれないな。要研究だな。


 魔装は魔人が使ってたスキルだな。

 最後に体を動かせたのはこのスキルのお陰だろう。

 これを極めれば、あの魔人のように腕を剣に変える事が出来るかもしれないな。こちらも要研究っと。


 どうも魔人との戦闘は、俺にとっていい経験になったみたいだな。

 強いスキルが二つも手に入ったし、耐性系も手に入った。

 まだあの次元には立てないけど、いつか必ず追いついてやる。

 これはその第一歩だ。


 今回のことで俺は自分の力不足を思い知った。

 だけど、同時にまだまだ自分は強くなれる事がわかった。

 シャルステナは俺より強くなると言っていたが、俺だって負けてはいられない。今よりもっと強くならないといけない。


 夢はまだ始まってもないんだ。

 今はまだその前段階。

 だから、全力で準備をしてやろう。

 やっと、俺はここで学ぶ準備ができたのだ。


 断崖山の事が片付いて、余裕ができた。

 この余裕を修行に回そう。ディクと誓いの日まで後一年と半年程。

 まずは、ディクに追いつくことから始めよう。


 今はきっと離されてしまってる。

 余裕があったディクと、なかった俺。ひょっとすると、ディクも余裕はなかったかもしれないが、たぶん今の俺はディクより弱い。

 そんな気がするんだ。


 よし、そうと決まれば、まずは朝の修行だな。

 ちょっと早いけど、新しいスキルを試してみたいし、今日は早めにやる事にしよう。



 〜〜〜〜〜〜


「あれ?誰かいるな」


 演習場に行くと、すでに誰かが修行する音が聞こえた。

 シュッシュッと風を切る音が聞こえてきた。


 演習場の中に入って、確認してみると、見慣れた赤髪が揺れるのが見えた。


「熱心だな、シャル」

「え?レイ?」


 俺が声をかけると、シャルステナはキョトンとした。

 ここで俺に合うとは思ってなかったみたいだ。

 まぁ、まだ日が昇ったばかりだしな。


「こんな朝早くから修行してるのは…俺より強くなるためか?」

「う、うん。レイも修行?」


 少し恥ずかしそうに、頬を掻きながら言ったシャルステナ。

 昨日の事を思い出して、恥ずかしくなったのかもしれない。


「まぁな。身体が無茶してた頃の事を忘れてくれなくてさ、目が覚めたんだよ。だから、修行でもしようかなと」

「そうなんだ。レイもやるんだったら、私はもっと頑張らないとね」


 シャルステナはそうはにかみながら言ってきた。

 俺のためにそこまでしてくれるのは、嬉しいのだが、余り無茶をして身体を壊さないか心配だ。


「…まぁ、程々にな。俺みたいに限界を超えたりはしないでくれよ?」

「ふふふ、レイじゃないから大丈夫だよ。ちゃんと、休みは入れるよ」


 俺はそうかと頷き、剣を抜いた。


「せっかくだ。模擬戦でもしないか?」

「うん。…レイとするのは久しぶりだね」

「そうだな。今年は授業が違うもんな」


 去年までは、同じ剣術の授業を取っていたのだが、今年は違う。

 シャルステナは今年、去年とは剣術の授業を取り、俺はすでに取り終わっていたので、槍術など違う分野に手を出している。


「それはレイが授業を取り過ぎてるせいだよ?レイは剣術主体なんだから、剣術だけでいいと思うんだけどな…」

「はは、確かにそうかもしれないな」


 俺は剣以外を使うつもりはないので、いらないと言われればそれまでなのだが、相手が剣以外を使ってきた時に、ある程度自分ができた方が、対策を立て易いのではないかと思い、授業を取った。


 まだまだ初心者のようなものだが、少しずつ上手くはなっていると思う。


「まぁけど、去年取ったから、シャルよりは上手いと思うぞ?」

「むぅ、事実だから言い返せない」


 俺の挑発に、顔を膨らますシャルステナ。

 この仕草が俺は結構お気に入りだ。小動物のようで可愛い。

 さらに容姿も相まって、いつも俺はバッキュンされる。

 もちろん態度には出さないが、内心はいつもフニャフニャだ。


「よし、そろそろ始めよう」

「うん、アンナみたいにはしないでね?」


 シャルステナはボコボコにはされたくないと、前もってお願いしてきた。

 しかし、そんなこと言われるまでもない。

 ボコボコにして、シャルステナに傷でも残ったらどうするんだ。

 アンナとは違うんだ。月とすっぽん。変態と美少女。


 そして、俺とシャルステナの模擬戦が始まる。

 俺は軽くシャルステナの攻撃を弾き、こちらは寸止めで攻撃する。

 それに少し不満気なシャルステナだったが、寸止めする度にアドバイスしてやると、すぐに機嫌を直した。


 シャルステナは相変わらず年に似合わない動きをしていた。

 まぁ、俺もなんだが…

 さすがは学院創設史上最優秀と言われているだけはある。

 この年で俺とディクを除いて、彼女に勝てる者はいないだろう。


 たぶん、2、3上でもきついと思う。

 現にギルクだってそうだ。あいつは3つ上だが、シャルステナよりは弱い。

 だけど、その年では最強クラスの力量を持っていた。

 まぁ、俺がちょこちょこと手を加えたのもあるんだろうけど…


 ゴルドとアンナにも俺は手を加えている。


 ゴルドには守り中心に、俺の教えれる事はもう教えた。

 その後、ゴルドは盾を学び、剣も両手剣にした。

 盾はいいのだが、両手剣にした理由は謎だ。片手で振り回すのも謎。

 片手剣じゃダメなのか?

 そう思ったりもするが、本人の意思なので、口は出していない。


 アンナはひたすらボコにしてあげた。

 そのお陰か、あいつは回避能力と耐久を合わせ持つ双剣使いになってしまった。

 耐久いらないだろとは思うが、なってしまったものは仕方ない。

 あって困る物でもないし、別に構わないだろう。


 カキン


 甲高い音が鳴った。

 俺の剣がシャルステナの剣を飛ばしたのだ。


「今日はこの辺にしよう」

「…うん。そうだね…」


 シャルステナは少し沈んでいるようだった。

 ちょっと容赦なさ過ぎたかな?

 俺はシャルステナに強くなって貰おうとやったのだが、実力差を実際に経験して、ショックを受けてしまったのかもしれない。


「シャル、そんな顔するなよ。シャルは魔法の方が得意だろ?剣で負けたからと言って、実力差がそこまで大きいわけじゃないさ」

「…ありがとう。でも、その魔法でも私は…」


 シャルは自信を喪失してしまっているようだ。

 前のように自信たっぷりにドヤ顔してくるシャルが見れないのは、寂しい。

 どうにかしてやりたい。

 これはたぶん俺のせいだから…


「……仕方ない。シャル、これをお前に貸してやろう」


 俺は荷物から本を取り出した。


「?何これ?」

「これを読めば魔法が上達すること間違いなしの、俺の秘密道具だ。これで、あのゴルドをAクラスに留めさしたんだ」


 そう秘密兵器、マリスさんの本だ。

 これを読めば、シャルステナが上達するのは間違いない。

 イメージの足し算に関しては少し不安があるが、数字じゃないから大丈夫だろう。

 あれから少しは計算できるようにはなったしな。


 あれの進化系は魔法を使う時に、非常に役に立つのだが、シャルステナには厳しそうだったので、秘密にしてある。

 最低でも暗算が出来ないと、手に入れるのは厳しそうだし…


「ふーん、そんな秘密道具を私には秘密にしてたんだ」

「秘密道具だからな」


 少し拗ねるような態度をとるシャルステナ。

 俺はそれを秘密道具だからで、押し切ろうとする。本気で拗ねられたら困るしな。

 誤魔化せる時に誤魔化しとくのが一番だ。


「…貸してもらうわ。そんな凄い魔法の本なら読んでみたいもん」

「おう」


 少し納得がいってなさそうな様子だったが、流せはしたのでよしとしよう。


 俺から本を受け取ると、早速読み始めたシャルステナ。

 俺がごり押しする本というのもあるだろうが、本人が魔法をさらに上達させたいというのもあるのだろう。

 真剣な表現で本を読み進めるシャルステナの邪魔をしてはいけないと、俺は静かにその場を後にした。


 そして、一度部屋に戻り、ハクを連れて食堂へとやってきた。

 まだ、早朝の時間帯のため、食堂でご飯を食べている者は誰もいなかった。

 俺とハクは貸し切りの食堂で、朝食を食べる。

 食べながら俺は今日の予定を考えた。


 学校は騒動のせいで、休みになっている。

 昨日で終わったといっても、事後処理や授業再開の通知をしなければならないだろうから、今日から再開という事もないだろう。

 おそらく数日中には再開する事になるだろうが、一先ず今日はない方向で、予定を立てる。


 まずやらなくてはいけない事と言えば、邪神の加護の除去だな。

 後、残存するA級以上の魔物の掃討。

 これは俺と親父、母さんとその手下でやればいいだろう。


 後、ウェアリーゼも長くはここにいないだろうから、別れを済ませておかないとな。

 別れと言えば、ウランティーはまた旅に出るのだろうか?

 これも聞いておかないとな。


 よし、取り敢えずは山の後片付けからだな。


 俺は食器を乗せたトレイを返却口に返してから、行動を開始する。

 まずは、親父達が泊まっているギルドの二階へと向かう。


 〜〜


「うわ、酷い事になってる…」


 ギルドのある大通りに出ると、泥酔し道で寝る人で溢れ返っていた。

 この国の人はみんなバカなのだろうか?

 そうなる前に帰ればいいのに…


 そう思いながらも、人を避けながら、ギルドを目指す。

 ギルド前に着くと、こちらも似たような状況だった。

 入り口は重なるように人が倒れ、中もかなりの数の人が倒れているのが、一目でわかった。


 俺は取り敢えず、入り口に倒れていたバジルを踏んずけて中へと入った。

 うごっ、と言って、目を覚ましたバジルを放置し、中へと入った。


 中はいつもより遥かに静かだった。

 ただ、いびきはうるさかった。

 誰も起きてはいない。みんな椅子や床で寝ている。

 俺はシャラ姐を見つけ、今度は手で揺すって起こす。


「シャラ姐、シャラ姐、起きて」

「ううん…?」

「もう、朝だよシャラ姐」

「…うう…もうちょっと…」


 シャラ姐はそう言うと再び机にひれ伏す。

 俺は先に親父達の方へ行こうと、シャラ姐を寝かしたままにして二階へと上がった。


 門番は倒れていた。

 何があったのかは知らない。

 大方、疲れてきたからと酒に手を出し、ボテンといったのだろう。


 この人、酒弱いからな。

 好きな癖に弱いんだ。よくミラ姐に怒られてる。

 そのミラ姐も今日はボテンと倒れているみたいだけど…


 ギルドの二階の母さんが占領した部屋へと入る。


「あ、もうみんな起きてたんだ」


 部屋に入るとすぐ、朝食をとる家族の姿が目に入った。下や外の連中とは違い、ちゃんと起きて行動を開始していた。


「あら、おはようレイ、ハク。ご飯は食べた?」

「うん、食べたけど…見てたら食べたくなってきたよ」

「ふふ、じゃあこっちに来て食べないさい。ハクはどう?」

「ピィイ!」(食べる!)


 俺とハクは同じ席へと座り、別々の皿に用意された朝食を食べる。

 我が家の朝食は他の家より多い。親父と俺、それからハクが沢山食べるからだ。

 スクルトと母さんはそれほどでもない。

 スクルトはまだ幼いからだろうが、母さんが食べないのは女性だからだろう。


「もぐもぐ、今日親父達は何する予定?何もないなら手伝って欲しいんだけど…」

「もちろんいいぞレイ」

「私も特に予定はないわ」


 二人とも予定はないようなので、手伝って貰う事にしよう。

 この二人がいればかなり楽になるしな。


「じゃあさ、断崖山の後処理を手伝って欲しいだ。……そう言えば、聞いてなかったけど、親父は世界樹の雫を取りに行ってたんだよね?」


 話をしている途中で、ふと親父に確認していなかった事を思い出し、今確認してみた。

 もし、なかったら取りに行かせよう。


「ああ、持ってるぞ。世界樹に行ったら渡された。湖に入れろってな」


 ふーん、世界樹にも誰かいるんだな。

 神様だろうか?

 という事は、世界樹に行けば、また加護が貰えるんだろうか?


「それなんだけど、湖よりその源流の方へ入れて欲しいんだよ。そっちの方に原因があったからさ」

「了解だ。よくわからんが、源流に入れりゃいいんだな?」

「うん、それでいいよ」


 俺も親父が理解してくれるとは思ってない。

 こんな簡単な説明も、繰り返し説明しないと理解してくれないのだ。

 まぁ、別に理解しなくても、入れる場所さえ分かってくれたのならそれでいい。

 どうせそこまで案内するのは俺なんだから。


「それだけなの?それなら私はいらないと思うんだけど…」

「いや、他にも残りの強い魔物、具体的にはA級以上を狩っておかないといけないからさ」

「それもそうね。ところで…それは、レイも行くのかしら?」

「もちろん。今やあの山は俺の庭だからね」


 あの山を俺以上に知り尽くした者はいないと断言できる。

 この4年ずっと調べていたのだ。

 どこに強い魔物の巣があるかも分かってる。


「…まぁ、魔人を抑えたのだから、それぐらいならよしとしましょうか」


 母さんは少し思案顏になったが、魔人を抑えた俺を評価してくれたようだ。

 認められた感じがして、素直に嬉しい。

 これで多少危ない事をしても、許してくれるだろう。


「じゃあ、行こうか。スクルトはどうするの?連れてく?」

「そうね。レディクがいれば、問題もないでしょうし…」

「どこ行くの?」

「山にお出かけよ」


 母さんはスクルトを抱き抱えると、出掛ける準備を始めた。

 親父は剣だけ持ってくらしいので、準備はしないらしい。

 世界樹の雫は面倒だと俺に渡された。

 無くされても困るので、俺はしっかり受け取ると、万が一がないよう、収納空間に隔離した。


 その後、母さんの準備が整うまで、俺は母さんの手下達を集めた。

 そうして、準備が整った俺たちは王都を出て、山へと向かった。


 王都を出たところで、正門の前で寝そべるウェアリーゼがいたので、二言三言言葉を交わた。ウェアリーゼも昨日の宴に参加していたようで、中には入らなかったそうだが、外で冒険者達と親交を深めたそうだ。


 ウェアリーゼには今回の後処理には参加してもらわない。

 彼女が暴れたら、山がえらい事になってしまうからだ。


「バジルとシャラ姐はあっちの方向に、ギルマスとゲルクはあっちに行って。真っ直ぐ進んだ所に数体A級がいるから」


 山に着き、ある程度奥へ入った所で、俺は4人へと指示を出した。

 空間探索で見つけた討伐対象の位置を手と口で説明し、2人ずつ向かわせる事にする。


「……それは探知魔法?」

「スキルだよ?」


 母さんが呆然とした顔で訊いてきた。

 母さんクラスでも、この範囲の探査は難しいのかな?


「そんなスキルがあるのね。知らなかったわ」


 スキルと分かると母さんは納得した顔をして、頷いた。

 突っ込んで訊かれるかと思ったが、意外とサラッとした感じだった。

 スキルならいいんだな。

 魔法で探索するのは、なかなか難しいのかもしれないな。


「とにかく、シャラ姐達はそいつらをよろしく。終わったら山頂に来てね」


 そう言って、一度俺たちはバラバラになる。

 残った俺たち家族が目指すのは、源流だ。

 まずはそこに雫を落として、加護を吹っ飛ばさないといけない。

 これが最優先事項だ。


 これ以上増えられても面倒なのだ。

 ただでさえ、昨日沢山の魔物と戦ったのに、また増えられたら堪ったものではない。

 なるべく早く加護をなくしたいのだ。


 源流へと着くと、見知った人物がいた。人と言うよりかは精霊か。


「ウランティー、山に戻ってたんだな」

『あら、レイじゃない。もう傷はいいのかしら?』


 入り口の辺りで何かしているウランティーに声をかけた。


「うん。ところで何してるの?補給?」

『ええ。昨日でかなり消耗してしまったから…』

「そうなんだ。けど、今からここに雫を垂らすから、ここまで来なくても出来るようになったのにね」


 雫を垂らせば、湖で補給出来るようになるから、ずいぶんと近くなる。

 それにこの地域には他にも補給出来る箇所があるらしいので、更に簡単に補給が出来るようになるはずだ。


『手に入ったの?助かるわ。一々ここまで来るのも面倒だったから…』

「レイ、こちらは?」


 俺とウランティーが話しをしていると、母さんが誰なのか訊いてきた。

 どうやら母さんも精霊を見る事が出来るみたいだ。

 親父はどうなんだろうと目を向けて見るが、何もわかっていない様子だった。

 見えてないなこれは。


「母さんも見えるんだね。こちらはウランティー。今回の事で色々世話になった精霊なんだ」

『どうも初めまして。ウランティーと言います。レイとはお友達です』

「こちらこそ。私はレイの母です。この子がお世話になったようで、ありがとうございます」


 2人が軽く挨拶を交わした所で、俺は収納空間から雫を取り出した。


「ウランティー、何処に垂らせばいいかな?」

『そうね…そこに垂らしてくれるかしら。たぶんそこが一番加護が濃いわ』


 初めは適当に垂らすつもりだったが、せっかくウランティーがいるのだからと、アドバイスを求めた。

 俺はウランティーの指差した場所へ、スキルを使って、飛んで行った。

 そして、雫を垂らす。


 雫が水へと落ちた瞬間、光の波紋が広がった。

 濁り、嫌な気配を放ち続けていた水が、光を帯び輝いた。

 そして、波紋は水から土へ、そして木へと広がっていく。山が光に包まれ、かつてのような美しさが、帰ってくる。


『もう大丈夫よ。世界樹の恩恵がこの地に戻ったわ』

「………そっか」


 俺は静かにその光を見守った。

 暖かい光の中で、俺は達成感と虚脱感に満たされていた。

 やっと終わったんだな。

 そう思った時、何か俺の体から抜けていく感覚を覚えた。


 シャルステナ達に言われた時に抜けたものと同じだ。

 まだ、俺はこの件について抱え込んでいたらしい。

 だけど、それも今完全に消えた。

 体も頭もスッキリした感じがする。この光は俺も浄化してくれたみたいだ。


「…さてと、じゃあみんなで残りの魔物を狩ろう」


 そして、俺たちはこの騒動の原因があった源流を後にし、後始末に精を出すのだった。主に親父が…


 こうして、後に断崖山大進行と呼ばれる騒動は、俺に課題と色々な経験を残し、幕を閉じた。


次話で王都進行編は終了となります。

予告していたディクの番外編を挟みまして、王立学院卒業まで学園編に戻りたいと思います。

章タイトルを同じにするか、変えるかは現在検討中です。


次は土曜日更新予定です。



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