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27.芽生える自覚

「創世神様で」

「では祈りを」


 プールに行った次の日、俺は教会に来ていた。前と同じく加護をもらう神を選び、祈りを捧げ加護を受け取った。


 今回は迷うことはなかった。

 神に会えば加護を貰えるのはわかっていたし、それに前に創世神の可能性に賭けると決めていたからだ。

 だから、すぐに俺の進化は終わった。


 ふぅ、これで一安心だ。

 まさか、99で居続けるのが危険だとは思わなかった。盲点だ。


 とりあえず進化は終わったし、今日の調査、いや狩りを始めようか。


 〜〜


「?なんか体が軽いな?」


 間引きのため山に来ていた俺は自分の体の異変に気付いた。何故かはわからないが、いつもより動き易いのだ。気のせいか、疲れていた頭もスッキリしている。

 ひょっとしたら器のレベルが上がったお陰で、俺の限界も伸びたのかもしれない。

 進化してよかった。これならまだまだ頑張れる。


 さて、気を取り直して湖を目指そうか。


 俺はもう見慣れた山道を駆け抜け、湖へとやってきた。


「やっぱり濃いな。川とは比べ物にならないぐらい嫌な感じがする」


 湖の水を改めて確認して、川の水よりも邪神の加護が濃いことを改めて確かめた。


 ここが原因の中心じゃないってことか?

 何処か別に原因があって、ここはそこに近いだけなのかもしれない。そう考えると、川が汚染されていたこともしっくりくる。


 はぁ、ここも違うのか……


 解決が近づいたと思ったらまた遠のいた。この追っ掛けっこはいつまで続くんだろう。

 どこに本当の原因があるんだろうか?


 〜〜〜〜〜〜

 11月半ば、俺は生徒会室に呼び出された。

 そこには今年から生徒会長に就任したギルクと、その補佐であるシャルステナがいた。


 これまで触れてこなかったがギルクは、実は生徒を牛耳る権力者だったのだ。

 何故彼が生徒会長となったかというと、昨年の氷竜騒動の時の功績が讃えられ、強制的に就任させられたからだ。


 彼は氷竜の騒動を引き起こした俺を庇うために、色々と手を施してくれた。

 その一つに、表向きの発表があった。


『今回の騒動を引き起こした者は、学院の生徒である。だが、まだ幼い身でその罪を一人で背負うのは心苦しい。そのため、学院は全生徒、教員の連帯責任として、今回の騒動の謝罪と賠償を行いたい』


 つまり、ガキがやらかした事だから、みんなで責任とりますってことだな。

 このお陰で俺個人が責められることはなくなり、また王子の甘いマスクに騙された奥様方のお陰で、学院が何らかの責任を負わされることもなくなった。


 さすがは王子だ。もう王になった方がいいんじゃないか?

 もし、ギルクが王になると言って反乱を起こしたら、俺も手伝ってやろう。フルコース一回でな。


 ちなみにシャルステナも事件の収拾を図った時の功績で強制就任だ。

 こちらは学院創設以来最優秀生徒と呼ばれていることもあり、教師からのアシストが凄かったらしい。


 え?俺は?

 これを聞いた時、そう感じたが、去年まで怠け者と名高い俺が、最優秀と認定されてるわけがなかった。

 リナリー先生とトリス先生にしか、あれ?この子、実は凄いんじゃ?的な認識は抱いて貰えていないのだ。他の先生達は、俺を芸術家の卵だとしか思ってない。よく筆やノミ、芸術を作る為の道具を貰う。別にいらないんだが……


 こんな事になったのは、そもそもテストの成績がまったく安定しないからだ。

 シャルステナなんかはほとんど一位だ。だけど、俺は一位をとったり、最下位ギリギリを彷徨ったりと、毎回毎回バラバラだ。不安定にも程がある。


 しかし、よく見ればシャルステナに唯一勝ったことのあるのが俺しかいないことにも気付きそうなものだが、残念な事に誰も気付かない。


 まぁ、そんなわけで俺は彼女みたいに注目はされていない。

 クラスの中だけだ。俺が彼女と同じく異常認定されているのは……


 そして今、そんな俺が何故か生徒会室に呼び出された。

 何も悪いことはしてないはずなんだが……最近は…


 一応、逃走準備は完了してきた。ハクもスタンバイオッケーだ。

 フルコースもバッチリ。最悪、迷惑丸投げできる。完璧だ。何を言われても怖くない。君たちにそのまま返そう。


「レイ、何故呼ばれたかわかるか?」

「また、氷竜でも出たか?残念ながら、それは俺じゃないぞ」


 若干偉そうな態度で言ってきたギルクに、俺はどこ吹く風といつもみたいに返す。怒られても君たちに背負わすから俺には関係ない。

 だいたい、俺に何かあるなら、ここに呼ばずに昼飯の時にでも言ってくれればいいんだ。

 俺は忙しいんだ。今期も25科目取ってるからな。


「違う、違う。今回はお前にお願いがあるんだ」

「悪いが、フルコースは一迷惑かけないと連れてかないからな」

「それはわかってる。俺としてはそんな事なくとも連れて行って欲しいところだが…」


 嫌に決まってるだろ。何もないのに、あんなバカみたいな金払えるかよ。

 まぁそうだな…。卒業祝いに、連れて行ってやるか、全員。


 俺がギルクの卒業祝いを考えていると、今度はシャルステナが口を開いた。


「レイ、武闘大会に出て欲しいの」

「武闘大会?なにそれ?」

「おい、お前知らないのか⁉︎」


 俺がシャルステナに訊き返すと、ギルクが少し前にのめり出し、正気かお前⁉︎と声を大にして詰め寄ってきた。

 そんなに知らない事がおかしいのだろうか?


「なんだよ。知らないとダメなのか?生憎と俺は聞いたこともないね」

「お前何故学院に入ったんだ」

「シャルステナみたいな可愛い女の子と青春を謳歌するため」


 どこか呆れた声を漏らすギルクに、俺はシャルステナを引き出した。最近、こういった絡みが増えてきている。


 俺は最近ある事に気が付いたのだ。シャルステナといると偶にドキドキする事に。これはあれだ。間違いない。恋という奴だ。


 この4年程、長い時間一緒にいるためか、シャルステナの言動にドキッとさせられることが非常に多かった。そろそろ我慢の限界というやつだ。

 引き金になったのは間違いなく暴走の時のあの笑顔。


 あの日俺は死に掛けた。いや、死んだと思った。だが、彼女に救われ今こうして生きている。それが原因かもしれない。

 命を救われた直後に見たあの笑顔に俺は惚れてしまったのだ。


 あの笑顔を見てからというもの、撃沈するのがわかっていても、こういう軽口を挟まずにはいられないなっている。


 シャルステナが俺ではない別の男に想いを寄せているのは初めてあった頃から知っていた。だから、俺にその気持ちが向くことはないと考えていたのだが、逆に俺が好きになってしまった。だから、どうしても彼女の気持ちを俺に向けたくなってしまった。


 そんな俺の気持ちの表れをどう受け取ったのか、エロ王子は握手は求めてきた。


「レイ、やはりお前は俺の親友だ」


 俺もちゃんとそれに応えた。


 ギルクは俺たちの前だと、エロ王子の本性を隠さない。実に素直だ。女ネタになると、必ずと言っていいほど乗ってくる。

 さらに、そのネタがシャルステナのこととなると、冗談で言ったことを実行する。


 たぶん、俺より長い年月共にいた彼らには、それをやっても、許される関係があるのだろう。一応、婚約者だしな。

 そんな事にも嫉妬してしまいそうになる俺は、かなりシャルステナに魅了されてしまっているようだ。


「……話戻していい?」


 そう訊いてきたのはシャルステナだ。

 俺とギルクが握手から、ガシッと抱き合うようになったところで、訊いてきた。女の子にはわからないのかもしれない。

 男は時に、戦い、言葉を交わし、そして認め合うことがあるのだ。時には無言で握手と視線を交わし、ハグして認め合うことも。


「…それでレイ、その武闘大会に出てくれない?」

「先に説明してくれよ。詳しく訊いてみないとなんとも言えない」

「?わかったわ」


 俺が説明を求めると、シャルステナは少し不思議そうな顔をした。俺なら二つ返事で引き受けてくれると思っていたのかもしれない。

 確かに心惹かれる誘いなのだが、あいにく今は非常に忙しい。だから、説明を聞かないと頷く事は出来ない。俺はこの武闘大会については何も知らない。その内容によってら出ることが出来ないかもしれない。


「武闘大会はこの大陸にある学校、学院の10歳以上の生徒が出場できる大会よ。毎年、大陸中から沢山の学校の生徒達が参加するわ」

「へぇ、大きな大会なんだな」


 大陸中か。

 ラストベルク以外の国からも出てくるのか。10歳以上ってことは、ディクも必ず出てくるな。

 あの異常過ぎる奴が出てこないわけがない。


 この学院に入って、あいつの異常性が飛び抜けていることがわかった。

 俺は転生してきたのだから、人より優れているのは当たり前だ。そうでないとおかしい。


 しかし、あいつは転生者ではない。何故なら、あいつは始め、本当にただの子供だったんだ。

 今でも鮮明に覚えている。

 初めて会ったあの日のことを…


 きっと、あれが始まりだったんだ。俺とあいつの関係の……


 あの日、まだ幼かった頃、俺が外で遊んでいる時に初めてディクと出会った。


 あいつは泣いていた。

 少し大きな子達に囲まれて。


 それを見て俺は助けに入った。殴ったりはしていないが、ディクといじめっ子の間に立ち、言葉でいじめっ子を撃退した。


 それから、あいつとの関係が始まった。

 初めは本当に泣いてばかりだったのだ。けれど、俺と競い始めてから、あいつは強くなった。体も心も。


 きっかけはたぶんあの言葉。


『誰かを守りたいと、そう思っているのなら、剣を取れ。それは人を傷つけるためのものじゃない。守るためのものだ。お前がこの先、誰かを守りたいと願った時、力がないと泣き寝入りするか?それとも、剣を取って戦うか?それを今、決めろ』


 これは俺の言葉ではない。ディクの親父さんの言葉だ。

 俺とディクを競わせようとしてきた親父たちに、ディクは泣いて嫌がった。

 しかし、その言葉を聞いて、ディクは泣くのをやめ、剣を手にした。


 あれから俺たちの戦いが始まった。

 あの剣を手にした日から、ディクが泣いている姿を見ることはなくなった。

 それどころか、初めて剣を合わせた日、俺は負けた。信じられなかった。同い年、しかもただの子供だと思っていた相手に俺は負けたのだ。


 ディクは俺が助けに入った時は、どこにでもいる子供だった。だけど、剣を手にした瞬間、あいつの何かが変わった。


 あの瞬間、あいつはウサギになったんだ。


 そのウサギの速さは、シャルステナの比じゃない。学院創設至上最優秀と言われてるシャルステナを遥かに超えているんだ。


 そんな奴が出てこないわけがない。


 いいね。最高の舞台だ。

 俺とあいつの再戦の約束を叶えるのに、これ以上の舞台はないだろう。


 気がつけば、俺は顔に笑みを浮かべていた。

 歯を見せ、口元を三日月のように曲げ、見ようによっては悪者の浮かべる笑みのようだ。


「……面白そうだ。出てみたいな」

「………………」

「シャルステナ?」

「…………」


 俺が参戦の意思を表すと、シャルステナは俺を凝視して固まっていた。

 頰を赤らめ、俺に見惚れているようになっていた。俺はそれを見て複雑な気持ちになった。


 シャルステナが俺に見惚れてくれてるのは嬉しい。少しは希望があると考えたい。

 だが、シャルステナが見惚れたのは、俺がシャルステナの好きな人の顔にそっくりだからだ。だから、彼女は見惚れているのだ。それは少し悲しい。


 時折、このように見惚れることのある彼女だが、俺はその度にこう思う。

 いつの日か俺自身に見惚れてさせてやろうと。いつか俺の事をちゃんと見て欲しいと。

 そんな風に思うのだ。


「……ギルク、続きを」

「ああ」


 ギルクもこう言ったことには、慣れっこなので特に取り乱すことなく、普通に返事をした。


「それでだ。その武闘大会、各学校の出場人数は上限が決まっていてな。100人まで選ぶことができるんだが、この学院では毎年何人かは体験の意味を込めて、4年生と5年生からも出場させるんだ」

「それに俺が選ばれたと?」


 なるほど。6年生がほとんどだが、前もって経験させておくことで、緊張を和らげ、6年になった時に活躍してもらえるようにするのか。


「ああ、そうだ。武闘大会は1月から3月まで開催される。その間、ずっと行って貰わねばならない。場所は西の国境付近だ。移動のことを考えるとテストが受けれないから、単位が出ない。しかし、来年同じ授業を取れば、ほとんどテストだけで通るだろう。どうだ?行ってくれるか?」

「…………」


 長い。

 俺はギルクの話を聞いてまずそう感じた。


 長すぎる。二ヶ月もここを離れるわけにいかない。しかも時期が悪い。

 その頃、ディクの親父さん達はシエラ村にいない。その間、俺もいなくなればあの山が牙を剥いた時、王都かシエラ村、どちらかが必ずやられる。


 ……仕方ない。今回は諦めよう。


「悪い。ギルク、俺2年間の間に全部単位取るつもりなんだ。だから、今回は無理だ」

「そうか。残念だ。お前なら結構いいとこ、行くと思ったんだが…」


 ギルクは残念そうにそう言った。


「代わりと言ってはなんだが、シャルステナはどうなんだ?」

「シャルステナはお前とは別枠で出場が決定している」

「そうか。なら、ゴルドやアンナは?」


 アンナとゴルドもシャルステナには届かないが、俺達二人のお陰か、並みの子なら相手にならないレベルになっている。

 二人なら問題ないだろう。


「そうだな。丁度、お前の分と後一つ余っていたところだ。そうするとしよう。それにしても、お前の言い方だと、来年も無理なのか…」

「え?ああ、まぁ、そうなるかな?」


 ギルクに言われて初めて気がついた。来年も後期は同じくらい、授業を取らなければならないので、俺は行けないじゃないか……


 まぁ、言ってしまったものは仕方ない。6年まで我慢するとしよう。

 それまでには山の問題も片付いているだろう。


 どちらに転がるかはわからないが……


 〜〜〜〜〜〜


 12月25日

 調査に進展しそうな兆しが見えてきた。


 これを説明するにはまず俺のステータスを開示しなければならないだろう。



 名前:レイ

 種族:人間|(青年)

 年齢:10歳

 レベル:23

 生命力:4078

 筋力:2136+200

 体力:2756+200

 敏捷:2465+270

 耐久:1743

 器用:1726+400

 知力:1369+50

 魔力:7856+820

 通常スキル

「観察」レベル9:対象の状態を認識し易くなる

「夜眼」レベル9:暗い場所でも目が少し見える

「暗視」レベル9:暗い場所でも目が見える

「魔力操作」レベル9:自身の魔力を操作できる

「魔力感知」レベル9:周囲にある魔力を感知できる

「気配感知」レベル9:周囲の気配を察知しやすくなる

「身体制御」レベル9:バランスを崩しにくくなる

「身体強化」レベル9:一時的に肉体を強化する

「空中制御」レベル9:空中での体のバランスを保ちやすくなる

「計算」レベル9:知力上昇(中)

「俊足」レベル9:敏捷上昇(小)

「敏速」レベル9:敏捷上昇(中)

「空間」レベル9:自身を中心とした空間内の動きを把握できる


 希少スキル

「空間探索」レベル9:スキル「空間」で知覚可能な生物の動きと空間内に存在するものの形を知ることができる

「固定空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間を固定する

「反転空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたもののベクトルを反転させる

「反発空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたものを弾く

「立体軌道」レベル9:自由自在、縦横無尽な動きができる。無理な体制からでも可能。筋力、体力、敏捷が上昇(極大)

「魔力充填」レベル9:物質(生物を除く)に魔力を蓄積させることができる

「魔力重複」レベル9:魔力の重ね掛けができる

「魔素変換」レベル7:魔力を魔素に、魔素を魔力に変換できる

「芸術家」レベル6:器用が上昇(絶大)。人の心を動かす作品を作れる

「複数思考Ⅱ」レベル6:思考速度大幅上昇。同時に4つのことを考えることができる

「俳優」レベル5:演技力が大幅に上昇

「肉体強化」レベル9:身体能力を一時的に大きく上昇させる

「五感強化」レベル9:五感を一時的に強化する

「透視」レベル9:物を透視できる

「千里眼」レベル9:地平線まで見通すことができる

「隠密」レベル5:気配を殺し、自らが発する音を小さくする

「二段飛び」レベル6:一回のジャンプに付き一度だけ、空気を踏み台にできる。また、ジャンプ力が大幅に補正される

「危険察知」レベル5:身に致死性の危険が迫った時、どこから危険が迫るか察知できる

「予見眼」レベル1:数瞬先の未来を見ることができる。また動体視力が大幅に向上する

「精霊眼」レベル1:精霊を認識できるようになる


 仙魂スキル

「限界突破」レベル2:肉体の限界を超えて、身体能力を向上させる。一定時間経過すると、しばらく行動不能になる

「収納空間」レベル2:物を収納する空間を精製。空間内では時間が停止する。また、生物は収納不可。



 魔法スキル

「火魔法Ⅴ」レベル1:魔力上昇(極大)。火魔法の操作性と威力が上昇

「水魔法Ⅳ」レベル8:魔力上昇(大)。水魔法の操作性と威力が上昇

「風魔法Ⅴ」レベル1:魔力上昇(極大)。風魔法の操作性と威力が上昇

「土魔法Ⅳ」レベル8:魔力上昇(大)。土魔法の操作性と威力が上昇

「空間魔法Ⅳ」レベル2魔力上昇(大)。空間魔法の操作性が上昇

「治癒魔法」レベル7:魔力上昇(極小)。治癒魔法の効果上昇

「光魔法Ⅲ」レベル6:魔力上昇(中)。光魔法の操作性が上昇と威力

「氷魔法Ⅱ」レベル5:魔力上昇(小)。氷魔法の操作性が上昇

「雷魔法Ⅱ」レベル5:魔力上昇(小)。雷魔法の操作性が上昇


 武器スキル

「剣術」:自己流剣術[火剣<灼熱魔翔斬>、炎風剣<炎風斬>]


 固有スキル

「経験蓄積」レベル9:過剰な経験を蓄積する。蓄積量が大幅に増加。自動で発動。蓄積量1,002,560

「経験還元」レベル1:蓄積した経験を魔力に還元できる


 ○¥°%#

 称号:「@&☆$」「シエラ村のライバル」「怒れる魔女の忠犬」「ボッチ」「創世神の加護」「怠け者」「登山家」「竜神の加護」「逃走者」「創世神の加護Ⅱ」



 見てもらって分かるように精霊眼というスキルが手に入った。どうやらこのスキル、精霊を認識できるという効果を持つらしい。

 これを使えば調査が進展しそうだと俺は考えている。


 なぜなら、精霊は自然に囲また場所に住むとされているからだ。

 つまり、断崖山にも住んでいるはずだ。ならば、きっと異変についても何か知っているに違いない。

 これで何かわかればいいが……


 それとスキル分けが増えた。

 仙魂スキルというものだ。名前の由来はよくわからないが、かなり強力なスキルが属する分類のようだ。

 限界突破とか、ありがちなスキルだが、それ故に強力だ。使い所が難しそうだが、ここぞという時に力を発揮してくれそうだ。


 収納空間は言わばアイテムボックスだな。

 結構、大きな物まで入る。非常に便利なスキルだ。いろいろなところで活躍してくれることだろう。



 〜〜〜〜〜〜

 1月2日


 シャルステナ達以下3名とその他大勢の生徒達が武闘大会に出場するために旅だって行った。その旅立ちは静かなものだった。

 講堂で何か行われたり、そんなことは何もなかった。

 俺が知らないわけだ。

 この分なら、結構な人数知らない奴がいてもおかしくないんじゃないか?


 見送りなしは可哀想だったので、行く前に4人を激励した。応援には行けないので、せめてもの気持ちだ。


「ギルク、最後に派手に暴れてこいよ」

「ああ、応援してくれる女の子達をキャーキャー言わせてくる」

「はは、まぁ後悔がないよにな」


 ギルクなら結構いいところまで行くだろう。

 けど、今年はシャルステナとディクがいる。残念だが、優勝はできないだろう。

 それはわざわざ言うことではないので口にはしなかったが、後悔はないよう全力で楽しんできて欲しい。


「ゴルド、お前がどこまでやれるか試してこいよ。自分が夢にどこまで近づいたか、知るのに丁度いい大会だ」

「うん。できるだけやってみるよ」


 ゴルドは気負うことなく、いつもの調子で言った。俺はこいつの夢を応援している。

 だから、前々から自分がかなり夢に近づいていることを知ってもらいたかった。


 しかし、俺を始めゴルドの周りには異常な奴ばっかりだ。

 ゴルド以外は自分と他を比べて、自分が強くなっているのを実感しているのだが、どこか抜けた所のあるゴルドはまだ自分が弱いと思っている。

 この大会を通して、自信を身につけてほしいものだ。


「アンナ、公衆の面前でやらかすなよ」

「ふふん。しないわよ。今回はお兄ちゃんが来てくれるから、そんなことしないもんね〜」


 アンナはすごくご機嫌だ。よほど嬉しかったのだろう。

 何時になったらブラコンを卒業できるんだか…

 ゴルドファイト!君にかかってるぞ!


「シャルステナ、ポロったらだめだぞ」

「ポ、ポロらないよ!私ならそんなことにならずに勝てるよ!」

「自信があるようで何よりだ。だけど、そうはならないな」


 シャルステナは自分が異常であることを知っている。

 だから、優勝できると思っているようだ。


「な、なんでよ?私これでも結構…」

「それはわかってるよ。だけど、確実にお前と同等な奴を俺は知ってる」

「え、そんな…」


 シャルステナは信じられないといった顔をしている。

 その顔は心底あり得ないと思っているようだ。

 彼女は目の前にそのあり得ないのがいることに、気が付いていないのか?


 ……あれ?ひょっとして、俺、シャルステナに自分より弱いと思われてる?


 よくよく考えてみれば、俺は彼女の前でほとんど本気になったことがない。

 一度、炎風剣を見せただけだ。あとは結構、情けないとこを見せている。


 限界になりおかしくなったことや、やらかして逃げ出したことや、魔力暴走で死にかけたことなど結構心配ばかりかけてしまった。


 そうこうする内に、彼女の中で俺は守る部類に入ってしまったのではなかろうか?


 …………まずいぞ。

 俺に惚れさせよう作戦に悪い影響を及ぼしかねない。

 武闘大会が終わったらどうにかしないと……


「……まぁ、あんまり気を抜くなってことだ。それと…」

「それと?」

「もし…、騎士学校のディク、いや、…ディクルド・ベルステッドに会ったら、誓いは二年後にと伝えてくれ」

「?う、うん。わかった」


 最後にシャルステナにディクへの伝言を頼み、俺のシャルステナ籠絡作戦に穴が見つかった激励を終え、彼女達は旅立って行った。


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