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25.魔力暴走

 季節はもう夏。

 あいも変わらず平日は授業を受け、休日は調査に勤しんでいる。一応たまに休みは入れるようにはしているが、疲れて来ている自覚はある。

 一度ゆっくりと休む頃合いかもしれない。


 思えばシャルステナにもう限界なんだよと言われてから一年が経った。けど、この一年特に進展があったかと言われると口を閉ざすしかない。

 竜神に魔人という存在の可能性について教えてもらってからもう半年は経過した。しかし、その姿を確認出来てさえいない。


 一応、一定周期で魔物は間引きしてるから数的にはそこまで問題はない。しかし、着実にA級が増えてきている。まだ魔力二倍には届いていないため、手を出すことを躊躇っているためか処理が遅れてしまっている。


 しかし、そろそろ間引かないとやばいかもしれない。着実にタイムリミットは迫ってきていると考えていい。

 俺の実力向上は急務かもしれない。


 それに加え、魔人を見つけられないのが痛い。発見すれば急いでディクの親父に知らせて倒してもらうつもりなのだが、そもそもの相手が見つからない。

 一応王都も捜索してみた。だが、それらしい者はいなかった。条件を満たしたのは、冒険者の知り合いと王宮に使える騎士や護衛の人だけだった。

 念のため、まる一週間彼らの動向を探ってはみたが、怪しい動きをする者はいなかった。


 そのため、俺は考え直す事にした。

 魔人が現れていないのに魔物の活性化が収まる様子はない。だから、魔人が原因ではないと考えた。

 つまり、他に原因があると考えた。


 そうなってくると、気になるのは親父の言葉だ。あれはどういう意味なんだ?


『湖には近づくな』


 親父はそこで何を見たんだろう?

 伝言を残し、旅立ったのは何か理由があるんじゃないか?

 断崖山の異常に気が付いたのならば、山に近づくなというはずだ。つまり、あの湖に何かあるんだ。


 行こう。今は夏休み、時間はある。


 俺は荷物を纏め、部屋を出た。急ぎ足に慣れた様子で山を登り、湖を目指した。


「……なんだよこれ…」


 湖に着いた俺は唖然とした。

 そこにはかつて見た光景など残ってはいなかった。動物の代わりに魔物がたむろし、光輝いていた水は酷く鈍い色を放っている。


「そうか…だから親父は…」


 これを見て、おかしいと感じて旅に出たんだ。今、親父は俺と同じ目的で異変を調べてるんだ。


「親父はいったいどこに行ったんだ?」


 普通調べるならこの湖を調べるだろう。なのに、親父は旅立った。心当たりがあるのか…?何か、これが何なのか知る人物に。


 それなら親父の行動にも、説明がつくんじゃないか?

 これを見て、なんとかしなくてはと思い、母さんに言ってすぐに家を出た。その時、近づく可能性のある俺には伝言を残した。


 なるほど、あの人のおかしな行動にも理由があったんだな。まったく、言ってくれればいいものを……


 となると、俺は親父が戻ってくるまで、この山の異変が酷くならないように努めればいいのか。


 そうするにはどうすればいい?

 魔物を狩るか?

 原因を取り除くか?

 放置か?


 ……原因を取り除こう。


 この湖が何らかの影響を受けているのは確かなんだ。ここに原因があるはずだ。やっと見つかった手がかりだ。ここで放置なんてあり得ない。


 まずはどうする?

 今目の前にあるのはなんだ?


 ………結果だ。


 過程も原因もわからない。結果だけがある。なら、結果から辿るしかない。


 この場合の結果は魔物の活性化、それと光が失われた水だ。

 魔物の活性化はもういい。今度はこの水を調べよう。



 俺は土魔法で湖の水を持ち帰る容器を作り、その中に湖の水を入れた。

 手では触れていない。何があるかわからないため、触れるのを躊躇ったのだ。


 そうして俺は5リットルほど水を採取し王都へと戻った。


 そして、王都に帰った俺はすぐに調べたい気持ちを抑え、眠りについた。

 明日と明後日は予定がある。調べるのは明々後日からだ。



 〜〜


「バジルみっけ」

「もうそんな季節か」


 さすがに3度目ともなるとわかってきたみたいだ。


「お、シャラ姐もいるじゃん今日は。シャラ姐〜!」


 今年はシャラ姐もギルドにいたため、声をかけた。これで今年は楽だな。去年はおっさんしかいなかったから、負担が大きかったんだよな。


「あら、久しぶりね、レイちゃん」

「うん、久しぶり」


 本当に久しぶりだ。10月頃に一度会った以来会っていなかった。シャラ姐はバジルと違って真面目に働いているので、結構いないことが多いのだ。

 ここを拠点にしている冒険者であるのに、もはやレアキャラ。王都の冒険者の間ではその容姿も加わりシャラ姐と会えたらいい事があると、まるで幸運の女神的扱いになっている。

 俺もそれに習い、今日は楽に掃除が出来そうだと心の中で拝んでおいた。


「それでねシャラ姐、一昨年みたいに川の掃除手伝って欲しいんだ」

「あら、またするの?いいわよ。結構あれは稼げたし、喜んでお手伝いするわ」

「ありがとうシャラ姐!」


 さすがシャラ姐。毎年毎年文句垂れ垂れのどこかのおっさんとは違うな。

 このおっさんもシャラ姐を見習って子供の頼み事ぐらい渋らず引き受けてくれよ。


 そうして、俺とバジルにとっては恒例の、シャラ姐にとっては一年越しの大掃除が始まった。

 結果は上々。今年も大量の魔石と魔物の落とす部位などが手に入り、報酬はなんと1人100万ルトと高額収入となった。

 これでフルコースにまた一歩近ずいた。また何かやらかしても良いように貯めておかないとな。


 〜〜


「さあやってきました夏恒例イベント、川!」


 海と叫びたい。なんか同じようなことを毎年言ってる気がする。ただ、海に行きたい理由も察して欲しい。水着のお姉さんが見たいのだ。絶壁ではないお姉さんの。


「先に言っとくが魔法禁止だかんな?やったら今度は水竜に電気流すから」

「死んじゃうよそれは…」

「大丈夫、アンナならそういうプレイもいける」

「ぷ、プレイって…ッ!」


 エロ魔女がお喜びのようだ。どこか期待しているようにも見える顔を見せてくる。

 だが、まだ早い。どことは言わないが、あれをもう少し成長させてからそんな顔をして頂きたい。それなら俺が手取り足取り教えよう。脳内でしかした事はないが……


「お兄ちゃんとならいいかも」

「お前は毎年毎年アニキのことを口にしないと気が済まないのか?」

「だって、一度も水着見られたことないのよ?一度見れば悩殺できるのに…」

「それは希望的観測ってやつだな。現実は違う」


 現実とは酷く不条理なものなんだ。お前の希望なんてペッされるだけだよ。


「川かぁ〜、毎年来てるけど新鮮だよね〜。僕たち以外にこんなことしてる子いないだろうなぁ」

「そりゃ運が良かったな。すべて俺のお陰だ。感謝しろ」


 毎年俺が大掃除をするから、ここに来れるんだ。偶には労って欲しい。意外と疲れるんだあれは。数が多いから。


「へへ〜、レイ神様〜」

「なんかバカにされてる気がする」


 なんだよ、レイ神様〜って。なめてんのか?おちょくってんのか?ケンカ売ってんのか?


「ピッ」

「今なぜ笑った?お前も俺を馬鹿にしてんのか?」


 こいつ本当、人を馬鹿にするのが好きだよな。ちゃんといい竜になるのか心配だよ。


「なぁレイ。俺は思うんだ。この川には何か足りないって…」

「そいつは奇遇だな。俺もお前の視線を追ってみたら、同じ気持ちになった。ただな…」

「ただ、なんだ?」

「ご愁傷様でした」


 俺はギルクの後ろから迫る二人を見て、手を合わせた。やっちまったな。


「なにをグハァ!グヘェ‼︎」


 バタン


 本人のいる前で言うからだよ。後でこっそり言ってれば、こうならなかったのに。


「次はレイだね。覚悟はいい?」

 …………え?

「ちょ、ちょっと待て!俺は何も言ってない!」


 手を前に突き出し、無実を主張する。しかし、現実は厳しい。俺の主張などペッされるだけだった。


「言ってないけど、同意したよね」


 明らかに怒気の篭った声音で有罪判決が下された。その後ろにアンナもいる。アンナはニコニコと嬉しそうにスタンバイしていた。シャルステナに便乗して日頃の恨みを晴らす腹だろう。


「違う!勘違いだ!確かに淋しいなとは思ったよ?だけどな、これには続きがあるんだ!淋しいな、けど将来はどうなるんだろう?プルンプルンになるのかな、みたいな?」


 俺は二の舞は避けようと必死に言い訳を口にする。


「レイのエッチ!」

「ブフォ!」


 結局殴られるのか……


 バタン


 地面に蹲り、前を見るとギルクと目があった。


「お前も、うっ、…面白だな」


 苦しそうにしながらも、そんなことをのたまう王子。

 こいつは沈めよう。そう決めた瞬間だった。


 〜〜


 チーン


 川のほとりで横たわる青年の前で4人と一匹が手を合わせ冥福を祈っていた。


「ギルクの来世に幸多からんことを…」

「冥福を…」

「さよならギルク…」

「ギルク、ううっ、なんで、なんでぇ」

「ピピピピッ!」(笑)


 一匹ガチで笑っている。おいおい、友の死を前にそれはダメだろ。


「じゃあな。ギルク、また来世で」


 俺は土で棺桶を作り、ギルクを入れようとした。すると、死人が蘇る。


「ま、まて…、まだ、死んで、ない」

「チッ、生きてたか」


 しぶといヤツだ。10分も沈めてやったのに。


「え?本当に殺す気だったの?」

「よく生きてたね、ギルク。あたしなら死んでたよ」

「えっ?えっ?生きてるのギルク⁉︎」

「ピピピピッ!」(死ぬ笑)


 1人まじでギルクが死んだと思っていた奴がいたようだ。おかしいだろ。気付けよ。なんで、こんな所で王子殺さなきゃならんのだ。怖い人がいっぱい来るじゃないか。俺はあくまで半殺しにしかしてない。

 そしてハク、笑いすぎだ。死ぬ笑ってなんだお前。俺はお前の将来(怖)だよ、今。


「恐ろしいヤツだ…俺が王子なのを忘れてるとしか思えん」


 今更気付いたの?もうだいぶ前から忘れてるよ。お前の王子設定なんてあってないようなもんだろ。


「そんなことねぇよ王子(笑)、いつだって俺の頭には王子(笑)が偉そうに居座ってるよ」

「………俺時々思うんだ。あの時、レイにみんなと同じように接してくれなんて言わなかったらよかったって」


 後悔先に立たずってやつだな。いや〜、けどもう無理よ。諦めて。


「ピピピピッ!」(笑)

「笑いすぎだハク、何がツボッたんだ。いくら(笑)がつく王子でも可哀想だぞ」

「お前の方が酷いわ!」


 ギルクが声を大にして突っ込んできた。せっかく庇ったつもりだったのに。


「鬼畜」

「うるさい変態」

「違うもん。ブラコンなだけたもん」


 それはそれで問題あるからな?いかにも問題ありませんみたいに言うな。それに…


「もん付はやめてくれ。吐きそうだ」


 こっちの方が問題だ。実害がある。


「鬼畜」


 今のどこが鬼畜だ。吐き気を訴えただけじゃないか。如何にも正当な主張だ。


「うるせぇよ。もん付はシャルステナみたいな可愛い子がやらなきゃ意味ねぇだよ」

「何よ、あたしは可愛くないっての?」

「Yes.You are crazy」


 あなたは頭おかしいです。その変態行動のどこに可愛さがあると?


「どこの言葉よ」

「さあね」


 俺は適当に話を切る。英語は通じないみたいだ。通じたら怖いけど。お前何もんだと、シリアスモードに突入する事になる。


「僕はアンナも可愛いと思うけどなぁ」


 おーと、ここでゴルドが一歩踏み出したきた!さぁどうなる?


「ありがとー!さっすがゴルド!鬼畜とは違うわ」


 好感度が2上昇したようだ。よくやったゴルド。そのまま引きずり倒して、普通の人間に戻してやってくれ。

 そんなゴルドの恋の進展を見てから、俺はこう言った。


「やっぱりもんはシャルステナがつけないとダメだな」

「そこに戻るんだ…」


 どこか残念そうな声でシャルステナは呟いた。


「耳に嫌な音が残ってるからさ、シャルステナに耳直ししてもらおうと…」

「口直しみたいに言わないでよ…」


 いや、口直しなんだよ。シャルステナの声でこの嫌な音を上書きしたいんだ。


「まぁまぁ、さぁ、やっちゃってください」


 俺はシャルステナを促した。


「うぅ〜、そんな風に言われると恥ずかしい…。私、こういうの苦手なんだ…もん」


 恥じらいながらいうシャルステナは非常に可愛かった。こういう仕草を見る度に惚れてしまいそうになる。

 ふと、後ろで何か倒れる音がして、振り向くとギルクが鼻血を出して倒れていた。

 お前もか。エロ王子。


「おいエロ王子。埋めるぞ」

「今なら埋まっていいかもしれない」


 何か悟った顔で王子は言った。それに俺は短く返事をする。


「そうか」


 ドババババ!


「うば、っべ、ペッ、ペッ…本当に、やる奴があるか⁉︎」

「いや、てっきり埋まりたい気分なのかと…」

「そんなのは死人だけだ!俺はまだ生きてる!」

「ピピピピッ!」(笑)


 土まみれのギルクを見て、またハクが爆笑していた。

 ハクちゃんや、今日笑い過ぎじゃないかい?僕は不安だよ。


 どんどん王子の扱いが酷くなってる気がする。まぁ、面白担当だから仕方ないか。強く生きてくれ、エロ王子。


 そんな王子の将来を心配しながらも、楽しい川遊びの時間は過ぎていった。


 さぁ、遊びのお時間はおしまいだ。明日からはこの謎の水について調べよう。


 ……何を調べたらいいんだろ?

 ヤベェ、いきなり躓いた。どないしよう……



 〜〜〜〜〜〜


「…や、やったぞッ‼︎ついに、ついに、このスキルに使い道が………ッ!」


 俺は声を震わせ、両手でプレートを掲げていた。


 11月に入ってすぐの今日、何気なしにステータスプレートの確認を行った。

 すると、謎スキルがカンストしているではいないか。しかも、固有スキルの欄にスキルが追加されている。これでついに俺だけのスキルが使えるようになったのだ。


 ここまで約10年。長かった。時には諦めたりもした。

 ディクが便利そうな固有スキルで迫ってくる中、普通のスキルだけで頑張ってきた。

 だが、ついに俺も固有スキルであいつと戦えるようになった。もう、恐るものはない。俺はーーウサギになったんだ!


 ここで、その進化したスキルと今のステータスを紹介しようではないか。



 名前:レイ

 種族:人間|(少年)

 年齢:9歳

 レベル:99

 生命力:3049

 筋力:1356+100

 体力:1678+100

 敏捷:1536+170

 耐久:1106

 器用:1610+400

 知力:1230+50

 魔力:4560+550

 通常スキル

「観察」レベル9:対象の状態を認識し易くなる

「見切り」レベル9:動体視力上昇

「真眼」レベル9:動体視力大きく上昇

「夜眼」レベル9:暗い場所でも目が少し見える

「暗視」レベル9:暗い場所でも目が見える。

「魔力操作」レベル9:自身の魔力を操作できる

「魔力感知」レベル9:周囲にある魔力を感知できる

「気配感知」レベル9:周囲の気配を察知しやすくなる

「危機感知」レベル6:危険が身に迫った時、それを感じる

「身体制御」レベル9:バランスを崩しにくくなる

「身体強化」レベル9:一時的に肉体を強化する

「空中制御」レベル9:空中での体のバランスを保ちやすくなる

「計算」レベル9:知力上昇(中)

「俊足」レベル9:敏捷上昇(小)

「敏速」レベル9:敏捷上昇(中)

「空間」レベル9:自身を中心とした空間内の動きを把握できる


 希少スキル

「空間探索」レベル9:スキル「空間」で知覚可能な生物の動きと空間内に存在するものの形を知ることができる

「固定空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間を固定する

「反転空間」レベル9:数秒間、一定の大きさの空間に触れたもののベクトルを反転させる

「反発空間」レベル7:数秒間、一定の大きさの空間に触れたものを弾く

「立体軌道」レベル8:自由自在、縦横無尽な動きができる。無理な体制からでも可能。筋力、体力、敏捷が上昇(大)

「魔力充填」レベル9:物質(生物を除く)に魔力を蓄積させることができる

「魔力重複」レベル9:魔力の重ね掛けができる

「魔素変換」レベル6:魔力を魔素に、魔素を魔力に変換できる

「芸術家」レベル5:器用が上昇(絶大)。人の心を動かす作品を作れる

「複数思考Ⅱ」レベル3:思考速度大幅上昇。同時に4つのことを考えることができる

「俳優」レベル5:演技力が大幅に上昇

「肉体強化」レベル9:身体能力を一時的に大きく上昇させる

「五感強化」レベル6:五感を一時的に強化する

「透視」レベル9:物を透視できる

「千里眼」レベル3:地平線まで見通すことができる

「隠密」レベル3:気配を殺し、自らが発する音を小さくする

「二段飛び」レベル3:一回のジャンプに付き一度だけ、空気を踏み台にできる。また、ジャンプ力が大幅に補正される


 魔法スキル

「火魔法Ⅳ」レベル7:魔力上昇(大)。火魔法の操作性と威力が上昇

「水魔法Ⅳ」レベル6:魔力上昇(大)。水魔法の操作性と威力が上昇

「風魔法Ⅳ」レベル7:魔力上昇(大)。風魔法の操作性と威力が上昇

「土魔法Ⅳ」レベル5:魔力上昇(大)。土魔法の操作性と威力が上昇

「空間魔法Ⅲ」レベル7:魔力上昇(中)。空間魔法の操作性が上昇

「治癒魔法」レベル6:魔力上昇(極小)。治癒魔法の効果上昇

「光魔法Ⅲ」レベル3:魔力上昇(中)。光魔法の操作性が上昇と威力

「氷魔法Ⅱ」レベル1:魔力上昇(小)。氷魔法の操作性が上昇

「雷魔法Ⅱ」レベル1魔力上昇(小)。雷魔法の操作性が上昇


 武器スキル

「剣術」:自己流剣術[火剣<灼熱魔翔斬>、炎風剣<炎風斬>]


 固有スキル

「経験蓄積」レベル7:過剰な経験を蓄積する。蓄積量が大きく増加。自動で発動。蓄積量1,002,560

「経験還元」レベル1:蓄積した経験を魔力に還元できる


 ○¥°%#

 称号:「@&☆$」「シエラ村のライバル」「怒れる魔女の忠犬」「ボッチ」「創世神の加護」「怠け者」「登山家」「竜神の加護」「逃走者」



 経験還元。

 今までに無駄に溜まりまくっていた経験値を魔力に変換できるスキル。

 つまりだ。俺に魔力切れはほぼなくなった!


 一体どれくらいの割合で、変換できるのかはわからないが、100万もあるんだ。1対1でもかなりの量に還元できるだろう。

 早速試してみよう。


 俺は演習場へと足早に向かった。これでA級にも勝てると心を躍らせながら。

 A級に勝てるならば、断崖山の問題はほぼ片付いたようなものだ。

 後は親父が戻ってくるまで、そいつらを狩り続ければいいだけだ。もう調査もしなくていい。


 期待に胸を躍らせながら、演習場についた。別に部屋でもいいのだが、変換した魔力で色々とやってみたかったのだ。


「とりあえず1000ぐらい変換してみるか…」


 俺は経験還元1000と念じる。

 このタイプのスキルは念じたりすると効果が発動する。別に念じなくても、言葉に出すだけでもいい。

 とにかくそのスキルを発動するという意志さえあれば問題ないのだ。


 俺が念じると同時に身体の奥、いや胸の奥が熱くなった。その熱はすぐには収まることはなく、身体全体へと広がる。


 熱い…これが…魔力?

 膨れ上がる魔力。収まる事を知らない膨大な量の魔力は、俺の意志を無視して体の外へと溢れ出していく。


「…あ、がぁ、くそ…制御が…」


 俺は溢れ出る魔力を制御できなかった。還元した魔力は俺の想像を遥かに超える量の魔力として出現したからだ。

 まるで熱を持った激流の様に俺の体を蝕み、暴風の様に俺の体から吹き漏れた。それは暴走。俺の意思など関係ない魔力の暴走。


「…がっ、あぐぅら…」


 魔力を消費しようと魔法を発動させようとするが、制御出来ていない魔力では形にはならなかった。魔力が俺の操作を無視して勝手に動く。

 もはや魔力暴走を引き起こさない様にするだけで精一杯だった。


 しかし、そんな俺の足掻きなど取るに足らないと、魔力はさらに還元され続ける。

 たった1000だぞ…?

 いったい何倍で、還元されてるんだ……


 高まり続ける魔力。おそらく今の俺が発している魔力量は、すでにA級の5倍を超えている。だがそれでも足りない。還元はまだ終わらなかった。


 そして、限界は突然訪れた。

 演習場に一人立つ俺を取り巻くような膨大な魔力は許容量を超え、限界も超えて暴発した。

 それは火も風も巻き起こしはしない。


 ただそこにあるものを破壊するだけの爆発。


 その中心地にいた俺は抵抗も何も出来ずに爆発に飲み込まれた。



 〜〜


 ー俺は…死んだのか…?


 そこは何もなかった。色もなく、形もない。

 目も見えず、ただ何もないということがわかるそんな場所。


 ーまた…何も成し遂げる事なく、中途半端に…


『まだ、死んでないぞ』


 その"声"は音もなかったただそれは俺の心に直接響いた。

 とても不思議な声だった。


 ーまだ…か。どうせ、もうすぐ死ぬことになるんだろ?


『さぁ、それはどうだろうな』


 ー知ってるなら教えて欲しいんだが…


『さぁ、俺には未来を見る能力はないからな。死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。それはお前の周り次第だろうな』


 ー周りか。あんたは今の俺がどうなってるのか、わかるのか?


『わかるさ。けど、それを話す暇はなさそうだ。用件だけ伝えさせてもらうぞ』


 ー用件ってなんだよ。あんたは誰なんだ?


『俺はお前さ、レイ。それと…』


 ー裏の自分て奴か?


『そんなんじゃないさ。俺とお前は別々であり、同じでもある。それで、ああ!くそっ、お前がいらんこと聞くから、時間がなくなったじゃねぇか!とにかく、経験還元は気をつけて使え!ちょっ……』


 ーあ、おい!まだ、何も聞けて……


 〜〜


「……ない!待て!」


 ガバッと身体を起こし、俺は手を伸ばし叫んだ。しかし、その手は何もない空中を掴んだだけだった。

 そこは現実だった。あの声はもういない。代わりに俺を呼ぶ声がすぐ近くで聞こえた。


「レイ‼︎」

「うわぁ!」


 シャルステナの声が聞こえた瞬間、俺は横から衝撃を受け地面に倒れた。

 ゆっくりと視線を身体の上に乗るものへと向ける。


「どうしたんだよ、シャルステナ」


 俺の上に乗っていたのはシャルステナだった。横からの衝撃はシャルステナが抱きついてきた衝撃だったのだ。


「目を覚ましたんだよね?生きてるよね?」


 涙で顔をグチャグチャにした彼女を見て、何があったか思い出した。

 そうだ、俺は魔力暴走を起こして……


「……ああ。生きてるよ。シャルステナが助けてくれたのか?」


 俺は体を起こし、自分の身体へ視線を向けた。

 服はボロボロに弾け飛び、残っている部分は血で真っ赤に変色していた。血は地面にも大量に残されており、まるで水溜りのようになっていた。平だった地面もまた魔力暴走の傷跡が痛々しく残り、隕石が落ちたかのように変形し、爆発の大きさを物語っていた。


「うん、うん…。うわぁぁぁあん!レイ、無事で良かったぁあ‼︎」


 俺が生きているといことを確認するように頷き、シャルステナは俺を強く抱きしめながら、声をあげて泣き出した。

 俺はシャルステナに心配かけてばっかりだな……

 耳元で泣き叫ぶシャルステナの頭を軽く叩きながら、シャルステナに申し訳なさを感じていた。


「悪いな。心配かけて。もう大丈夫だから」

「そうだよ!レイはいっつも危ないことばっかりするから、私が心配しなきゃならないんだよ!」


 シャルステナは顔をあげて、涙に濡れた顔を拭うこともせず、俺を真っ直ぐ見て怒気のこもった声で言った。


「うっ、す、すまない。それは…悪かった」

「悪いと思うんなら反省して!何やったか知らないけど、一人でこんな危ないこと、二度としないで!」

「あ、ああ。わかった。する時はシャルステナに言うよ」


 相当にお怒りのシャルステナに少し押され気味になりながら答えた。


「………約束して」


 シャルステナは潤んだ瞳を俺の眼と合わせて、念押しするように言ってきた。


「ああ、約束だ」


 それに俺は小指を突き出しながら答えた。シャルステナは小指を俺と交差させると、少し笑顔を見せる。その笑顔は涙に濡れた顔を、明るく輝かせた。


 俺はその笑顔にしばし見惚れていた。胸が熱くなった気がした。

 シャルステナの笑顔を絶やしたくない、そう思った。


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