168.復讐を
短いですが、新章入ります。
──死者10万人。
それは、たった1日でこの世から去った人の数だ。時間にすればもっと短い僅かな時で、殺された人の数だ。
魔王=災害。
この方程式を導いたのはいったい誰だろうか。
言い得て妙。的を得た解だ。
街は壊滅状態。大勢の死者に、怪我人。
何も知らない者が見たのなら、確かに大災害の跡地にでも見えるだろう。
しかし、あえて相違点をあげるとしたら、俺はこう口にする。
──憎しみと。
災害と異なるのは、これを引き起こした相手が生きているという事。命のない自然災害とは違う。
どうしようもない悲しみを、苦しみを、ぶつける相手がいる。
それが、幸か不幸か、今の俺にとってはさしたる問題ではない。
重要なのは、俺が今憎しみを抱いているという事だ。
笑い話と思ってくれていい。
帝国では、憎しみを止めようと魔人となった彼女の前に立ち塞がったのに、俺は今その憎しみをぶつけようとしている。
彼女は国へ、俺は魔王へと。
もしもそれが逆であったのなら、俺の復讐は悪であり、彼女の復讐は正義と取られる。抱えているものは同じであるのに。
その憎しみを向ける相手が、悪か正義かで、その評価は変わる。
だから、復讐自体には正も悪もない。それを、決めるのは自分ではないのだから。
ならば、彼女の復讐は悪ではなかったのか。
俺はそうは思わない。
どう言葉を見繕うと、どれほど彼女が深い悲しみを抱えていようと、罪もない人々を魔人へと変えた彼女の行いが正当化される事はない。
見失ってはいけない。囚われてはいけない。
そうすれば、復讐は悪となる。
それでは、親父に合わせる顔がない。
俺は俺のまま、俺らしく復讐する。
それが、俺の出した結論であった。
そして、その為に俺は──




