表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/253

150.生まれた意味

新章『灼熱の英雄』開幕!


 

 物心がついた時からずっと考えていた事がある。


 俺は何故生まれて来たのだろうと。


 意味などなかった。俺は18番目の王子で、沢山いる替え玉の、その最底辺。もはや存在する意味などない。


 ならば、何故俺は王子として生まれてきたのだろう?


 もっと普通の家に生まれれば、面倒な貴族との会合に出る必要もなく、学友のように好きな事だけを出来るというのに。

 存在する必要もないのに、俺は国という縛りに雁字搦めにされ、王都を離れる事すら容易ではない。


 いつか、恋した人に頼まれて、二人で旅行に行った時も、隠れて付いてくる護衛がいたのも知っている。

 結局、俺は必要もないのに、ここに縛り付けられる運命なのだ。

 その事を悲観的に思えば、キリがない。だが、今の暮らしに文句があるわけではない。むしろ恵まれていると思っている。


 ただ、ほんの少し、俺にないものを持っているあいつに憧れを持っているだけだった。そう、本当に少しだけ。


 だから、俺はその知らせを受けて、どうすれば良いのか、わからなかった。

 なれる筈がなかったものに、なる事が出来ると知った時、嬉しかった。

 父が死に遺言で、次の王が俺だと言われた時、初めて生まれてきた意味を感じた。


「ギルク、王様になる覚悟はあるのかい?」


 尊敬する兄上から言葉。


「あります」


 俺はそう答えた。


「そうかい。わかったよ、ギルク」


 そう言った兄上の背中は何処か悲しげに見えた。


 その理由を、俺は履き違えていたのかもしれない。兄上が沈んでいるように見えたのは、これまでの努力が意味を失くしてしまったからだと思った。

 けど、本当は……


 ────俺を殺さなければならなくなったから……だったのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ