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15.テスト×お休み

 8月14日

 今日は定期テストの日だ。

 学生たちは今月に入ってから、自主練や勉強漬けの毎日を送っている。一部、そうでない者もいるが、殆どは忙しそうにしてる。


 俺は軽く座学の見直しをしただけで、後は何もしていない。しなくてもいけるだろうと考えている。

 もし、Aクラスから落とされるのであれば仕方ない。次からは少し真面目にやればいいだけの話だ。

 まだまだ学生生活は始まったばかり。

 真剣に取り組むのは、半分が過ぎたあたりでいいだろう。


 というのも、4年からはクラス分けの仕方が変わるらしいのだ。というより、クラスは関係なくなる。

 クラスは3年後期で固定され、後はずっと同じになる。何故そんな仕様になっているかというと、クラスで別れる必要がなくなるからだ。


 4年生からは好きな授業だけを受けられるようになる。

 つまり、勉強がしたいものは座学、近接戦闘がしたいのであれば剣術や槍術の授業、魔法が学びたいのであれば魔法の授業を選びとることができる。


 大学のような授業形式になるのだ。ちなみに単位は必要ない。なので、3年間遊んでてもいいわけだ。

 もちろんそんな奴は滅多にいない。普通はちゃんと授業に出ているらしい。

 授業を受けて、テストである程度点を取れば、その授業を受けた証が、学校を出る際に貰えるのだ。つまり単位みたいなものだ。それはいろんな所で役に立つ。

 だから、普通はちゃんと授業に出る。


 ちなみに、学年も関係なくなり、4〜6年合同の授業となる。これは何回も受ける事が出来るようにとの措置だ。


 4年からの授業は、殆どが何段階かに分かれている。そして、学校側が学年に応じて、それぞれ段階的な授業を推奨するのだ。

 例えば、剣術を下級、中級、上級に分けたとする。すると、学校側は4年生に下級を、5年生に中級を、6年に上級を推奨する。


 しかし、学生側はそれを無視していい。剣術が得意な生徒が4年で上級をいきなりとってもいいのだ。逆に、苦手で合格を貰えなかった6年生が、下級を受けてもいい。


 生徒の才能を伸ばす狙いがあるのだろう。3年までは基礎、4年からは専門に分かれて才能を伸ばしていく。

 だから、この3年間は手を抜いても問題ない。基礎は出来てる筈だ。4年からは本気出す。


 〜〜〜〜〜〜

 学生たちが寝不足で、眠そうに目をこすって登校する中、俺は1人元気に登校する。

 大変だなぁみんな。


 他人事ように考えながら教室に行くと、意外にもシャルステナも眠そうにしていた。

 あいつ、自分も余裕だって言ってなかったっけ?

 まぁ見栄を張っただけと考えて、特には触れなかった。

 それが優しさというものだ。


 変態とゴルドは普通に眠そうだ。

 ゴルドは俺がこの半年鍛えて、もうすぐでシャルステナの相手ができるだろうというところまで来ている。

 一応、座学も魔法もAクラスの平均ぐらいには引き上げておいたし、問題ないだろう。


 変態は知らない。

 あいつが下に行くことは、俺にとって悪いことではない。

 巻き込まれずに済む。


 あいつはあれ以来よく俺の部屋にやってくる。

 用もないのにだ。

 マキビシはまったく効果がなかった。

 普通に払い落としてやってきた。有刺鉄線ってどうやって作るんだろうか?


 皆がノートを読み返す中、俺は1人のほほんとその様子を観察していた。シャルステナが可哀想な子を見る眼で見てきたのが、印象的だった。

 シャルステナの中で俺のクラス落ちは決定しているみたいだ。


 リナリー先生がやって来て、テストが始まった。

 まずは座学だ。

 たぶん、直前までにやった内容を忘れないようにとの配慮からだろう。優しいなぁ。俺には関係ないけど。

 暗記するしない以前の問題だからな。


 テストの内容は超簡単だった。今回はわからないようなところはない。入試の時に出た犬鳥も出たが、ちゃんとできた。あれはドクードという動物らしい。

 いつか実物を見てみたいものだ。


 5分ほどで終わらせてしまった俺は残り55分、問題用紙で芸術作品を作ることにした。今や芸術系スキルは、画家と職人をカンストし、芸術家というスキルに変わった。

 その俺が作り出す物は、問題用紙でさえ芸術的な作品へと変貌を遂げる。


 テストが終わった時、俺の机の上には城が立っていた。

 細部にまでこだわり、問題用紙の文字でさえも、城の外観を彩る重大なファクターとして、城に組み込まれている。


 始め俺が問題用紙で遊びだした時は、リナリー先生も先程のシャルステナと同じ眼で見てきた。しかし、城が完成に近ずくにつれ、だんだん目の色が変わり、最終的には感動していた。


 今やその城に見惚れ、問題用紙を回収することさえ忘れている。

 仕方ないので、代わりにテストを回収してから、その城をリナリー先生にあげた。すると、先生は泣いて喜んでくれた。家宝にするらしい。そんな大層な物ではないんだが……


 シャルステナはその城を見ても、一体何をやってたんだと言いたげな顔で、こちらを見ていた。

 ため息をついてから、これで違うクラスかと呟いた彼女には、俺がため息をついて、お返ししておいた。

 彼女は俺をなんだと思ってるんだろう。


 まさか俺が問題も解かずに、城を作って遊んでいたとでも思ってるのだろうか。

 ひどく心外だ。

 俺はそんな不真面目な生徒ではないのに。


 俺の芸術に見惚れる彼らを一名の変態を除いて見習ってほしいものだ。少しは俺のことがわかることだろう。

 芸術は鏡だ。

 この城は俺を写している。

 こんな美しい城を作りあげた俺は、さぞ綺麗で素晴らしい心を持っているだろうと。


 〜〜


 城を作った後は剣術のテストだ。

 いつもはペアでする模擬戦を今日は先生と行う。

 入試と一緒だな。


 感動して泣いていた先生も、今は真剣な表情だ。

 俺は相変わらずトリのままなので、一人一人の剣技を見てどれくらいで行くか考える。


 まず最初は考慮には入れない。あいつは別枠だ。参考にはならない。

 その次からはちゃんと見て、考えていく。


 意外にも変態は動きが良かった。

 よくよく考えてみれば三階の窓から入ってくる奴が、運動神経が悪いわけがない。軽やかな動きで剣を振るう変態の動きは、少し俺と似ている気がして嫌な気分になった。

 あいつと共通点を持ちたくはなかった。


 ゴルドの動きはわかってはいたが、一応見ておいた。

 ゴルドは基本は守りの姿勢で、相手の剣を受け流して隙を突く、いわばディクのような戦い方だ。

 攻撃よりも防御が得意なのは彼の夢に作用されているのかもしれない。


 シャルステナに関しては言うことはない。

 ほとんど成長していなかった。

 俺のせいとも言えるが、後期からはゴルドが相手をできるよう、仕上げておくから許してほしい。


 そうそう、シャルステナの人見知りはほぼ治った。

 時々、訳のわからない言動をするが、見たところいろんな人と気軽に話せているようだ。


 変な行動をしなければ、彼女は明るく、また成績優秀、容姿端麗の完璧な美少女なので、この学院のアイドル的な存在になりつつある。

 一年生では、すでにそうなっていると言えるが、他の学年と余り関わることのない現在の状況では、上の学年には余り浸透しているとは言えない。


 しかし、近い将来、彼女はそうなると思う。

 そうなった時、よく彼女と話したり遊ぶ俺に火の粉が飛んでこないか少し心配だ。


 まぁ俺はAクラスではそこそこ人気者なので、クラスではそういったことは起こらないと思っている。

 まぁ俺もイケメンなんでな。ふははっ。


 おっと、途中から見るのを忘れてしまっていた。

 後2人しか残ってない。

 うーん、あれから俺も少しは強くなっただろうから3割でも十分かな?

 よしそれでいこう。


 俺の番が来た。

 リナリー先生が合図を出してからのスタートとなる。

 合図が出たので、俺は前に出た。使うのは親父の動き。変態と同じは嫌だったのだ。


 しかし、3割程度の動きでは簡単にいなされてしまう。

 そして次は先生の攻撃だ。

 俺はディクを真似て受け流す。

 そんな風に変態とは同じにならないように工夫しながら戦った。


 見たか!俺はテメェとは違うんだ!

 そう叫びたいのを抑えるのには苦労したものだ。



 〜〜


 変態と俺の区別がきっちりとできたら次は魔法のテストではなく、昼飯だ。


 ちゃんといつものように障害物競争を勝ち抜くことができた。

 いつもと同じく、後から2人と1態がやってくる。

 俺とハクはすでに食事を開始していた。これもいつも通りだ。


 ハクはよく食べる。シャルステナとアンナぐらい食べる。

 その小さい体のどこに入っているんだろう?

 早く大きくなって欲しいものだ。


 〜〜

 さて、いよいよ最後のテストのお時間だ。


 こちらは授業でやった魔法を3つ発動して、その出来で点数が出る。魔法は授業でやったものならなんでもいい。得意なものを選べる。

 これは人によって得意魔法が変わってくるための措置だ。


 人はイメージできる属性や系統に差異がある。

 それにより、得意な属性や得意な魔法形態が変わってくる。

 魔法形態とは例えばファイアボール、ウォーターボールといった似た形、似たイメージ過程を通るもののことをいう。


 上級ともなると、その属性でしか発動しないものがほとんどになるが、それまでは結構似たイメージ過程を通ることが多いため系統別にされていることが多い。


 俺はボール系統が得意、というかよく使うので、それで固めていくことにしている。


 初めは言わずもがな、シャルステナだ。

 彼女は同時に火と風の波を作りだし、それをぶつけるような形で魔法を発動した。

 ファイアウェーブとエアロウェーブと言う魔法だ。


 広範囲に攻撃できる代わりに、威力がかなり低いと言う魔法だ。俺は牽制ぐらいにしか使わない。

 Aランクの冒険者相当のものなら使われたとしても無視できるレベルだ。

 彼女は2つ同時発動という、7歳児にしてはかなり高度なことをしたためか、ドヤ顔だ。


 彼女は魔法に自信があるらしく、ことあるごとにドヤ顔を俺に向けてくる。

 確かにすごいことではあるが、未だ俺の方が何歩か先に行っている。

 現在俺は最大12個まで同時に発動することができる。


 先日までは8個が限界だったのだが、並列思考のスキルが進化したことで、複数思考というスキルに名前が変わり、3つまで同時に思考可能となったのだ。


 俺は一つの思考で4つまでなら初級の魔法を撃てる。その三倍の12個が俺の限界の限界というわけだ。

 これも日々の鍛錬の賜物である。

 順調に強くなっているようで何よりだ。


 ゴルドは土系統が得意なので、グランドウェーブ、グランドボール、最後に土壁という魔法を発動した。

 俺の魔法訓練が活きているようで何よりだ。


 アンナはファイアボール、ウォーターウェーブ、エアリアルという風を周囲に巻き起す魔法の謎の組み合わせできた。

 どれもこれもバラバラだ。自由に選べる意味がない。


 最後に俺の番だ。

 シャルステナにドヤ顔されたのが気に入らないので、天狗の鼻を折ってやろう。


 俺は3属性のボールを出現させ、円を描くように3つのボールを移動させた。

 回す高さを微妙に変え、それぞれがぶつからないよう調整した。

 そして、速度を上げそれらに角度を加え天へと登らせた。次第にそれらが描く円の直径は小さくなっていく。まるでツリーを描くかのように絡み合いながら登っていき、最後に3っつのボールがぶつかり合い、空から火と水、土の雨が降り注いだ。


 文句無しの満点だろう。

 3種同時発動に緻密な魔法操作、さらには芸術点も加算されることだろう。


 見てみろ。ハリス先生は感動してスタンディングオベーションしてる。

 俺はドヤ顔をシャルステナに見せる。


 彼女はまるで神に祈るかのように手を合わせ、空を見上げて泣いていた。

 悔しくというよりも、感動してといった感じだ。


 彼女は負けたことが悔しくないのだろうか?

 彼女の悔しがる姿を俺はまだ見たことがない。いつも違った表情を浮かべている。

 Mなのかといった疑問が浮かび上がってくる。


 ハリス先生の拍手が鳴りやまない。

 俺はもう一度やってあげた。それでハリス先生は満足してくれたようだった。


 今回のテストで俺は一つ自分の事を知ることができた。俺の芸術性はもう人の心を動かすレベルということだ。一度くらいコンテストに出てみるのもいいかもしれない。


 こうして俺たちのテストは終わり夏休みがやってきた。



 〜〜〜〜〜〜


 この学院には始業式も終業式もない。

 なので、校長が仕事をするのは入学式と卒業式の年二回だ。

 本当はそうではないだろうが、学生からすればそう見えてもおかしくはない。


 終業式で長いお話を聞いて、足がだるくなることもなく、夏休みがやってきた。

 ただ、日本のように一ヶ月とか、そんなに長くは休ませてくれない。2週間だけだ。


 シエラ村まで帰るには行きだけで2週間弱かかる。

 往復だと約1ヶ月。

 なので、今回は戻ることができない。

 その代わりと言ってはなんだが、冬休みは約3ヶ月ほどあるので、十分帰ることができる。


 とりあえず今は夏休みを楽しもう。

 夏と言ったら海だ。

 と言うことで、近くに泳げる浜がないかギルドで聞いてみた 。


「ごめんねぇ、私はこの近くに海があるかわかんないのよ」

「海だぁ?そんなもんこの近くにあるわけねぇだろ」

「泳げるところ?うーん、川なら近くにありますよ」


 上から順にシャラ姐、おっさん、ミラ姐だ。

 どうやら近くに海はないようだ。

 残念だがここはミラ姐に教えて貰った川に行くことにしよう。



 〜〜〜〜〜〜

「川に行くぞ」

「「「なんで?」」」


 俺が川に行こうと言うと、いつものメンバーは全員首をかしげた。

 まさかこの世界では川辺で遊ぶ習慣がないのか?


「海が遠いからだ」

「それは知ってるわ」


 俺が簡潔に理由を述べると、シャルステナは当たり前のことを言うな、という顔をしてきた。


「川に行って何するのさ?」

「そりゃあ泳ぐに決まってる」

「泳ぐ?あんたバカ?」


 ゴルドの問いに答えたら、変態にバカ扱いされてしまった。屈辱だ。


「なんでバカなんだよ」

「そりゃあ川で泳ぐなんてありえないからよ」


 アンナの返しに違和感を覚えた。

 ありえない?泳いだりしないじゃなくて?


「なんで?」

「レイは知らないの?川には魔物が出るんだよ」

「魔物?」

「歩く魚みたいな魔物よ。確かD級だったと思うわ」


 俺の疑問にはゴルドとシャルステナが答えてくれた。

 ふむふむ、なるほど。

 魔物が出るから川では泳げないわけか。

 つまり、魔物がいなくなれば問題ないと。

 仕方ない。いつかのように、今度は川の掃除をするか。


「わかった。俺に任せとけ」

「「「え?何を?」」」


 再びシンクロした彼らを放置し、俺はギルドに向かった。


 〜〜〜〜〜〜


「バジル暇だろ?」

「暇じゃねぇ。今から呑むんだ」


 つまり暇なんだな。


「よし、バジル確保と。あ、シャラ姐!」

「おい!」

「どうかしたレイちゃん?」


 ちょうどシャラ姐がギルドに来たところだったので、声をかけた。


「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど…」

「おい!無視すんじゃねぇ!」

「いいわよ」


 シャラ姐は快く引き受けてくれた。やっぱり、いい人だ。ケンカしてなければ…


「俺とバジルと一緒に川の魔物を倒して欲しいんだ。報酬は3人で山分けでどう?」

「もちろん大丈夫よ」

「おい!俺は忙しいって言ってんだろ!」


 いい加減耳元でうるさいので、構ってやることにした。


「暇なくせによく言うよ。子供の言うことぐらい聞いてくれよ」

「お前はガキらしくねぇんだよ!」


 失敬な。まだピチピチの7歳児だよ?


「まぁまぁ、報酬とは別に今日の飲み代は奢るからさ」

「お?話がわかるじゃねぇか。しゃあねぇ、いっちょ俺様が手を貸してやる」


 バジルとシャラ姐が手伝ってくれることになったので楽に掃除できそうだ。

 二人ともA級の腕利だからいい仕事をしてくれるだろう。1人は呑んだくれだけど。

 


 〜〜〜〜〜〜


 川にやってきた。

 俺の空間探索にウジャウジャと魔物が引っかかる。


「ウヘェ〜、結構いるな」

「あたりめぇだ。川ってのはいろんな生物が集まってくるからな、あいつら魔物にとっちゃ絶好の狩場なんだ」


 バ、バジルがまともなことを言ってる!


「バジルってタダの呑んだくれじゃなかったんだね」

「おいコラ。どういう意味だ」

「さぁ?まぁとにかくやっちゃおうか」

「レイちゃん、どれくらい狩ればいいの?」

「全部」

「「へっ?」」


 間抜けな声を出す二人。


「端から端まで、上から下まで全部狩っちゃって」


 そうしないと危なくて泳げないからな。


「おいおい、ひょっとして川の魔物全滅させろって言ってんのか?」

「そうだよ」

「レイちゃん、それは幾らなんでも……」

「大丈夫だよ、そのために二人を連れてきたんだから」


 俺1人ならキツくても3人なら楽勝さ。


「さぁ、やっちゃおうか!3倍ファイアウェーブ」


 俺はファイアウェーブを重ね掛けして魔法を発動した。

 一つ一つでは弱すぎるが3つ重ねることで、威力は十分になる。

 ウェーブは重ね掛けに限るね。

 簡単にできるから、殲滅する時には便利だ。


「嘘だろ……まじかよ…」

「あらら、また強くなっちゃって」


 初めて見る者と、何度か見たことのある者の違いがよくわかる。

 やはり俺は異常な子のようだ。


「バジルは下、シャラ姐は真ん中、俺は上で別れてやろう。一匹も逃がさないでね」


 俺はそう言って、俺は上流に向けて走っていく。


「やっぱりあいつはガキじゃねぇ」


 そんな呟きが聞こえた気がした。



 〜〜


「3倍ファイアウェーブ×4」


 4つの火の波で魔物を殲滅していく。

 倒した後は魔石と素材を風魔法で集めて適当にまとめておく。


 これを繰り返し、一時間で川の源流まで来ることができた。帰りに魔石と素材を土魔法で作った台車に乗せ、別れた場所まで戻った。

 戻るとシャラ姐も狩りを終えていた。バジルはまだのようだ。


「あら?早かったわね。ケガしなかった?」

「うん、大丈夫」


 ケガをするどころか、魔物に姿さえ見せなかった。


「そう、それでその動く台車はどうしたの?」

「魔法で作ったんだ」


 シャラ姐が台車を指差し聞いてきたので、教えてあげた。


「そんな魔法あったかなぁ?」


 シャラ姐は興味深そうに台車を見ていろいろブツブツ言い出した。シャラ姐になら教えてあげてもいいので、今度教えてあげよう。


 シャラ姐がブツブツ言っていると、バジルが戻ってきた。


 袋一杯に魔石と素材を詰め込んでいる。

 それでも足りなかったのか、手に山ほど抱えて歩いてきた。


「なんだそれは?」


 バジルも俺の作った台車に興味を示した。


「レイちゃんが魔法で作ったんだって。これ動くのよ?すごくない?」

「動くぅ?レイ、その魔法俺にも教えやがれ」

「やだよ。俺のオリジナルだもん」


 バジルは俺を見捨てたので教えてあげない。


「だもんなんてお前が言っても可愛くないんだよ」

「ひどい。シャラ姐ぇ〜」

「よしよし。バジル、かわいそうじゃない。謝りなさいよ」


 やっぱりシャラ姐は優しい。とっても可愛がってくれる。ちゃんと魔法を教えてあげよう。

 バジルは結局謝らなかった。

 シャラ姐がちょっとご立腹だ。ざまぁみろ。


 報酬は3人で山分けしても60万もあった。

 どんどんお金持ちになっていく。

 将来国でも建てれるんじゃないかこれは?


 今日の狩りで俺はEランクに昇格した。

 前からちょこちょことやっていた依頼と今日の大掃除で依頼達成数を満たしたのだ。

 この調子でいけば、Sランク以上になるのも夢じゃない。


 バジルの呑み代はちゃんと出した。後でなんか言われても面倒だしな。


 シャラ姐には代わりと言ってはなんだが、バジルには内緒で魔法を教えてあげた。

 飛び跳ねて喜んでくれたので俺は満足だ。

 揺れるあれが見れたからだ。


 そうして川の大掃除は終わった。



 〜〜〜〜〜〜

 次の日、俺はまたみんなを集めて言った。


「川に行くぞ」

「「「また?」」」


 デジャブのようなやりとりを交わす俺たち。


「だから昨日も言ったじゃん。川は魔物が出るって」

「ああ、だから掃除してきた」


 今は魔物一匹はびこってないぞ。


「掃除?」

「ああ、川の大掃除をしてきた」


 ゴルドはまだわからないと言った顔で見てくる。


「ま、まさか…魔物を全部狩ってきた…とか?」


 シャルステナは気付いたようだ。


「ああ、今や魔物一匹いない平和な川だ」

「ええっ⁉︎全部⁉︎」

「え、本当に⁉︎」

「本当にやってるとは…」


 ゴルドとアンナは素直に驚いてくれたが、シャルステナは呆れたといった顔をしている


「てことで、川に泳ぎに行くぞ」

「水着持ってないんだけど…」

「僕も…」

「私はあるわ、何かやりそうな気がしてたから昨日買ってきたわ」


 シャルステナ以外は水着がないのか。仕方ない、買うか。使わないと金は減らないしな。

 待てよ。俺も水着ないじゃん。


 ということで、水着を買いに大通りに向かった。

 ゴルドは青の水着、アンナはスク水、俺はグレーの水着を購入した。

 ハクは裸でいいだろう。


 大通りまで来たついでに弁当も買ってから行った。

 全部俺の奢りだ。

 それでもまったく減らない俺の預金。

 使い道を考えないと。



 〜〜

 昨日と同じ川にやって来た。


「ついたぞ!泳ぐぞ!騒ぐぞ!ポロるぞ!」

「ポロらないわ」


 シャルステナの冷たい突っ込みが聞こえてきた。


「大丈夫だ。俺がポロる」

「えっ、本当に?ポロるの?」


 さっきの冷たい視線が、興味津々な視線へと変わる。

 やっぱりこいつはエロくなるな。


「お兄ちゃんのならいいけど、あんたのはいらないわ」


 お前には言ってねぇし、そんなこと聞いてねぇよ。


「僕はどっち?」


 それは俺に聞かれても困る。見せたいのならご自由にポロッてくれて結構だ。

 一名興味津々な奴がいるから喜ぶだろう。


「ピィ?」


 お前はポロるも何も全裸じゃないか。すでにポロってるよ。年がら年中ポロってる。


 さぁ、切り替えて遊ぼうか。

 俺は川にジャンプして飛び込んだ。

 俺に続き3人と一匹も入ってくる。


 シャルステナの水着は白を基調としたビキニだった。

 似合ってはいるが寂しさは拭えない。

 10年後に見てみたいものだ。


 俺たちは川で日が暮れるまで遊んだ。

 途中、シャルステナがポロった以外は、特に事件らしい事はなかった。

 なぜか俺にだけ紅葉がついたとだけ言っておこう。


明日も投稿出来そうです。

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[気になる点]  5分ほどで終わらせてしまった俺は残り55分、問題用紙で芸術作品を作ることにした。今や芸術系スキルは、画家と職人をカンストし、芸術家というスキルに変わった。  その俺が作り出す物は、問…
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